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初めて町へ 2
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森を抜け遠くに見えていた町にどんどん近づいていく。
体感的には二十分くらいだっただろうか。入口に到着しそこで馬を止め、ミスカさんの助けを借りて地面に降りた。
「ここはサロディーアという町だ。この町からまただいぶ行った所が国の中心で王宮などがある」
王宮!やっぱり王様とかいるんだ……。
町の中では馬は乗れないが連れて一緒に入って良いそうで、ミスカさんの馬は護衛の一人にお願いすることになった。
ミスカさんと並んで町の中を歩く。白いレンガ造りの住宅が多く、屋根が赤や青、黄とカラフルなのがとても可愛い。
海外のお家みたい……!
住宅が建つ道を進むと、とても活気のある大きな通りに出た。
「ここなら色々店がある。気になるものがあったら言ってくれ」
「はい!」
通り過ぎる町の人たちを見て圧倒的に男性が多いなと感じる。基本的に皆小太りで、これがこの世界での標準体型なのだろう。数える程しかいない女性も皆少しぽっちゃりしている気がする。
私がキョロキョロ周りを見ていると八百屋のおじさんが声をかけてきた。
「そこのお嬢さん!新鮮な果物はどうだい?」
「わぁ美味しそう!」
私たちが寄るとおじさんはミスカさんを見てギョッとした。
「お、お嬢さんの…連れかい?」
「はい、そうですよ」
「そ、そうか……。いや、うん。今はスイカが旬だね。小ぶりだがしっかり甘い。味は保証するよ!」
流石商売人、切り替えが速くサッと笑顔に戻ってくれた。見せてくれたスイカはずっしりと重く模様もハッキリしている。
「スイカいいなー!でもちょっと大きいし持ち運べないですよね」
「荷物はいくらでも持つから、気にしないで好きなものを買っていい。馬にも意外と乗せれるからな」
「そうですか……?じゃあ一個お願いします」
「まいど!銀貨三枚だよ」
私はポーチから財布を取り出し銀貨三枚を渡す。ミスカさんが紙袋に入ったスイカを受け取ってくれた。
「またよろしく!」
おじさんにお礼を言ってまた歩き出す。
「ミスカさん、重くないですか?」
「このくらい何ともない。正直荷物持ちくらいしか出来ないから任せてくれ」
「ありがとうございます。スイカ、一緒に食べましょうね」
出かける前にハインツさんから、今までのお給金の分だから自由に使ってくれとお金を頂いたのだが……。
「流石に……多くないですか?衣食住を用意してもらって、他にも色々買ってもらっているのに……」
金貨、銀貨、銅貨それぞれ十枚ずつ。価値があまり分からないが、ずっしりと重い袋を持ってみて……なんだか違う気がした。
「サキの働きぶりを考えれば当たり前だ。まだこれで全部ではないよ、とりあえず今回の買い物はこれで事足りると思うから」
「え!?いや、その……」
「銅貨十枚で銀貨一枚分、銀貨十枚で金貨一枚分だからね、分からなかったらミスカに任せれば良いよ」
と、にっこり笑顔で送り出された。
そんな会話を思い出しながらさっきの買い物を考える。
このスイカ銀貨三枚で日本だと三千円くらいかな。ん?そうすると銅貨が百円、銀貨が千円、金貨が一万円……?
財布の中を覗く。
これ十万円以上入ってる……ハインツさん!?
開いた口が塞がらない。半日の買い物で十万円なんて使ったことない。金銭感覚が違いすぎる。というか私のお給金設定はどうなっているのだろうか。
考えると怖くなって、私はそっと財布をしまいローブの中に隠した。
「サキ、どうかしたか?」
「いえ!なんでも無いです!あ、次はあのお店見てもいいですか?」
「ああ」
サキとミスカが買い物をしている間、護衛二人は距離を取りながら後ろを歩いていた。
「サキさん可愛いな……ローブで全身隠れてても、顔がうっすらしか見えてなくても可愛いのが分かる…」
「ほんとそれ。見ろよ、まだ隊長が片手で、いや小指で持てるくらいしか買い物してないんだぜ。なんなら自分で荷物持とうとしてるし。謙虚で本当に良い人だ……」
「馬に乗ってる時はしゃいでるの最高に可愛かった」
二人はサキを尊い目で見ていたが、ミスカに対しては真顔になる。
「隊長、四人だと歩きづらいとか何とか言ってたけどサキさんと二人が良かっただけだよな」
「こういう時だけ権力行使してくるのか……くっ、憎めない……」
「てか隊長と居る時のサキさん、なんか周りに花が見えるんだよな……なんでだろ?」
「わからん」
普段町を歩くのは苦痛だったのだが、今日はとても楽しい。
二人の観察……いや、護衛は続くのであった。
「ここは調味料がいっぱいありますね。カレー食べたいな」
「カレー?聞いたことないな」
「えっと、スパイスの効いた辛いスープ……みたいな感じです。あ、この香りですね」
「へぇ、食欲が湧いてくる」
「ですよね!」
ミスカさんは普段は無口に思えるが私の話をよく聞いて、一つ一つ言葉を汲み取ってくれる。それが嬉しくてつい色んなことを話したくなってしまうのだ。
そんな私達を見て周りの町の人達は驚き、小声で何か話して中には彼を指さして笑いながら通り過ぎる人もいた。
でもミスカさんが気にしなかったから私も気にしなかった。私はミスカさんと居て今楽しい、それで良かった。
「ここが花屋だ」
案内して貰って先程の大きな通りから少し離れたところにある小さなお店に辿り着いた。
私たちが中に入ると店主らしき人がこちらに気づく。金髪の三十代くらいの男性だった。
「ミスカ!久しぶりだね!」
「どうも」
「え!お知り合いですか?」
どうやら気が置けない仲であろう二人を交互に見る。
「彼はシオン……リュークの叔父なんだ」
「リュークの!?」
まさかここでリュークの名前が出てくるとは思わなかった。話を聞くと、なんとミスカさんとリュークは幼なじみらしい。
「親が俺の面倒を見なかったからリュークの家族に世話になっていたんだ。そのまま十三の頃からこの花屋で働かせて貰っていた」
「そうだったんですね……」
そんな過去があったとは知らず少し切ない気持ちになるが、リュークと特に仲が良さそうだったのも納得した。
教えてもらったことがあるっていうのもここでの事だったんだ。
「と、ところで……ミスカ……その子はもしかして……」
「黒騎士団のほうで……働いているサキだ」
「リュークさんとミスカさんにはいつも大変お世話になっております」
「え!そんなご丁寧に……というか働いて?なぜ?」
「色々と訳ありなんだ」
「そっか……大変なんだね……」
庭に植える花を買いたいと言うとシオンさんは嬉しそうに説明してくれた。
「種から育てるよりもある程度育っている苗からのほうが簡単だからね、植えてすぐ楽しめるし」
「そうだな、サキはどんな花が欲しい?」
「んー黄色と、あと青色の花があれば植えたいです」
貰ったのが赤系だったので、黄と青。この町の屋根の色を見てカラフルにしたいと思ったのだ。
それならとシオンさんにオススメされた花をいくつか購入しお店を出る。
「またいつでも来て。サキさんも!」
「はい!ありがとうございます」
手を振ってくれるシオンさんとお別れし、名残惜しいがそろそろ帰る時間がやってきた。
町の入口まで戻り護衛の二人と合流する。
