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サキとの出会い(ミスカ)
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天使……か……?
背中に羽が見える。慌てて目を擦ると羽は無くなったが、とても美しい女性がそこに居た。
今まで女に興味を持ったことはなかった。醜い容姿で産まれた俺を見ず父たちと過ごす母も俺にとっては必要ない存在で、女だからと優遇されちやほやされている町の女は綺麗だと思えず魅力さえも感じなかった。
背がどんどん伸びてガタイが良くなっていく俺を周りは怖がり蔑んだが、どうせ関わりもない赤の他人だ。何を言われても構わないと思っていた。
森にいた天使……女性はサキと言うらしい。
俺たちを見た時も怖がってる様子は無く驚いたのだが、俺が背負うとなった時も断らず嫌がることもなく身体を預けてくれた。
小さく細身で柔らかく、心配になるほど軽い。そして声を抑えて泣く彼女は震えていた。
「ありがとうございます。重かったですよね」
そう無理して笑うサキに俺は気の利いた言葉の一つもかけることが出来なかった。震える身体の感触と肩に一粒落ちた彼女の涙。
どうしてか胸がとても苦しくなった。
翌朝部屋から出てきたサキを見て一瞬息が止まる。明るい朝日に照らされた艶やかな黒髪、ぱっちりとした大きな黒い瞳、そして……スラリとシャツからのびる白い脚。
!!?
彼女は全く気にしてないようだったが、流石にあのままだと心臓に悪すぎる。何故かモヤモヤしたというのもあるが、それが団長とリュークに見せたくないという気持ちなのだと、その時は気づかなかった。
「ミスカ隊長、荷物が届きました。確認お願いします」
「ああ、今行く。……時間がかかるからもう少し後に運んでくれ」
「了解です」
今回はサキの為に用意した荷物も届いている。サキが住むということになって、何が必要になるのか全く分からなかった俺は、ログさんと相談しながらもとりあえず……言われた物は全部買ってしまった。
行商人のログさんは昔馴染みで信頼出来る人だ。これからも頻繁に来るから紹介しておいたほうがいいだろうと、サキも一緒に来てもらうことにした。
二人で歩いている間も会話は無い。今まで女性に無関心だったおかげで話題も見つからずどうしたものかと悩んでいると、どこからが「キュー」という音が聞こえた。動物の鳴き声かと思い不意に辺りを見渡すと、サキが顔を真っ赤にして手で腹を抑えていた。
腹の……音……?可愛い人は腹の音も可愛いのか?それは反則だろう…。
不意打ちをくらい思わず顔を背ける。
なんとか平静を取り戻したが、サキはどうやらよっぽど恥ずかしかったようで焦っているのがまた可愛くて顔が緩んでしまった。
ログさんから荷物を受け取り運ぼうとしたところでサキに容姿について聞かれた。驚いた様子を見るにサキの世界では黒髪も黒目も普通のことなのだろうか。
「私……変ですか?」
心配そうにこちらを見るサキに慌てて伝える。少し恥ずかしいことも言ったが事実だから仕方ない。
サキは俺にそんなことを言われても嫌な顔なんかしないで、むしろすごい照れていた。
やっぱり赤くなった彼女は可愛かった。
女には興味無かったはずなのに、出会ってからサキには新しい感情ばかり湧いてくる。
初めて見た時はその容姿に驚き、それで気になってしまっているだけだと思っていた。しかしサキと接していくうちに彼女の魅力は内面なのだと気づいていく。
「私は食事を作るお仕事をいただけて、こんなに沢山の人が楽しみにしてくれているのがとても嬉しいです」
「気軽に接してください」
あの時、食堂に来た騎士たちにそう言って彼女は優しく笑いかけた。それがサキの本心であることはその場にいた全員に伝わった。
それから黒騎士団全体の雰囲気が明るくなった。女性に対して少なからず不信感を抱いてる団員たちが彼女を受け入れるようになったのは、彼女が誠実だからだ。この人なら信じられると安心出来る。
俺もその内の一人だからな。
サキの内面の美しさに気づいてからは、更に天使に見えるし、少し会話をしただけで浮かれてしまう。笑顔も照れている顔もずっと眺めていたい。
本当に、どうしようも無いな。まさか自分がこんな感情を持つことになるとは。
思わず笑いが込み上げる。
俺はサキが好きだ。好きになるのは必然だった。恋というのはとても幸せものなのだな。
しかしいつかは訪れる。この気持ちとの別れか、サキとの本当の別れか、どちらかは必ず。それも必然だ。
分かってる、分かっているから……。
今はまだ幸せに浸かっていたい。
背中に羽が見える。慌てて目を擦ると羽は無くなったが、とても美しい女性がそこに居た。
今まで女に興味を持ったことはなかった。醜い容姿で産まれた俺を見ず父たちと過ごす母も俺にとっては必要ない存在で、女だからと優遇されちやほやされている町の女は綺麗だと思えず魅力さえも感じなかった。
背がどんどん伸びてガタイが良くなっていく俺を周りは怖がり蔑んだが、どうせ関わりもない赤の他人だ。何を言われても構わないと思っていた。
森にいた天使……女性はサキと言うらしい。
俺たちを見た時も怖がってる様子は無く驚いたのだが、俺が背負うとなった時も断らず嫌がることもなく身体を預けてくれた。
小さく細身で柔らかく、心配になるほど軽い。そして声を抑えて泣く彼女は震えていた。
「ありがとうございます。重かったですよね」
そう無理して笑うサキに俺は気の利いた言葉の一つもかけることが出来なかった。震える身体の感触と肩に一粒落ちた彼女の涙。
どうしてか胸がとても苦しくなった。
翌朝部屋から出てきたサキを見て一瞬息が止まる。明るい朝日に照らされた艶やかな黒髪、ぱっちりとした大きな黒い瞳、そして……スラリとシャツからのびる白い脚。
!!?
彼女は全く気にしてないようだったが、流石にあのままだと心臓に悪すぎる。何故かモヤモヤしたというのもあるが、それが団長とリュークに見せたくないという気持ちなのだと、その時は気づかなかった。
「ミスカ隊長、荷物が届きました。確認お願いします」
「ああ、今行く。……時間がかかるからもう少し後に運んでくれ」
「了解です」
今回はサキの為に用意した荷物も届いている。サキが住むということになって、何が必要になるのか全く分からなかった俺は、ログさんと相談しながらもとりあえず……言われた物は全部買ってしまった。
行商人のログさんは昔馴染みで信頼出来る人だ。これからも頻繁に来るから紹介しておいたほうがいいだろうと、サキも一緒に来てもらうことにした。
二人で歩いている間も会話は無い。今まで女性に無関心だったおかげで話題も見つからずどうしたものかと悩んでいると、どこからが「キュー」という音が聞こえた。動物の鳴き声かと思い不意に辺りを見渡すと、サキが顔を真っ赤にして手で腹を抑えていた。
腹の……音……?可愛い人は腹の音も可愛いのか?それは反則だろう…。
不意打ちをくらい思わず顔を背ける。
なんとか平静を取り戻したが、サキはどうやらよっぽど恥ずかしかったようで焦っているのがまた可愛くて顔が緩んでしまった。
ログさんから荷物を受け取り運ぼうとしたところでサキに容姿について聞かれた。驚いた様子を見るにサキの世界では黒髪も黒目も普通のことなのだろうか。
「私……変ですか?」
心配そうにこちらを見るサキに慌てて伝える。少し恥ずかしいことも言ったが事実だから仕方ない。
サキは俺にそんなことを言われても嫌な顔なんかしないで、むしろすごい照れていた。
やっぱり赤くなった彼女は可愛かった。
女には興味無かったはずなのに、出会ってからサキには新しい感情ばかり湧いてくる。
初めて見た時はその容姿に驚き、それで気になってしまっているだけだと思っていた。しかしサキと接していくうちに彼女の魅力は内面なのだと気づいていく。
「私は食事を作るお仕事をいただけて、こんなに沢山の人が楽しみにしてくれているのがとても嬉しいです」
「気軽に接してください」
あの時、食堂に来た騎士たちにそう言って彼女は優しく笑いかけた。それがサキの本心であることはその場にいた全員に伝わった。
それから黒騎士団全体の雰囲気が明るくなった。女性に対して少なからず不信感を抱いてる団員たちが彼女を受け入れるようになったのは、彼女が誠実だからだ。この人なら信じられると安心出来る。
俺もその内の一人だからな。
サキの内面の美しさに気づいてからは、更に天使に見えるし、少し会話をしただけで浮かれてしまう。笑顔も照れている顔もずっと眺めていたい。
本当に、どうしようも無いな。まさか自分がこんな感情を持つことになるとは。
思わず笑いが込み上げる。
俺はサキが好きだ。好きになるのは必然だった。恋というのはとても幸せものなのだな。
しかしいつかは訪れる。この気持ちとの別れか、サキとの本当の別れか、どちらかは必ず。それも必然だ。
分かってる、分かっているから……。
今はまだ幸せに浸かっていたい。
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