【本編完結】Ω堕ち元αは運命の番である最高級人外αを10回殺したい【】

第18話、ヒートと巣作り

「ククク、ははっ。こら、まだ挿れただけだぞ碧也。気絶するな」
　アスモデウスの姿が本来の姿に戻っていく。変化しながらめちゃくちゃに腰を振られて、結腸の奥深くまで潜り込まされる。
「ぅああ、あああ、アアー！」
　ずっと疼いたまま満たされなかった腹の奥を突然刺激されてしまい、悲鳴混じりの嬌声を上げて碧也が覚醒した。
「まだ此処は開発してやってなかったな」
　アスモデウスの節張った指が碧也の上半身を滑る。
　胸の突起を摘まれて、碧也の腰が浮いた。
「なんだ、開発するまでもなかったか？」
　深く陰茎を埋められたまま上体を倒され、乳首を口に含まれる。もう片方は指の腹でグリグリとこねくり回されると、碧也の体が小刻みに震えた。
「それ……っ、やめろ」
「乳首だけでイけ」
「無茶、ばっか……言うな」
「本気だが？」
　ズルリと中から陰茎を引き抜かれ、上半身のみに集中される。
　突起を指先で転がされて軽く引っ張られた。
　むず痒い感覚に身を捩ると、片方は口内に吸い込まれて、ひたすら舌で刺激された。かと思えば、平たい胸を全体的に揉み込まれ、また刺激を与えられる。
　甘い疼きが腰の奥で広がり、碧也はアスモデウスの腰を太ももで挟んで、膝をもたつかせた。
「ひっ……」
「素質ありすぎだ。本当に乳首イキ出来そうだな」
　アスモデウスが喋る度に、唾液で濡れそぼった突起に息がかかってくすぐったい。
　また膝をもたつかせると、とどめだと言わんばかりに口内で愛撫され、激しくなった舌の動きと指の動きに翻弄された。
「ふ、……っ、う、や、ぁ」
　左右交互に口に含まれると、唾液で滑りが増す。
「ぅ、ああ……っ、あ！」
　チュパチュパという濡れた音が聴覚までも犯してくる。
　背筋を駆け上ってくる快感から逃れようと、胸元にあるアスモデウスの頭に両手を乗せて押しやった。
　瞬間両手とも掴まれて、魔力で操作したのか枷で繋がれてベッドの両端に広げたまま動けなくされる。
「アスモ……デウス、そこじゃな、い。中……っ、欲しい」
「イけたら挿れてやる」
「や、ぅ……っ、あ、ああ、あ」
　気持ちいいのは気持ちいいが、イクには刺激がまだ足りない。
　絶頂の手前まで体を高められて寸止めされている気になる。
　もっと決定的な快感を拾おうと、碧也は自分の胸元に意識を集中させた。
　アスモデウスの舌遣いにも指遣いにも吐息にも全て。
　頂点に君臨するこの男が、自分の体に夢中になっていると考えると、ある種の優越感と征服欲が生まれた。
　腰の奥がズンと重くなり碧也の脳まで痺れさせ、蕩けさせていく。
「ア、アア、あああ！」
　陰茎が震えて、少量の精液が飛んだ。
「良い子だ碧也。ほら、お前の欲しがっていたものだ。たらふく喰え」
　後孔に待ち望んでいたモノを差し込まれ、最奥まで埋められる。
「あっ、あっ、あああーーー！」
　思わずアスモデウスの腰に絡めていた足に力を込めてしまった。
「あーあー。ホールドまでしてそんなに中に欲しいのか？　すぐ出してやるから待ってろ」
　両足を高く持ち上げるように取られて開かされ、ガン掘りされた。
「あ、……ッ、あ～～～～‼︎」
　もう声も出ないくらいに快楽責めにされ、何度か意識が飛んでは快感で起こされる。
　中に精液を吐き出しながらも腰を打ちつけてくるアスモデウスに向けて、あの字を作ってゆっくりと口を開いた。
「ククク、まさか〝おかわり〟のおねだりまでされるとは思わなかったぞ。あー……、どうしてくれようか」
　引き起こされて正面から抱きしめられる。
　困っているような悩んでいるような雰囲気が伝わってきて、何処か様子のおかしいアスモデウスの名を呼んだ。
「アス、モデウス？」
　フッと息を吐いたアスモデウスが口を開く。
「捕らえたつもりだったんだがなあ……。どうやら囚われてしまったのは俺のようだ。碧也、今は心底お前の全てが欲しい。お前を手に入れたい。それ以外はもうどうでもいい。お前だけが欲しい」
　口付けられ舌を絡ませ合う。名残惜しむようにすぐ離れた唇から銀糸が引かれた。
　間近で視線が絡む。
　——そんな顔、するなよ。
　恋情と劣情を孕んだアスモデウスの瞳が細められる。それに呼応するかのように自身の心音も跳ねた。
　——本当にどうかしている。
　ヒートのせいで心も体もバグっているのは分かりつつも、アスモデウスの腕の中にいるのは堪らなく心地良い。
　愛おしくて多幸感にも満ち溢れている。そんな事実なんて、知りたくなかったし、気が付きたくもなかった。
「アスモデウス……」
　名を紡ぐ。
　頬に口付けられ、瞼にも唇が降ってくる。
「俺に堕ちて来い、碧也」
　どうしていいのか分からずに、碧也はアスモデウスの背に戸惑いながらも両手を回した。
　もうとっくに手遅れだと苦笑しつつも認めたくない気持ちが勝り、言葉にはせずに顔を隠すようにアスモデウスの肩に額を乗せて自嘲した。
　また再開された交わりはいつもみたいに際限が見えなくなって、碧也はひたすら嬌声を上げてアスモデウスの子種を受け取る。
　もう何度目か分からない絶頂をむかえ、水分補給の為に水の入ったグラスを手渡された。
　そんな物より口付けが欲しくて、アスモデウスの腕を引き自ら口付ける。
「足りねえよ……アスモデウス」
「ああ。ちゃんとくれてやる。その前に水分だけはとれ」
　グラスを受け取らずにいると、口移しで水を流し込まれて喉を嚥下させた。それを何回か繰り返しされ、また睦み合う。
　アスモデウスから水を飲まされ、その手から軽食を与えられて、ひたすら交わる。そして、四日目のヒートも終わろうとしていた。
　今日はアスモデウスに急遽仕事の依頼が入り、昼から出掛けていていなかった。
　ヒートもだいぶ落ち着いてきていた碧也は、ガウン姿のまま畳の間に腰掛けている。
　出入り口の襖を開け放ち、碧也は畳の間のちょうど正面にあたる部屋を見ていた。
　理由はわからないが、先程からそこにあるクローゼットがやたら気になって仕方ないのだ。
　立ち上がって、クローゼットの扉を開けた瞬間また頭がぼんやりしてくるのが分かった。
「アスモデウスの……匂いがする」
　仕事用にほんのり香る程度につけている香水の匂いも混じっている。
　ハンガーに掛けられていた服を全て取って、畳の間に運ぶ。何往復かしてスーツもネクタイも何もかも移動させ、自らの印を刻むように全ての物にナイフで縦一直線のキズを付けていく。
　——これで全部……オレのだ。
　頬が緩む。アスモデウスの持ち物に己の印を付けられた事に満足して、一枚づつ畳の間の中心に円を描くように置いていくとその中に横向きに身を倒した。
　残った服は全て自分の上にかけて、横向きのまま頭から足の先まで埋もれたままでいると多幸感に頭を支配される。
　意識までフワフワとしてきて心地良い。
　——落ち着く……。
　眠気に身を委ねると、意識に白い靄がかかりそのまま夢の中に落ちた。