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カッコいい対決 1
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今日はハインツさんが迎えに来てくれて、お仕事もあるので一緒に執務室で過ごすことになった。
「仕事優先になってしまってすまないね。私もどうしてもサキと過ごしたくて」
お仕事中でも私を傍に置いてくれることが嬉しくて胸がキュンとする。
「だいぶ暇になってしまうけれど……途中で変わろうか?」
「いいえ、今日はハインツさんと居たいです」
「そうか……!ありがとう。仕事が一段落したら外へ行こうか」
「はい!」
今までみたいに夜じゃない、昼間にこうして執務室でハインツさんとお喋りしたりして過ごせるのはまた違って凄く楽しい。会話していない時間も穏やかな空気が流れ、眼鏡姿のハインツさんを眺めて幸せだった。
真剣に書類と向き合っていたハインツさんが一息ついて、ふと私と目が合う。
優しく笑いかけてくれたので立ち上がり彼の座る作業台の方へ近づく。
腰を引き寄せられ私もその膝の上に座ると後ろから頬にキスをくれた。
「お仕事進みましたか?」
「ああ、だいぶ終わった。あと少しだからこのまま居てくれないか」
「ふふ、良いんですか?」
「最後のやる気が足りなくてね」
私を膝に乗せて抱きしめながら、さらさらと片手でペンを走らせ印を押していく。
その文字はやっぱり見慣れないもので。
「……ハインツさん、この文字なんですけど……」
「ん?どうかしたか」
「私の居た世界とは全然違うものなんです。全く読めなくて」
「そう、なのか……?しかし言葉は通じているが」
「それが不思議で……」
ハインツさんも驚いた様子で考え込む。
「急に変なこと言ってしまってすみません!文字が読めないと皆に頼りっきりになっちゃうから伝えたほうがいいかなと」
「文字が読めなくても問題ない。女性は書類仕事などをすることも無いから難しい文字は覚えていない人も多い」
「大丈夫」と言って頭を撫でる彼に一応話だけでも出来たので安心する。
文字が読めなくてもなんとかなるよね。もう帰らないって決めたし、私がどうしてこの世界に来たかなんて気にしなくていいよ。
その現象が善意でも悪意でも、彼らに出会えたのだから感謝しかない。
モヤモヤを抱えながらもそう割り切ることにして、仕事をひとまず終えた彼と気分転換に外に出ることになった。
ゆったりと散歩をしながら話を弾ませていたところで気になっていたことを聞いてみる。
「そういえばなんですけど、副団長さんはいらっしゃるんですか?お見かけしたこと無いんですけど」
「はは、ちゃんといるよ。あそこの紫色の髪の彼だ」
すぐそこの訓練場では第二番隊が訓練をしており、ハインツさんはその中の一人を見た。
「去年の冬から他国に調査へ行っていたんだ。つい先日ここに戻ってきたばかりでね。サキのことをまだ紹介していなかった」
私たちが近づくと二番隊の皆はハインツさんの姿を見て慌てて整列する。
「いや、気にしなくていい。君たちは続けてくれ」
ハインツさんの言葉で戸惑いながらもそれぞれ持ち場に戻り、例の副団長さんがこちらにやって来る。
「団長、何か御用でしたか」
青みの紫色の長い髪を高いところで纏めている、すっきりとした顔立ちの知的そうなイケメンだ。
「いや、通りがかっただけなんだがちょうどいいから紹介しておこうと思ってな。彼女が恋人のサキだ」
急にその紹介でいいの……?
「サキ、彼が副団長で第二番隊隊長のアレク。これからしばらくは基本ここに居ることになるから会うこともあるだろう」
「初めまして、アレク・ヒューナーと申します。お話はかねがね伺っています。これからよろしくお願いします」
あ、先に話はしてあったんだ。あまりに私の説明が無くてちょっと悲しかった。
「はい!こちらこそよろしくお願いします」
握手して挨拶を終えると彼は颯爽と部下たちの指導へ戻って行った。
なんだか「仕事が出来る人」って感じだ。
「この前リュークがハインツさんの補佐だと聞いたんですけど、アレクさんの代理だったんですか?」
「リュークは自分から補佐を申し出てくれたから代理というわけでは無いんだ。アレクも手伝ってくれるけれど彼は別で仕事があるから、二人で第二番隊のバランスを取りながらやってくれているよ」
リュークはハインツさんのことを凄く慕っているのだと思う。よく共に行動しているしハインツさんもリュークのことを信頼しているのがよく分かる。
「サキー!来てくれたの?」
建物から訓練場に戻ってきたのであろうリュークが私に手を振る。
「あ、団長も!何かありましたか?」
「サキと散歩をしていただけだ。今日は打ち合いか?」
「はい、隊長も戻ってきたしせっかくだから相手してもらおうかと」
どうやらアレクさんが隊員を一人ずつ相手にしているようだ。
そういえば今まで彼らがどういう訓練をしているかなどをあまり見ていなかったなと思う。
「少し見学したいんですけど良いですか?」
「ああ、良いよ」
「じゃあ俺もサキと一緒に見るー!」
ハインツさんがリュークを小突いている横で私はアレクさんの打ち合いを見ていた。
片手で木刀を操り相手の攻撃を軽く受け流す。最後は木刀を上へ払い、喉元へ剣先を向けた。
「凄い……カッコいいですね……」
「「!?」」
私の感嘆の声を聞いて二人は大きなショックを受けたように立ち尽くした。
「ん?どうしたの………え?」
拳を握り何かやる気に満ちた彼らを見てそれ以上声がかけられないまま、二人はアレクさんのところへ向かって行ってしまった。
取り残された私はどうしたらいいか分からず、大人しくベンチに座った。
「団長、リューク、どうしたのですか。そんなに殺気を出して」
「アレク、手合わせを頼む」
「隊長、サキは渡さないよ!」
アレクはなんとなく現状を察し彼らの申し出に了承する。しかし今の彼らはやる気…殺る気満々なので手を抜いたら怪我ですまないことも分かっている。
「気を遣うほどの余裕はありませんからね」
この面倒な男たちに捕まった彼女に同情しながら、アレクは全力を出すべく木刀を強く両手で握った。
リュークとアレクさんが木刀を構え睨み合う。
急な展開に心配になるがリュークの戦っているところを見れるのは凄く嬉しい。
赤騎士団を相手にした時の彼の姿は何度も思い出してドキドキしてしまう。
笛の音が鳴った。
すぐには動かずお互い相手を警戒している。先に動いたのはリュークだった。
あの時のように私の目では見えない速度で振られた木刀は……アレクさんに受け止められた。
アレクさんはそれを押し返し、その木刀に向けて一発大きく打った。その反動でリュークは後ろに下がるが、体勢を崩すことなくまた踏み込み連続で木刀を振るう。
そんな攻防を続けていて、素人目だと二人はほぼ互角なのでは無いかと思う。
リューク……頑張って……!
心の中で精一杯応援する。周りの隊員たちも息を飲みこの戦いを見守っていた。
二本がぶつかったその時、リュークの木刀が音を立て折れてしまった。
「あ!」
これにより勝敗が決まり、リュークは悔しそうにしゃがみ込んだ。
「うわぁぁ、やっちゃった……」
相当落ち込んだ様子で地面の砂を弄るリュークを脇に置き、深呼吸で息を整えたアレクさんはまた木刀を構えた。
その前に立ちはだかったのはハインツさん。
え、ハインツさんもやるの!?
いつも私が居る時は執務室での書類仕事ばかりしているので、実際に戦う姿を見るのは初めてだ。
気分転換に体動かしたかったのかな……?
