18 / 100
雪月花⑴
しおりを挟む〈兄:ウィルフリードSide〉
そっか。バルドリックだけじゃなくて、ルイーザもエルを守る覚悟を決めていたんだね。
なんだ。そっか。僕だけじゃなかったんだ。
「はっ…、ははっ。なんだ。そっか。ははっ」
僕はエルが大好き過ぎて、いつの間にか“エルを護るのも、護れるのも僕だけ”って思い込んでいたみたいだ。そんな訳ないのにね。
「あらん?ウィルちゃんの表情か戻ったみたいでよかったわんっ♪
あっ、ウィルちゃん。因みにあたくしはエルちゃんが大好きなお友達よん。改めてよろしくねん?生意気ボーイ♪」
エミリーの“生意気ボーイ”と言う言葉にイラッとし、思わず睨んでしまう。
「あらぁ~っ?あらあらぁ~んっ♪悔しかったら、あたくし以上に強くなってご覧なさいなっ☆そしたらその喧嘩をあたくしが買ってあげるわぁ~ん♪お~ほっほっほ~っ!!」
ビキッ 自分の額に青筋が立つのがわかった。
「ええ、そうですね。僕が今の貴方の年齢になるまで四半世紀はかかりますが、まぁ、その時はよろしくお願いしますね?」
「あぁぁぁんっ!?!?何だとこのクゾガキぃ~っ!!!!」
僕とエミリーの視線にバチバチッと火花が散る。
「はいはい、そこまで」
今まで僕達のやり取りを見守っていたお母様が、パンパンと手を叩きながら、話に割り込んてくる。
「ねぇ、ウィル。因みになんだけど、お母様はエルちゃんを産んだ、たったひとりの母親よ。よろしくね?」
お母様が可愛らしく小首を傾げ、からかってくる。
「ぐ…っ!!申し訳ありません。お母様…」
「あらぁ~っ、なんの事かしらぁ~?」
「あははっ。これはウィルの負けだね」
つい先程まで暗かった雰囲気が、お父様とお母様、そして悔しいけどエミリーのおかけで明るくなった。
セバスやベアティ、デルミーラにアメリアとアンネリースまで、いつ間にかクスクスと笑っている。
「私達は、自分達なら“エルの心も体も護れる”と、傲っていたのかもしれないね。
シロガネ殿に言われた事を、再度噛み締め、もう二度とこんな事が起こらないようにしよう。皆、いいね?」
「かしこまりました。お父様」
「おうっ!!任せとけっ!!」
「お任せくださいませ。お父様」
僕の返事の後に、バルドリックとルイーザが返事をする。
「さぁ、明日からの事だけどね、王都での滞在期間は1週間だけにしようと思うんだ」
「あなた…、大丈夫ですの?」
お父様の急な提案に、お母様は戸惑いの色を見せる。
「大丈夫だよ。元々、ウィルフリードやバルドリック、ルイーザにお茶会やサロンの場数を踏ませようと、多めの日程にしていたに過ぎないからね。
だけど、エルは王都に不安を感じているだろう?そんな王都での生活は、エルにとって負担になるだけだからね。
他の貴族に早く帰る理由を聞かれたら、エルには申し訳ないけど、“末の娘の体調が悪い”という事にしておこう」
お父様のエルをダシにする様な発言がちょっと見過ごせなくて、思わず冷たい視線を向けてしまう。
だけど、早く帰る事に関しては賛成だ。
僕は他の貴族の子息や令嬢と過ごすより、エルと過ごす時間を優先したい。
本当は、何者にも傷つけられない様に、僕の部屋に閉じ込めてしまいたいけど、エルは籠の鳥じゃない。それに、いつも元気に外で遊ぶ姿を見るのが僕は好きなんだ。
そんなエルの自由を護る為には、僕自身の心と体の強さが必要だ。
強さを求めるのは今までと変わらないけど、それだけに固執して、本来の“エルを護るため”という目的を見失わないようにしないとね。
そっか。バルドリックだけじゃなくて、ルイーザもエルを守る覚悟を決めていたんだね。
なんだ。そっか。僕だけじゃなかったんだ。
「はっ…、ははっ。なんだ。そっか。ははっ」
僕はエルが大好き過ぎて、いつの間にか“エルを護るのも、護れるのも僕だけ”って思い込んでいたみたいだ。そんな訳ないのにね。
「あらん?ウィルちゃんの表情か戻ったみたいでよかったわんっ♪
あっ、ウィルちゃん。因みにあたくしはエルちゃんが大好きなお友達よん。改めてよろしくねん?生意気ボーイ♪」
エミリーの“生意気ボーイ”と言う言葉にイラッとし、思わず睨んでしまう。
「あらぁ~っ?あらあらぁ~んっ♪悔しかったら、あたくし以上に強くなってご覧なさいなっ☆そしたらその喧嘩をあたくしが買ってあげるわぁ~ん♪お~ほっほっほ~っ!!」
ビキッ 自分の額に青筋が立つのがわかった。
「ええ、そうですね。僕が今の貴方の年齢になるまで四半世紀はかかりますが、まぁ、その時はよろしくお願いしますね?」
「あぁぁぁんっ!?!?何だとこのクゾガキぃ~っ!!!!」
僕とエミリーの視線にバチバチッと火花が散る。
「はいはい、そこまで」
今まで僕達のやり取りを見守っていたお母様が、パンパンと手を叩きながら、話に割り込んてくる。
「ねぇ、ウィル。因みになんだけど、お母様はエルちゃんを産んだ、たったひとりの母親よ。よろしくね?」
お母様が可愛らしく小首を傾げ、からかってくる。
「ぐ…っ!!申し訳ありません。お母様…」
「あらぁ~っ、なんの事かしらぁ~?」
「あははっ。これはウィルの負けだね」
つい先程まで暗かった雰囲気が、お父様とお母様、そして悔しいけどエミリーのおかけで明るくなった。
セバスやベアティ、デルミーラにアメリアとアンネリースまで、いつ間にかクスクスと笑っている。
「私達は、自分達なら“エルの心も体も護れる”と、傲っていたのかもしれないね。