「お二人ともありがとうございました」
「こちらこそ!見てるだけでしあわ…なんでもないです!」
荷物は三頭の馬に分けて乗せ、私たちは町を後にした。
「ミスカさん、今日は本当にありがとうございます。すごく楽しかったです」
「そうか、それなら良かった。……一つ気になったんだが、サキは青色が好きなのか?」
「え、どうしてですか?」
「髪も青色を選んでいたし、花も青が欲しいと言っていた」
「あ、えっと花はカラフルにしたくて青も入れたかったんです。髪色は……その…私の中でミスカさんのイメージが青色で、瞳も水色ですし、クールな感じで。だから……今日一緒にお出かけするのに合わせたかったんです」
「!俺に……合わせて」
「ごめんなさい!勝手なイメージで!」
慌てて謝る私に、ミスカさんは顔を赤らめまた優しい顔で微笑んだ。
「嬉しい、ありがとう。やっぱりサキは可愛い」
「え、あ、うぅ……ミスカさん、もう……可愛いって言わないでください…」
「どうしても口から出てしまうんだ。我慢するのは身体に悪いからな」
私の初めてのお出かけは楽しさと恥ずかしさでいっぱいだった。
体感的には二十分くらいだっただろうか。入口に到着しそこで馬を止め、ミスカさんの助けを借りて地面に降りた。
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町の中では馬は乗れないが連れて一緒に入って良いそうで、ミスカさんの馬は護衛の一人にお願いすることになった。
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「はい!」
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私がキョロキョロ周りを見ていると八百屋のおじさんが声をかけてきた。
「そこのお嬢さん!新鮮な果物はどうだい?」
「わぁ美味しそう!」
私たちが寄るとおじさんはミスカさんを見てギョッとした。
「お、お嬢さんの…連れかい?」
「はい、そうですよ」
「そ、そうか……。いや、うん。今はスイカが旬だね。小ぶりだがしっかり甘い。味は保証するよ!」
流石商売人、切り替えが速くサッと笑顔に戻ってくれた。見せてくれたスイカはずっしりと重く模様もハッキリしている。
「スイカいいなー!でもちょっと大きいし持ち運べないですよね」
「荷物はいくらでも持つから、気にしないで好きなものを買っていい。馬にも意外と乗せれるからな」
「そうですか……?じゃあ一個お願いします」
「まいど!銀貨三枚だよ」
私はポーチから財布を取り出し銀貨三枚を渡す。ミスカさんが紙袋に入ったスイカを受け取ってくれた。
「またよろしく!」
おじさんにお礼を言ってまた歩き出す。
「ミスカさん、重くないですか?」
「このくらい何ともない。正直荷物持ちくらいしか出来ないから任せてくれ」
「ありがとうございます。スイカ、一緒に食べましょうね」
出かける前にハインツさんから、今までのお給金の分だから自由に使ってくれとお金を頂いたのだが……。
「流石に……多くないですか?衣食住を用意してもらって、他にも色々買ってもらっているのに……」
金貨、銀貨、銅貨それぞれ十枚ずつ。価値があまり分からないが、ずっしりと重い袋を持ってみて……なんだか違う気がした。
「サキの働きぶりを考えれば当たり前だ。まだこれで全部ではないよ、とりあえず今回の買い物はこれで事足りると思うから」
「え!?いや、その……」
「銅貨十枚で銀貨一枚分、銀貨十枚で金貨一枚分だからね、分からなかったらミスカに任せれば良いよ」
と、にっこり笑顔で送り出された。
そんな会話を思い出しながらさっきの買い物を考える。
このスイカ銀貨三枚で日本だと三千円くらいかな。ん?そうすると銅貨が百円、銀貨が千円、金貨が一万円……?
財布の中を覗く。
これ十万円以上入ってる……ハインツさん!?
