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14話
孤児院にて③
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14
孤児院でのこと。続き。
私が15歳になろうかという時だった。ひとつの小さなトラブルみたいなことがあった。部屋は2人部屋が基本で、けれど私は周囲に馴染めるか不安だったのもあり、院長先生の計らいで1人部屋で過ごしていた。
私は孤児院の中では誰かといたりひとりで読書をしたりと充実した日々を送っていた、と思っていた。仲のいい子も出来た。けれど、私がそう思っていたのとは裏腹、子供たちの間では不満があったらしい。これは後で星羅くんに聞いた話なので確かなことは良く分からない。
ただ、星羅くん曰く
〈たくさんの子供たちがいる間で、ただひとり個室でいる私のことを嫌に思う子たちが何人かいた〉
とのこと。今の私なら(無論これは記憶を思い出した私がと言う話で、当時の私の心象とは異なる)、ただそれだけが、その子たちにとってはそれだけじゃなかったんだと、色んな想いが押し寄せる。
気付いたら私を慕ってくれていた子たちは、私を避けるようになっていた。いじめ、ではなかったと思う。直接的な被害がなかったからだ。私が私なりに考えた原因は、星羅くんと特別に仲良くしていたことだったと思った。歳が近く話しやすい、という理由は周りの子たちから見たら(大好きなお兄ちゃんを取られた)みたいな可愛らしいやきもちだろうと。そして私はそれを苦痛に思うことが嫌だった。苦痛だと思うことで誰かを責めるのが嫌だった。どんな時でも、誰かを悪く思いたくない、そんな性格だった。そんな私に話しかけてくれたのは、案の定というかなんというか、星羅くんだった。そして止まらない負のループ。星羅くんに何かを言われるのだと思った。その前に私からお願いをした。
『私が避けられているのはどうしようもないかもしれない。年下の子たちの反感を要らぬ所で買ったのかもしれない。だけど雰囲気が悪くなって、星羅くんまで巻き込むのは嫌。私は大丈夫だから、』と続けようとした言葉は遮られた。
「望未、それは問題を先延ばしにしているだけで解決にはならない。先生たちや院長先生も全員に話してはいるみたいだ。ねえ、望未。さっき大丈夫だからと言ったけれど、望未はどうしたい?本当はどうなるのを望んでいる?ボクはそれに出来る限りの力を貸すよ。」
そう言ってくれた言葉が温かくて、泣きそうになるところだった。私の本音、私が望むもの。
『皆と、ちゃんと仲良くなりたい、避けられるのは寂しい。誰も悪くない、誰のせいにもしたくない、ねえ、星羅くん。私はどうしたらいいかな、何が出来るかな。』
そう呟いた。星羅くんはそれを聞いて少し微笑んで頷いた。
「よく言えました。ボクの妹は素直じゃないなぁ。
それじゃ、誰に、そうだな、全員が全員、望未を嫌がっているわけじゃない。それにもうすぐ院長先生の誕生日だろう?誰でもいい。望未が話したいと思った子に、院長先生にサプライズをしないか、って提案するのはどうかな?」
そんな素敵な提案をしてくれる。それなら出来ると思った。それなら、私にも。
『わかった。そうしてみる。ありがとう。勇気を出してみるね。』
そうお礼を伝えた。
それから、1番歳が近い子、その子と仲がいい子、順に院長先生の誕生日にサプライズをしないかと提案していった。最初は戸惑っていた子たちも、段々乗り気になって一緒に考えてくれた。なんとかなった、みたいだ。よかった。
星羅くんに感謝だなぁ。ありがとう。諍いや絆を学んだ日々だった。
__私は気付かなかった。私が1番信頼していた子が誰よりも私を厭うていたことに。それに私が気付くのはずっと後の話になる。誰よりも甘えていたのは私だった。
少し疲れたので今日はもう休もう。大丈夫だよね。ちゃんと出来たよね。
それからあっという間に時は経つ。星羅くんが孤児院を出る日を迎える。私が孤児院で過ごして2年が経とうとしていた時。孤児院の最後の話、次はそれを。
孤児院でのこと。続き。
私が15歳になろうかという時だった。ひとつの小さなトラブルみたいなことがあった。部屋は2人部屋が基本で、けれど私は周囲に馴染めるか不安だったのもあり、院長先生の計らいで1人部屋で過ごしていた。
私は孤児院の中では誰かといたりひとりで読書をしたりと充実した日々を送っていた、と思っていた。仲のいい子も出来た。けれど、私がそう思っていたのとは裏腹、子供たちの間では不満があったらしい。これは後で星羅くんに聞いた話なので確かなことは良く分からない。
ただ、星羅くん曰く
〈たくさんの子供たちがいる間で、ただひとり個室でいる私のことを嫌に思う子たちが何人かいた〉
とのこと。今の私なら(無論これは記憶を思い出した私がと言う話で、当時の私の心象とは異なる)、ただそれだけが、その子たちにとってはそれだけじゃなかったんだと、色んな想いが押し寄せる。
気付いたら私を慕ってくれていた子たちは、私を避けるようになっていた。いじめ、ではなかったと思う。直接的な被害がなかったからだ。私が私なりに考えた原因は、星羅くんと特別に仲良くしていたことだったと思った。歳が近く話しやすい、という理由は周りの子たちから見たら(大好きなお兄ちゃんを取られた)みたいな可愛らしいやきもちだろうと。そして私はそれを苦痛に思うことが嫌だった。苦痛だと思うことで誰かを責めるのが嫌だった。どんな時でも、誰かを悪く思いたくない、そんな性格だった。そんな私に話しかけてくれたのは、案の定というかなんというか、星羅くんだった。そして止まらない負のループ。星羅くんに何かを言われるのだと思った。その前に私からお願いをした。
『私が避けられているのはどうしようもないかもしれない。年下の子たちの反感を要らぬ所で買ったのかもしれない。だけど雰囲気が悪くなって、星羅くんまで巻き込むのは嫌。私は大丈夫だから、』と続けようとした言葉は遮られた。
「望未、それは問題を先延ばしにしているだけで解決にはならない。先生たちや院長先生も全員に話してはいるみたいだ。ねえ、望未。さっき大丈夫だからと言ったけれど、望未はどうしたい?本当はどうなるのを望んでいる?ボクはそれに出来る限りの力を貸すよ。」
そう言ってくれた言葉が温かくて、泣きそうになるところだった。私の本音、私が望むもの。
『皆と、ちゃんと仲良くなりたい、避けられるのは寂しい。誰も悪くない、誰のせいにもしたくない、ねえ、星羅くん。私はどうしたらいいかな、何が出来るかな。』
そう呟いた。星羅くんはそれを聞いて少し微笑んで頷いた。
「よく言えました。ボクの妹は素直じゃないなぁ。
それじゃ、誰に、そうだな、全員が全員、望未を嫌がっているわけじゃない。それにもうすぐ院長先生の誕生日だろう?誰でもいい。望未が話したいと思った子に、院長先生にサプライズをしないか、って提案するのはどうかな?」
そんな素敵な提案をしてくれる。それなら出来ると思った。それなら、私にも。
『わかった。そうしてみる。ありがとう。勇気を出してみるね。』
そうお礼を伝えた。
それから、1番歳が近い子、その子と仲がいい子、順に院長先生の誕生日にサプライズをしないかと提案していった。最初は戸惑っていた子たちも、段々乗り気になって一緒に考えてくれた。なんとかなった、みたいだ。よかった。
星羅くんに感謝だなぁ。ありがとう。諍いや絆を学んだ日々だった。
__私は気付かなかった。私が1番信頼していた子が誰よりも私を厭うていたことに。それに私が気付くのはずっと後の話になる。誰よりも甘えていたのは私だった。
少し疲れたので今日はもう休もう。大丈夫だよね。ちゃんと出来たよね。
それからあっという間に時は経つ。星羅くんが孤児院を出る日を迎える。私が孤児院で過ごして2年が経とうとしていた時。孤児院の最後の話、次はそれを。
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