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触れる唇
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それからはあの事件があったということもあって、(今は)恋人の誰かがなるべく私の傍に居るということになった。
「今日は俺がついてるから!何かあったら言ってね」
ラグトさんは私を膝に乗せて椅子に座りながらニコニコと笑顔を向ける。
「ありがとうございます。でもこの体勢は辛くないですか?流石に重いかと……」
「サキちゃん全然重くないよ?むしろもっと体重増えてくれた方が安心する」
「そうですか……?」
戸惑いながら言うものの、ラグトさんとくっついていられるのはとても幸せだ。
「ずっと一緒に居れるのは嬉しいんですけどお仕事は大丈夫なんでしょうか?最近忙しそうだったし……」
「あ、えっとー……ちょうど仕事の区切りがついて終わりそうなんだ。とりあえずはもう忙しくないから大丈夫だよ!」
それを聞いて皆もこれからはゆっくり休めるのだと安心する。本当に疲れていた様子だったし、私を助ける為にも一日中頑張っていてくれたのだろうから。
「お菓子食べる?はい、あーん」
「あ、あーん……」
餌付けされるように次々とお菓子を与えられる。
あーんなんて……子供みたいで恥ずかしい……。
しかも時々唇に触れるラグトさんの指に反応してしまって、以前にも彼に触れられたことを思い出し顔が熱くなる。
あの時はまだ意識していなかったけど……ラグトさんももう覚えてないかな?
「ラグトさん……」
「ん?」
「最初に会った日にしてくれたこと……その……」
もし覚えていないと言われたらちょっと悲しいのでやっぱり止めようかと思ったら、彼の親指があの時と同じように唇と頬を掠めた。
「……!」
「覚えてるよ」
顔を上げて見ると照れて笑う彼と目が合う。
「あの時にはもうサキちゃんのこと好きだったんだから」
「えっ!?そうだったんですか?」
「うん、今はもっと好きだよ」
ラグトさんは私の顔を手で包み、今まで指で触れていたところにそっと口付けをした。
「サキちゃん……」
「はい……」
「どうしよう……キスしちゃったぁ」
「え?」
彼は急にへにゃっと顔を歪める。
「だ、駄目だったんですか?」
「嬉しすぎてどうしたらいいか分からない……」
手で顔を抑え喜びを噛み締めている彼がなんだか可笑しくて。
「ふふ、私も嬉しいです。……ずっとしたかった」
「!」
「もっとしたら慣れますか?」
「そしたらもっと嬉しくなっちゃうよ」
ラグトさんは私を横向きに座らせて抱きしめながらまたキスをくれた。
「ん……」
一度離れてもう一度。啄むようなキスが心地よい。吐息を零した後、茶色のふわふわな髪が肩に押し付けられる。
「もう駄目……これ以上すると我慢できない」
「……ごめんなさい、もう少し待っててくれますか?」
「うん、いつまででも待つよ!ちゃんとお利口にしてるから頭撫でて?」
「はい、ありがとうございます」
よしよしと撫でながらも、私としたいと思ってくれているのが嬉しくて恥ずかしくてどうにかなりそうだった。
ど、どんな感じなのかな……そんな事とは無縁だったし……。
なにをどうするかは分かっているものの、いざ自分が出来るかと言われたら自信はあまり無い。普通の……スキンシップ?は当たり前にしているけど、それとは違うのだろうか。
でもきっと、もっと愛が伝わる気がして……。
「ラグトさん、私頑張ります!」
「え、うん、頑張って……?」
しばらくして夕方の鐘が鳴った。
オレンジ色の空……。
そういえばと気づき、早速ご飯を作りに行こうとしたらラグトさんに止められた。
「怪我してるんだから駄目だよ!」
「でも……」
「勿論皆サキちゃんのご飯楽しみにしてるけど逆に気遣っちゃうよ」
「……」
そう言われると何も返せない。迷惑をかけちゃったし少しでも役に立てたらと思ったのだけど。
「しばらくはヴェルストリアが作ってくれてるから大丈夫!あいつ、サキちゃんの料理勉強してるんだよ」
「えっ、私の?」
