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ハプニング
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今日も暑いなぁ……。
温暖化の進んでいて湿気の多い日本とは違い、カラッとした爽やかな暑さでそこまで気温も高くないのは嬉しいけど。
食堂で昨日届いた食材の仕分けをしていると、扉の開く音がした。
「サキちゃーん」
「ラグトさん!」
彼が手を広げてこちらに向かってきたので、私も同じように彼を受け止める。
お互い抱きしめ合って、彼がゆらゆらと体を揺らすから楽しくなって笑みが零れる。
「書類仕事疲れたぁ……」
「ふふ、はい。いつもお仕事頑張ってくれてありがとうございます」
私が彼の頭を撫でると「えへへ」と笑ってくれる。
ラグトさんの髪ふわふわ……。ずっと触ってたくなっちゃうんだよね。
私が夢中で髪を撫でている間ラグトさんは私の肩に顔をすりすりしていた。
なんだか犬っぽいよね、大型犬かな?
そんな彼が可愛くて仕方がない。
ようやく離れた私たちは顔を見合わせる。
「お仕事ずっと忙しそうですね…皆もバタバタしてて」
「うん……あんまり時間取れなくてごめんね。なんか最近急ぎの仕事が多いんだ。普段行かないようなところへの応援もあるし……違和感あるなぁ…」
ふと考え込んでしまったラグトさんは慌てて私に笑顔を向ける。
「まあ、たまにはこういう時もあるよね!サキちゃんのお陰で仕事頑張れるし!」
そう言って貰えるととても嬉しくなる。
もっと喜んで欲しいって欲張っちゃ駄目かな?
「今日、ラグトさん夕食は食べに来れますか?」
「うん!今日は余裕あるから行こうと思ってたよ」
「あの、良かったらラグトさんの好きな物とか作りたいなって」
「え、良いの…!俺だけの為のご飯……」
目をキラキラさせて感動してくれているけど、ご飯自体は皆のものだと訂正する。
「ラグトさんお肉好きでしたよね?どんな料理が良いですか?」
「んー……あ!この前作ってくれた辛いやつ食べたいな、凄く美味しかったから!」
「カレー気に入ってくれたんですね」
「暑くてもあれならいくらでも食べれちゃう」
今日はチキンカレーかな!私もちょうど食べたかったから楽しみだな。
なんの具材を入れようか考えていると、突然窓の方からブーンと音がした。
こ、この音って……!
まさかと思って振り返った先には大きな蜂。
「きゃぁっ!むり!」
頭が真っ白になり慌てて手を振って後ずさる。
「わぁっ!サキちゃん!?」
後ろに居たラグトさんにぶつかってしまい、そのまま寄りかかった状態で倒れ込む。
蜂無理!ほんとに無理……ん?
左胸に何か触れる感触。
ラグトさんの右手が胸に……。
「ひぁっ……んん」
少しだけ動かされ変な声が出てしまい慌てて手で口を塞ぐ。
「え、わぁぁごめ、ごめん!そんなつもりじゃ」
「い、いえ!私がぶつかってしまって、本当にごめんなさい!お怪我無いですか!?」
「俺は大丈夫!いやごめん……触っちゃってるとは思わなくて……」
「じ、事故というか、私のせいなのでごめんなさい……」
お互い慌てて距離をとり床に膝をついて謝罪し合う。傍から見たらだいぶ異様な光景だろう。
なんとか落ち着いた私たちは椅子に座り一息つく。
元凶の蜂は窓から出ていったみたいだ。
「サキちゃんは蜂苦手なんだね」
「はい……昔一度刺されたことがあって…もう一回刺されたら死んじゃうかもって思うと……」