シロガネ殿に言われた事を、再度噛み締め、もう二度とこんな事が起こらないようにしよう。皆、いいね?」
「かしこまりました。お父様」
「おうっ!!任せとけっ!!」
「お任せくださいませ。お父様」
僕の返事の後に、バルドリックとルイーザが返事をする。
「さぁ、明日からの事だけどね、王都での滞在期間は1週間だけにしようと思うんだ」
「あなた…、大丈夫ですの?」
お父様の急な提案に、お母様は戸惑いの色を見せる。
「大丈夫だよ。元々、ウィルフリードやバルドリック、ルイーザにお茶会やサロンの場数を踏ませようと、多めの日程にしていたに過ぎないからね。
だけど、エルは王都に不安を感じているだろう?そんな王都での生活は、エルにとって負担になるだけだからね。
他の貴族に早く帰る理由を聞かれたら、エルには申し訳ないけど、“末の娘の体調が悪い”という事にしておこう」
お父様のエルをダシにする様な発言がちょっと見過ごせなくて、思わず冷たい視線を向けてしまう。
だけど、早く帰る事に関しては賛成だ。
僕は他の貴族の子息や令嬢と過ごすより、エルと過ごす時間を優先したい。
本当は、何者にも傷つけられない様に、僕の部屋に閉じ込めてしまいたいけど、エルは籠の鳥じゃない。それに、いつも元気に外で遊ぶ姿を見るのが僕は好きなんだ。
そんなエルの自由を護る為には、僕自身の心と体の強さが必要だ。
強さを求めるのは今までと変わらないけど、それだけに固執して、本来の“エルを護るため”という目的を見失わないようにしないとね。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました
21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。
理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。
(……ええ、そうでしょうね。私もそう思います)
王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。
当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。
「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」
貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。
だけど――
「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」
突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!?
彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。
そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。
「……あの、何かご用でしょうか?」
「決まっている。お前を迎えに来た」
――え? どういうこと?
「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」
「……?」
「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」
(いや、意味がわかりません!!)
婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、
なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

〖完結〗その愛、お断りします。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った……
彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。
邪魔なのは、私だ。
そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。
「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。
冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない!
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。

彼の秘密はどうでもいい
真朱
恋愛
アンジェは、グレンフォードの過去を知っている。アンジェにとっては取るに足らないどうでもいいようなことなのだが、今や学園トップクラスのモテ男へと成長したグレンフォードにとっては、何としても隠し通したい黒歴史らしい。黒歴史もろともアンジェを始末したいほどに。…よろしい。受けてたちましょう。
◆なんちゃって異世界です。史実には一切基づいておりませんので、ご理解のほどお願いいたします。
◆あらすじはこんなカンジですが、お気楽コメディです。
◆ざまあのお話ではありません。ご理解の上での閲覧をお願いします。スカッとしなくてもクレームはご容赦ください。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる