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第17話、初めてのちゃんとしたヒート
しおりを挟む「俺は本気なんだがな。それより碧也ガウンを脱いでベッドに上がれ」
折角の気分も台無しだ。
ベッドの上を指さしたアスモデウスの手には既に枷が握られていた。これにも心底ウンザリだ。
お仕置きの事をすっかり忘れていた。
手足はまた枷で戒められる。ただ、いつもと違って、その鎖は碧也の手足を右と左に分けてそれぞれが繋がれ、M字開脚にさせられていた。
長さにゆとりはあるが、いつもよりは動きにくい。
「今度のヒートが楽しみだな碧也。初回は一日で終わってしまったから、調整の為にそろそろ来るんじゃないか? ベッドに俺の服を置いていってやろう」
「必要ない」
後孔にローションを塗りたくられ、中は指で掻き回された。
「普通サイズのバイブならもう抵抗なく入るだろう。太めにしとくか」
「おい、アレは……っ」
「アレは?」
顔を覗き込まれる。
人の嫌がる事となるとアスモデウスの加虐心が増すのを思い出して、碧也は口を噤んだ。
これまでにもそれで散々な目に遭った。
「な、んでも……ない」
喉を鳴らして嫌な笑みを浮かべたアスモデウスが、楽しそうにバイブにもローションを溢している。
「ああ。お前が好きな長いやつはまた今度だ」
「……好きじゃない。嫌だって言ってるだろ。ボケてんのか」
「そう言われるとそっちをぶち込みたくなるなあ。まあ、今日は時間がないから違うやつにするが、今度楽しみにしておけ」
——楽しみにするわけがない。
一先ずは回避出来て心底ホッとした。
次の機会が訪れる前に捨ててやろうと心に誓う。
逡巡している間に内部にバイブを潜り込まされて息を詰める。
「はっ、ん、んぅ」
ゆっくりと奥まで挿入された後でバイブが抜けないようにその上で固定バンドを装着された。
「では行ってくる。思う存分遊んでいろ」
セリフと共にスイッチを入れられ、バイブがピストン運動を始めた。
「んんんんーーーー! アス……っ、モデウス、速度……、下げッ……ろ」
「お前ならすぐ慣れる」
笑い声と共に一蹴される。
「んのクソ悪魔! マジで死ね!」
「ククク、じゃあな碧也。頑張って夫の帰りを待っていろよ」
「ああ、アアッア! ん、ぁ、っ、ア……っ、ああーー!」
機械の容赦ない動きで、最奥手前まで突かれる。いつ帰るのかも分からないアスモデウスをこのまま待つには辛すぎた。
スーツに着替えているアスモデウスに向けて口を開く。
「アスモ……、デウス」
「今度はどうした? いってらっしゃいの接吻でもしてくれるのか?」
「誰が、するか! んぁああ、あ……、や……っ、いつ……っ帰って……くる?」
嬌声の合間にやっとの思いで問いかけると、アスモデウスはニヤニヤと笑いながら言った。
「五時間後くらいだ」
そんなに待たなければいけないのかと思って落胆する。
気がつけばアスモデウスの姿は無くなっていた。
誰もいない室内で、無機質な機械音と碧也の喘ぎ声が木霊す。抽挿されるだけだった動きが変わり、グルリと内部を掻き回された。
「ひ、ぁあああ!」
内部をかき回され、中でイかされる。その後またピストン運動に切り替わり、前立腺と腸壁を擦られて吐精した。
アスモデウスにとことん調教されている体が、バイブの規則正しい動きに物足りなさを感じ始めるのにそう時間はかからなかった。
早くアスモデウスのモノを奥深くまで挿れられて、意識が飛びそうな程に揺さぶられたい。そんな事を考えてしまう自分に舌打ちした。洗脳され過ぎだ。
「あー……っ、あ、もう……最悪、だ」
——早く、欲しい。
バイブでは届かないその奥を突かれたい。
思考がもう受け入れる側に定着してしまっている。
アスモデウスに飽きられて捨てられたと仮定して、もう普通のセックスは出来る気がしなかった。
悔しすぎるから、本人には絶対伝えないが。
——くそ、足りない……っ。
アスモデウスに言われた通り、バイブから与えられるピストン速度にはすぐに慣れた。
今のままでも充分体は高みへと追い上げられるし、中でも前でもイけるが、やはり焦ったくて物足りない。
