31 / 184
大事な話
しおりを挟む
「それで……ヴェルストリアも付き合うか分かってからってはぐらかされてましたけど……」
ラグトさんとヴェルストリアくんが並んで座り、その反対にミスカさん、リューク、私。
「サキちゃんの世界……ってどういうこと……?」
ずっと隠していたこと。私が異世界から来たと言うことを、付き合うからには二人にもちゃんと伝えなければならない。
「さ、サキさんは別の世界から来たってこと……ですか?」
「うん。いつの間にかこの世界の……向こうの森の中にいて、ハインツさんとミスカさんとリュークに見つけて貰ってここに来たの」
流石に二人も信じられないという顔をしていたが納得する部分もあったそうで、一応理解はしてくれた。
「先輩とリュークさんが異様にサキちゃんと仲良さそうだと思ってましたけど、最初に会って事情知ってたんですね」
「異様にとはなんだ」
ラグトさんが「ちぇっ」と口を尖らせている。
「サキさんの世界では料理とかも普通にするんですか?」
「料理も家事も基本的に自分でするよ。私は一人暮らしだったから余計にね」
「「一人暮らし!?」」
皆に凄い驚かれた。
「一人で暮らしてたの!?」
「辛くなかった?大丈夫?」
「女性がそんな……一人だなんて危なすぎます」
オロオロと慌てて私を心配する彼らが可愛くて少し笑ってしまう。
「ふふ、一人暮らしをしてる人はいっぱい居ましたよ。それが当たり前だったので。でも、ここに来て大人数で過ごす方が楽しいなって思いました。ご飯も自分の分だけ作って食べるより、皆の為に作って一緒に食べる方が美味しく感じます」
「サキさん……」
「ヴェルストリアくんと料理するのも凄く楽しいよ!」
「っ…はい!これからも頑張ります!」
ヴェルストリアくんはキラキラした目で頷いてくれた。
「俺もまたやりたいなー!」
「そういえばラグトさんが代わりに入ってくれたんですよね、ありがとうございます」
「いや、ヴェルストリアのおかげでサキちゃんと付き合えたんだからこちらこそだよ」
「……なんか癪ですね」
この二人はなんだかんだ相性が良さそうだ。
ニコニコと見守っていると、リュークが場を仕切り直すように咳払いをする。
「えー、このことは他の黒騎士団員には言っていないし、外部にも団長が信頼できる人物にしか伝えていないと聞いている。だから内緒ね!」
「特にラグト」
「そんなに信用ないすか先輩……」
「それと……」
リュークは私に向き直る。
「サキは、団長のこと好きなんだよね?」
「う、うん……」
そう、私はハインツさんのことも好きなのだと気づいた。恋人となった彼らの前で改めて言われると心苦しく思う気持ちもあるが隠したくは無い。
「俺たちのことを団長が知ったら、その……サキが想いを伝えにくくなっちゃうから」
「私……ちゃんと自分の口から言いたいの。付き合ってることを皆に隠すことになっちゃうんだけど……良い……ですか……?」
顔を上げると皆は笑顔で頷いてくれた。
「サキが伝えたいと思った時に言えば良い」
「うん!全然焦らなくても大丈夫だから」
「ありがとうございます……!」
快く了承して貰えてホッとした。
私の好きな人が一人じゃなくても皆そんなに気にしていない様子だった。
やっぱり当たり前……なのかな。
恋人たちにきちんと大事な話を伝えることが出来て良かった。それぞれ仕事に戻っていったが私とリュークが残り、思わず彼を引き止める。
「ん、なあに?」
「あのね……」
「うん」
「私の居たところだと恋人は一人が普通だったから、皆のことが好きって気持ちを否定するつもりは無いんだけど……どうしても申し訳なく思っちゃって」
「そっか……サキの世界とは考え方が違うから仕方ないかもしれない。でも俺たちに負い目は感じなくていいよ。まさか俺、ミスカと同じ恋人が出来るとは思わなかったもん」
そう言いリュークは明るく笑う。
「嬉しいんだ。本当に良い奴で大事な親友だからさ、サキがミスカの良いところを知って好きになってくれて。人を見かけで判断しないで俺たちそれぞれを好きになってくれた、そんなサキだから大好きなんだよ」
「っ……ありがとう」
いつも優しい言葉で私を救ってくれる。
付き合うことに負い目を感じたくなかったから、話して良かった。
「でも俺の事だけ見てて欲しい気持ちはあるから」
「えっ」
「ずっとは無理だけどさ、俺といる時は……意識しててね」
「う、うん」
顔を赤らめながら頷いて、私はポケットからある物を取り出した。
「これずっと持ってるから離れててもリュークのこと考えてるよ」
ぽかんとしたリュークは同じくポケットから取り出す。
「俺もずっと持ち歩いてる……」
赤とピンクのまた微妙な顔のスイカ達。
「あはは!」
「ふふ……持っててくれてたんだ…気に入った?」
「なんかね、ずっと見てたら可愛く思えてきた」
「分かるかも…」
リュークは嬉しそうにスイカを見つめる。
「これ貰った時はサキと恋人になれるなんて思ってなかった……サキ、本当にありがとう」
「うん、こちらこそありがとう!」
ふと鐘が鳴る音が聞こえた。
「あ、引き止めちゃってごめんね」
「ううん、サキの話聞けるの嬉しいよ。じゃあまたね!」
手を振って走る彼を見送り、ピンクのスイカは大事にしまう。
やっぱりリューク、スイカ好きなんだなぁ。キーホルダーあんなに気に入ってくれて。
それが若干的外れなことに私は気付かず、気合を入れて仕事に向かったのだった。
ラグトさんとヴェルストリアくんが並んで座り、その反対にミスカさん、リューク、私。
「サキちゃんの世界……ってどういうこと……?」
ずっと隠していたこと。私が異世界から来たと言うことを、付き合うからには二人にもちゃんと伝えなければならない。
「さ、サキさんは別の世界から来たってこと……ですか?」
「うん。いつの間にかこの世界の……向こうの森の中にいて、ハインツさんとミスカさんとリュークに見つけて貰ってここに来たの」
流石に二人も信じられないという顔をしていたが納得する部分もあったそうで、一応理解はしてくれた。
「先輩とリュークさんが異様にサキちゃんと仲良さそうだと思ってましたけど、最初に会って事情知ってたんですね」