心做しかアレクさんが先程とは違い、だいぶ緊張しているように見える。
再び試合開始の音が鳴った。
「仕事優先になってしまってすまないね。私もどうしてもサキと過ごしたくて」
お仕事中でも私を傍に置いてくれることが嬉しくて胸がキュンとする。
「だいぶ暇になってしまうけれど……途中で変わろうか?」
「いいえ、今日はハインツさんと居たいです」
「そうか……!ありがとう。仕事が一段落したら外へ行こうか」
「はい!」
今までみたいに夜じゃない、昼間にこうして執務室でハインツさんとお喋りしたりして過ごせるのはまた違って凄く楽しい。会話していない時間も穏やかな空気が流れ、眼鏡姿のハインツさんを眺めて幸せだった。
真剣に書類と向き合っていたハインツさんが一息ついて、ふと私と目が合う。
優しく笑いかけてくれたので立ち上がり彼の座る作業台の方へ近づく。
腰を引き寄せられ私もその膝の上に座ると後ろから頬にキスをくれた。
「お仕事進みましたか?」
「ああ、だいぶ終わった。あと少しだからこのまま居てくれないか」
「ふふ、良いんですか?」
「最後のやる気が足りなくてね」
私を膝に乗せて抱きしめながら、さらさらと片手でペンを走らせ印を押していく。
その文字はやっぱり見慣れないもので。
「……ハインツさん、この文字なんですけど……」
「ん?どうかしたか」
「私の居た世界とは全然違うものなんです。全く読めなくて」
「そう、なのか……?しかし言葉は通じているが」
「それが不思議で……」
ハインツさんも驚いた様子で考え込む。
「急に変なこと言ってしまってすみません!文字が読めないと皆に頼りっきりになっちゃうから伝えたほうがいいかなと」
「文字が読めなくても問題ない。女性は書類仕事などをすることも無いから難しい文字は覚えていない人も多い」
「大丈夫」と言って頭を撫でる彼に一応話だけでも出来たので安心する。
文字が読めなくてもなんとかなるよね。もう帰らないって決めたし、私がどうしてこの世界に来たかなんて気にしなくていいよ。
その現象が善意でも悪意でも、彼らに出会えたのだから感謝しかない。
モヤモヤを抱えながらもそう割り切ることにして、仕事をひとまず終えた彼と気分転換に外に出ることになった。
ゆったりと散歩をしながら話を弾ませていたところで気になっていたことを聞いてみる。
「そういえばなんですけど、副団長さんはいらっしゃるんですか?お見かけしたこと無いんですけど」
「はは、ちゃんといるよ。あそこの紫色の髪の彼だ」
すぐそこの訓練場では第二番隊が訓練をしており、ハインツさんはその中の一人を見た。
「去年の冬から他国に調査へ行っていたんだ。つい先日ここに戻ってきたばかりでね。サキのことをまだ紹介していなかった」
私たちが近づくと二番隊の皆はハインツさんの姿を見て慌てて整列する。
「いや、気にしなくていい。君たちは続けてくれ」
ハインツさんの言葉で戸惑いながらもそれぞれ持ち場に戻り、例の副団長さんがこちらにやって来る。
「団長、何か御用でしたか」
青みの紫色の長い髪を高いところで纏めている、すっきりとした顔立ちの知的そうなイケメンだ。
「いや、通りがかっただけなんだがちょうどいいから紹介しておこうと思ってな。彼女が恋人のサキだ」
急にその紹介でいいの……?
