【完結/BL】 Ω堕ち元αは運命の番である最高級人外αを10回殺したい

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番外編

番外編2-2

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「あーー、ここは何処なんだあ!? 事務所はどこお!?」
 事務所へ向かっている途中で、迷子の大きな大人に遭遇してしまった。
 リアクションと声が大きい。間違いなくあまり関わり合いになりたくない人種だ。
 パステルカラーの黄緑の頭をしているので視界からしてうるさい。全体的に掘りの深い所を見ると、ニホン人じゃないのは確かだった。
 どうしてだろう。ラファエルと同じ種類の人種のような気がする。本能が関わりたくないとビシバシと告げていた。
「あおや、あのひとこまってる?」
「……」
 白羽に問われ思わず「ああいうのはあまり目を合わせたらダメだぞ」と言ってしまった。
 白羽からは「助けてあげないの?」オーラが伝わってくる。
 我が子をガン見したまま、どうしようか悩んだ。うるさいのは嫌いだ。しかし男は絶対うるさいの一択だろう。
 気持ち的には、このまま気配を消して無視してしまいたい。
 それに、アスモデウスから再三に渡り、微笑みかけるなと言われているだけに、迂闊に声をかけられない。
 話しかけるイコール微笑みかけるのが一番手っ取り早いからだ。
 だが、個人的には声を掛けたくない。
「あおや」
 手を繋いでいる白羽はグイグイ手を引かれる。
 ——う……。
「ああ……そうだな」
 腹を括り話しかける為に口を開いた。
「あの、どこの事務所へ行きたいんですか?」
 なるべく無表情で問いかけると男が振り返った。
「西音寺正宗の事務所を探している。教えてくれるのか? お~天使!!!」
「……」
 ——いや、まだ何も言っていない。
「違います」
「アス……んんんっ!?」
 白羽がアスモデウスの名を呼ぼうとしたのでその口を手で覆った。
「簡単にその名を呼んだらダメだぞ」
「ボク迷子なんで~す。もう十分はここにいま~す」
 ——天然か?
 アスモデウスの事務所はここからもう視認できる距離にある。
 究極な方向音痴らしい。自分でも顔が引き攣るのが分かった。
「あそこです。オレたちもそこに行くので一緒に行きますか?」
「やっぱり天使!!!」
「違います」
 三十メートルもない距離にある事務所に向かって歩き出した。
「ただいま」
 すぐに到着したのはいいが、今度はアスモデウスが顔を引き攣らせている。
 眉間に皺を寄せるどころか、全身で「お前帰れ」と、その男に向けてアスモデウスが呪詛まじりの視線を注いでいた。
「碧也……その疫病神はどこで拾った?」
「帰ってくる途中、ここの三十メートル先に落ちてた。ここに来たいって言ってたから連れて来ただけだ。何かまずかったか?」
 これ見よがしにアスモデウスが盛大なため息をついた。
「おい……そこのクソ大天使。さっさと帰れ。俺はてめえのツラなんざ見たくもないぞ、ガブリエル。大方想像はつくが何しに来たんだ」
 ——ガブリエル!? あの三大天使と言われているヤツか?
「碧也という男を貰いにきた。ラファエルがアスモデウスに寝取られたっ~て相当喚いてたから気になっててね~」
 何も言わずにアスモデウスの裏に隠れる。
「てめえらは揃いも揃って人の話を聞かねえな。天使ってのは言葉も理解出来ねえのか!? 碧也は俺の運命の番だと言っている。誰にもやらん」
 地響きがしそうなくらいにアスモデウスから圧が放たれていた。
「ノンノン! 寝取るから気にしなーいよ。ボクとの子なら凄いのが生まれそうだからねー」
 ガブリエルと呼ばれた男がニッコリと微笑む。
 ——ああ、本当に拾って来てはいけないヤツだった。
 ごめんアスモデウスと思いながら、白羽と一緒にアスモデウスの影に隠れたまま吐息をついた。
 すると、また大気が震える。覚えのあり過ぎる感覚だ。思わず遠い目になってしまう。
 ——何でまた来た?
 更にややこしい事になりそうだ。
「あー、駄目駄目ガブリエル。碧也はもう産めないよ。私がさっき子宮壊したからね。諦めな。ほら天界に帰るよ」
「は!?」
 驚いたのはアスモデウスも一緒だった。目を見開いたかと思えば、こちらに向けて視線を落とした。
「ああ……さっき突然腹に穴開けられた。あっという間だったから抗う余裕も無かったんだよ。でもこの通り治してもらったから大丈夫だ。ただ……ごめんアスモデウス。子宮だけ潰された」
 話し終える前にアスモデウスが視界から消える。え? と思った時には、ラファエルの体が吹き飛んで事務所の壁にぶつかっていた。
 あの威力でぶつかったにも拘らずに壁にはヒビ一つ入っていない。
 ——どれだけ頑丈なんだ、この事務所。
「わ~お、痛そうだねラファエル」
「私はお前たちの為を思って動いたのに酷いな~」
 さしてダメージも受けてなさそうな顔でラファエルが立ち上がりながら言った。その言葉を聞いて、アスモデウスが不機嫌さを押し隠しもせずに口を開く。
「お前に何の関係がある? 二度と碧也に近付くな」
「やだね。何と思おうがお前の勝手だけど、私は個人的に碧也を気に入っている」
「碧也に固執する程にか?」
「ふふふ、お前と同じだよって言えば満足するかい? まあ似たような物だとは思うけどね」
 空気が重い。負荷のかかる重力が変わってしまったかのように、体が重い。白羽は大丈夫なのかと視線を向けるとケロリとしていて、やはりこの子は異質なのだと思い知って苦笑する。
 

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