「異様にとはなんだ」
ラグトさんが「ちぇっ」と口を尖らせている。
「サキさんの世界では料理とかも普通にするんですか?」
「料理も家事も基本的に自分でするよ。私は一人暮らしだったから余計にね」
「「一人暮らし!?」」
皆に凄い驚かれた。
「一人で暮らしてたの!?」
「辛くなかった?大丈夫?」
「女性がそんな……一人だなんて危なすぎます」
オロオロと慌てて私を心配する彼らが可愛くて少し笑ってしまう。
「ふふ、一人暮らしをしてる人はいっぱい居ましたよ。それが当たり前だったので。でも、ここに来て大人数で過ごす方が楽しいなって思いました。ご飯も自分の分だけ作って食べるより、皆の為に作って一緒に食べる方が美味しく感じます」
「サキさん……」
「ヴェルストリアくんと料理するのも凄く楽しいよ!」
「っ…はい!これからも頑張ります!」
ヴェルストリアくんはキラキラした目で頷いてくれた。
「俺もまたやりたいなー!」
「そういえばラグトさんが代わりに入ってくれたんですよね、ありがとうございます」
「いや、ヴェルストリアのおかげでサキちゃんと付き合えたんだからこちらこそだよ」
「……なんか癪ですね」
この二人はなんだかんだ相性が良さそうだ。
ニコニコと見守っていると、リュークが場を仕切り直すように咳払いをする。
「えー、このことは他の黒騎士団員には言っていないし、外部にも団長が信頼できる人物にしか伝えていないと聞いている。だから内緒ね!」
「特にラグト」
「そんなに信用ないすか先輩……」
「それと……」
リュークは私に向き直る。
「サキは、団長のこと好きなんだよね?」
「う、うん……」
そう、私はハインツさんのことも好きなのだと気づいた。恋人となった彼らの前で改めて言われると心苦しく思う気持ちもあるが隠したくは無い。
「俺たちのことを団長が知ったら、その……サキが想いを伝えにくくなっちゃうから」
「私……ちゃんと自分の口から言いたいの。付き合ってることを皆に隠すことになっちゃうんだけど……良い……ですか……?」
顔を上げると皆は笑顔で頷いてくれた。
「サキが伝えたいと思った時に言えば良い」
「うん!全然焦らなくても大丈夫だから」
「ありがとうございます……!」
快く了承して貰えてホッとした。
私の好きな人が一人じゃなくても皆そんなに気にしていない様子だった。
やっぱり当たり前……なのかな。
恋人たちにきちんと大事な話を伝えることが出来て良かった。それぞれ仕事に戻っていったが私とリュークが残り、思わず彼を引き止める。
「ん、なあに?」
「あのね……」
「うん」
「私の居たところだと恋人は一人が普通だったから、皆のことが好きって気持ちを否定するつもりは無いんだけど……どうしても申し訳なく思っちゃって」
「そっか……サキの世界とは考え方が違うから仕方ないかもしれない。でも俺たちに負い目は感じなくていいよ。まさか俺、ミスカと同じ恋人が出来るとは思わなかったもん」
そう言いリュークは明るく笑う。
「嬉しいんだ。本当に良い奴で大事な親友だからさ、サキがミスカの良いところを知って好きになってくれて。人を見かけで判断しないで俺たちそれぞれを好きになってくれた、そんなサキだから大好きなんだよ」
「っ……ありがとう」
いつも優しい言葉で私を救ってくれる。
付き合うことに負い目を感じたくなかったから、話して良かった。
「でも俺の事だけ見てて欲しい気持ちはあるから」
「えっ」
「ずっとは無理だけどさ、俺といる時は……意識しててね」
「う、うん」
顔を赤らめながら頷いて、私はポケットからある物を取り出した。
「これずっと持ってるから離れててもリュークのこと考えてるよ」
ぽかんとしたリュークは同じくポケットから取り出す。
「俺もずっと持ち歩いてる……」
赤とピンクのまた微妙な顔のスイカ達。
「あはは!」
「ふふ……持っててくれてたんだ…気に入った?」
「なんかね、ずっと見てたら可愛く思えてきた」
「分かるかも…」
リュークは嬉しそうにスイカを見つめる。
「これ貰った時はサキと恋人になれるなんて思ってなかった……サキ、本当にありがとう」
「うん、こちらこそありがとう!」
ふと鐘が鳴る音が聞こえた。
「あ、引き止めちゃってごめんね」
「ううん、サキの話聞けるの嬉しいよ。じゃあまたね!」
手を振って走る彼を見送り、ピンクのスイカは大事にしまう。
やっぱりリューク、スイカ好きなんだなぁ。キーホルダーあんなに気に入ってくれて。
それが若干的外れなことに私は気付かず、気合を入れて仕事に向かったのだった。
327
お気に入りに追加
1,121
あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です
花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。
けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。
そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。
醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。
多分短い話になると思われます。
サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。
訳ありな家庭教師と公爵の執着
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷 さらりと読んで下さい。
※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)から、HOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです
狼蝶
恋愛
転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?
学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる