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ヴェルストリアとの出会い
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朝日が出始めた頃、私は早速食堂へ向かっていた。
ちょっと早すぎたかな……。
慣れるまではしばらくこれまでの当番の人が手伝いをしてくれるって聞いたけどまだ来ていないかもしれない。
心配しながらも食堂の扉を開けると、そこには白髪の少年がいた。
こちらを振り返った瞬間長めのサラサラの髪が宙に浮き、大きな瞳はエメラルド色。
あまりにも綺麗でスローに見えた、本当に。
ぽけーっと見つめていると美少年が喋った。
「はじめましてサキさん、ヴェルストリアと申します。料理のお手伝いは僕が担当させていただきます、よろしくお願いします。……あの……サキさん?」
名前を呼ばれハッと我に返る。
「あっ、ごめんなさい!思わず見とれちゃって」
「えっ」
「……ええと、こちらこそよろしくお願いします!」
初対面で急にガン見とか流石に失礼過ぎるよね……引かれてるかも……。
気まずい雰囲気が流れてしまったので慌てて話を振る。
「と、とりあえず食材見てもいいですか?」
「あ、はい!こっちにあります」
そのうちイケメン耐性つくかな……これからは気をつけよう。
彼に案内してもらった貯蔵庫らしき場所は一階から階段を降りた地下にあって、冷蔵庫のようにひんやりとした空間になっていた。冷凍庫代わりの場所もあるらしい。原理は分からない。
「ここの列が基本的に野菜が置いてあります。最近は誰も料理をしていなかったので今はこれだけしかありませんが……」
じゃがいも、にんじん、玉ねぎなど見たことある食材ばかりだがどれも時間が経ってしまっているからか品質はあまり良くないようだ。調味料も種類は少ないが、工夫すればなんとかなりそう。
「大体何人分作ればいいですか?」
「いつもは十人分くらいですね。騎士団の人数は五十人なんですけど決まった時間に食べに来る人はそんなにいないので」
五十人も居るんだ!そういえば私まだ四人しか関わっていないな……昨日、建物全体見て回ったのにやけに人が少なかった気がする。
貸してもらったエプロンを着けてさっそく調理していく。
ちなみに服はまだメンズものをワンピースにして着てる。定期的に来る行商人さんに頼むと持ってきてくれるらしい。
明日には届くって言ってたかな。
ヴェルストリアさんは野菜をひたすら切っていて、十人分の野菜たちがあっという間に鍋に入れられていく。
チラチラと様子を伺いながら話しかけてみる。
「ヴェルストリアさんは今日が料理担当の日なんですか?一日交代だと聞いたので」
「あ……今まではそうなんですけど」
「今までは?」
私が首を傾げるとヴェルストリアさんは手を止め何故か申し訳なさそうに答える。
「サキさんのお手伝いは毎回僕が担当することになったんです……」
「え!?」
「すみません!僕なんかが……やっぱり変えてもらいますので」
よくない方向に考えが進んでる…。
「そうじゃなくて、他にお仕事があるのに毎回こっちに来ていたら大変ですよ。皆さんとても忙しいと聞きましたしヴェルストリアさんも無理しないでほしいです」
「……僕のこと心配してくれて……?あ、いや僕はまだ下っ端で雑務ばかりですから。それに……」
それに?
「実は……サキさんのお手伝い、自分から志願したんです。昨日お見かけして可愛い人だなと思って……話してみたくて……」
耳まで真っ赤にしてどんどん小声になっていくヴェルストリアさん。さっきまでの落ち着いててしっかりとした様子とのギャップが激しすぎて、思わずキュンとしてしまった。
私のこと可愛いって……ヴェルストリアさんのほうが美人で可愛いから微妙な気持ちになるけど。
「そんな風に思ってくださったなんて嬉しいです!」
「……こんな男に近づかれて嫌じゃないんですか?」
大きな瞳が戸惑うように揺れているのを見て、私はヴェルストリアさんの手をそっと握った。
「嫌じゃないです。私もヴェルストリアさんとお話したいです」
「っ……!ありがとうございます……」
見た目に関して辛いことがあったのだろうか。手が小さく震えているのを感じ、少しでも安心してくれたらと握る手に優しく力を入れた。
しばらくして料理を再開し、先程より会話もスムーズになった。
「でもやっぱり一人だと負担が大きいと思いますけど……。一人だと決めたのはハインツさんが?」
「はい、団長がなるべくサキさんに会わせないほうが良いから一人に決めようと。うちの騎士団は皆……そうなのでたくさんいるのは辛いだろうと言っていました」
じゃあ昨日誰ともすれ違ったりしなかったのもハインツさんの粋な計らいか……!
