美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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夢事情

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 真っ暗な馬車の中で縛られて……揺られて……。
 馬の蹴る音と振動を感じる。
 でも、なんか違う……?急に明るくなって、ここは……草原?
 私、馬に乗ってる。後ろには大きな温かい存在。ミスカさ……

「ん……あさ……?」

 目が覚めたらいつものベッドの上。
 起き上がって顔を洗いながら考えるが、どんな夢だったか思い出せない。でもミスカさんが居たことは覚えている。
 ミスカさんが出てきたってことはいい夢だったんだよね。
 昨夜は皆忙しいから大丈夫、と言って久しぶりに一人で床についた。いい夢も見れたことだし、もう皆を心配させることも無い。
 良かった良かったと頷いたのだが、昨夜もう一つ問題が出来てしまったことを思い出し頭を抱える。

 今日は一人だから……ちょっと気になっていたし、やってみよう!
 部屋を見回り、ドアに聞き耳を立てて誰も居ないことを確認する。
 ベッドの上でそろっとショーツを脱ぐ。
 そう、中にちゃんと……アレを入れることが出来るのか不安だったのだ。
 もし上手くいかなかったらガッカリさせてしまうだろう。それはなんとしても避けなければ。
 恐る恐る脚の間に手を伸ばし触れてみる。
 え、膣どこ?あ、ここか。ちょっとドキドキし過ぎておかしくなっちゃった……。
 とりあえず指を一本入れてみると、結構痛かった。ザラザラと引っかかる感じがする。
 乾燥してるからか!何か……ボディクリームにしよう。これは大丈夫って友達が言ってた。あの時はなんのこっちゃと思っていたけど。
 いっぱい手に取って塗りながらもう一度指を入れる。まだ先程よりは痛みは無い。
 うん……変な感覚……異物が入ってますって感じ。
 しかし指一本というのは流石に狭すぎる。もう少し広げなくてはともう一本突っ込んでみると……。

「いっっ」

 たい……痛い……!こんなに痛いの!?
 入口が硬くてこれ以上入れることが出来ない。
 何度か試してみたけれど痛いばかりで、ボディクリームもすぐ乾いてしまって。
 もう何をしたら良いのか分からなくてシャワーを浴びて寝ることにした。


 というのが今悩んでいる事の顛末である。
 こういう時スマホが使えたら良いのに!
 何かの間違いで作動しないかと引き出しの奥にしまっていたスマホを触ったがピクリともしなかった。
 もっと勉強しておくべきだった……!
 こんなことで悩んでいるなんて皆には知られちゃいけない。何とかバレないように……。

「サキさん、何かありました?」
「へ!?」

 こんな朝一番に指摘されるなんて、私はそんなに分かりやすいのか。

「……今日夢にミスカさんが出てきて、どんな夢だった全然思い出せないからモヤモヤしちゃって」
「そうですか……」

 あ、納得してくれた。まぁ事実なので許して欲しい。

「僕の夢も見て欲しいです」
「私、夢は操れないかな……」
「じゃあ絶対夢に出れるくらい記憶に残ることをすれば良いんですね」

 笑って冗談ぽく言っているけど目が本気な気がする。私も笑ってなんとなく誤魔化しその場を乗り切った。
 今日からはまた一緒に寝てくれるから試す機会も無いし……私一人じゃどうしようも無いと思う。
 考えてどうにもならないから本番で頑張るしかない、と結論付けてこれ以上悩むのを放棄した。

 あ、あそこに居るのって……。
 外の掃除でもしようかと西館を出たところで木の向こう側にミスカさんが見えた。
 夢を見たせいで現実の彼に会えて嬉しくなってしまった。 

「ミスカさ……」

 駆け寄ろうとして彼が隊員たちと話しているのに気づき、バッと口を塞ぎUターンする。
 お仕事中に話しかけちゃうところだった、危なかった……。
 邪魔しないようにひっそり建物の中に戻る。
 ちょっと寂しくなっちゃったけどミスカさん見れたから満足かな。
 筋肉質な体だけど背筋が真っ直ぐ伸びてスラッとしているのがとてもカッコよくていつも見惚れてしまう。
 その姿を思い出し心を慰めていると、急に扉が勢いよく開けられた。

「サキ」
「え!ミスカさん……」
「どうした、何かあったのか」

 背の高い彼は屈んで私の肩に手を乗せて心配そうに見つめる。

「さっき俺のほうに来ようとしてすぐに戻ってしまったから」
「気付いてたんですか…」
「……逆に気付いていないと思っていたのか」

 ……やっぱり私、分かりやすいのかな。

「俺がサキの姿を見逃すわけないだろう」
「!……あの、お仕事中だったのにうっかり話しかけそうになっちゃって」
「そうか」
「邪魔してごめんなさい」

 ぺこりと頭を下げ謝ると、ミスカさんはその頭に手を置く。

「サキの性格もあるから、仕事中に気にせず話しかけろとは言わない。何か不安なことがあったらその時は躊躇わずに来てくれ」
「はい」
「今休憩に入ったところだ。一緒に居てくれるか?」
「……!ミスカさん!」

 思わず飛びつくと彼は余裕で私を受け止め、そのまま持ち上げ抱っこする。今は誰も居ない食堂へ行き私を膝に乗せて椅子に座った。

「今日ミスカさんの夢を見たんです」
「!」
「だから凄く会いたくなっちゃって」

 彼の首に手を回しギュッと抱きしめる。
 大きい体……いつもの安心感。
 見れただけで満足なんて私には無理だった。むしろこんなに触れていても足りないくらい。

「俺もサキの夢なら見た事ある」
「ほんとですか!」
「覚えているものでも十回は」
「そんなに!?」

 真顔でそう言うミスカさんになんだか少し申し訳なく思ってしまうが、そもそも夢を覚えて居られるのが凄いとも思う。
 私はいつも夢見ていたことは覚えていても何かは全然思い出せないから……。

「嬉しいです……どんな夢でしたか?」
「言ってもいいのか?」
「……怖いものでなければ」

 ミスカさんは私を抱きしめていた片方の手を下ろし、腰から太腿にかけてなぞるように撫でた。

「サキとセックスしている夢だ」
「ふぇ!?」

 あまりに直接的な表現に驚いて仰け反ってしまい、彼の手に背中を支えられる。

「せ、せ……」

 顔を真っ赤にして声が出せない私の上体をグッと自分の方へ引き寄せ口元にキスをした。

「大丈夫だ。夢と現実が違うことくらい分かっている。ちゃんと優しくする」
「は、はぃ……」

 夢の中ではどんなことになっていたのだろうか。知りたいような知りたくないような……。
 興味心が湧いて少し想像してしまったが、途中でミスカさんの唇に意識を持っていかれた。

「んっ……」
「夢じゃなくて、今の俺を見てくれ」
「うん……んん、ぁ……」

 夢じゃ得られない感触と喜び。
 顔が離れて私を見つめる水色の瞳に気づき胸がキュンとする。

「今夜は俺が部屋に行ってもいいか?」
「はい……!待ってます」

 私を下ろしもう一度キスをくれたミスカさんは休憩を終え仕事に戻って行った。
 だいぶ衝撃的な事を言われたなぁ……。
 えっちって言うとラブラブしているイメージなのに、せ…っくす……って言うと急に生々しく感じる……。
 でも、十回見た夢全部がそんな……わけは無いよね。一緒に馬に乗ったこととか思い出してくれたのかな!楽しかったな~!

 呑気なことを考える私は、まさかほとんどがそんなわけなのを知る由もなかった。
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