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第七話、暗転と亀裂
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「あれ? 朝陽寝ちゃった?」
ベッドの上で将門の腕枕をしたまま動かなくなっている朝陽を見て、キュウが口を開いた。
「クマが出来てる。ずっと寝れてなかったのかな」
ベッドの端に腰掛け、キュウが朝陽の頭を撫でる。
「いや、寝てはいる筈だ。最近やたら下っ腹が痛くて眠くなるって言ってたからな。普段より体温は高いが」
将門の言葉にキュウが目を開いたまま固まった。
「何か思い当たる事でもあるのか?」
「うん。ちょっとニギハヤヒ呼んでくる」
「は? おい……」
将門の飛び止める声も聞かずにキュウが部屋を通り抜けて行く。
すぐにニギハヤヒと一緒に戻ってきて、観察するようにジッと朝陽の腹を見つめた。
「ああ。九尾の睨んでいる通りだな。朝陽は子を身籠っている。それよりもあの怪我でよく流れなかったものだ」
「やっぱり。私たち全員の子かな?」
キュウが嬉しそうに声を弾ませると、朝陽が呻いた。
将門が結構な破壊力を持ったデコピンをキュウにおみまいする。
「朝陽が起きるだろが、バカ狐。静かにしろ」
「はーい……」
「いや、身籠っているのは単体だ」
「えー、そうなの? それは残念。誰の子かな」
「その前に忘れるな。この腹の子を守る為にも朝陽は死なせないようにせねばならんぞ」
分かってるよ、とキュウが声を上げた時だった。
「朝陽のお腹にいるのはオレの子だよ」
さも当たり前のように晴明が言った。
「は? 何で⁉︎」
黒々としたオーラを纏い、瞬きもせずに三人が晴明を見つめている。ついでに目もかっぴらき瞳孔も開いていた。
「晴明ズルくない? どうやって朝陽孕ませたの?」
オロが正体となって現れ、同じく目がかっぴらくのと同時に瞳孔も開いた。
「番契約した時に口約で懐妊するように仕向けたからね」
晴明は、ふふ、と柔らかい笑いを溢しながらも、してやったりとした表情を浮かべていた。
「あの時の約束って、それだったのか……」
薄っすらと目を開けた朝陽が言った。
「そう。華守人はΩの方が孕むのを求めなければ孕まないって知ってたんだよ。オレの子を孕みたいって言ってくれただろ?」
ニンマリと不敵な笑みを刻んだまま晴明が続けた。
「約束通り初めに身籠ってくれてありがとう。契約を結んだ時に、お腹の中の子が簡単に流れないようにオレが結界を張ってたんだ。帰り際に食べさせた玉が結界だよ。こんな事になるなら、朝陽自身にも張っておけば良かった。痛い思いをさせてごめんね朝陽」
近寄ってきた晴明に唇を重ねられた。何度も何度も啄まれる。
「いいよ俺は」
「良くないよ。朝陽だから大切にしたい。オレの番。愛してるよ朝陽。次期に子も生まれるしね」
「う、晴明~……ストップ。言われ慣れてないから恥ずかしい。もう勘弁してくれ。死にそうだ俺。ギブ」
真っ赤な顔を両手で覆う。墓場に潜りたかった。
二人の世界を作り始めた晴明と朝陽を離すように、将門が横槍を入れた。
「朝陽もう起きて平気なのか?」
「ああ。平気だ。少し寝たら回復した」
将門の言葉に頷く。
それにこんな騒がしい中で寝れる程、朝陽の神経は図太くない。本当はキュウとニギハヤヒが来たあたりから、眠りが浅くなってきていたのだが、妊娠していた事に驚き過ぎていて、声をかけるタイミングを逃していた。
——この話聞いたらじいさん倒れないかな……。
「それがあるな!」
ずっと黙り込んでいたニギハヤヒが思いついたと言わんばかりに声を上げた。
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