美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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お菓子作り

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 この日はお休みを貰えたヴェルストリアくんとお菓子を作るためキッチンに立っていた。

「今日はシフォンケーキを作ろうと思うんだけど」
「この前言っていたものですよね」

 ラグトさんふわふわが好きって言っていたからきっとシフォンケーキも好きだと思う。

「ヴェルストリアくんと一緒に作ったのを渡したらラグトさんも喜んでくれるかな!」
「……そう、ですね。きっと喜んでくれますよ」

 若干躊躇いがあったが笑顔で頷いてくれたので、早速作ることになった。

「卵白だけ泡立てるからこれを使うよ」

 とっても便利なハンドミキサーを取り出す。

「前まではそこまで料理していなかったので、こんな機械があるとは知りませんでした」
「ここに来て色々棚の中確認してる時に見つけたの!」

 コンセントではなく電池のようなもので動いているみたいだけど……仕組みは分からない。

「ここの押すと羽が回転するから、こうやって……」
「凄いですね……!」

 やってみせるとヴェルストリアくんはキラキラした目で眺めている。
 ぷるんとしていた卵白が少し白くとろっとしてきたところで手を止める。

「やってみる?」
「はい!」

 やり方を説明して、ヴェルストリアくんが羽の部分を少し浸けてスイッチを入れてみると……。

「わっ」

 ハンドミキサーの勢いでメレンゲはエプロンとヴェルストリアくんの顔に飛び散った。

「「……」」

 突然のことにぽかんと呆気を取られているヴェルストリアくんに思わず笑ってしまった。

「ふふ……」
「すみません……」
「ううん、難しいよね」

 手を伸ばし布巾で彼の顔を拭く。

「目に入ってない?」
「大丈夫です」

 布巾を退けると少し赤くなって恥ずかしそうにするヴェルストリアくんの顔が見える。
 なんだか会ったばかりの頃を思い出した。
 最近はあまり失敗しているところを見ないけれど、裏で努力して見せないようにしているのだと思う。料理のノートもそうだけど。
 何回かゆっくり練習して、ヴェルストリアくんも上手に泡立てられるようになった。

「どうですか?」
「うん、バッチリ!」

 そう褒めると嬉しそうにする彼の頭をつい撫でてしまう。

「いつも頑張ってくれてありがとう」
「!」
「いっぱい失敗しても良いからね?」
「……貴女の前ではカッコつけていたいんです」

 照れながらそう言う彼が愛おし過ぎて、料理中なのに抱きついてしまった。

「可愛い!」
「っ……可愛いのはサキさんです」
「ヴェルストリアくんのほうが可愛いよ……べっぴんさんだもん」
「べっぴん……?」

 そんなことを言って引っ付いているといつまでも進まないのでお菓子作りに戻る。
 メレンゲを作って混ぜて、型に流し入れて焼く。
 そうこうして、シフォンケーキは失敗することなくふわふわに出来上がった。
 味見と称して一切れずつ食べてみる。

「ふわふわ美味しい~!」
「本当に美味しいです!こんなお菓子もあるんですね……」

 興味深そうにシフォンケーキを味わうヴェルストリアくんにそそっと近づく。

「お菓子のノートも作ってくれる?」
「それって……」
「また一緒に作ろうね」
「はい!」

 今日は可愛いヴェルストリアくんをいっぱい見れて嬉しいな。
 ニコニコとご満悦だった私は、そっと頭を引き寄せられた。ヴェルストリアくんはキスをし唇を舐める。

「甘いですね」
「!」

 可愛い彼も余裕な笑みを浮かべるカッコいい彼も大好きな私は、ひたすらにキュンキュンするばかりだった。

 完成したケーキを渡そうとヴェルストリアくんと歩いていると、ミスカさんとリュークとラグトさんがちょうど集まっていたので声をかける。

「ヴェルストリアくんと作ったんです!」
「良かったらどうぞ」

 綺麗にラッピングしたものを三人に渡す。

「そうか、ありがとう」
「ヴェルストリアめっちゃ笑顔じゃん」
「絶対自慢してる……」

 皆「後でゆっくり食べるね」と大事そうに持って帰ってくれた。
 執務室にお邪魔してハインツさんにも無事渡すことが出来た。

「ありがとう。今度は二人で人参のケーキも作ってくれるかな?」
「はい!」
「楽しみにしてるよ」

 一人で作るのも楽しいけど、二人だともっと楽しい。

「喜んでくれて良かったね!」
「ええ、とても良かったです」

 ヴェルストリアくんも満足そうでなによりだ。別の意味にも聞こえるけど。
 その後も彼はお掃除を手伝ってくれたりして一日一緒に楽しく過ごしたのだった。
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