55 / 184
お菓子作り
しおりを挟む
この日はお休みを貰えたヴェルストリアくんとお菓子を作るためキッチンに立っていた。
「今日はシフォンケーキを作ろうと思うんだけど」
「この前言っていたものですよね」
ラグトさんふわふわが好きって言っていたからきっとシフォンケーキも好きだと思う。
「ヴェルストリアくんと一緒に作ったのを渡したらラグトさんも喜んでくれるかな!」
「……そう、ですね。きっと喜んでくれますよ」
若干躊躇いがあったが笑顔で頷いてくれたので、早速作ることになった。
「卵白だけ泡立てるからこれを使うよ」
とっても便利なハンドミキサーを取り出す。
「前まではそこまで料理していなかったので、こんな機械があるとは知りませんでした」
「ここに来て色々棚の中確認してる時に見つけたの!」
コンセントではなく電池のようなもので動いているみたいだけど……仕組みは分からない。
「ここの押すと羽が回転するから、こうやって……」
「凄いですね……!」
やってみせるとヴェルストリアくんはキラキラした目で眺めている。
ぷるんとしていた卵白が少し白くとろっとしてきたところで手を止める。
「やってみる?」
「はい!」
やり方を説明して、ヴェルストリアくんが羽の部分を少し浸けてスイッチを入れてみると……。
「わっ」
ハンドミキサーの勢いでメレンゲはエプロンとヴェルストリアくんの顔に飛び散った。
「「……」」
突然のことにぽかんと呆気を取られているヴェルストリアくんに思わず笑ってしまった。
「ふふ……」
「すみません……」
「ううん、難しいよね」
手を伸ばし布巾で彼の顔を拭く。
「目に入ってない?」
「大丈夫です」
布巾を退けると少し赤くなって恥ずかしそうにするヴェルストリアくんの顔が見える。
なんだか会ったばかりの頃を思い出した。
最近はあまり失敗しているところを見ないけれど、裏で努力して見せないようにしているのだと思う。料理のノートもそうだけど。
何回かゆっくり練習して、ヴェルストリアくんも上手に泡立てられるようになった。
「どうですか?」
「うん、バッチリ!」
そう褒めると嬉しそうにする彼の頭をつい撫でてしまう。
「いつも頑張ってくれてありがとう」
「!」
「いっぱい失敗しても良いからね?」
「……貴女の前ではカッコつけていたいんです」
照れながらそう言う彼が愛おし過ぎて、料理中なのに抱きついてしまった。
「可愛い!」
「っ……可愛いのはサキさんです」
「ヴェルストリアくんのほうが可愛いよ……べっぴんさんだもん」
「べっぴん……?」
そんなことを言って引っ付いているといつまでも進まないのでお菓子作りに戻る。
メレンゲを作って混ぜて、型に流し入れて焼く。
そうこうして、シフォンケーキは失敗することなくふわふわに出来上がった。
味見と称して一切れずつ食べてみる。
「ふわふわ美味しい~!」
「本当に美味しいです!こんなお菓子もあるんですね……」
興味深そうにシフォンケーキを味わうヴェルストリアくんにそそっと近づく。
「お菓子のノートも作ってくれる?」
「それって……」
「また一緒に作ろうね」
「はい!」
今日は可愛いヴェルストリアくんをいっぱい見れて嬉しいな。
ニコニコとご満悦だった私は、そっと頭を引き寄せられた。ヴェルストリアくんはキスをし唇を舐める。
「甘いですね」
「!」
可愛い彼も余裕な笑みを浮かべるカッコいい彼も大好きな私は、ひたすらにキュンキュンするばかりだった。
完成したケーキを渡そうとヴェルストリアくんと歩いていると、ミスカさんとリュークとラグトさんがちょうど集まっていたので声をかける。
「ヴェルストリアくんと作ったんです!」
「良かったらどうぞ」
綺麗にラッピングしたものを三人に渡す。
「そうか、ありがとう」
「ヴェルストリアめっちゃ笑顔じゃん」
「絶対自慢してる……」
皆「後でゆっくり食べるね」と大事そうに持って帰ってくれた。
執務室にお邪魔してハインツさんにも無事渡すことが出来た。
「ありがとう。今度は二人で人参のケーキも作ってくれるかな?」
「はい!」
「楽しみにしてるよ」
一人で作るのも楽しいけど、二人だともっと楽しい。
「喜んでくれて良かったね!」
「ええ、とても良かったです」
ヴェルストリアくんも満足そうでなによりだ。別の意味にも聞こえるけど。
その後も彼はお掃除を手伝ってくれたりして一日一緒に楽しく過ごしたのだった。
「今日はシフォンケーキを作ろうと思うんだけど」
「この前言っていたものですよね」
ラグトさんふわふわが好きって言っていたからきっとシフォンケーキも好きだと思う。
「ヴェルストリアくんと一緒に作ったのを渡したらラグトさんも喜んでくれるかな!」
「……そう、ですね。きっと喜んでくれますよ」
若干躊躇いがあったが笑顔で頷いてくれたので、早速作ることになった。
「卵白だけ泡立てるからこれを使うよ」
とっても便利なハンドミキサーを取り出す。
「前まではそこまで料理していなかったので、こんな機械があるとは知りませんでした」
「ここに来て色々棚の中確認してる時に見つけたの!」
コンセントではなく電池のようなもので動いているみたいだけど……仕組みは分からない。
「ここの押すと羽が回転するから、こうやって……」
「凄いですね……!」
やってみせるとヴェルストリアくんはキラキラした目で眺めている。
ぷるんとしていた卵白が少し白くとろっとしてきたところで手を止める。
「やってみる?」
「はい!」
やり方を説明して、ヴェルストリアくんが羽の部分を少し浸けてスイッチを入れてみると……。
「わっ」
ハンドミキサーの勢いでメレンゲはエプロンとヴェルストリアくんの顔に飛び散った。
「「……」」
突然のことにぽかんと呆気を取られているヴェルストリアくんに思わず笑ってしまった。
「ふふ……」
「すみません……」
「ううん、難しいよね」
手を伸ばし布巾で彼の顔を拭く。
「目に入ってない?」
「大丈夫です」
布巾を退けると少し赤くなって恥ずかしそうにするヴェルストリアくんの顔が見える。
なんだか会ったばかりの頃を思い出した。
最近はあまり失敗しているところを見ないけれど、裏で努力して見せないようにしているのだと思う。料理のノートもそうだけど。
何回かゆっくり練習して、ヴェルストリアくんも上手に泡立てられるようになった。
「どうですか?」
「うん、バッチリ!」
そう褒めると嬉しそうにする彼の頭をつい撫でてしまう。
「いつも頑張ってくれてありがとう」
「!」
「いっぱい失敗しても良いからね?」
「……貴女の前ではカッコつけていたいんです」
照れながらそう言う彼が愛おし過ぎて、料理中なのに抱きついてしまった。
「可愛い!」
「っ……可愛いのはサキさんです」
「ヴェルストリアくんのほうが可愛いよ……べっぴんさんだもん」
「べっぴん……?」
そんなことを言って引っ付いているといつまでも進まないのでお菓子作りに戻る。
メレンゲを作って混ぜて、型に流し入れて焼く。
そうこうして、シフォンケーキは失敗することなくふわふわに出来上がった。
味見と称して一切れずつ食べてみる。
「ふわふわ美味しい~!」
「本当に美味しいです!こんなお菓子もあるんですね……」
興味深そうにシフォンケーキを味わうヴェルストリアくんにそそっと近づく。
「お菓子のノートも作ってくれる?」
「それって……」
「また一緒に作ろうね」
「はい!」
今日は可愛いヴェルストリアくんをいっぱい見れて嬉しいな。
ニコニコとご満悦だった私は、そっと頭を引き寄せられた。ヴェルストリアくんはキスをし唇を舐める。
「甘いですね」
「!」
可愛い彼も余裕な笑みを浮かべるカッコいい彼も大好きな私は、ひたすらにキュンキュンするばかりだった。
完成したケーキを渡そうとヴェルストリアくんと歩いていると、ミスカさんとリュークとラグトさんがちょうど集まっていたので声をかける。
「ヴェルストリアくんと作ったんです!」
「良かったらどうぞ」
綺麗にラッピングしたものを三人に渡す。
「そうか、ありがとう」
「ヴェルストリアめっちゃ笑顔じゃん」
「絶対自慢してる……」
皆「後でゆっくり食べるね」と大事そうに持って帰ってくれた。
執務室にお邪魔してハインツさんにも無事渡すことが出来た。
「ありがとう。今度は二人で人参のケーキも作ってくれるかな?」
「はい!」
「楽しみにしてるよ」
一人で作るのも楽しいけど、二人だともっと楽しい。
「喜んでくれて良かったね!」
「ええ、とても良かったです」
ヴェルストリアくんも満足そうでなによりだ。別の意味にも聞こえるけど。
その後も彼はお掃除を手伝ってくれたりして一日一緒に楽しく過ごしたのだった。
216
お気に入りに追加
1,120
あなたにおすすめの小説
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です
花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。
けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。
そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。
醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。
多分短い話になると思われます。
サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。

4度目の転生、メイドになった貧乏子爵令嬢は『今度こそ恋をする!』と決意したのに次期公爵様の溺愛に気づけない?!
六花心碧
恋愛
恋に落ちたらEND。
そんな人生を3回も繰り返してきたアリシア。
『今度こそ私、恋をします!』
そう心に決めて新たな人生をスタートしたものの、(アリシアが勝手に)恋をするお相手の次期公爵様は極度な女嫌いだった。
恋するときめきを味わいたい。
果たしてアリシアの平凡な願いは叶うのか……?!
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人
花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。
そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。
森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。
孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。
初投稿です。よろしくお願いします。

異世界転生〜色いろあって世界最強!?〜
野の木
恋愛
気付いたら、見知らぬ場所に。
生まれ変わった?ここって異世界!?
しかも家族全員美男美女…なのになんで私だけ黒髪黒眼平凡顔の前世の姿のままなの!?
えっ、絶世の美女?黒は美人の証?
いやいや、この世界の人って目悪いの?
前世の記憶を持ったまま異世界転生した主人公。
しかもそこは、色により全てが決まる世界だった!?

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜
朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。
(この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??)
これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。
所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。
暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。
※休載中
(4月5日前後から投稿再開予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる