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第五話
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◆◇◆◇
前回のアタックで破けてしまった衣類は新調していた。
靴と合わせてチェックするが特に違和感や動きにくさなどは無い。頭に着けた傷が目立つヘッドライトのスイッチを点けた。
照らされた先にあるダンジョンの姿は前回と全く異なっていた。
前のような一本道ではあるが、道幅も異なるし、天井も前回より少し低いか?
とはいえ入口でうろちょろしていても仕方ない。早速歩き始める。
「と、言っている間にって感じかな」
ヘッドライトに照らされた小さな物体が見えた。
身長はおよそ1m弱、防具は粗末な腰蓑だけで武器は木の棒を持っている。
早速リベンジ戦と洒落こみますか!
意気込んで戦闘を開始したものの、ゴブリンはめちゃくちゃ弱かった。ライトの光に反応して俺のところまで走ってきたがその動きはトラップ部屋の奴らよりもかなり遅かったし、木の棒を振り下ろす時の動きも緩慢だった。
余裕を持ってゴブリンの動きを見切って避け、胸元を一突きにする。
驚く程、スッとゴブリンに突き刺せたから思わず槍が刺さっていないんじゃないかと思ったぐらいだ。慌てて槍を引き抜くと、ゴブリンは絶命して倒れ伏し、胸から血を流しながらダンジョンの床にまるで吸い込まれるように溶け落ちていった…。グロい。
そういえば前回は倒してすぐに俺も気絶したから見ていなかったんだった。酸で溶け落ちるようにグジュグジュと音を鳴らしながら消えていった跡には、小さな魔石が残っていた。
「んー…?なんか前より小さいな」
手に取った魔石を見るが、前回アタック時に倒したゴブリンの魔石よりも小さかった。およそ半分程度のサイズといったところか?個体差があるのかな?
小さな魔石をリュックに入れ、そのままダンジョンアタックを続ける。その後も4体ゴブリンと遭遇したが、全て木の棒を持った弱いゴブリンだった。難なくそれらを倒し、道中で見つけた小部屋には小さな宝箱。中身は前回同様にポーションだった。
ポーションの色合いは前回よりも薄く粘度も低い。たぶんこのポーションの方が粗悪品なのだろう。
もともと今日のアタックは槍の使い勝手を調べる為のものだったから、アタック開始から1時間程見つけた小部屋で居座っていたゴブリン2匹を倒して小休止して引き返す。
こういった小部屋はダンジョン内に数多く存在するらしい。小部屋に入った時に鍵が掛けられるが、小部屋内モンスターを倒して開錠してしまえば一度ダンジョン外に出るまでは新たにポップする事はない。なので冒険者は小部屋で休憩を取る事が通例となっている、と探索者協会HPに書かれていた。
高難度ダンジョンは泊まり込みでアタックが基本であり、そういったダンジョンでの仮眠場所にも使用されるとの事だ。
俺も例に違わず小部屋で休憩がてらダンジョンに来る前にコンビニで買ったおにぎりを食べながら休憩したが、食べ切ってしまうとする事が無くなってすぐに小部屋から出てしまった。
身体は疲れていないし、スマホは電波が届かない。一人だから会話も無く、純粋にする事が何も無かった。
「次からはクロを連れてくるのもいいかもな」
一人でのダンジョンアタックは思った以上に寂しかった。
俺の基本方針はあくまでも「いのちだいじに」だ。もっといっぱいモンスターが出てこねーかなーなんて欠片ほども思っていないし、俺はあくまでも一般サラリーマンでしかない。さすがに時間をかけてアタックした結果がボウズでした、は勘弁して欲しいけど。
とはいえ職業冒険者ではないし、こうしてモンスターを倒して魔石やアイテムをゲットしても1円の儲けにもならない。
偶然クロと出会って、武器を与えられたからアタックしているだけだ。確かに前回アタック時のゴブリン達を横一閃出来たのは悪くない気分だったが、戦闘中は余裕なんて全く無かった。そこら中痛いし、生きてきて初めて死を強烈に感じたのだ。あんな思いはもうしたくない。前回の俺が楽天的でアホ過ぎただけだ。
ソロアタックである以上、安全マージンは十分すぎるほどに取っておくべきだ。
結局、ダンジョンを出るまでにさらに6匹のゴブリンを倒して終了となった。当初の目的だった槍の使い勝手は非常に良く、増した重さもほとんど気にならない。むしろ軽すぎない事で取り回しが良くなったかもしれない。
穂先から柄までゴブリンの血で黒くなってしまっているが、それでも突き刺す際の錆はほぼ気にならなかった。耐久性もかなり向上しているようで、まだまだ壊れそうにない。
休日の早朝から2時間アタックしていい運動にもなったし、小さいが魔石とポーションも手に入れた。レベルアップはしなかったが、上々の結果だと言えるのではなかろうか。
ほんと、こんな事ならもっと早くアタックしてレベルアップしておけば良かったな。
持ち帰った魔石をクロに食べさせたがレベルアップはしなかった。やはり俺とクロの必要経験値は同値なのかな?
時刻はまだ12時過ぎ。近くのスーパーで買った昼食を食べつつ、同じくスーパーで買ったプラスチック素材をクロに食べさせる。クロはまだまだ食べられそうで、試しに今日のアタックで使っていた槍を持ってみると、クロが大きく口を開けて飲み込んだ。
ゴブリンの血とかめっちゃ付いてたけど…いいのか?
飲み込んでからクロはじっとしていたので、ぽちぽちと冒険者協会HPを見ていると、クロがぴょんぴょんと跳ねながら俺が置いた板の前までやってきて、すぽんっと小気味いい音と共に新たな槍を吐き出した。
「おぉ…これは…。まごう事なきシンプルな槍じゃんか」
手に取って軽く上げ下げしてみる。今日使っていた槍と寸分の違いもない。いや、シンプルな槍だからディテールまではわからんけど。
重さも一緒な気がする。穂先は綺麗になっているし、戦闘で付いた細かな傷もない。
「古い武器や防具もクロに食べてもらったら新しく生まれ変わるという事か…」
これは正しくリサイクル!しかも100%再生利用可能だから無駄なゴミも出ない!
という事は、今後も同じ武器や防具を使ってアタックしつつ、定期的に魔石を食べてレベルアップすればさらに強くなっていうということ!?
たかがプラスチック、されどプラスチックというところか…。
「こんなんチートやん!…って言われてもおかしくないかもしれないな」
そもそも武器防具を自前で用意する必要がない時点でかなりチートだけど、これはさらに凶悪なチートだと言えるかもしれない。だって実質ずっと強化していけてなおかつほとんどコストは掛かっていないわけだもんな。プラスチック恐るべし、といったところか。
一頻り槍を点検し、特に問題は無さそうだった。そこで、俺はクロにもう一つお願いをする事にした。
「クロ、実はもう一つ作ってもらいたいものがあるんだ。今日のアタックの時にどうしても槍が途中で壊れないかが怖くてさ、そっちに意識ばっかりいっちゃうんだよな」
そう、そもそも今日のアタックは槍の性能と耐久を図る為のアタックだったが、ある程度ダンジョンの奥まで進むと、やはりと言うべきか槍の耐久が気になって仕方がなかった。
もしも途中で槍が壊れてしまったら…?武器を持たない状態で帰りの道中でモンスターと鉢合わせでもしたら…?
安全マージンは十分に確保していたとはいえ、所詮は消耗品だ。壊れる時は壊れるだろうし、俺の不注意で壊してしまう可能性だって十分にある。そういった時のサブ武器の必要性を痛感したのが今日の収穫だったかもしれない。
「とは言っても、どんな武器にするかが問題だな…」
俺のメイン武器は槍だ。これは変えるつもりはない。武芸の初心者ですらない俺が近接武器など装備しても十全には扱えないだろうし、何より怖い。
投擲武器もあるが、命中させられる気もしない。エミール社のHPを見ながら色んな武器を見たが、どれもピンとは来なかった。槍は中距離武器だから、遠距離が良いのか?弓やボウガンなどもあるけど、使える気がしない…。強いて言えば銃関係がいいけど、売られている銃は目が飛び出るほどに金額だ。最低金額が一千万単位からとかビビるわ…。
銃をクロに作ってもらおうかとも思ったが、あくまでクロが作れるのは銃らしき見た目であって、内部の機構までは当然作れない。ハリボテ銃を作ってもらっても仕方ないから諦めた。ソロアタックを継続する以上、継戦能力も上げていく必要がある。その為にもサブ武器はいずれ用意しようと思う。
「当面は安全マージンを十分に取りながら進めるしかないか」
なんでこんなダンジョンアタックに前向きなんだろ?と思わないでもなかったけど、あまり考えないようにした。今更、今までのような生活だと物足りないし、せっかくクロという稀有な存在に出会えたのにそれだけで終わらせたら勿体なさすぎる。誰も知らないテイムモンスターを俺だけが知っていて、なおかつ新たな武器防具を生み出せるという事実に少なからず優越感を感じているのも否定できないけどね。