「ちょっとでも近づきたいんだって。後で会いに行って一緒に食べよ?」
「はい!」
彼の作ったご飯が楽しみで浮き足立ちながら夕食までの時間を過ごした。
「ヴェルストリアくん!」
「サキさん!来てくれたんですね」
出来上がったおかずを運んでいた彼は、直ぐにそれを置いて私の元へ駆けてきた。
「一人でやらせちゃってごめんね」
「いえ!全然気にしないでください。今日はハンバーグなんです。サキさんには敵いませんが僕なりに作ってみたので、良かったら食べてください」
「うん、一緒に食べよう!」
ヴェルストリアくんが取り分けてくれたご飯を三人分横に並べる。
「以前教えていただいたテリヤキの味付けにしてみたんですが……」
「わぁ、美味しそう!」
「形も綺麗だな。俺、前作った時崩れちゃったから炒め物になった……」
「私もたまにそうなります……」
不安そうなヴェルストリアくんの視線を感じながら私はハンバーグを一口食べる。
「ん、美味しい!大きくて食べ応えあるけど火もちゃんと通ってるし、ヴェルストリアくん凄いね!」
「ほんとですか!味付けも何か改善点があれば……」
「味付けに正解は無いからこれも良いと思う。改善点ではないけど砂糖を蜂蜜に変えてもまた違って美味しいよ」
「なるほど……」
私の言ったことをメモしていくヴェルストリアが一生懸命で可愛くて、つい頭を撫でる。
「ありがとう。今度は一緒に作ろうね」
「っ……はい!」
その夜、私の部屋で話しているとラグトさんは少し戸惑いながら言った。
「今日うなされてたってヴェルストリアから聞いたからさ。夜も誰かは傍に居たほうが良いかなって思ったんだけど……」
一晩中部屋に居ても問題ないか、ということらしい。それ自体は私は全然良いのだけれど……。
「でも……夜もだなんて、皆にそんな負担はかけたくないです」
「負担だなんて思わないで。サキちゃんは嫌?」
「ううん!嫌じゃない……居て欲しい。昨日どんな夢見てたかは分からないけど凄く苦しかった……」
大きい手が私を抱き寄せ、背を優しくさすってくれる。
「サキちゃんが苦しいと俺も、先輩たちも苦しいんだ。結婚するんだからそういうのも分かち合わなきゃでしょ?」
そっか……家族ってそういうものだよね。
「……お願いしていいですか?」
「うん!今日はもう遅いし寝ようか」
頷くとラグトさんは私を横抱きにしてベッドまで運んでくれる。
彼の胸元に近づいて鼓動を感じた。トクンと鳴るのが少し速い気がして彼らしいなと思うとなんだか安心して眠気がやってくる。
「まだ布団は暑いよね、ブランケットにしようか」
「ん……」
瞼が閉じかけた私を見てラグトさんは微笑み、お腹が冷えないようにブランケットをかけて頭を撫でてくれる。
「手……繋いでください……」
「うん、他にして欲しいことある?」
ぼうっとしていた私はもうすぐに寝てしまいそうだった。
「……きす……して」
「!」
唇に何かが触れた感触を残して、私は深い眠りについた。
「今日は俺がついてるから!何かあったら言ってね」
ラグトさんは私を膝に乗せて椅子に座りながらニコニコと笑顔を向ける。
「ありがとうございます。でもこの体勢は辛くないですか?流石に重いかと……」
「サキちゃん全然重くないよ?むしろもっと体重増えてくれた方が安心する」
「そうですか……?」
戸惑いながら言うものの、ラグトさんとくっついていられるのはとても幸せだ。
「ずっと一緒に居れるのは嬉しいんですけどお仕事は大丈夫なんでしょうか?最近忙しそうだったし……」
「あ、えっとー……ちょうど仕事の区切りがついて終わりそうなんだ。とりあえずはもう忙しくないから大丈夫だよ!」
それを聞いて皆もこれからはゆっくり休めるのだと安心する。本当に疲れていた様子だったし、私を助ける為にも一日中頑張っていてくれたのだろうから。
「お菓子食べる?はい、あーん」
「あ、あーん……」
餌付けされるように次々とお菓子を与えられる。
あーんなんて……子供みたいで恥ずかしい……。
しかも時々唇に触れるラグトさんの指に反応してしまって、以前にも彼に触れられたことを思い出し顔が熱くなる。
あの時はまだ意識していなかったけど……ラグトさんももう覚えてないかな?
