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温かい家庭
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数分歩いて中心街から離れたところに川があり、そこを渡ってすぐにリュークの実家があった。周りに他の建物は少なく自然もあり穏やかな場所だった。
茶色のレンガ調で少し年季の入った、けれど可愛らしいお家。
「とりあえず先に俺が話してくるからちょっと待ってて」
私が頷くと、リュークは意を決したように扉をノックする。
軽い足音と返事が聞こえ扉が開けられた。
「まぁ、リューク!」
「ただいま、母さん」
「もう……いつも突然帰ってくるんだから……」
「ごめんごめん、急に決めちゃってさ。それで……ちょっと用事というか、話があって……」
わぁー!緊張する……!というか何も伝えて無かったの!?ドッキリじゃないんだから……。
「とりあえず中入って……あら、ミスカも一緒じゃない!二人してどうしたの?」
二人は顔を見合わせ私を手招きした。
「俺とミスカ……彼女と結婚したんだ」
「は、初めまして!サキと申します!この度リュークさんとミスカさんと結婚させて頂きました!」
リュークのお母さんは驚いた表情で数秒固まり、その後階段を駆け上がって行った。
「あ、あなた!ちょっと来てちょうだい!」
そうなりますよね……。
「先に伝えたのかと思ってたんだけど!?」
「怖くて手紙書けなかった……」
リュークと小声で話しているとお義母様と一人の男性……リュークのお父さんが階段から降りてきた。
ほら、お義父様も驚いて動けなくなってるじゃない……。
「ええと……三人とも……そちらに座ってちょうだい」
「失礼します」
正面に座ったお義母様は金髪と茶色の瞳のふんわりとしたイメージの方で、お義父様は赤茶色の髪と金色の瞳で目元がリュークとそっくりだ。
「サキさん……だったかしら」
「はい!」
「初めまして、リュークの母のアンナです」
「父のジンです。よろしく」
「よろしくお願いします」
挨拶を終えると、アンナさんは深呼吸をして気持ちを整えた。
「リュークが……ミスカが結婚だなんて……本当なのよね?」
「うん、三ヶ月くらい前から付き合っててこの前結婚したばっかり」
「……こんなことを聞くのは失礼なんだが、サキさんは……最近噂で聞く黒髪の子だよな?」
ジンさんの戸惑いながらの問いにミスカさんは頷く。
「ど、どういう経緯でお付き合いを?」
「詳しくは言えないが、サキは今黒騎士団で働いていてその中で付き合った感じだ」
「「働いて!?」」
やっぱり女性が働くのって変なんだ……。
「こんなに礼儀正しくて、働いていて、美人で……ちょっと信じられないけど」
アンナさんはジンさんと目を合わせ、ふわっと笑顔になった。
「リューク……素敵な人に出会えたのね」
アンナさんの言葉にリュークは目に涙を浮かべ嬉しそうに笑った。
「うん!世界で一番……ううん、どの世界でも一番素敵な人だよ」
「ミスカもおめでとう。まさかお前が結婚するなんて思っていなかったけど、リュークが好きになった人なら納得だな」
「ありがとう。サキは俺の唯一の人だから」
二人の言葉が、凄く凄く……嬉しい……。
「サキさん、本当にありがとう」
「っ……私も、リュークとミスカさんと出会えて、こうして結婚出来て本当に幸せで……」
思わず席を立ってお辞儀をする。
「ありがとうございます!」
「……サキさん」
顔を上げるとアンナさんも立ってくれていて、私は傍に行き握手をした。
「これからよろしくね」
「はい!よろしくお願いします!」
ジンさんとも握手をする。リュークとミスカさんも私の傍に来てくれる。
「今日、お義母様とお義父様にお会い出来て良かったです」
「お義母様だなんて仰々しく無くていいのよ。お義母さんと呼んで欲しいわ」
「お義母さん…」
私はもうお母さんには会えない。それを切り捨ててしまったのは私なのだけれどやっぱり会いたくて、口に出してその母の顔を思い出してしまった。
「あら、どうしたの。嫌だったかしら……」
涙が出てしまった私の頭をミスカさんが撫でてくれる。
「サキの両親は……遠いところに居るからな」
「……うん……」
居なくなったわけじゃない、違う世界でお互い生きてる。そう言ってくれた気がして、私はコクコクと頷いた。
「サキさん……貴女はもう私たちの娘のようなものだから、本当の母にはなれないけれどいつでも頼ってちょうだいね」
「お義母さん……ありがとうございます……」
優しく抱き締めてくれたお義母さんの心からの愛情を感じて、リュークもミスカさんもこの温かい家庭の中で育ったからこそ今の彼らがあるのだろうと思った。
「そうだわ!良かったらご飯食べていかない?もうすぐギルとルークが帰ってくるのよ。せっかくだからサキさんに会って欲しいわ」
「俺のもう一人の父さんと弟なんだ」
「弟!?」
初耳だけど!?
私が口に出して驚く前に、扉が開いてその二人が帰ってきた。
「ただいま……え、どういう状況?」
「お姉ちゃんだれー?」
結局私たちもジンさんが作ったご飯を頂くことになった。
「リュークとミスカが結婚……しかも同じ人となんてなぁ……」
「サキとじゃなきゃ結婚しないよね」
「サキ以外は有り得ない」
ギルさんはリュークが八歳の時にお義母さんと結婚したそう。ルークくんはその息子さんで今は七歳なんだとか。
十三歳差かぁ……私は姉と三つしか離れて無かったから想像がつかないな。
「サキお姉ちゃんあとで遊ぼ!」
「うん!何して遊ぶ?」
「パズル!僕いっぱい持ってるんだ!」
ちょっと自慢げにしてるの可愛い~!
「サキがデレデレしてる!」
「可愛いな……」
「はは、お前ら骨抜きにされてるなぁ」
ミスカとリュークがギルさんと話している間、私はジンさんとアンナさんとの交流を深めていた。
「ルークくんのお名前はリュークと揃えたんですか?」
「そうなんだよ。最初は呼び間違える時もあった」
「寄せ過ぎた」と笑うジンさん。
「揃えたほうが可愛いじゃない」
「アンナの一言で決まったよな」
ご夫婦とても仲が良くて見ているだけでこちらも笑顔になる。
ご飯を終えたところでそういえばとようやく思い出し荷物から取り出す。
「実はお菓子を作ってきたんです。お口に合うか分かりませんが……」
「お、お菓子!?」
「サキさんが作ったのかい!?」
「はい。普段黒騎士団でもお料理の仕事をさせて貰ってまして」
手土産を用意しなければと、一応クッキーを作っておいた。手作りだからもし信用して貰えなければ食べて貰えないので後出しになってしまったけれど。
戸惑いが隠せない二人に「宜しければ」とお渡しする。
「あ、ありがとう……頂きます」
アンナさんは戸惑いながらも一つ食べて笑顔になる。
「まあ!美味しいわ!」
「本当だね!凄いなサキさん」
ジンさんも褒めてくれて、次々と口に運んでいく。
「ちょっと、ギルとルークにも食べさせましょう」
「ああ、思わず全部食べてしまうところだった」
「喜んでいただけて良かったです!」
本当にホッとした……全種類ヴェルくんに味見して貰った甲斐があった。
「これ、さ、サキさんが作ったのか!?」
「俺も食べたーい!」
「俺も」
「リュークとミスカは取るなよ」
「クッキーおいしい!」
ギルさんとルークくんも美味しそうに食べてくれた。
とても楽しい時間はあっという間に過ぎていき、そろそろお暇しようという頃には外は暗くなっていた。
「長居してしまってすみません」
「全然良いのよ!それより、今から帰るの危ないでしょ?そこの宿で泊まっていったら良いじゃない」
「え?」
どうやらすぐ側に宿屋があるそうだ。
「でも、母さん……」
「明日帰る時にまた顔を出してちょうだい!」
そう言われると断れなくて、私たちはその宿に泊まることになったのだった。
茶色のレンガ調で少し年季の入った、けれど可愛らしいお家。
「とりあえず先に俺が話してくるからちょっと待ってて」
私が頷くと、リュークは意を決したように扉をノックする。
軽い足音と返事が聞こえ扉が開けられた。
「まぁ、リューク!」
「ただいま、母さん」
「もう……いつも突然帰ってくるんだから……」
「ごめんごめん、急に決めちゃってさ。それで……ちょっと用事というか、話があって……」
わぁー!緊張する……!というか何も伝えて無かったの!?ドッキリじゃないんだから……。
「とりあえず中入って……あら、ミスカも一緒じゃない!二人してどうしたの?」
二人は顔を見合わせ私を手招きした。
「俺とミスカ……彼女と結婚したんだ」
「は、初めまして!サキと申します!この度リュークさんとミスカさんと結婚させて頂きました!」
