美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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彼らからのお祝い 2

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「僕からは…少し待っていて下さい」

 ヴェルくんは部屋を出て、リュークが扉を支えて彼が戻ってくる。両手には大きなケーキ。

「え!」
「形に残る物で無くて申し訳ないんですが」
「ううん、嬉しい……え、これヴェルくんが作ったの!?」
「はい、時間が足りなくて完璧には出来ませんでした…」

 驚きでヴェルくんとケーキを交互に見てしまう。
 生クリームが綺麗に塗られたスポンジの上には苺が大きな花のように飾られている。

「ヴェルくん流石だね!お店のみたい!」
「本当ですか…!」
「うん!もう見とれちゃう…」

 写真を撮りたい…このまま残しておきたい…。

「今日急いで作ってくれたんだよね…もしかして朝も?」
「少し準備してました…」
「ヴェルくん…ありがとう…!凄く嬉しい!」
「喜んで頂けて良かったです!今、お皿とスプーン持ってきますね」

 早速ケーキを切り分けて…

「あぁ!ケーキ崩れちゃう!」
「そう言っていたらいつまでも食べられないぞ」
「だって…」

 ミスカさんに止められて、その間にカットされたケーキを差し出される。
 まあ、崩れてしまったものは仕方がない。意外とあっさり立ち直り、一口食べてみる。

「ん!美味しい…甘さもちょうどいい!」
「サキさんは結構甘いほうが好みですよね」
「ヴェルくんよく分かってる!」

 皆も美味しそうにケーキを頬張っている。

「スポンジふわふわだねー」
「ああ」

 リュークとミスカさんのモグモグ可愛い…。

「ヴェルストリア、もう一切れちょうだい!」
「私も貰っていい?」
「はい!どうぞ」

 ラグトさんと私はしっかり二切れ食べた。
 一息つくと、ここで扉がノックする音が聞こえた。

「お邪魔するよ」
「ハインツさん!」
「遅くなってしまってすまない」

 ハインツさんは私の元へ来て跪き、持っていた花束を差し出す。

「サキ、誕生日おめでとう」
「わぁ…ありがとうございます…!綺麗…」
「昨日渡そうかと思っていたんだが、皆が今日お祝いすると聞いたから」

 ピンクと白の花と瑞々しい葉が大きなリボンで纏められている、とても可愛らしい花束。

「私は花には詳しくないが、ピンクの花はサキに似合うと思ったんだ」

 照れてしまいながらもそう言って貰えるのが嬉しくて、ギュッと花束を抱える。

「似合って…ますか?」
「っ…ああ!可愛い、とても可憐だ」

 おでこにそっとキスをくれた彼の手を取る。

「私の隣狭いですけど、良かったら」
「ありがとう」

 二人がけのソファでも、ハインツさんには小さめなのでピッタリくっつく形になる。

「あー!俺たち我慢してたのに!」
「ずるいです」

 ハインツさんはリュークとヴェルくんの不満をサラッと流す。

「花はとりあえずこちらに置いておこうか」
「ありがとうございます。後でお部屋に飾らせて貰いますね」

 遅れて来たハインツさんもヴェルくんのケーキを喜んで食べ、残っていた分はあっという間に無くなってしまった。

「団長…」
「いや、美味しかったから…」

 流石に驚く彼らに気まずそうに笑う。

「残っていても仕方ありませんから、助かりました。とりあえず片付けてきますね」
「あ、私も手伝うよ」

 お皿を重ねるヴェルくんに続こうとするけれど、皆に止められた。

「サキは座ってて!主役なんだから。俺が…」
「待て、リュークは駄目だ。ラグトが行ってこい」
「了解です!」

 何故かリュークは止められ、ラグトさんがヴェルくんとキッチンへ向かった。

「ミスカさん、何が駄目なんですか?」
「こいつ、料理関係は全般駄目なんだ。鍋は焦がすし洗い物で皿を割る。包丁持たせたらまな板が切れるぞ」
「そんなに!?」

 初めて知ったなぁ…。
 まだまだ私の知らない彼らがいるのかも。

「えへへ…つい力んじゃって」
「キッチンに入らせないのが一番だ」
「分かりました!リュークは立ち入り禁止ね」