まるで俺がこの世界の特異点で、これから何かが始まる…。なんて妄想も何度かしているけど。まぁ…無いよな(笑)
◆◇◆◇
土曜日のアタックだけでは物足らず、日曜日も春道ダンジョンにアタックした。さすがに三回目のアタックにもなると、モンスターを倒す事への忌避感は薄くなり、槍を突いた時に出る血や内臓を見てもほとんど動揺しなくなった。メンタル面の向上が著しい。恐らくレベルアップが起因しているのでは?と予想している。
日曜日のアタックで今までのアタックと違っていたことがある。モンスターの種類だ。今まではゴブリンしか出なかったが、初めてコボルトが現れた。ゴブリンよりも少し大きめで、130cmほどはあるだろうか?現れた時は2足歩行で徘徊していたのに、俺の姿を見た瞬間にいきなり走ってきて飛び蹴りしたのには驚いた。走るスピードもゴブリンよりかなり速かったのでめちゃめちゃ焦った。ギリギリで避けたけど、ズボンが少し破れてしまった。安全マージンを十分に取っていなかったらかなり危うかっただろう。
強さ自体は大したことなくて、槍を一突きしたら簡単に倒せたけれど、一瞬の出来事に心臓はバクバクだった。その後現れたコボルトにはそれ以上の安全マージンを取りつつ、先手必勝でどんどん突いていったけどね。どうやらコボルトは距離がある時は初手で必ず飛び蹴りをするらしく、飛んでくるコボルトに向かって槍を突き出しているだけで済んだ。とはいえこの戦法も今のところコボルトが単体でしか現れないから出来るものであって、複数の時はどうするんだって課題は残っているが。
この日のアタックで現れたモンスターの数はなんと12匹!コボルトは単体でしか現れず、残りはゴブリンだったので苦労はしなかったがそれでも多かった。最後に現れたコボルトを倒してやっとレベルアップした。帰宅してクロにも同数の魔石を食べさせたらレベルアップしたようだ。
これで俺とクロの必要経験値は同値だとほぼ断言していいだろう。
前回のアタックで破けてしまった衣類は新調していた。
靴と合わせてチェックするが特に違和感や動きにくさなどは無い。頭に着けた傷が目立つヘッドライトのスイッチを点けた。
照らされた先にあるダンジョンの姿は前回と全く異なっていた。
前のような一本道ではあるが、道幅も異なるし、天井も前回より少し低いか?
とはいえ入口でうろちょろしていても仕方ない。早速歩き始める。
「と、言っている間にって感じかな」
ヘッドライトに照らされた小さな物体が見えた。
身長はおよそ1m弱、防具は粗末な腰蓑だけで武器は木の棒を持っている。
早速リベンジ戦と洒落こみますか!
意気込んで戦闘を開始したものの、ゴブリンはめちゃくちゃ弱かった。ライトの光に反応して俺のところまで走ってきたがその動きはトラップ部屋の奴らよりもかなり遅かったし、木の棒を振り下ろす時の動きも緩慢だった。
余裕を持ってゴブリンの動きを見切って避け、胸元を一突きにする。
驚く程、スッとゴブリンに突き刺せたから思わず槍が刺さっていないんじゃないかと思ったぐらいだ。慌てて槍を引き抜くと、ゴブリンは絶命して倒れ伏し、胸から血を流しながらダンジョンの床にまるで吸い込まれるように溶け落ちていった…。グロい。
そういえば前回は倒してすぐに俺も気絶したから見ていなかったんだった。酸で溶け落ちるようにグジュグジュと音を鳴らしながら消えていった跡には、小さな魔石が残っていた。
「んー…?なんか前より小さいな」
手に取った魔石を見るが、前回アタック時に倒したゴブリンの魔石よりも小さかった。およそ半分程度のサイズといったところか?個体差があるのかな?