「死んじゃうの!?」
「……分からないけど…」
詳しくは知らないが二回刺されたらアナフィラキシーなんとかで危ないと言うのを聞いたことがある。それに幼い頃に刺された時の痛みの記憶は強烈で、根深いトラウマになっていた。
「取り乱してごめんなさい……」
「怖い思いしたんだからしょうがないよ。蜂は俺がやっつけとくから、大丈夫」
「ラグトさん……」
彼に頭を優しく撫でられて不思議と恐怖心がすっかり消えていく。
ラグトさんはいつも人懐っこくて可愛いけど、何かあった時はこうやって温かく守ってくれる。
お兄ちゃんが居たらこんな感じかなって思うけど、お兄ちゃんにはこのトキメキは感じない。
「あの……恋人、だから」
「うん?」
「触れても……問題ないのかなって……」
「っ……!」
チラッと顔を見ると彼は耳まで真っ赤になっていて、私も真っ赤になってだいぶ恥ずかしいことを言ってしまったと今更後悔した。
「ご、ごめんなさい。時間取らせちゃいましたよね」
「あ、ほんとだ戻らないと!えっとーサキちゃん!」
「は、はい!」
私の元へ来ていきなり抱きしめた。私の耳元ではっきりと彼の言葉が伝わる。
「次はちゃんと触れさせて」
「!」
「じゃあね!ご飯楽しみにしてる!」
照れながら八重歯を見せて笑って扉から出ていった彼の姿がカッコよくて。
私は顔を赤らめてぽーっとしながら、食堂の窓をそっと閉めた。
サキちゃんが後ずさった時、滑って横に倒れそうになったのを見て思わず片手で自分の方へ抱き寄せた。そして……。
「はぁぁー、やっばぁ……」
柔らかくて……意外と大きかった……。服の下はどんななのかなんて、考えるなよ俺…流石に気持ち悪いだろ。
サキちゃんは気にしてないと言ったが正直嫌われたかと思った。急に触れて挙句(ちょっとだけ)揉んでしまって。
でも彼女は嫌がっていなくて、「恋人だから問題ない」と。
真っ赤になったサキちゃんを見て、改めて彼女は俺の事を本当に好きでいてくれているのだと実感した。
そーゆーことも……考えてくれてるのかな……。
昔の俺には想像も出来なかった幸せを、今グッと噛み締めた。
温暖化の進んでいて湿気の多い日本とは違い、カラッとした爽やかな暑さでそこまで気温も高くないのは嬉しいけど。
食堂で昨日届いた食材の仕分けをしていると、扉の開く音がした。
「サキちゃーん」
「ラグトさん!」
彼が手を広げてこちらに向かってきたので、私も同じように彼を受け止める。
お互い抱きしめ合って、彼がゆらゆらと体を揺らすから楽しくなって笑みが零れる。
「書類仕事疲れたぁ……」
「ふふ、はい。いつもお仕事頑張ってくれてありがとうございます」
私が彼の頭を撫でると「えへへ」と笑ってくれる。
ラグトさんの髪ふわふわ……。ずっと触ってたくなっちゃうんだよね。
私が夢中で髪を撫でている間ラグトさんは私の肩に顔をすりすりしていた。
なんだか犬っぽいよね、大型犬かな?
そんな彼が可愛くて仕方がない。
ようやく離れた私たちは顔を見合わせる。
「お仕事ずっと忙しそうですね…皆もバタバタしてて」
「うん……あんまり時間取れなくてごめんね。なんか最近急ぎの仕事が多いんだ。普段行かないようなところへの応援もあるし……違和感あるなぁ…」
ふと考え込んでしまったラグトさんは慌てて私に笑顔を向ける。
「まあ、たまにはこういう時もあるよね!サキちゃんのお陰で仕事頑張れるし!」
そう言って貰えるととても嬉しくなる。
もっと喜んで欲しいって欲張っちゃ駄目かな?
