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副団長からの助言
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ハインツさんの誕生日のこと考えなくちゃ……。
昨日その話を聞いてから直近の最重要課題となったのだった。
誕生日って言ったらまずはプレゼントだよね。ハインツさんへのプレゼント……前はチョコレートあげたから食べ物以外がいいな。
私のお菓子褒めてくれたし……。
ニヤニヤしながら思い出してしまって一向に決まらない。
どうしたものかと悩みながら朝食を持って席に着こうとしたところで、隅の席にアレクさんが居るのに気づき声をかける。
「アレクさん!」
「サキさん、お疲れ様です」
「あの、お隣座っても良いですか?」
「……ええ、構いません」
了承を得てそそくさと座る。
すれ違って挨拶をすることはあったけれど二人きりというのは初めてだ。少し緊張する。
「先日ご結婚されたそうですね、おめでとうございます」
「あ、そうなんです!ありがとうございます!」
ハインツさん、アレクさんには言ってたんだ!お祝いしてもらえるのはやっぱり嬉しいな。
アレクさんはきっちり背筋を伸ばしてご飯を口に運ぶ。何をするにしても丁寧で落ち着いている人だなと関心してしまう。
「普段あまり食堂ではお見かけしないので、今日は来ていただけて嬉しいです」
「今日は時間がありましたので。まだ数回しか頂けていませんが、貴女方に作ってもらう料理は美味しくて栄養もあってとても助かっています」
美味しいって言ってもらえたよ、ヴェルくん!
先程お仕事で早めに行ってしまった彼に心の中で伝える。
「団員たちからもとても好評のようですね。以前は食事に来る人数もこんなには居なかったですから」
「皆さんいつもいっぱい食べてくれるんです。私が出来ることは少ないので、料理で役に立って喜んでもらえるのは凄く嬉しいです」
「……」
アレクさんは手に持っていたスプーンを机に置く。
「戻ってきた時にはここの様子がすっかり変わっていてだいぶ驚きました」
「そんなに……ですかね?私が来たばかりの頃も皆さんとても仲が良いというか信頼し合っているのが伝わってきて、私にも優しく接して下さって、今も変わらず素敵な場所だと思います」
私をじっと見つめた彼はこちらに向き直り急に頭を下げた。
「え!?あ、アレクさんどうしたんですか」
私変なこと言っちゃったかな……!?
「いえ、すみませんでした。最初団長から貴女の事を聞いて、他国の間者か、金権力目当ての者かと疑ってしまいましたので」
「そんな、疑われて当然なので気にしないでください。突然現れてここに居させて欲しいなんて……」
自分で言っててだいぶ不審者なのに今更気づいた。ハインツさんたちの懐が深すぎる……ありがとうございます……。
「しかし、貴女が攫われたということと黒騎士団全員がそれに対抗したと聞き信用は出来ました」
皆が……私を助け出してくれた。あの時は凄く怖かったけど、それ以上に黒騎士団に居たいって、この場所が大切なんだって心から感じたことが一番記憶に残っている。
本当に、ここに来て黒騎士団の皆と出会えて良かった。
「それに団長が「昨日婚約した」と言うものですから止めようにも遅すぎました」
プロポーズの次の日……!?なんかちょっと気まずくない!?
「あの……はい、悪い者ではありませんので……今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
お互い頭を下げて改まって言うと、顔を上げたアレクさんが少し微笑んだ。
「サキさんがここに来てくれて良かったです」
「っ……ありがとうございます!」
副団長のお墨付きを得ることが出来た。ちゃんと信用して貰えて良かった。
それにしてもアレクさんの笑った顔初めて見たなぁ……。どちらかと言うと、日本人寄りのイケメンって感じなんだよね。クールビューティな人だ。
団員皆イケメンだからもう耐性は付いたよ、初対面で黙って見惚れてしまうことは多分もう無い。
あ、というか本題をすっかり忘れていた。
「アレクさん、ちょっと聞きたいことがありまして……」
「何でしょうか」
「ハインツさんの好きなものって分かりますか?」
「団長の好きなもの、ですか」
アレクさんは手を止めしばらく考える。
「無かったら全然、無理にではないので……」
「いえ、昔何か貰ったと言って喜んでいた気がするのですが……」
指折り数える。
「チョコレート、ケーキ、クッキー、マカロン、タルト……」
全部スイーツじゃん!ハインツさんどれだけ甘いもの好きなの……!?
「た、食べ物以外で何か……」
「そうですね……好きな物というのは彼はあまり無いと思います」
「物は無いですか……」
しゅんとする私に彼は不思議そうに言う。
「団長にプレゼントするのでしょう?貴女から貰うものなら何でも喜ぶのでは無いですか?」
「喜んではくれると思うんですけど……初めてお祝いする誕生日なので気合いが入っちゃってて」
「……誕生日を……祝うのですか?」
「あ、はい!ええと……」
そっか、ここでは当たり前じゃないんだった。
「生まれてきてくれてありがとうっていう意味で、お祝いしたいなと思って」
「そうですか……」
何か引っかかっているような様子だったけれど、またこちらを向く。
「団長へのプレゼントですが、仕事で使う物なら心当たりがあります」
「本当ですか!」
「最近ペンを一本折ってしまったそうです。普段二本使っていますから、新しいのをプレゼントするのはどうしょうか」
仕事で使ってもらえるものなら間違い無いし、凄く良い!