開いた口が塞がらない。半日の買い物で十万円なんて使ったことない。金銭感覚が違いすぎる。というか私のお給金設定はどうなっているのだろうか。
考えると怖くなって、私はそっと財布をしまいローブの中に隠した。
「サキ、どうかしたか?」
「いえ!なんでも無いです!あ、次はあのお店見てもいいですか?」
「ああ」
サキとミスカが買い物をしている間、護衛二人は距離を取りながら後ろを歩いていた。
「サキさん可愛いな……ローブで全身隠れてても、顔がうっすらしか見えてなくても可愛いのが分かる…」
「ほんとそれ。見ろよ、まだ隊長が片手で、いや小指で持てるくらいしか買い物してないんだぜ。なんなら自分で荷物持とうとしてるし。謙虚で本当に良い人だ……」
「馬に乗ってる時はしゃいでるの最高に可愛かった」
二人はサキを尊い目で見ていたが、ミスカに対しては真顔になる。
「隊長、四人だと歩きづらいとか何とか言ってたけどサキさんと二人が良かっただけだよな」
「こういう時だけ権力行使してくるのか……くっ、憎めない……」
「てか隊長と居る時のサキさん、なんか周りに花が見えるんだよな……なんでだろ?」
「わからん」
普段町を歩くのは苦痛だったのだが、今日はとても楽しい。
二人の観察……いや、護衛は続くのであった。
「ここは調味料がいっぱいありますね。カレー食べたいな」
「カレー?聞いたことないな」
「えっと、スパイスの効いた辛いスープ……みたいな感じです。あ、この香りですね」
「へぇ、食欲が湧いてくる」
「ですよね!」
ミスカさんは普段は無口に思えるが私の話をよく聞いて、一つ一つ言葉を汲み取ってくれる。それが嬉しくてつい色んなことを話したくなってしまうのだ。
そんな私達を見て周りの町の人達は驚き、小声で何か話して中には彼を指さして笑いながら通り過ぎる人もいた。
でもミスカさんが気にしなかったから私も気にしなかった。私はミスカさんと居て今楽しい、それで良かった。
「ここが花屋だ」
案内して貰って先程の大きな通りから少し離れたところにある小さなお店に辿り着いた。
私たちが中に入ると店主らしき人がこちらに気づく。金髪の三十代くらいの男性だった。
「ミスカ!久しぶりだね!」
「どうも」
「え!お知り合いですか?」
どうやら気が置けない仲であろう二人を交互に見る。
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「リュークの!?」
まさかここでリュークの名前が出てくるとは思わなかった。話を聞くと、なんとミスカさんとリュークは幼なじみらしい。
「親が俺の面倒を見なかったからリュークの家族に世話になっていたんだ。そのまま十三の頃からこの花屋で働かせて貰っていた」
「そうだったんですね……」
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「リュークさんとミスカさんにはいつも大変お世話になっております」
「え!そんなご丁寧に……というか働いて?なぜ?」
「色々と訳ありなんだ」
「そっか……大変なんだね……」
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「またいつでも来て。サキさんも!」
「はい!ありがとうございます」
手を振ってくれるシオンさんとお別れし、名残惜しいがそろそろ帰る時間がやってきた。
町の入口まで戻り護衛の二人と合流する。
「お二人ともありがとうございました」
「こちらこそ!見てるだけでしあわ…なんでもないです!」
荷物は三頭の馬に分けて乗せ、私たちは町を後にした。
「ミスカさん、今日は本当にありがとうございます。すごく楽しかったです」
「そうか、それなら良かった。……一つ気になったんだが、サキは青色が好きなのか?」
「え、どうしてですか?」
「髪も青色を選んでいたし、花も青が欲しいと言っていた」
「あ、えっと花はカラフルにしたくて青も入れたかったんです。髪色は……その…私の中でミスカさんのイメージが青色で、瞳も水色ですし、クールな感じで。だから……今日一緒にお出かけするのに合わせたかったんです」
「!俺に……合わせて」
「ごめんなさい!勝手なイメージで!」
慌てて謝る私に、ミスカさんは顔を赤らめまた優しい顔で微笑んだ。
「嬉しい、ありがとう。やっぱりサキは可愛い」
「え、あ、うぅ……ミスカさん、もう……可愛いって言わないでください…」
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