「サキ、彼が副団長で第二番隊隊長のアレク。これからしばらくは基本ここに居ることになるから会うこともあるだろう」
「初めまして、アレク・ヒューナーと申します。お話はかねがね伺っています。これからよろしくお願いします」
あ、先に話はしてあったんだ。あまりに私の説明が無くてちょっと悲しかった。
「はい!こちらこそよろしくお願いします」
握手して挨拶を終えると彼は颯爽と部下たちの指導へ戻って行った。
なんだか「仕事が出来る人」って感じだ。
「この前リュークがハインツさんの補佐だと聞いたんですけど、アレクさんの代理だったんですか?」
「リュークは自分から補佐を申し出てくれたから代理というわけでは無いんだ。アレクも手伝ってくれるけれど彼は別で仕事があるから、二人で第二番隊のバランスを取りながらやってくれているよ」
リュークはハインツさんのことを凄く慕っているのだと思う。よく共に行動しているしハインツさんもリュークのことを信頼しているのがよく分かる。
「サキー!来てくれたの?」
建物から訓練場に戻ってきたのであろうリュークが私に手を振る。
「あ、団長も!何かありましたか?」
「サキと散歩をしていただけだ。今日は打ち合いか?」
「はい、隊長も戻ってきたしせっかくだから相手してもらおうかと」
どうやらアレクさんが隊員を一人ずつ相手にしているようだ。
そういえば今まで彼らがどういう訓練をしているかなどをあまり見ていなかったなと思う。
「少し見学したいんですけど良いですか?」
「ああ、良いよ」
「じゃあ俺もサキと一緒に見るー!」
ハインツさんがリュークを小突いている横で私はアレクさんの打ち合いを見ていた。
片手で木刀を操り相手の攻撃を軽く受け流す。最後は木刀を上へ払い、喉元へ剣先を向けた。
「凄い……カッコいいですね……」
「「!?」」
私の感嘆の声を聞いて二人は大きなショックを受けたように立ち尽くした。
「ん?どうしたの………え?」
拳を握り何かやる気に満ちた彼らを見てそれ以上声がかけられないまま、二人はアレクさんのところへ向かって行ってしまった。
取り残された私はどうしたらいいか分からず、大人しくベンチに座った。
「団長、リューク、どうしたのですか。そんなに殺気を出して」
「アレク、手合わせを頼む」
「隊長、サキは渡さないよ!」
アレクはなんとなく現状を察し彼らの申し出に了承する。しかし今の彼らはやる気…殺る気満々なので手を抜いたら怪我ですまないことも分かっている。
「気を遣うほどの余裕はありませんからね」
この面倒な男たちに捕まった彼女に同情しながら、アレクは全力を出すべく木刀を強く両手で握った。
リュークとアレクさんが木刀を構え睨み合う。
急な展開に心配になるがリュークの戦っているところを見れるのは凄く嬉しい。
赤騎士団を相手にした時の彼の姿は何度も思い出してドキドキしてしまう。
笛の音が鳴った。
すぐには動かずお互い相手を警戒している。先に動いたのはリュークだった。
あの時のように私の目では見えない速度で振られた木刀は……アレクさんに受け止められた。
アレクさんはそれを押し返し、その木刀に向けて一発大きく打った。その反動でリュークは後ろに下がるが、体勢を崩すことなくまた踏み込み連続で木刀を振るう。
そんな攻防を続けていて、素人目だと二人はほぼ互角なのでは無いかと思う。
リューク……頑張って……!
心の中で精一杯応援する。周りの隊員たちも息を飲みこの戦いを見守っていた。
二本がぶつかったその時、リュークの木刀が音を立て折れてしまった。
「あ!」
これにより勝敗が決まり、リュークは悔しそうにしゃがみ込んだ。
「うわぁぁ、やっちゃった……」
相当落ち込んだ様子で地面の砂を弄るリュークを脇に置き、深呼吸で息を整えたアレクさんはまた木刀を構えた。
その前に立ちはだかったのはハインツさん。
え、ハインツさんもやるの!?
いつも私が居る時は執務室での書類仕事ばかりしているので、実際に戦う姿を見るのは初めてだ。
気分転換に体動かしたかったのかな……?
心做しかアレクさんが先程とは違い、だいぶ緊張しているように見える。
再び試合開始の音が鳴った。
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