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帰りを待つ人
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黒騎士団が戦地へ向かった日からまた抗戦は激しくなっているそうで、寮内も廊下を走り回る足音が常に聞こえていた。
私はというと、いつも通りの掃除とハインツさんの書類整理のお手伝いをして時間を埋めていた。
ただ色で分けて纏めてそれぞれの所に持っていく、そんな簡単な仕事。何もしないと気に病むだろうとハインツさんが与えてくれたのだ。
もう二週間彼らに会えていない。まだ二週間……なのだけれど。
「今日はもう遅いから先に終わってくれ。机もそのままで良いから」
「あ……はい。机だけ片付けさせてください」
ひたすらに仕事をして考える時間を減らしたかった。夜部屋に戻ってもなかなか寝付けないから。寝れてはいるけれど……無理やりという感じで、目覚めも悪い。
ゴミを捨てて道具もしまって……。
どうしても手がゆっくり動いてしまう。
「サキ、おいで」
ハインツさんに呼ばれ躊躇いながらも彼の元へ行くと、ぎゅっと抱きしめられた。
「大丈夫」
「っ……」
「サキが倒れてしまったら皆も心配するから、ちゃんと休みなさい」
私が眠れていないのは彼にはお見通しだった。特に役にも立っていないくせに無駄に気遣わせてしまった。
「ごめんなさい……」
「何も謝ることは無いよ。ここに残っている者は皆が帰ってくる居場所を守っている。サキもその一人だ」
優しく頭を撫でてくれるハインツさんの手が温かくて、思わず涙が出てしまった。
「戦争なんて起こらないのが一番良いに決まっているが、どうしても問題は無くなりはしない。その中で私たちが剣を振るうのは一刻も早く戦争を終わらせる為だ。犠牲を最小限にしその後の平和を守る為に黒騎士団は存在する」
泣きながらコクコクと頷く。
彼らは容姿で辛い経験をしたこともあると思う。周囲の人たちは黒騎士団を良い目で見ていないのかもしれない。それでも彼らはこの仕事に誇りを持って、そういう人も含めた皆を守っている。
毎日鍛錬に励み強さを求め続ける意味がある。今がその時なのだ。
「ハインツさん……ありがとうございます」
「ああ。あいつらもサキに会いたくてさっさと終わらせて帰ってくるだろう」
「うん……私も、会いたい……」
安心感と今までの睡魔がやっと来て、私はハインツさんの腕の中で眠ってしまった。
泣き腫らした目ですやすやと眠るサキを抱え、彼女の部屋まで運ぶ。
ずっと傍に居てあげたいのだけれど、こういう時には私もどうしようも無い。これからも幾度か争いというものは起きてしまって、その度に彼女に心配をかけてしまう。
申し訳なく思うが……嬉しいな。
こんなに自分たちを想って帰りを待ってくれる存在が居るのだから。
戦地に行った四人も考えているのはほとんどサキのことだろう。「早く帰りたい」しか思って無さそうだ、特にリュークは。
私はサキに会えているのだから、より一層頑張らなければいけないな。
ベッドに寝かし離れようとしたら彼女の手が私の服を掴んだ。
「っ……」
可愛くて、離れがたくて仕方がない。
正直一瞬悩んだがそっと手を外した。
「おやすみ、サキ」
……あいつらに自慢して発破をかけてやるか。
サキの寂しさは私だけで埋められるものでは無い。全員揃ってこそ、一人でも欠けたら駄目なのだ。
その為にも私は遠方から全力で彼らを守る。それが今、私が団長としてここに居る意味なのだから。
私はというと、いつも通りの掃除とハインツさんの書類整理のお手伝いをして時間を埋めていた。
ただ色で分けて纏めてそれぞれの所に持っていく、そんな簡単な仕事。何もしないと気に病むだろうとハインツさんが与えてくれたのだ。
もう二週間彼らに会えていない。まだ二週間……なのだけれど。
「今日はもう遅いから先に終わってくれ。机もそのままで良いから」
「あ……はい。机だけ片付けさせてください」
ひたすらに仕事をして考える時間を減らしたかった。夜部屋に戻ってもなかなか寝付けないから。寝れてはいるけれど……無理やりという感じで、目覚めも悪い。
ゴミを捨てて道具もしまって……。
どうしても手がゆっくり動いてしまう。
「サキ、おいで」
ハインツさんに呼ばれ躊躇いながらも彼の元へ行くと、ぎゅっと抱きしめられた。
「大丈夫」
「っ……」
「サキが倒れてしまったら皆も心配するから、ちゃんと休みなさい」
私が眠れていないのは彼にはお見通しだった。特に役にも立っていないくせに無駄に気遣わせてしまった。
「ごめんなさい……」
「何も謝ることは無いよ。ここに残っている者は皆が帰ってくる居場所を守っている。サキもその一人だ」
優しく頭を撫でてくれるハインツさんの手が温かくて、思わず涙が出てしまった。
「戦争なんて起こらないのが一番良いに決まっているが、どうしても問題は無くなりはしない。その中で私たちが剣を振るうのは一刻も早く戦争を終わらせる為だ。犠牲を最小限にしその後の平和を守る為に黒騎士団は存在する」
泣きながらコクコクと頷く。
彼らは容姿で辛い経験をしたこともあると思う。周囲の人たちは黒騎士団を良い目で見ていないのかもしれない。それでも彼らはこの仕事に誇りを持って、そういう人も含めた皆を守っている。
毎日鍛錬に励み強さを求め続ける意味がある。今がその時なのだ。
「ハインツさん……ありがとうございます」
「ああ。あいつらもサキに会いたくてさっさと終わらせて帰ってくるだろう」
「うん……私も、会いたい……」
安心感と今までの睡魔がやっと来て、私はハインツさんの腕の中で眠ってしまった。
泣き腫らした目ですやすやと眠るサキを抱え、彼女の部屋まで運ぶ。
ずっと傍に居てあげたいのだけれど、こういう時には私もどうしようも無い。これからも幾度か争いというものは起きてしまって、その度に彼女に心配をかけてしまう。
申し訳なく思うが……嬉しいな。
こんなに自分たちを想って帰りを待ってくれる存在が居るのだから。
戦地に行った四人も考えているのはほとんどサキのことだろう。「早く帰りたい」しか思って無さそうだ、特にリュークは。
私はサキに会えているのだから、より一層頑張らなければいけないな。
ベッドに寝かし離れようとしたら彼女の手が私の服を掴んだ。
「っ……」
可愛くて、離れがたくて仕方がない。
正直一瞬悩んだがそっと手を外した。
「おやすみ、サキ」
……あいつらに自慢して発破をかけてやるか。
サキの寂しさは私だけで埋められるものでは無い。全員揃ってこそ、一人でも欠けたら駄目なのだ。
その為にも私は遠方から全力で彼らを守る。それが今、私が団長としてここに居る意味なのだから。
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