「ありがとうございます!是非そうさせて頂きます!」
「参考になったなら何よりです」
ようやく決まった~!アレクさんに聞いて良かった!
「では私は仕事に戻りますので。ご馳走様でした」
「はい!ありがとうございました!」
ペコペコと頭を下げてアレクさんに感謝しながら見送る。
それにしてもこんなタイミング良くペンが壊れてくれるなんて……いや、折ったって言ってたよね。ペンって折れるものなのかな。
……不思議だなぁ……。
深くは考えず、プレゼントとが決まったことに私はとりあえず安堵していた。
仕事へ向かうアレクはプレゼントについてサキに助言出来て良かったと、そんなことを考えていた。
ハインツがペンを壊したのはサキのせいだとも言えるからだ。
「団長……何ですか、今の音は」
「……ペンを……折ってしまった」
「馬鹿力にも程があるでしょう」
書類仕事も終わり机が片付いた後で助かった。インクまみれになってしまったら一からやり直しだ。
ハインツはインクを拭きながらため息をつく。
「サキが……可愛い……」
「……まさかそれでペンを折ったんですか」
そのまさかなのだかハインツは答えなかった。昨日はサキとの初めてで、今仕事が終わってから思い出してしまったのだから。それをアレクに言えるはずも無かった。
「私の頭を撫でて嬉しそうな顔をするサキもとても可愛かった……」とぽやぽや考えているハインツをアレクは白い目で見る。
毎度サキのことでペンを折られては困る、何とかしなければ。
ということで、今回サキにペンを貰ったら絶対に折ることは無いだろう。是非それを長く使って欲しいものだ。
それとは別だがアレクはもう一つ気になることがあった。
「誕生日……」
まさかサキから「同じ事」を聞くとは思わなかった。アレクはそれを詮索しても良いのか迷う。
彼女は夫たちと普通に暮らしている訳で、部外者が余計な口を出すものではないと思ったから。
世の中には色々な人がいるのだから「同じ事」をする人も居るのだろう。
「……考えても仕方がありませんね」
サキが真に良い人だと先程確認出来たアレクは彼女たちなら問題無いだろうと、そう思うことにした。
昨日その話を聞いてから直近の最重要課題となったのだった。
誕生日って言ったらまずはプレゼントだよね。ハインツさんへのプレゼント……前はチョコレートあげたから食べ物以外がいいな。
私のお菓子褒めてくれたし……。
ニヤニヤしながら思い出してしまって一向に決まらない。
どうしたものかと悩みながら朝食を持って席に着こうとしたところで、隅の席にアレクさんが居るのに気づき声をかける。
「アレクさん!」
「サキさん、お疲れ様です」
「あの、お隣座っても良いですか?」
「……ええ、構いません」
了承を得てそそくさと座る。
すれ違って挨拶をすることはあったけれど二人きりというのは初めてだ。少し緊張する。
「先日ご結婚されたそうですね、おめでとうございます」
「あ、そうなんです!ありがとうございます!」
ハインツさん、アレクさんには言ってたんだ!お祝いしてもらえるのはやっぱり嬉しいな。
アレクさんはきっちり背筋を伸ばしてご飯を口に運ぶ。何をするにしても丁寧で落ち着いている人だなと関心してしまう。
「普段あまり食堂ではお見かけしないので、今日は来ていただけて嬉しいです」
「今日は時間がありましたので。まだ数回しか頂けていませんが、貴女方に作ってもらう料理は美味しくて栄養もあってとても助かっています」
美味しいって言ってもらえたよ、ヴェルくん!
先程お仕事で早めに行ってしまった彼に心の中で伝える。
「団員たちからもとても好評のようですね。以前は食事に来る人数もこんなには居なかったですから」
「皆さんいつもいっぱい食べてくれるんです。私が出来ることは少ないので、料理で役に立って喜んでもらえるのは凄く嬉しいです」
「……」
アレクさんは手に持っていたスプーンを机に置く。
「戻ってきた時にはここの様子がすっかり変わっていてだいぶ驚きました」
「そんなに……ですかね?私が来たばかりの頃も皆さんとても仲が良いというか信頼し合っているのが伝わってきて、私にも優しく接して下さって、今も変わらず素敵な場所だと思います」
私をじっと見つめた彼はこちらに向き直り急に頭を下げた。
「え!?あ、アレクさんどうしたんですか」
私変なこと言っちゃったかな……!?
