プロサッカークラブを運営しよう!~システムの先を行くクラブ運営~

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第二章 オーナー就任んん!!??

1.とりあえず最終節らしい

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「…はっ!」

 気付いたら、俺はスタジアムの前にいた。
 何を言っているかわからんと思うが、俺にもわからん。さっきまで会社にいたはずなのに…?
 とりあえず気づいたら俺はスタジアムの前に立っていた。そして恐らく目の前にいるスーツ姿の女性は俺の知り合いのようだ。
 いつの間に夜から朝に変わったんだとか、そもそもなんでこんな場所に俺はいるのかとか色々と疑問は浮かぶ。よく見れば俺の服装も変わっていた。
 
 皺が付いてクタクタになっていた背広ではなく、パリッとしたスーツを着ている。上下黒のスーツに白のワイシャツ、そして細めの黒ネクタイが付いていた。
 喪服の時のような太めのネクタイではなく、言うなればオシャレネクタイとでも言おうか。それこそ、テレビでよく見る海外サッカーの監督が付けているような…。
 
 そんな俺を気にする事無く女性が俺に話し掛けてきた。


「いよいよ最終節ですね!オーナー!」

 栗色の髪をしたセミロングの女性が興奮した口調でそう言った。
 あ、この人さっき広告バーで見たキャラに似てるわ。

「最終節…ですか?」
「はい!泣いても笑っても今日で決まりますね!」

 …何が?
 ってかオーナーって…?

 ふむ、全く意味がわからん。どういう事なんだろうかと思いながら頭をポリポリと掻くと、パサッと首から何かが後ろに落ちた。後ろを見ると、そこにはかなり長めのマフラーが落ちていた。どうも俺が首から掛けていたみたいだ。よく見たら女性も首にサッカーでよく見るロングマフラーを掛けている事に気づく。
 マフラーを拾って広げてみる。そこには鮮やかな青と白で「PARADIS ICHINOSE」と書かれていた。

「パラディス…一ノ瀬?」
「そうです!我がパラディス一ノ瀬がJ3へ昇格するかどうかが今日決まるんです!」

 あ、はい。

 やっぱりわからん。わからんけど今日で決まるらしい。
 思ったより動揺が無いのはなぜなんだろう?
 
 ちらほらとロングマフラーを首から掛けた人やレプリカユニフォームを纏った人、相手チームのサポーターであろう人などとすれ違う。
 スタジアム外周沿いの街頭には、選手たちの顔を印刷したタペストリーが掲げられている。

 J3に昇格って事は、恐らくチームはJFLで首位争いをしている、というところか。しかも今日の最終節の結果次第では昇格出来るって、かなりのものなんじゃないか?
 確かJ3への昇格には地方チームにはかなり厳しい条件が多かったと記憶しているが、目の前の女性の言葉をそのまま信じるのなら、恐らくクリアしているのだろう。


「泣いても笑っても最終節、さぁ、行きましょう!」

 女性の言葉の後、俺はそのまま気を失った。
 それさっきも言ってたよね。

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「…はっ!」
 …知らない部屋だ。ってか展開がほんと早すぎ。
 
 気付けば試合観戦前のはずなのに、なぜか俺はロッカールームにいた。それぞれのロッカーにはユニフォームが掛けられていた。ユニフォームは先程見たロングマフラー同様に青と白で彩られている。
 ロッカールーム内に他の人の気配はない。そこかしこにカバンが置いてあるのを見ると、選手たちは練習にでも行っているのだろうか?カバンからは予備なのだろうか、白のインナーシャツとスパイクが見えた。

 もはやこの時点で俺は思考を止めていた。
 あまりにも現実味が無い。スタジアムに来るのも初めてのはずだ。その割には俺はあまりにも落ち着き過ぎている。俺がオーナーとか訳が分からない。
 だけどこの状況に違和感を感じていない。まるで初めてではないような、いつもの光景のようにもどこか感じてしまう。


 そんな俺を女性はニコニコと笑ったまま何も言わずにこちらを見ていた。

「あの…」

 あまりにも何も言わないのでこちらから声を掛ける。その瞬間、目の前に何かが浮かんできた。

「えっ」

 ブゥン…、と音が鳴って目の前には液晶ディスプレイが浮かんだ。
 なんぞこれは…。
 明らかに技術的なものを無視したディスプレイに思わず息を飲む。特殊なメガネを掛けているわけでもないのに、まるでそこにPC画面でもあるかのように見える。
 思わず不安になって女性を見る。

「えっ」
 思わず声を出してしまった。

「固まってる…?」

 女性はニコニコと笑ったままその場で固まっていた。
 確かに先ほども笑ったまま何も言わずにこちらを見ていたが、今は

「あの…、聞こえています…?」

 声を掛けても女性は反応しない。まるで石化しているかのようだ。
 おずおずと近づいてみる。女性は変わらず動かない。ここで俺は半ば考えている事があった。だが念には念を入れないといけない。思い切って女性の顔付近まで近づいて見た。

 女性からは全くの息遣いが感じられなかった。息を止めているのではなく、生命活動を感じなかったのだ。後ろに回っても、横に立っても何も変化は見られない。

 やはりそうか…。
 俺の考えは、ここで完全に確信に変わった。

 

 目の前の近未来的なディスプレイに視線を戻す。そこには様々な情報が映っていた。

【JFL第32節 パラディス一ノ瀬 VS アルディ大熊】

 最上段に対戦チーム名と順位が映っていた。どうもうちのチームは2位らしく、相手チームは3位のようだ。確か上位2チームから昇格されるのが通常のはずだから、確かにこれは気合が入るな。
 その下には5角形グラフで両チームの戦力が映されており、中心には戦力が数値で書かれていた。自チーム・相手チームの得意戦術、得意フォーメーション、キーマン、キャプテン、監督名…。
 世の中のサッカークラブが見たら怒り狂いそうな情報が映っている。

 と、すれば…。
 俺はディスプレイ上の情報を順番に見ながら探す。どこかにあるはずだ。が。

 上から徐々に視線をディスプレイの下に落とし、下段付近に並ぶそれを見つけて思わずほくそ笑む。
 そこには3つのボタンが横一列に並べられていた。

 【チーム編成】【対戦チーム】【リーグ情報】

 俺はニヤニヤしながら【チーム編成】をタッチする。
 
 やはりまた俺はそのまま気を失った。
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