「ああ、っぁ、ん、んんんー!」
また中でイくと、イキっ放し状態になって碧也の腰が反り返った。
腰がゾクゾクして甘い痺れが走る。横向きになると自分で陰茎を握りしめられるのが分かって、碧也は目を瞑って握り込んだ。
自慰をするように上下に擦ると、脳裏にアスモデウスの顔が浮かぶ。すると歓喜で頭の中に星が散った。
「ふ……、あっ、ああ、アスモデウス……ッ、うあああ、ああ、また……イク‼︎」
中と前で交互に絶頂を極め、はっはっと荒い息をつく。
酸素が足りない。頭がクラクラする。
視線をやると、引くほど出た大量の精液が手を汚していた。
それでもイキ足りなくて、また陰茎を擦り上げる。何度も何度も繰り返しているうちに、やがて精液すら出なくなった。
どれだけ時間が経っているのか分からない。
番が側に居ない事に堪らなく不安を覚えて、不意に泣きたくなってきた。
アスモデウスの痕跡を辿るように身の回りを見渡す。置いていかれた服や枕、クッションに擦り寄って顔を埋めると、アスモデウスの香りがして少しだけ気持ちが落ち着いてきた。
「も、嫌だ……っ、アスモデウス……早く……しろ」
腹の奥が切ない。内部がアスモデウスを求めて甘く疼いている。
横向きに転がって、中イキを繰り返していると、やがて意識が飛んだ。
——あ? トんでた?
どれだけ寝ていたのかは分からないが、目が覚めた時にはバイブの電源が切れていた。
しかし腹の奥が甘く疼いていて切ない。
とりあえず立ち上がって、フラフラとしながらもシャワールームへと向かう。
歩けるくらいの鎖のゆとりがあって良かった。ザッとシャワーを浴びて、戻るなり適当にシーツも替えてからまたベッドに転がる。
腹の奥の切なさが止まらない。
バイブを自分で動かしながらアスモデウスの香りが移った枕にまた顔を埋めると、目の前が白く霞んで光が明滅した。
「アス……モデウス、アスモデ……ッウス」
後孔からトロリと愛液が溢れる。
バイブを動かす度にグチュリと卑猥な音が立ち、さっきよりも興奮した。
——これ……ヒートか?
考えてみれば確かに熱っぽいし、思考回路もおかしい。
普段はそうでもないのに、ここに居ないアスモデウスの事ばかりを考えてしまうからだ。
気配を感じ取れないのが無性に寂しい。
ヒートがそうさせているのだと考えると納得出来た。
「そこらの淫魔よりよっぽど淫魔らしいな、碧也。扉の外にいても番を誘う匂いで頭がクラクラするぞ」
突然耳元で囁かれ、喜びにも似た感情が胸を締めつける。
「アスモデウス……っ」
「そんなに俺に抱かれたかったのか?」
コクリと頷くと、体を起こされて戒めを全て解かれた。
アスモデウスの首に両腕を巻きつけて、隙間も無くなるくらいに抱きつく。
「ずいぶんと熱烈なお出迎えだな。そろそろだとは思っていたがヒートに入ったか」
ハァ、ハァと甘ったるい吐息が出て止まらない。アスモデウスの……否、番の匂いで頭が変になりそうだった。
仕上がりきっている体が、アスモデウスを求めて戦慄く。
「入ったぁあ……っ、も、欲しい……っ、お前が……欲しい。アスモデウスが、欲しい。早く……挿れろ」
少し体を離して、アスモデウスの喉元をカプカプと甘噛みする。
「ククク、オメガが番へおくる求愛行動というやつか。あまり愛らしい真似をしてくれるな碧也。制限無く抱くぞ」
破顔したアスモデウスに唇を貪られる。
「ん、ぅ、……んっ、は、ぁ」
自らも舌を絡めて、アスモデウスの唇にも甘噛みした。
「俺の運命の番とやらは凶悪な程に可愛いな」
押し倒されて、腰に装着されていたバンドとバイブを抜き去られる。
「アスモデウス、アスモデウス……っ、欲しい……、欲しい」
碧也は自分の両膝を抱えておもいっきり開いた。
服を寛げたアスモデウスの陰茎が入った直後、碧也は中と前の両方で絶頂を極めた。
「あああ、ああ、んんんーーっ!」
強い悦楽で目の前がホワイトアウトする。ビクビクと体を震わせたまま碧也は気を失った。
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