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第五話、厄介なチート神様がやる気なさ過ぎて憑かれるんですが?
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しおりを挟む朝陽の元に戻ったものの、空間内に違和感を覚えてニギハヤヒが顔をあげる。突如視線の先にある空間に切れ目が入り、そこから将門を筆頭にし、先に契約していた四人が出てきた。
「異界を渡ってきたか。中々やりよる」
これで番が全員大集合する事になった。
寝ている朝陽の気配に疑問を抱き、将門が口を開く。
「貴様、朝陽に何をした? 朝陽の霊力の質と匂いが変わっている」
ニギハヤヒが口角を上げて笑みを浮かべる。
「儂は何もしとらんぞ。それにコイツは普通の華守人ではない。亜種も良いとこよ。根底にあったのは神造人だった。儂と交わった事により、今胎内から作り変わっている所だろう。二日は目を覚まさんと思うぞ」
朝陽の中に十種神宝を埋め込んだ事は言わずに、現状何が起こっているかだけニギハヤヒは伝えた。
「神造人だと?」
「知らんか。華守人よりも稀にしか生まれん。儂でさえ見たのは初めてだ。神造人はその体内で番と同等の神を造り、生み出す人間を指す。ああ、それと。朝陽の五人目の番はこの儂じゃ。見ろ……」
最後の番がニギハヤヒだと知り、皆驚いていた。寝ている朝陽を横向きにして、その頸を晒す。
「何故八重咲きになっている?」
晴明がそう言って眉根を寄せる。
「八重咲きは神造人の紋様だ。儂との契約の後でその紋様が自ら姿を変えよった。コイツが寝て目を覚さないのは、神造人として変化した事による副作用みたいなもんだ。さっきも説明したろう?」
おどけて見せたニギハヤヒに一度視線を向けて、キュウと晴明は何かを探る様に眠り続けている朝陽を見ていた。朝陽から齎せられる違和感を探る。憶測の域を出ない考えが脳裏をよぎるが確証はなかった。
オロがニギハヤヒの元まで歩いて、正面からジッと見つめる。そして迷いもなく、胡座をかいて座っているニギハヤヒの足の上に座り込んだ。
「八岐大蛇か。お前は儂が怖くないのか?」
「うん。実際会ってみて分かった。ニギハヤヒからは懐かしい匂いがするからボクは安心する」
「まあ、お前はそうだろうよ」
理由は口にせずにニギハヤヒが笑んだ。
***
朝陽が目を覚ましたのは二日後の事だった。
その間会社への連絡なども含めて博嗣が全て終わらせている。朝陽の身の回りの事は番たちが自らやりたがるので、博嗣は好きにさせていたので楽ではある。
しかし、朝陽の番全員大集合という事態は年寄りの心臓にはきつかったらしい。土気色の顔をした博嗣を見て、朝陽は何だか悪い事をしたような気になってくる。
「なんか……面倒かけて悪かったなじいさん」
「まあ元はと言えばワシのせいでもあるからのう」
遠い目をした博嗣を見て苦笑した。朝陽は、強度と質を変えた結界を張り巡らせて幾重にも重ね掛けする。
「う、ぐッ⁉︎」
番たちが家の中に居るまま張ったので、朝陽と博嗣以外は全員強制的に家の外へと弾き出された。
「良し。強度共に問題ないな」
「この儂も弾き出すとは恐ろしい奴だな、朝陽」
ニギハヤヒが感心したように見つめている。
「今度は悪さしてもダメだぞ」
ふん、と鼻を鳴らした朝陽がニギハヤヒに笑って見せた。
「帰るぞ、朝陽」
将門が朝陽の手を引く。
「そうだね、帰ろう朝陽」
「おい、お前らはもう充分朝陽と共におっただろう。儂に譲れ」
「貴様はまだ信用出来ん。断る」
「オロ、キュウ、晴明、行くぞ~」
ニギハヤヒと将門が朝陽の争奪戦を始めたのを無視し、朝陽は残りの三人を連れて晴明が開いた異界への扉を潜る。
「いいの? あの二人」
キュウの言葉に、振り返るなり朝陽が言った。
「その内戻ってくるだろ」
「そうだね」
あっさりと見捨ててキュウも扉を潜る。
「置いて行くな‼︎」
すぐに追ってきた二人が扉に飛び込む。晴明が先に歩きながら何度か異界から異界へ繋げる扉を開けていき、朝陽たちは無事アパートへ戻った。
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