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冬の薬草探し⑶
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「大声を出すなんてはしたない。ミーシャさまはいつまでたっても公爵令嬢としての自覚が足りないです!」
ライリーの小言がはじまった。彼女は姉のように世話好きだ。どう切り抜けようかと考えていると、ユナがミーシャを呼んだ。
「ミーシャさま、ブレスレットを落とされております」
振り返ると、ユナの横にいるサシャが雪の上を指差していた。
「あ、ごめん。ありがとう」
あわてて金色のブレスレットを拾った。
「お気をつけください。それがないと魔力が使えないのでしょう?」
ミーシャはこくりと頷いた。
炎の魔女は火を操れる。宝石のガーネットを身につけると魔力を高めることができた。そこに目を付けたクレアはいろいろと手を加え、純度を高めることで魔力を帯びさせることができる『魔鉱石』を発明した。
ブレスレットに埋め込まれている宝石は魔力を溜めることはできないが、ふつうのガーネットよりも魔力を高めることはできる。
失敗作とも言えない代物。それでも用心して、侍女には触れさせないようにしていた。
「魔鉱石……」
――リアムの治療には薬草よりも魔鉱石のほうが、効果があるかもしれない。
クレアは、この世にただ一つだけ残った魔鉱石を、死の間際にリアムに託した。
しかし、皇帝となった彼は、魔鉱石は青色の偽物もクレアの本物もすべて燃えて消えたと発表している。その目的は、奪われ利用されないため。
人々を苦しめた元凶を利用するのは気がすすまない。けれど他にいい案が浮かばない。
――もともと、魔鉱石はリアムのために作ったような物だし……。
治療のため、期を見て提案してみようとミーシャは思った。
ブレスレットを腕にはめ直すと、ライリーに「戻ります」と伝え、薬草採りを切りあげた。
泉のそばを横切ったほうが近いが、近づかないとリアムと約束した。雪をさけるためにも屋根がある回廊へ向かう。
「それにしてもよく降るわね。……あれ?」
ふと見つめた白い世界に、金色の髪の少年がいた。
「ノア皇子……!」
雪の庭園にいる小さな皇子は、吹雪など気にするようすもなく白い仔犬と遊んでいる。他に人の姿はない。たった一人だ。
声をかけようと庭に行こうとしたら、サシャが行く手を阻んだ。
「ミーシャさま、皇太子さまも陛下のように魔力に長けており、寒さにお強いです。遊んでいらっしゃるだけです」
「でも……」
「ちゃんと傍で見守る侍従がいるはずなので大丈夫です」
ユナもサシャの横に並んだ。
「それよりも早くお部屋へ。閨の間で陛下をお迎えしなければ。伽の準備をいたしましょう」
「と、伽の準備!?」
リアムの艶めかしい姿や仕草を想像してしまった。顔から火が出そうだ。
「ミーシャさま、我々にお任せください。陛下が満足するように私たちは、最・大・限! お務めさせていただきます!」
「満足ってなに?!」
侍女たちはやっぱり仕事熱心だ。陛下のために主をどう飾りたてるかで盛りあがっている。
ミーシャは「お願いだから、変なことはしないで!」と汗だらだらにしながら訴えた。
侍女を諭したあと、一人で遊んでいる皇子が気になって振り向いた。
吹雪の向こうにはもう、ノアの姿はなかった。
ライリーの小言がはじまった。彼女は姉のように世話好きだ。どう切り抜けようかと考えていると、ユナがミーシャを呼んだ。
「ミーシャさま、ブレスレットを落とされております」
振り返ると、ユナの横にいるサシャが雪の上を指差していた。
「あ、ごめん。ありがとう」
あわてて金色のブレスレットを拾った。
「お気をつけください。それがないと魔力が使えないのでしょう?」
ミーシャはこくりと頷いた。
炎の魔女は火を操れる。宝石のガーネットを身につけると魔力を高めることができた。そこに目を付けたクレアはいろいろと手を加え、純度を高めることで魔力を帯びさせることができる『魔鉱石』を発明した。
ブレスレットに埋め込まれている宝石は魔力を溜めることはできないが、ふつうのガーネットよりも魔力を高めることはできる。
失敗作とも言えない代物。それでも用心して、侍女には触れさせないようにしていた。
「魔鉱石……」
――リアムの治療には薬草よりも魔鉱石のほうが、効果があるかもしれない。
クレアは、この世にただ一つだけ残った魔鉱石を、死の間際にリアムに託した。
しかし、皇帝となった彼は、魔鉱石は青色の偽物もクレアの本物もすべて燃えて消えたと発表している。その目的は、奪われ利用されないため。
人々を苦しめた元凶を利用するのは気がすすまない。けれど他にいい案が浮かばない。
――もともと、魔鉱石はリアムのために作ったような物だし……。
治療のため、期を見て提案してみようとミーシャは思った。
ブレスレットを腕にはめ直すと、ライリーに「戻ります」と伝え、薬草採りを切りあげた。
泉のそばを横切ったほうが近いが、近づかないとリアムと約束した。雪をさけるためにも屋根がある回廊へ向かう。
「それにしてもよく降るわね。……あれ?」
ふと見つめた白い世界に、金色の髪の少年がいた。
「ノア皇子……!」
雪の庭園にいる小さな皇子は、吹雪など気にするようすもなく白い仔犬と遊んでいる。他に人の姿はない。たった一人だ。
声をかけようと庭に行こうとしたら、サシャが行く手を阻んだ。
「ミーシャさま、皇太子さまも陛下のように魔力に長けており、寒さにお強いです。遊んでいらっしゃるだけです」
「でも……」
「ちゃんと傍で見守る侍従がいるはずなので大丈夫です」
ユナもサシャの横に並んだ。
「それよりも早くお部屋へ。閨の間で陛下をお迎えしなければ。伽の準備をいたしましょう」
「と、伽の準備!?」
リアムの艶めかしい姿や仕草を想像してしまった。顔から火が出そうだ。
「ミーシャさま、我々にお任せください。陛下が満足するように私たちは、最・大・限! お務めさせていただきます!」
「満足ってなに?!」
侍女たちはやっぱり仕事熱心だ。陛下のために主をどう飾りたてるかで盛りあがっている。
ミーシャは「お願いだから、変なことはしないで!」と汗だらだらにしながら訴えた。
侍女を諭したあと、一人で遊んでいる皇子が気になって振り向いた。
吹雪の向こうにはもう、ノアの姿はなかった。
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