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番外編
番外編2-5【了】
しおりを挟むアスモデウスが動く度に、塗り込まれたローションがグチュグチュと音を立てる。
片足は担がれて、反対側の太ももはアスモデウス自身の足でおさえこまれていた。
深々と内部を犯されて、上下に揺さぶられているとまた意識が飛びそうになり、その度に楽しそうにしているアスモデウスに引き戻された。
「ぅ、あ……ああ、あ゛」
「抱けば抱くほどお前は艶を増す。本音を言えば……っ、誰にも見せたくはないのだがなあ」
今は地上へ出るのもある程度は自由にさせて貰っている。
碧也自身も面倒くさがって出ないが、それでも魔界ばかりでは息が詰まるのも本音だ。
「このまま……、っん、ああ……閉じ込めて……おけば……ッいいだろ」
妙な独占欲でアスモデウスの態度がおかしくなったり、必要のない嫉妬をされるより幾分かマシだ。
一際大きく腰を打ち付けられて、悲鳴めいた声が出てしまう。
段々と内部に熱が広がり、それがまた欲に火をつける起爆剤になる。
「オレは……っ、お前しか見ていない」
そう言うと口付けられたまま引き起こされ、ベッドに転がっているアスモデウスの腰の上に乗せられてしまった。
「今度はお前が動け、碧也」
吐き出された精液が淫剤効果を齎せていた。
「ん、んん゛ん゛、ん゛ーー」
自ら動きながら声を押し殺すと、定期的に下から力強く突かれてしまい、快感の強さで前のめりになる。
両手を取られて指を絡ませられると、碧也の体がピクリと震えた。
「おい、指……離せ」
「やはり、な。ナイフを扱うだけあって、手や指の感覚が敏感だな」
スルリと絡ませられている指を動かされると、快感とも言えるような擽ったさが全身を駆け抜けた。
「アスモ、デウス……やめ、手え、離せ!」
「断る。その内快感へと変わるから安心しろ」
——それこそ嫌だ。
愉しそうに笑んだアスモデウスに指を絡ませられたまま、何度も指の隙間を刺激される。
下からも容赦なく腰を打ち付けられてしまい、擽ったいのか気持ち良いのか曖昧になってきていた。
「っ、ア、アア、あ、んあ! 指ッ、離せ!! ひ……っ」
指の間をまた指で擦られると、腹の奥が重くなり絶頂へと追いやられ、腰に力をこめる。
「駄目だ。イクなら中でイケ」
吐精しようとしていた陰茎にまた尿道プジーが差し込まれた。
これでは出したくても出せない。溢れそうになっていた精液は堰き止められ、さっきと同じように絶頂の手前をずっと彷徨ってしまう。
「アスモデウス!」
限界を訴えるように左右に首を振る。
「どうした? もっと突いて欲しいのか?」
また視界が回り、アスモデウスの下に敷かれていた。そこからは鳴かされるだけ鳴かされて、本当に中イキだけさせられた。吐精させて貰えたのは、アスモデウスがイった後だった。
***
——もう自分からは誘ったりなんかはしない。
碧也がそう決めてから、一週間後の事だった。
碧也に会わせろと、また天界からガブリエルと、魔界から出るなと言った張本人であるラファエルが事務所に来ていた。
ラファエルの仕業なのか、ガブリエルは白羽の事を忘れているようだ。
それに対しては安堵の吐息をつく。
白羽はジェレミにべったりなので、今日は大人しく魔界に残っていて今この場には居ない。
しかし問題は発生している。アスモデウスの瞳孔が開いている……それだけで今日のセックスの激しさが分かるのでウンザリした。
——どうする? このままじゃ一週間前よりも酷く抱き潰されるぞ……。
ごめん被りたい。碧也はアスモデウスのデスクの隣に簡易椅子を持ってきて隣に腰掛けながら逡巡していた。
「お前らはそんなに暇なのか? 仕事はどうした?」
「わあ、魔王に仕事しろって言われちゃったよ。本当に魔王?」
ラファエルが笑う。
「部下に押し付けてきた!」
堂々と駄目な上司宣言をしてみせたガブリエルに、アスモデウスがため息をつく。
そこで碧也が口を開いた。
「お前ら、オレが欲しい欲しいと言うけど、ちゃんとオレを満足させられるのか? 正直言ってセックスが上手そうには見えない。せめてアスモデウスを超えてから言えよ。オレはアスモデウス以外とのセックスには興味がない」
椅子を立って、アスモデウスの顔を無理矢理コチラに向けさせるなり、碧也は人前でするには濃厚なくらいに口付けてみせる。
さすがのアスモデウスもポカンと口を開いたまま固まっている。
まさか碧也の口からそんな言葉が飛び出すとは思ってもみなかったからだ。しかも、人前でイチャつくのを嫌がる碧也が自ら口付けた。
「オレが愛してるのはアスモデウスだけだ。わかったら帰ってくれ。二度と来るな。お前らが来ると、アスモデウスが不機嫌になるからオレからすれば迷惑だ」
アスモデウスの太ももの上に横向きに乗りながらハッキリ告げると、二人は分かっているのか分かっていないのか、どちらとも取れる表情をしていたので、様子見に三人の顔を窺い見る。
「碧也、知らないと思うから教えてあげる。私の特殊能力は〝忘却〟。一瞬でアスモデウスの事なんて忘れてしまえるよ」
——ああ、だからガブリエルが白羽の事を忘れてるのか……。
「ボクは〝催眠〟さ。番契約なんてボクには無意味。催眠かけて、運命の番契約ごとボクに上書きしてしまえばいいから~ね」
「俺が許すわけがないだろ!」
突如本体になったアスモデウスに攻撃され、あのやたら硬い事務所の壁に穴が空く。外に追いやった二人が入って来られないように、魔力で結界を張ったアスモデウスが人間の姿にまた擬態する。
本体になった事で破れてしまったスーツ一式を着替えたアスモデウスがデスクに腰掛け直した。
「碧也、さっきの言葉をもう一度言え」
態と口にした小っ恥ずかしいセリフ等もう言いたくもない。
「忘れた」
「イアン!」
「はい、勿論しっかり録音しております故……」
突如何も無い空間にから現れたイアンが少し頬を紅潮させながら言った。
『オレが欲しい欲しいと言うけど、ちゃんとオレを満足させられるのか? 正直言ってセックスが上手そうには見えない。せめてアスモデウスを超えてから言えよ。オレはアスモデウス以外とのセックスに興味はない』
「流石だ! ボーナスを追加しよう」
「光栄でございます」
「イアン、優秀過ぎるのもどうかと思うぞ?」
憤慨すると両腕の中に囲われる。
「ククク、この後の言葉ももう一度言え」
「どうせ録音してんだろが……っ」
そんなに嬉しそうに言われると毒気さえ抜かれた。
「お前の口から聞きたい」
「はーーー……。くそ……。オレが…………愛してるのはお前だけだ」
視線を逸らしながら言うと、アスモデウスが嬉しそうに破顔した。
抱きつかれたままでその頭を撫でてやってから、またもう一度口付けを送った。
【番外編2・了】
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ありがとうございます!考えてみます(/ω\)
初めまして( . .)"
この話めっちゃ好きです( ; ; )
最高です!
更新楽しみにしてます
はじめまして!
感想嬉しいです。
好きだと言ってくださり、ありがとうございます!
更新頑張ります!