「ラグトさん……」
「ん?」
「最初に会った日にしてくれたこと……その……」
もし覚えていないと言われたらちょっと悲しいのでやっぱり止めようかと思ったら、彼の親指があの時と同じように唇と頬を掠めた。
「……!」
「覚えてるよ」
顔を上げて見ると照れて笑う彼と目が合う。
「あの時にはもうサキちゃんのこと好きだったんだから」
「えっ!?そうだったんですか?」
「うん、今はもっと好きだよ」
ラグトさんは私の顔を手で包み、今まで指で触れていたところにそっと口付けをした。
「サキちゃん……」
「はい……」
「どうしよう……キスしちゃったぁ」
「え?」
彼は急にへにゃっと顔を歪める。
「だ、駄目だったんですか?」
「嬉しすぎてどうしたらいいか分からない……」
手で顔を抑え喜びを噛み締めている彼がなんだか可笑しくて。
「ふふ、私も嬉しいです。……ずっとしたかった」
「!」
「もっとしたら慣れますか?」
「そしたらもっと嬉しくなっちゃうよ」
ラグトさんは私を横向きに座らせて抱きしめながらまたキスをくれた。
「ん……」
一度離れてもう一度。啄むようなキスが心地よい。吐息を零した後、茶色のふわふわな髪が肩に押し付けられる。
「もう駄目……これ以上すると我慢できない」
「……ごめんなさい、もう少し待っててくれますか?」
「うん、いつまででも待つよ!ちゃんとお利口にしてるから頭撫でて?」
「はい、ありがとうございます」
よしよしと撫でながらも、私としたいと思ってくれているのが嬉しくて恥ずかしくてどうにかなりそうだった。
ど、どんな感じなのかな……そんな事とは無縁だったし……。
なにをどうするかは分かっているものの、いざ自分が出来るかと言われたら自信はあまり無い。普通の……スキンシップ?は当たり前にしているけど、それとは違うのだろうか。
でもきっと、もっと愛が伝わる気がして……。
「ラグトさん、私頑張ります!」
「え、うん、頑張って……?」
しばらくして夕方の鐘が鳴った。
オレンジ色の空……。
そういえばと気づき、早速ご飯を作りに行こうとしたらラグトさんに止められた。
「怪我してるんだから駄目だよ!」
「でも……」
「勿論皆サキちゃんのご飯楽しみにしてるけど逆に気遣っちゃうよ」
「……」
そう言われると何も返せない。迷惑をかけちゃったし少しでも役に立てたらと思ったのだけど。
「しばらくはヴェルストリアが作ってくれてるから大丈夫!あいつ、サキちゃんの料理勉強してるんだよ」
「えっ、私の?」
「ちょっとでも近づきたいんだって。後で会いに行って一緒に食べよ?」
「はい!」
彼の作ったご飯が楽しみで浮き足立ちながら夕食までの時間を過ごした。
「ヴェルストリアくん!」
「サキさん!来てくれたんですね」
出来上がったおかずを運んでいた彼は、直ぐにそれを置いて私の元へ駆けてきた。
「一人でやらせちゃってごめんね」
「いえ!全然気にしないでください。今日はハンバーグなんです。サキさんには敵いませんが僕なりに作ってみたので、良かったら食べてください」
「うん、一緒に食べよう!」
ヴェルストリアくんが取り分けてくれたご飯を三人分横に並べる。
「以前教えていただいたテリヤキの味付けにしてみたんですが……」
「わぁ、美味しそう!」
「形も綺麗だな。俺、前作った時崩れちゃったから炒め物になった……」
「私もたまにそうなります……」
不安そうなヴェルストリアくんの視線を感じながら私はハンバーグを一口食べる。
「ん、美味しい!大きくて食べ応えあるけど火もちゃんと通ってるし、ヴェルストリアくん凄いね!」
「ほんとですか!味付けも何か改善点があれば……」
「味付けに正解は無いからこれも良いと思う。改善点ではないけど砂糖を蜂蜜に変えてもまた違って美味しいよ」
「なるほど……」
私の言ったことをメモしていくヴェルストリアが一生懸命で可愛くて、つい頭を撫でる。
「ありがとう。今度は一緒に作ろうね」
「っ……はい!」
その夜、私の部屋で話しているとラグトさんは少し戸惑いながら言った。
「今日うなされてたってヴェルストリアから聞いたからさ。夜も誰かは傍に居たほうが良いかなって思ったんだけど……」
一晩中部屋に居ても問題ないか、ということらしい。それ自体は私は全然良いのだけれど……。
「でも……夜もだなんて、皆にそんな負担はかけたくないです」
「負担だなんて思わないで。サキちゃんは嫌?」
「ううん!嫌じゃない……居て欲しい。昨日どんな夢見てたかは分からないけど凄く苦しかった……」
大きい手が私を抱き寄せ、背を優しくさすってくれる。
「サキちゃんが苦しいと俺も、先輩たちも苦しいんだ。結婚するんだからそういうのも分かち合わなきゃでしょ?」
そっか……家族ってそういうものだよね。
「……お願いしていいですか?」
「うん!今日はもう遅いし寝ようか」
頷くとラグトさんは私を横抱きにしてベッドまで運んでくれる。
彼の胸元に近づいて鼓動を感じた。トクンと鳴るのが少し速い気がして彼らしいなと思うとなんだか安心して眠気がやってくる。
「まだ布団は暑いよね、ブランケットにしようか」
「ん……」
瞼が閉じかけた私を見てラグトさんは微笑み、お腹が冷えないようにブランケットをかけて頭を撫でてくれる。
「手……繋いでください……」
「うん、他にして欲しいことある?」
ぼうっとしていた私はもうすぐに寝てしまいそうだった。
「……きす……して」
「!」
唇に何かが触れた感触を残して、私は深い眠りについた。
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