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リュークの好み
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ぼーっとしながら手元の箒を一心に動かし埃を廊下の隅に追いやる。
先日無事手元に戻ってきたバッグと携帯に安心していたのだが、ふとこう思った。
元の世界に帰る時に持っていかなくちゃ、と。
…帰れるのかな、私、いつか。
一週間後?一ヶ月後?一年後?
もし帰れなかったら……。
「サキ!」
「わっ!リューク!」
急に声をかけられて思わず握っていた箒を落としてしまう。
「ごめん、驚かせた?」
「ううん、大丈夫。ちょっと考え事してて」
そっか、とリュークが軽く頷くと耳にかかっていた後れ毛がさらりと揺れて前に落ちる。
金髪はこの世界では普通の事らしく他の団員たちの中にも何人か見かけたのだが、リュークは真っ直ぐ伸ばしていることもあって特に目を引く美しさを感じた。
「これ、サキのじゃないかと思って。廊下に落ちてたんだけど」
「あ!そうそう私の!」
ピンク色のペンを受け取る。
これもログさんが届けてくれた中にあった物だ。文房具も色々用意してくれたんだけど…なんと全部真っピンクだった。
女だからと思って揃えてくれたんだろうけど…流石にちょっと派手かなぁ。
「ありがとう」
「どういたしまして。サキのじゃなかったらどうしようかと思ったよ。騎士団の誰かがこれ持ってたら流石にびっくりだなぁ」
「ふふ、意外とギャップがあって良いかもね」
「ギャップ?」
なんて言えばいいかな。
昔読んだ少女漫画の、ヤンキーが猫を可愛がっているシーンを思い出す。
あれでドキドキしていた子供の頃が懐かしい…。
「意外性というか、カッコいい人が可愛い物を持っていたらドキッとする感じかな」
「へぇ…」
説明下手であんまり伝わらなかったかな。
「サキはそーゆー…ギャップのある人が好きなの?」
「お話とかでそういう恋愛は面白いなってだけで、別に私が特別好きなわけじゃないよ」
今まで好きな人とか、彼氏もいなかったから正直自分の好みがわからない。
好きになった人が好きって感じなのかな…?
「リュークはどんな子が好きなの?」
私がそう聞いたら、リュークは言葉に詰まり、困ったように眉を寄せた。
「俺は…好みなんてないよ、高望みしてもどうせ無理なんだから」
そう言って辛そうに笑った。
やっぱり容姿の問題って大きい。内面より外見を重視する世界なんだと思う。
もっと自信を持って欲しいな。
「無理じゃないよ。私はまだ会ったばかりだけど、リュークはカッコよくて優しい人だって知ってるもの」
「えっ!?」
「人を容姿だけで判断するような人はこっちから願い下げじゃない。どうせって思ってたら素敵な人も逃しちゃうかもしれないよ」
「っ…そんなふうに考えたこと無かった…。サキ、ありがとう」
元気になったみたいで良かった!
リュークも騎士団の皆もきっと素敵な人に出会えると思うんだよね。
「俺の好みはね…」
「うん?」
「サキみたいな人、かな」
……え!?
「じゃ、じゃあ!俺仕事戻るから、またね!」
言うだけ言って逃げるように去っていった。
び、びっくりしたぁ…!
お世辞…だよね。なんか私が言わせたみたいだったかな。
でも、嬉しいなぁ…。
胸がドキドキしてるけどなんだか驚きだけじゃない気がした。
よく分からないけど、不思議な感じ。
いつ帰れるのか、か…。
まだここにいたいな、なんてちょっと思ってしまった。
せっかく皆と出会えたんだし、今はこの生活を楽しんでも良いかな。
難しいことは未来の自分に任せて、とりあえず目の前のゴミを袋に詰め込んだ。
先日無事手元に戻ってきたバッグと携帯に安心していたのだが、ふとこう思った。
元の世界に帰る時に持っていかなくちゃ、と。
…帰れるのかな、私、いつか。
一週間後?一ヶ月後?一年後?
もし帰れなかったら……。
「サキ!」
「わっ!リューク!」
急に声をかけられて思わず握っていた箒を落としてしまう。
「ごめん、驚かせた?」
「ううん、大丈夫。ちょっと考え事してて」
そっか、とリュークが軽く頷くと耳にかかっていた後れ毛がさらりと揺れて前に落ちる。
金髪はこの世界では普通の事らしく他の団員たちの中にも何人か見かけたのだが、リュークは真っ直ぐ伸ばしていることもあって特に目を引く美しさを感じた。
「これ、サキのじゃないかと思って。廊下に落ちてたんだけど」
「あ!そうそう私の!」
ピンク色のペンを受け取る。
これもログさんが届けてくれた中にあった物だ。文房具も色々用意してくれたんだけど…なんと全部真っピンクだった。
女だからと思って揃えてくれたんだろうけど…流石にちょっと派手かなぁ。
「ありがとう」
「どういたしまして。サキのじゃなかったらどうしようかと思ったよ。騎士団の誰かがこれ持ってたら流石にびっくりだなぁ」
「ふふ、意外とギャップがあって良いかもね」
「ギャップ?」
なんて言えばいいかな。
昔読んだ少女漫画の、ヤンキーが猫を可愛がっているシーンを思い出す。
あれでドキドキしていた子供の頃が懐かしい…。
「意外性というか、カッコいい人が可愛い物を持っていたらドキッとする感じかな」
「へぇ…」
説明下手であんまり伝わらなかったかな。
「サキはそーゆー…ギャップのある人が好きなの?」
「お話とかでそういう恋愛は面白いなってだけで、別に私が特別好きなわけじゃないよ」
今まで好きな人とか、彼氏もいなかったから正直自分の好みがわからない。
好きになった人が好きって感じなのかな…?
「リュークはどんな子が好きなの?」
私がそう聞いたら、リュークは言葉に詰まり、困ったように眉を寄せた。
「俺は…好みなんてないよ、高望みしてもどうせ無理なんだから」
そう言って辛そうに笑った。
やっぱり容姿の問題って大きい。内面より外見を重視する世界なんだと思う。
もっと自信を持って欲しいな。
「無理じゃないよ。私はまだ会ったばかりだけど、リュークはカッコよくて優しい人だって知ってるもの」
「えっ!?」
「人を容姿だけで判断するような人はこっちから願い下げじゃない。どうせって思ってたら素敵な人も逃しちゃうかもしれないよ」
「っ…そんなふうに考えたこと無かった…。サキ、ありがとう」
元気になったみたいで良かった!
リュークも騎士団の皆もきっと素敵な人に出会えると思うんだよね。
「俺の好みはね…」
「うん?」
「サキみたいな人、かな」
……え!?
「じゃ、じゃあ!俺仕事戻るから、またね!」
言うだけ言って逃げるように去っていった。
び、びっくりしたぁ…!
お世辞…だよね。なんか私が言わせたみたいだったかな。
でも、嬉しいなぁ…。
胸がドキドキしてるけどなんだか驚きだけじゃない気がした。
よく分からないけど、不思議な感じ。
いつ帰れるのか、か…。
まだここにいたいな、なんてちょっと思ってしまった。
せっかく皆と出会えたんだし、今はこの生活を楽しんでも良いかな。
難しいことは未来の自分に任せて、とりあえず目の前のゴミを袋に詰め込んだ。
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