イケメンに避けられてたと言うと語感的になんだか悲しい。というか私一人の為にそこまでするのはやりすぎな気がする。
ちょっと口から出かけたがここで言っても仕方ないのでこの話は終わろう。
「ヴェルストリアさんはおいくつなんですか?」
「先月十八になったばかりです」
「そうなんですね、おめでとうございます!じゃあちょうど成人ですね」
「?成人は十六歳からですよね」
あ、この世界では違うんだ。
ヴェルストリアさんが不思議そうな顔をしているのを見ると私が異世界から来たことは知らないのだと思う。
そんなこと急に言われてもおかしいよね、今は隠しておいたほうがいい気がする。変なこと言わないよう気をつけなきゃ。
「そ、そういえばそうでしたね!私は二十歳なんです。結構近いですね」
「年上だったんですか!てっきり同い年かと……。あ、敬語とか敬称も気にしないで好きに呼んでください」
「うん、わかった!ヴェルストリア……くんも好きに呼んでね」
「いえ!僕はそのままで……」
そんなこんなで料理も完成したので食堂へ運ぶ。チキンと玉子サラダやフルーツを挟んだサンドウィッチ、野菜たっぷりの鶏ガラスープを作った。それぞれ自由に取ってもらって時間なったら片付ける、というシステムらしい。
「すごいですね……こんな豪華な朝食初めてです!」
「そんなに豪華って言うほどでもないと思うけど、朝はしっかり食べなきゃね」
時間にはまだ早いが皿に二人分取り分け、早速頂くことにした。
「いただきます……ん~美味しい!こんなに大人数のご飯作ったの初めてだったけどちゃんと出来て良かった!」
自画自賛しながらヴェルストリアくんのほうを見てみるとスープを一口飲んだところでピタリと止まっていた。
え、どうしよう。この世界の人の口には合わなかったのかもしれない。
「あの……ヴェルストリアくん……」
「……こんな……」
「え?」
「こんなに美味しいもの初めて食べました……!」
サンドイッチもかじり目を輝かせる。
「あの食材でここまで作れるなんて……」
美味しい美味しいと言いながら勢い良く食べ、あっという間に完食してくれた。その様子が本当に嬉しそうで思わず笑ってしまった。
「正直に言うと女性でここまで料理が出来るなんて思っていなくて……馬鹿にしていたとかでは無いんですけど、すみません」
「ううん、喜んでもらえて良かった!食事係……安心して任せてもらえる?」
「勿論です!僕に出来ることは何でもしますので、よろしくお願いします」
私も食べ終わり食器を片付けた頃にはそろそろ食堂に人が集まる時間になっていた。
「ではまた夕方に来ますね」
「ありがとう、お仕事頑張って!」
ヴェルストリア君はまた最初の落ち着いた雰囲気に戻り、爽やかな笑顔で食堂を後にした。大人っぽい人だけどさっきの嬉しそうな顔を思い出すと、なんだか弟が出来た気分になった。
ちょっと早すぎたかな……。
慣れるまではしばらくこれまでの当番の人が手伝いをしてくれるって聞いたけどまだ来ていないかもしれない。
心配しながらも食堂の扉を開けると、そこには白髪の少年がいた。
こちらを振り返った瞬間長めのサラサラの髪が宙に浮き、大きな瞳はエメラルド色。
あまりにも綺麗でスローに見えた、本当に。
ぽけーっと見つめていると美少年が喋った。
「はじめましてサキさん、ヴェルストリアと申します。料理のお手伝いは僕が担当させていただきます、よろしくお願いします。……あの……サキさん?」
名前を呼ばれハッと我に返る。
「あっ、ごめんなさい!思わず見とれちゃって」
「えっ」
「……ええと、こちらこそよろしくお願いします!」
初対面で急にガン見とか流石に失礼過ぎるよね……引かれてるかも……。
気まずい雰囲気が流れてしまったので慌てて話を振る。
「と、とりあえず食材見てもいいですか?」
「あ、はい!こっちにあります」
そのうちイケメン耐性つくかな……これからは気をつけよう。
彼に案内してもらった貯蔵庫らしき場所は一階から階段を降りた地下にあって、冷蔵庫のようにひんやりとした空間になっていた。冷凍庫代わりの場所もあるらしい。原理は分からない。
「ここの列が基本的に野菜が置いてあります。最近は誰も料理をしていなかったので今はこれだけしかありませんが……」
じゃがいも、にんじん、玉ねぎなど見たことある食材ばかりだがどれも時間が経ってしまっているからか品質はあまり良くないようだ。調味料も種類は少ないが、工夫すればなんとかなりそう。
「大体何人分作ればいいですか?」
「いつもは十人分くらいですね。騎士団の人数は五十人なんですけど決まった時間に食べに来る人はそんなにいないので」
五十人も居るんだ!そういえば私まだ四人しか関わっていないな……昨日、建物全体見て回ったのにやけに人が少なかった気がする。
貸してもらったエプロンを着けてさっそく調理していく。
ちなみに服はまだメンズものをワンピースにして着てる。定期的に来る行商人さんに頼むと持ってきてくれるらしい。
明日には届くって言ってたかな。
ヴェルストリアさんは野菜をひたすら切っていて、十人分の野菜たちがあっという間に鍋に入れられていく。
チラチラと様子を伺いながら話しかけてみる。
「ヴェルストリアさんは今日が料理担当の日なんですか?一日交代だと聞いたので」
「あ……今まではそうなんですけど」
「今までは?」
私が首を傾げるとヴェルストリアさんは手を止め何故か申し訳なさそうに答える。
「サキさんのお手伝いは毎回僕が担当することになったんです……」
「え!?」
「すみません!僕なんかが……やっぱり変えてもらいますので」
よくない方向に考えが進んでる…。
「そうじゃなくて、他にお仕事があるのに毎回こっちに来ていたら大変ですよ。皆さんとても忙しいと聞きましたしヴェルストリアさんも無理しないでほしいです」
「……僕のこと心配してくれて……?あ、いや僕はまだ下っ端で雑務ばかりですから。それに……」
それに?