小さな魔石をリュックに入れ、そのままダンジョンアタックを続ける。その後も4体ゴブリンと遭遇したが、全て木の棒を持った弱いゴブリンだった。難なくそれらを倒し、道中で見つけた小部屋には小さな宝箱。中身は前回同様にポーションだった。
ポーションの色合いは前回よりも薄く粘度も低い。たぶんこのポーションの方が粗悪品なのだろう。
もともと今日のアタックは槍の使い勝手を調べる為のものだったから、アタック開始から1時間程見つけた小部屋で居座っていたゴブリン2匹を倒して小休止して引き返す。
こういった小部屋はダンジョン内に数多く存在するらしい。小部屋に入った時に鍵が掛けられるが、小部屋内モンスターを倒して開錠してしまえば一度ダンジョン外に出るまでは新たにポップする事はない。なので冒険者は小部屋で休憩を取る事が通例となっている、と探索者協会HPに書かれていた。
高難度ダンジョンは泊まり込みでアタックが基本であり、そういったダンジョンでの仮眠場所にも使用されるとの事だ。
俺も例に違わず小部屋で休憩がてらダンジョンに来る前にコンビニで買ったおにぎりを食べながら休憩したが、食べ切ってしまうとする事が無くなってすぐに小部屋から出てしまった。
身体は疲れていないし、スマホは電波が届かない。一人だから会話も無く、純粋にする事が何も無かった。
「次からはクロを連れてくるのもいいかもな」
一人でのダンジョンアタックは思った以上に寂しかった。
俺の基本方針はあくまでも「いのちだいじに」だ。もっといっぱいモンスターが出てこねーかなーなんて欠片ほども思っていないし、俺はあくまでも一般サラリーマンでしかない。さすがに時間をかけてアタックした結果がボウズでした、は勘弁して欲しいけど。
とはいえ職業冒険者ではないし、こうしてモンスターを倒して魔石やアイテムをゲットしても1円の儲けにもならない。
偶然クロと出会って、武器を与えられたからアタックしているだけだ。確かに前回アタック時のゴブリン達を横一閃出来たのは悪くない気分だったが、戦闘中は余裕なんて全く無かった。そこら中痛いし、生きてきて初めて死を強烈に感じたのだ。あんな思いはもうしたくない。前回の俺が楽天的でアホ過ぎただけだ。
ソロアタックである以上、安全マージンは十分すぎるほどに取っておくべきだ。
結局、ダンジョンを出るまでにさらに6匹のゴブリンを倒して終了となった。当初の目的だった槍の使い勝手は非常に良く、増した重さもほとんど気にならない。むしろ軽すぎない事で取り回しが良くなったかもしれない。
穂先から柄までゴブリンの血で黒くなってしまっているが、それでも突き刺す際の錆はほぼ気にならなかった。耐久性もかなり向上しているようで、まだまだ壊れそうにない。
休日の早朝から2時間アタックしていい運動にもなったし、小さいが魔石とポーションも手に入れた。レベルアップはしなかったが、上々の結果だと言えるのではなかろうか。
ほんと、こんな事ならもっと早くアタックしてレベルアップしておけば良かったな。
持ち帰った魔石をクロに食べさせたがレベルアップはしなかった。やはり俺とクロの必要経験値は同値なのかな?
時刻はまだ12時過ぎ。近くのスーパーで買った昼食を食べつつ、同じくスーパーで買ったプラスチック素材をクロに食べさせる。クロはまだまだ食べられそうで、試しに今日のアタックで使っていた槍を持ってみると、クロが大きく口を開けて飲み込んだ。
ゴブリンの血とかめっちゃ付いてたけど…いいのか?
飲み込んでからクロはじっとしていたので、ぽちぽちと冒険者協会HPを見ていると、クロがぴょんぴょんと跳ねながら俺が置いた板の前までやってきて、すぽんっと小気味いい音と共に新たな槍を吐き出した。
「おぉ…これは…。まごう事なきシンプルな槍じゃんか」
手に取って軽く上げ下げしてみる。今日使っていた槍と寸分の違いもない。いや、シンプルな槍だからディテールまではわからんけど。
重さも一緒な気がする。穂先は綺麗になっているし、戦闘で付いた細かな傷もない。
「古い武器や防具もクロに食べてもらったら新しく生まれ変わるという事か…」
これは正しくリサイクル!しかも100%再生利用可能だから無駄なゴミも出ない!
という事は、今後も同じ武器や防具を使ってアタックしつつ、定期的に魔石を食べてレベルアップすればさらに強くなっていうということ!?
たかがプラスチック、されどプラスチックというところか…。
「こんなんチートやん!…って言われてもおかしくないかもしれないな」
そもそも武器防具を自前で用意する必要がない時点でかなりチートだけど、これはさらに凶悪なチートだと言えるかもしれない。だって実質ずっと強化していけてなおかつほとんどコストは掛かっていないわけだもんな。プラスチック恐るべし、といったところか。
一頻り槍を点検し、特に問題は無さそうだった。そこで、俺はクロにもう一つお願いをする事にした。
「クロ、実はもう一つ作ってもらいたいものがあるんだ。今日のアタックの時にどうしても槍が途中で壊れないかが怖くてさ、そっちに意識ばっかりいっちゃうんだよな」
そう、そもそも今日のアタックは槍の性能と耐久を図る為のアタックだったが、ある程度ダンジョンの奥まで進むと、やはりと言うべきか槍の耐久が気になって仕方がなかった。
もしも途中で槍が壊れてしまったら…?武器を持たない状態で帰りの道中でモンスターと鉢合わせでもしたら…?
安全マージンは十分に確保していたとはいえ、所詮は消耗品だ。壊れる時は壊れるだろうし、俺の不注意で壊してしまう可能性だって十分にある。そういった時のサブ武器の必要性を痛感したのが今日の収穫だったかもしれない。
「とは言っても、どんな武器にするかが問題だな…」
俺のメイン武器は槍だ。これは変えるつもりはない。武芸の初心者ですらない俺が近接武器など装備しても十全には扱えないだろうし、何より怖い。
投擲武器もあるが、命中させられる気もしない。エミール社のHPを見ながら色んな武器を見たが、どれもピンとは来なかった。槍は中距離武器だから、遠距離が良いのか?弓やボウガンなどもあるけど、使える気がしない…。強いて言えば銃関係がいいけど、売られている銃は目が飛び出るほどに金額だ。最低金額が一千万単位からとかビビるわ…。
銃をクロに作ってもらおうかとも思ったが、あくまでクロが作れるのは銃らしき見た目であって、内部の機構までは当然作れない。ハリボテ銃を作ってもらっても仕方ないから諦めた。ソロアタックを継続する以上、継戦能力も上げていく必要がある。その為にもサブ武器はいずれ用意しようと思う。
「当面は安全マージンを十分に取りながら進めるしかないか」
なんでこんなダンジョンアタックに前向きなんだろ?と思わないでもなかったけど、あまり考えないようにした。今更、今までのような生活だと物足りないし、せっかくクロという稀有な存在に出会えたのにそれだけで終わらせたら勿体なさすぎる。誰も知らないテイムモンスターを俺だけが知っていて、なおかつ新たな武器防具を生み出せるという事実に少なからず優越感を感じているのも否定できないけどね。
まるで俺がこの世界の特異点で、これから何かが始まる…。なんて妄想も何度かしているけど。まぁ…無いよな(笑)
◆◇◆◇
土曜日のアタックだけでは物足らず、日曜日も春道ダンジョンにアタックした。さすがに三回目のアタックにもなると、モンスターを倒す事への忌避感は薄くなり、槍を突いた時に出る血や内臓を見てもほとんど動揺しなくなった。メンタル面の向上が著しい。恐らくレベルアップが起因しているのでは?と予想している。
日曜日のアタックで今までのアタックと違っていたことがある。モンスターの種類だ。今まではゴブリンしか出なかったが、初めてコボルトが現れた。ゴブリンよりも少し大きめで、130cmほどはあるだろうか?現れた時は2足歩行で徘徊していたのに、俺の姿を見た瞬間にいきなり走ってきて飛び蹴りしたのには驚いた。走るスピードもゴブリンよりかなり速かったのでめちゃめちゃ焦った。ギリギリで避けたけど、ズボンが少し破れてしまった。安全マージンを十分に取っていなかったらかなり危うかっただろう。
強さ自体は大したことなくて、槍を一突きしたら簡単に倒せたけれど、一瞬の出来事に心臓はバクバクだった。その後現れたコボルトにはそれ以上の安全マージンを取りつつ、先手必勝でどんどん突いていったけどね。どうやらコボルトは距離がある時は初手で必ず飛び蹴りをするらしく、飛んでくるコボルトに向かって槍を突き出しているだけで済んだ。とはいえこの戦法も今のところコボルトが単体でしか現れないから出来るものであって、複数の時はどうするんだって課題は残っているが。
この日のアタックで現れたモンスターの数はなんと12匹!コボルトは単体でしか現れず、残りはゴブリンだったので苦労はしなかったがそれでも多かった。最後に現れたコボルトを倒してやっとレベルアップした。帰宅してクロにも同数の魔石を食べさせたらレベルアップしたようだ。
これで俺とクロの必要経験値は同値だとほぼ断言していいだろう。
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