リュークのお母さんは驚いた表情で数秒固まり、その後階段を駆け上がって行った。
「あ、あなた!ちょっと来てちょうだい!」
そうなりますよね……。
「先に伝えたのかと思ってたんだけど!?」
「怖くて手紙書けなかった……」
リュークと小声で話しているとお義母様と一人の男性……リュークのお父さんが階段から降りてきた。
ほら、お義父様も驚いて動けなくなってるじゃない……。
「ええと……三人とも……そちらに座ってちょうだい」
「失礼します」
正面に座ったお義母様は金髪と茶色の瞳のふんわりとしたイメージの方で、お義父様は赤茶色の髪と金色の瞳で目元がリュークとそっくりだ。
「サキさん……だったかしら」
「はい!」
「初めまして、リュークの母のアンナです」
「父のジンです。よろしく」
「よろしくお願いします」
挨拶を終えると、アンナさんは深呼吸をして気持ちを整えた。
「リュークが……ミスカが結婚だなんて……本当なのよね?」
「うん、三ヶ月くらい前から付き合っててこの前結婚したばっかり」
「……こんなことを聞くのは失礼なんだが、サキさんは……最近噂で聞く黒髪の子だよな?」
ジンさんの戸惑いながらの問いにミスカさんは頷く。
「ど、どういう経緯でお付き合いを?」
「詳しくは言えないが、サキは今黒騎士団で働いていてその中で付き合った感じだ」
「「働いて!?」」
やっぱり女性が働くのって変なんだ……。
「こんなに礼儀正しくて、働いていて、美人で……ちょっと信じられないけど」
アンナさんはジンさんと目を合わせ、ふわっと笑顔になった。
「リューク……素敵な人に出会えたのね」
アンナさんの言葉にリュークは目に涙を浮かべ嬉しそうに笑った。
「うん!世界で一番……ううん、どの世界でも一番素敵な人だよ」
「ミスカもおめでとう。まさかお前が結婚するなんて思っていなかったけど、リュークが好きになった人なら納得だな」
「ありがとう。サキは俺の唯一の人だから」
二人の言葉が、凄く凄く……嬉しい……。
「サキさん、本当にありがとう」
「っ……私も、リュークとミスカさんと出会えて、こうして結婚出来て本当に幸せで……」
思わず席を立ってお辞儀をする。
「ありがとうございます!」
「……サキさん」
顔を上げるとアンナさんも立ってくれていて、私は傍に行き握手をした。
「これからよろしくね」
「はい!よろしくお願いします!」
ジンさんとも握手をする。リュークとミスカさんも私の傍に来てくれる。
「今日、お義母様とお義父様にお会い出来て良かったです」
「お義母様だなんて仰々しく無くていいのよ。お義母さんと呼んで欲しいわ」
「お義母さん…」
私はもうお母さんには会えない。それを切り捨ててしまったのは私なのだけれどやっぱり会いたくて、口に出してその母の顔を思い出してしまった。
「あら、どうしたの。嫌だったかしら……」
涙が出てしまった私の頭をミスカさんが撫でてくれる。
「サキの両親は……遠いところに居るからな」
「……うん……」
居なくなったわけじゃない、違う世界でお互い生きてる。そう言ってくれた気がして、私はコクコクと頷いた。
「サキさん……貴女はもう私たちの娘のようなものだから、本当の母にはなれないけれどいつでも頼ってちょうだいね」
「お義母さん……ありがとうございます……」
優しく抱き締めてくれたお義母さんの心からの愛情を感じて、リュークもミスカさんもこの温かい家庭の中で育ったからこそ今の彼らがあるのだろうと思った。
「そうだわ!良かったらご飯食べていかない?もうすぐギルとルークが帰ってくるのよ。せっかくだからサキさんに会って欲しいわ」
「俺のもう一人の父さんと弟なんだ」
「弟!?」
初耳だけど!?
私が口に出して驚く前に、扉が開いてその二人が帰ってきた。
「ただいま……え、どういう状況?」
「お姉ちゃんだれー?」
結局私たちもジンさんが作ったご飯を頂くことになった。
「リュークとミスカが結婚……しかも同じ人となんてなぁ……」
「サキとじゃなきゃ結婚しないよね」
「サキ以外は有り得ない」
ギルさんはリュークが八歳の時にお義母さんと結婚したそう。ルークくんはその息子さんで今は七歳なんだとか。
十三歳差かぁ……私は姉と三つしか離れて無かったから想像がつかないな。
「サキお姉ちゃんあとで遊ぼ!」
「うん!何して遊ぶ?」
「パズル!僕いっぱい持ってるんだ!」
ちょっと自慢げにしてるの可愛い~!
「サキがデレデレしてる!」
「可愛いな……」
「はは、お前ら骨抜きにされてるなぁ」
ミスカとリュークがギルさんと話している間、私はジンさんとアンナさんとの交流を深めていた。
「ルークくんのお名前はリュークと揃えたんですか?」
「そうなんだよ。最初は呼び間違える時もあった」
「寄せ過ぎた」と笑うジンさん。
「揃えたほうが可愛いじゃない」
「アンナの一言で決まったよな」
ご夫婦とても仲が良くて見ているだけでこちらも笑顔になる。
ご飯を終えたところでそういえばとようやく思い出し荷物から取り出す。
「実はお菓子を作ってきたんです。お口に合うか分かりませんが……」
「お、お菓子!?」
「サキさんが作ったのかい!?」
「はい。普段黒騎士団でもお料理の仕事をさせて貰ってまして」
手土産を用意しなければと、一応クッキーを作っておいた。手作りだからもし信用して貰えなければ食べて貰えないので後出しになってしまったけれど。
戸惑いが隠せない二人に「宜しければ」とお渡しする。
「あ、ありがとう……頂きます」
アンナさんは戸惑いながらも一つ食べて笑顔になる。
「まあ!美味しいわ!」
「本当だね!凄いなサキさん」
ジンさんも褒めてくれて、次々と口に運んでいく。
「ちょっと、ギルとルークにも食べさせましょう」
「ああ、思わず全部食べてしまうところだった」
「喜んでいただけて良かったです!」
本当にホッとした……全種類ヴェルくんに味見して貰った甲斐があった。
「これ、さ、サキさんが作ったのか!?」
「俺も食べたーい!」
「俺も」
「リュークとミスカは取るなよ」
「クッキーおいしい!」
ギルさんとルークくんも美味しそうに食べてくれた。
とても楽しい時間はあっという間に過ぎていき、そろそろお暇しようという頃には外は暗くなっていた。
「長居してしまってすみません」
「全然良いのよ!それより、今から帰るの危ないでしょ?そこの宿で泊まっていったら良いじゃない」
「え?」
どうやらすぐ側に宿屋があるそうだ。
「でも、母さん……」
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