「いえ、すみませんでした。最初団長から貴女の事を聞いて、他国の間者か、金権力目当ての者かと疑ってしまいましたので」
「そんな、疑われて当然なので気にしないでください。突然現れてここに居させて欲しいなんて……」
自分で言っててだいぶ不審者なのに今更気づいた。ハインツさんたちの懐が深すぎる……ありがとうございます……。
「しかし、貴女が攫われたということと黒騎士団全員がそれに対抗したと聞き信用は出来ました」
皆が……私を助け出してくれた。あの時は凄く怖かったけど、それ以上に黒騎士団に居たいって、この場所が大切なんだって心から感じたことが一番記憶に残っている。
本当に、ここに来て黒騎士団の皆と出会えて良かった。
「それに団長が「昨日婚約した」と言うものですから止めようにも遅すぎました」
プロポーズの次の日……!?なんかちょっと気まずくない!?
「あの……はい、悪い者ではありませんので……今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
お互い頭を下げて改まって言うと、顔を上げたアレクさんが少し微笑んだ。
「サキさんがここに来てくれて良かったです」
「っ……ありがとうございます!」
副団長のお墨付きを得ることが出来た。ちゃんと信用して貰えて良かった。
それにしてもアレクさんの笑った顔初めて見たなぁ……。どちらかと言うと、日本人寄りのイケメンって感じなんだよね。クールビューティな人だ。
団員皆イケメンだからもう耐性は付いたよ、初対面で黙って見惚れてしまうことは多分もう無い。
あ、というか本題をすっかり忘れていた。
「アレクさん、ちょっと聞きたいことがありまして……」
「何でしょうか」
「ハインツさんの好きなものって分かりますか?」
「団長の好きなもの、ですか」
アレクさんは手を止めしばらく考える。
「無かったら全然、無理にではないので……」
「いえ、昔何か貰ったと言って喜んでいた気がするのですが……」
指折り数える。
「チョコレート、ケーキ、クッキー、マカロン、タルト……」
全部スイーツじゃん!ハインツさんどれだけ甘いもの好きなの……!?
「た、食べ物以外で何か……」
「そうですね……好きな物というのは彼はあまり無いと思います」
「物は無いですか……」
しゅんとする私に彼は不思議そうに言う。
「団長にプレゼントするのでしょう?貴女から貰うものなら何でも喜ぶのでは無いですか?」
「喜んではくれると思うんですけど……初めてお祝いする誕生日なので気合いが入っちゃってて」
「……誕生日を……祝うのですか?」
「あ、はい!ええと……」
そっか、ここでは当たり前じゃないんだった。
「生まれてきてくれてありがとうっていう意味で、お祝いしたいなと思って」
「そうですか……」
何か引っかかっているような様子だったけれど、またこちらを向く。
「団長へのプレゼントですが、仕事で使う物なら心当たりがあります」
「本当ですか!」
「最近ペンを一本折ってしまったそうです。普段二本使っていますから、新しいのをプレゼントするのはどうしょうか」
仕事で使ってもらえるものなら間違い無いし、凄く良い!
「ありがとうございます!是非そうさせて頂きます!」
「参考になったなら何よりです」
ようやく決まった~!アレクさんに聞いて良かった!
「では私は仕事に戻りますので。ご馳走様でした」
「はい!ありがとうございました!」
ペコペコと頭を下げてアレクさんに感謝しながら見送る。
それにしてもこんなタイミング良くペンが壊れてくれるなんて……いや、折ったって言ってたよね。ペンって折れるものなのかな。
……不思議だなぁ……。
深くは考えず、プレゼントとが決まったことに私はとりあえず安堵していた。
仕事へ向かうアレクはプレゼントについてサキに助言出来て良かったと、そんなことを考えていた。
ハインツがペンを壊したのはサキのせいだとも言えるからだ。
「団長……何ですか、今の音は」
「……ペンを……折ってしまった」
「馬鹿力にも程があるでしょう」
書類仕事も終わり机が片付いた後で助かった。インクまみれになってしまったら一からやり直しだ。
ハインツはインクを拭きながらため息をつく。
「サキが……可愛い……」
「……まさかそれでペンを折ったんですか」
そのまさかなのだかハインツは答えなかった。昨日はサキとの初めてで、今仕事が終わってから思い出してしまったのだから。それをアレクに言えるはずも無かった。
「私の頭を撫でて嬉しそうな顔をするサキもとても可愛かった……」とぽやぽや考えているハインツをアレクは白い目で見る。
毎度サキのことでペンを折られては困る、何とかしなければ。
ということで、今回サキにペンを貰ったら絶対に折ることは無いだろう。是非それを長く使って欲しいものだ。
それとは別だがアレクはもう一つ気になることがあった。
「誕生日……」
まさかサキから「同じ事」を聞くとは思わなかった。アレクはそれを詮索しても良いのか迷う。
彼女は夫たちと普通に暮らしている訳で、部外者が余計な口を出すものではないと思ったから。
世の中には色々な人がいるのだから「同じ事」をする人も居るのだろう。
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