「えぇ!?そう言われると悲しい…」

 そんな掛け合いの中、ヴェルくんとラグトさんが戻ってくる。

「お祝いって何していいかあんまり分かんなかったんだけど、サキが楽しく過ごすって言ってたから」

 リュークはそう言い、後ろから取り出す。

「やっぱトランプでしょ!」
「「わーい!」」

 皆でパチパチと手を叩く。
 全員揃ってやるのは初めて遊んだ時以来だ。

「前のババ抜きというのをリベンジしたいな」
「良いですね!」

 ハインツさんの希望で今回もババ抜きをすることになった。

「あ、机の上のお菓子食べてね!サキの作ったものの足元にも及ばないけど」

 リューク…私のお菓子を過大評価し過ぎだよ…。

「ケーキが甘いからしょっぱいのも選んだんだ。それとかなかなか美味しかったよ」

 ラグトさんが指差すものは塩気の効いたプレッツェル。

「美味しいですね!ついいっぱい食べちゃう…」
「好きなだけ食べてくれ。サキの為の物だから」

 こんなに至れり尽くせりで良いのだろうか。ミスカさんのお言葉に甘えてお皿に伸びる手が止まらないままトランプが始まる。

「サキと団長、隣だとやりにくいでしょ?こっちの席空いてるし…」
「では私と一緒にやろうか、サキ」
「はい!」
「僕もサキさんと一緒にやりたい…」

 リュークとヴェルくんの恨めしそうな視線をまたもや流す。

「俺からだな。リューク、早くカードを出せ」
「うう…」

 ミスカさんがリュークのカードを引く。

「サキ、私がカードを持っているからサキはラグトから引いてくれ」
「団長、卑怯では」
「卑怯では無いだろう」
「?」

 ミスカさんとハインツさんの会話は分からず、ラグトさんのカードを引く。

「ありますか?」
「2は…これかな」
「やった!」

 揃ったカードを机に出す。
 ただ引くだけだけど、一緒にやるとまた違って楽しい。

「最初から当てるなんて凄いな」
「運ですよ」
「じゃあサキの運が良いんだな」
「ふふ、今日はツイてるかもしれません」

 くっついた体を彼にもたれかけさせると肩を抱いてくれる。
 ずっと同じ部屋には居たけど触れることはあまり無かったから、ようやくハインツさんを近くに感じられて安心する。

「離れてた俺たちより何で団長がイチャイチャしてるんすか!」
「というかあの手紙嫌がらせですよね」

 ミスカさんが言うあの手紙とはなんだろうか。

「あれでやる気が出ただろう」
「出ましたよ。団長に文句を言おうと思って」
「ミスカ…お前サキのことになるとだいぶ口がまわるな」
「ハインツさん、手紙って何ですか?」
「なんでもないよ、気にしないで」

 気になる…。
 その後ゲームは進み、なんと私とハインツさんチームが一位になった。

「ハインツさん、私一位初めて!」
「そうか!サキはやっぱり凄いな」
「嬉しい~!」

 ハインツさんに抱きついて喜ぶ私を皆は温かい目で見ていた。

「団長は憎いけど…」
「サキ可愛い…」

 ラグトさんとリュークがなんか悶えてる。

「ふふ、ハインツさんと一緒だと一位取れるって味占めちゃいそう!」
「「!?」」
「サキ、俺と一緒でも一位は取れる」
「いえ、僕と一緒の方が良いに決まっています!」
「そ、そう?」

 皆凄い自信あるんだな…

 ババ抜きが終わってからもいっぱい遊んで、すっかり夜も更けてしまった。

「もうそろそろか」
「そうですね」

 ミスカさんとヴェルくんがカードを片付ける。

「サキ、俺たちちゃんとお祝い出来たかな?」

 少し心配そうなリュークに笑顔で頷く。

「うん!今までで一番幸せなお祝いだよ」

 私一人の為にこんなに盛大に祝って貰ったことなんて無くて、照れくさいような感じもありながら胸がいっぱいで感動してしまった。

「本当に…ありがとう!」

 少し瞳が潤んでしまいながらも感謝を伝えると皆も幸せそうに笑ってくれて、自分が彼らにとって特別な存在で居られているのだと強く実感した。

「ところで今日どうしよっか」
「?」

 どうするとは何を?

「サキ、誰としたい?」
「……え、するって…」
「えっちを」

 やっぱそうなるんだ!?
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