「今日、ラグトさん夕食は食べに来れますか?」
「うん!今日は余裕あるから行こうと思ってたよ」
「あの、良かったらラグトさんの好きな物とか作りたいなって」
「え、良いの…!俺だけの為のご飯……」
目をキラキラさせて感動してくれているけど、ご飯自体は皆のものだと訂正する。
「ラグトさんお肉好きでしたよね?どんな料理が良いですか?」
「んー……あ!この前作ってくれた辛いやつ食べたいな、凄く美味しかったから!」
「カレー気に入ってくれたんですね」
「暑くてもあれならいくらでも食べれちゃう」
今日はチキンカレーかな!私もちょうど食べたかったから楽しみだな。
なんの具材を入れようか考えていると、突然窓の方からブーンと音がした。
こ、この音って……!
まさかと思って振り返った先には大きな蜂。
「きゃぁっ!むり!」
頭が真っ白になり慌てて手を振って後ずさる。
「わぁっ!サキちゃん!?」
後ろに居たラグトさんにぶつかってしまい、そのまま寄りかかった状態で倒れ込む。
蜂無理!ほんとに無理……ん?
左胸に何か触れる感触。
ラグトさんの右手が胸に……。
「ひぁっ……んん」
少しだけ動かされ変な声が出てしまい慌てて手で口を塞ぐ。
「え、わぁぁごめ、ごめん!そんなつもりじゃ」
「い、いえ!私がぶつかってしまって、本当にごめんなさい!お怪我無いですか!?」
「俺は大丈夫!いやごめん……触っちゃってるとは思わなくて……」
「じ、事故というか、私のせいなのでごめんなさい……」
お互い慌てて距離をとり床に膝をついて謝罪し合う。傍から見たらだいぶ異様な光景だろう。
なんとか落ち着いた私たちは椅子に座り一息つく。
元凶の蜂は窓から出ていったみたいだ。
「サキちゃんは蜂苦手なんだね」
「はい……昔一度刺されたことがあって…もう一回刺されたら死んじゃうかもって思うと……」
「死んじゃうの!?」
「……分からないけど…」
詳しくは知らないが二回刺されたらアナフィラキシーなんとかで危ないと言うのを聞いたことがある。それに幼い頃に刺された時の痛みの記憶は強烈で、根深いトラウマになっていた。
「取り乱してごめんなさい……」
「怖い思いしたんだからしょうがないよ。蜂は俺がやっつけとくから、大丈夫」
「ラグトさん……」
彼に頭を優しく撫でられて不思議と恐怖心がすっかり消えていく。
ラグトさんはいつも人懐っこくて可愛いけど、何かあった時はこうやって温かく守ってくれる。
お兄ちゃんが居たらこんな感じかなって思うけど、お兄ちゃんにはこのトキメキは感じない。
「あの……恋人、だから」
「うん?」
「触れても……問題ないのかなって……」
「っ……!」
チラッと顔を見ると彼は耳まで真っ赤になっていて、私も真っ赤になってだいぶ恥ずかしいことを言ってしまったと今更後悔した。
「ご、ごめんなさい。時間取らせちゃいましたよね」
「あ、ほんとだ戻らないと!えっとーサキちゃん!」
「は、はい!」
私の元へ来ていきなり抱きしめた。私の耳元ではっきりと彼の言葉が伝わる。
「次はちゃんと触れさせて」
「!」
「じゃあね!ご飯楽しみにしてる!」
照れながら八重歯を見せて笑って扉から出ていった彼の姿がカッコよくて。
私は顔を赤らめてぽーっとしながら、食堂の窓をそっと閉めた。
サキちゃんが後ずさった時、滑って横に倒れそうになったのを見て思わず片手で自分の方へ抱き寄せた。そして……。
「はぁぁー、やっばぁ……」
柔らかくて……意外と大きかった……。服の下はどんななのかなんて、考えるなよ俺…流石に気持ち悪いだろ。
サキちゃんは気にしてないと言ったが正直嫌われたかと思った。急に触れて挙句(ちょっとだけ)揉んでしまって。
でも彼女は嫌がっていなくて、「恋人だから問題ない」と。
真っ赤になったサキちゃんを見て、改めて彼女は俺の事を本当に好きでいてくれているのだと実感した。
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