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番外編
番外編2-3
しおりを挟む「どうかしたんですか?」
出掛けていたジェレミとロイ、イアンが帰ってきて、事務所内の異様な面子を確認するなり目を瞠った。
「じぇれみ、じぇれみー」
白羽がジェレミの元に駆けて行き足に抱きついて頬を擦り寄せる。
「白《しろ》、何で地上に出てきてる?」
「やなの。じぇれみいないの、やなの」
「あー、そうかよ。悪かったな一人にして」
——オレ居たんだけど……。
親としては複雑である。
「じぇれみすき、すき、すき」
ジェレミが白羽の頭を撫でてから頬に唇を落として抱き上げる。皆の視線はジェレミに集中していた。
「「「「ショタコン?」」」」
ラファエルとガブリエル、イアンとロイの声が重なった。
「ちげえーよ!! つうか何で今ロイとイアンが混ざった!? お前らはいつも見てんだろ!」
「くふふふ、やーいショタコン!」
「あのなー!」
剣呑としていた筈の場の雰囲気は全てジェレミに持っていかれ、ラファエルとガブリエルは大人しくソファーに腰掛け直す。
それはアスモデウスも同じだったようで、自分のデスクへと座っていた。
「早く碧也くらいに育てば食えるのにな……」
ボソリとジェレミが呟く。
「「「「ショタコン?」」」」
「何でだよっ!?」
「じぇれみ、しろ、そだったほうがいい?」
「いや、例えばの話だ……「これくらい?」……はっ!?」
白羽の体が光出したかと思いきや、二十歳くらいの年齢まで育った。
「「「「はっ!?」」」」
その場にいた全員が唖然として微動だに出来なくなる。
短かった髪が一気に伸びて腰あたりまで隠し、服はその大きさに耐えきれるわけもなく破けてしまった。
それと同時にジェレミが自分のマントの中に白羽を隠す。
「ええええ!? どういう事だ?」
「まさか……、刻に干渉出来るのか!?」
ガブリエルが呟いた瞬間、ラファエルが目の前のテーブルに置かれていた大きな灰皿でガブリエルの頭を思いっきり殴って、その頭を何かの能力らしきもので覆った。まるでシャボン玉のようになっている。
碧也の頭の中にkeep outと黒文字で書かれた黄色のテープが浮かんで消えた。
そのまま沈黙したガブリエルを背負ったラファエルが口早に言った。
「ちょ、アスモデウス! 今ので分かったと思うけど、その子マジでヤバいからもう地上に出しちゃダメだよ! 出すならせめて自分の身を守れるようになってからにしな! 一先ずガブリエルはこのまま回収しておくからさ」
瞬く間にガブリエルを背負ったラファエルは姿を消してしまった。
***
魔界に帰ってからも白羽の体のサイズは変わらなかった。
寝室にあるリビングで皆で腰掛けている。
「白羽、とりあえずオレの服着ておけ」
「服いらない」
「それじゃ、ジェレミが目のやり場に困るからダメだ」
「服着ないとジェレミ困っちゃう?」
「そうだ。困る」
え、何で俺? て言いかけているジェレミの口は、場の空気を読んだロイが塞いでくれている。
「それなら着る」
何においてもジェレミが基準になっている白羽は大人しく服を着始めた。嬉しそうにジェレミの元にかけより、その膝の上に乗って足をばたつかせて遊んでいる。
「碧也、今日の事を話せ。ラファエルに何か言われたのか?」
「ああ。この子はアルファ+だけどオメガでもある創造神だと言われた。それを生み出せる唯一のオメガだからオレも危険な存在らしい。もう生めないようにと腹を壊された。これでもう狙われないだろうってのも言ってたな」
「そこだ。お前体は何ともないのか? 話を聞く限りだと相当な重症の筈だが?」
「大丈夫だ。その後何故か世良さん……ラファエルが治してくれたんだよ。壊したかったのは子宮だけだったからって言って。後はオレと白羽は魔界から出るなって言ってたな」
アスモデウスが黙り込む。
「それと何故かあの人オレの居場所を的確に当ててきた。何で分かったんだ?」
「お前はもしかしたらラファエルの血を引いてるのかもしれんな。白羽の事はそうなんじゃないかと薄々勘付いてはいたが……。とりあえずコイツの能力は封じておこう。いつまたこうして大人の姿になるか分からんからな」
アスモデウスがジェレミの元へ歩き、白羽の顔面を覆うようにこめかみを掴んだ。
数秒もすると白羽の体が縮み始めて、ジェレミにもたれ掛かってそのまま眠ってしまった。
「じゃあ、俺んとこで寝かしつけますわ」
「あー。ジェレミ……」
「はい」
「まだ襲うなよ」
「襲いませんって!!」
アスモデウスからの言葉を聞いてジェレミが吠えた。
二人っきりになった室内でアスモデウスとベッドの上で戯れていた。
昔みたいな回数はないにしてもそれなりに体は重ねている。誘うように自分から口付けると、アスモデウスに頭を撫でられた。
「アスモデウス……抱かれたい」
「お前本当に体は大丈夫なのか?」
「平気だ。ただ、もうお前の子は生めなくなった……ごめん」
「構わん。俺はもう碧也お前が居てくれればそれでいい」
小さく頷く。それが合図のように口付けは深いものへと変わって行き、互いに舌を絡め合った。
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