「実は……サキさんのお手伝い、自分から志願したんです。昨日お見かけして可愛い人だなと思って……話してみたくて……」
耳まで真っ赤にしてどんどん小声になっていくヴェルストリアさん。さっきまでの落ち着いててしっかりとした様子とのギャップが激しすぎて、思わずキュンとしてしまった。
私のこと可愛いって……ヴェルストリアさんのほうが美人で可愛いから微妙な気持ちになるけど。
「そんな風に思ってくださったなんて嬉しいです!」
「……こんな男に近づかれて嫌じゃないんですか?」
大きな瞳が戸惑うように揺れているのを見て、私はヴェルストリアさんの手をそっと握った。
「嫌じゃないです。私もヴェルストリアさんとお話したいです」
「っ……!ありがとうございます……」
見た目に関して辛いことがあったのだろうか。手が小さく震えているのを感じ、少しでも安心してくれたらと握る手に優しく力を入れた。
しばらくして料理を再開し、先程より会話もスムーズになった。
「でもやっぱり一人だと負担が大きいと思いますけど……。一人だと決めたのはハインツさんが?」
「はい、団長がなるべくサキさんに会わせないほうが良いから一人に決めようと。うちの騎士団は皆……そうなのでたくさんいるのは辛いだろうと言っていました」
じゃあ昨日誰ともすれ違ったりしなかったのもハインツさんの粋な計らいか……!
イケメンに避けられてたと言うと語感的になんだか悲しい。というか私一人の為にそこまでするのはやりすぎな気がする。
ちょっと口から出かけたがここで言っても仕方ないのでこの話は終わろう。
「ヴェルストリアさんはおいくつなんですか?」
「先月十八になったばかりです」
「そうなんですね、おめでとうございます!じゃあちょうど成人ですね」
「?成人は十六歳からですよね」
あ、この世界では違うんだ。
ヴェルストリアさんが不思議そうな顔をしているのを見ると私が異世界から来たことは知らないのだと思う。
そんなこと急に言われてもおかしいよね、今は隠しておいたほうがいい気がする。変なこと言わないよう気をつけなきゃ。
「そ、そういえばそうでしたね!私は二十歳なんです。結構近いですね」
「年上だったんですか!てっきり同い年かと……。あ、敬語とか敬称も気にしないで好きに呼んでください」
「うん、わかった!ヴェルストリア……くんも好きに呼んでね」
「いえ!僕はそのままで……」
そんなこんなで料理も完成したので食堂へ運ぶ。チキンと玉子サラダやフルーツを挟んだサンドウィッチ、野菜たっぷりの鶏ガラスープを作った。それぞれ自由に取ってもらって時間なったら片付ける、というシステムらしい。
「すごいですね……こんな豪華な朝食初めてです!」
「そんなに豪華って言うほどでもないと思うけど、朝はしっかり食べなきゃね」
時間にはまだ早いが皿に二人分取り分け、早速頂くことにした。
「いただきます……ん~美味しい!こんなに大人数のご飯作ったの初めてだったけどちゃんと出来て良かった!」
自画自賛しながらヴェルストリアくんのほうを見てみるとスープを一口飲んだところでピタリと止まっていた。
え、どうしよう。この世界の人の口には合わなかったのかもしれない。
「あの……ヴェルストリアくん……」
「……こんな……」
「え?」
「こんなに美味しいもの初めて食べました……!」
サンドイッチもかじり目を輝かせる。
「あの食材でここまで作れるなんて……」
美味しい美味しいと言いながら勢い良く食べ、あっという間に完食してくれた。その様子が本当に嬉しそうで思わず笑ってしまった。
「正直に言うと女性でここまで料理が出来るなんて思っていなくて……馬鹿にしていたとかでは無いんですけど、すみません」
「ううん、喜んでもらえて良かった!食事係……安心して任せてもらえる?」
「勿論です!僕に出来ることは何でもしますので、よろしくお願いします」
私も食べ終わり食器を片付けた頃にはそろそろ食堂に人が集まる時間になっていた。
「ではまた夕方に来ますね」
「ありがとう、お仕事頑張って!」
ヴェルストリア君はまた最初の落ち着いた雰囲気に戻り、爽やかな笑顔で食堂を後にした。大人っぽい人だけどさっきの嬉しそうな顔を思い出すと、なんだか弟が出来た気分になった。
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