パライバトルマリンの精霊王は青い薔薇のきみの夢をみる

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第4話、もっと

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「もっと」
 楽しそうにしながらも優しく眦を下げて微笑まれる。
 心音が跳ね上がって、腹の奥もランベルトを求めて疼き出した。
 見透かされたようにまた先端だけ入り込んでくる。
「ラン、ベルトが欲しい……。俺の中、お前で満たして……。も、意地悪……ッするな。俺の中に、ランベルトの……、挿れて欲し……ッ、あ、ァぁああ、あああ!」
 突然訪れた快感に腰をそり返らせると両手で腰を掴まれ、律動に合わせて揺さぶられた。
「ああん、んんー! イイ……っ、それ気持ちー、ランベルト……、ぁあん、気持ちいい」
 過ぎた快楽を逸らすようにベッドシーツとクッションを掴む。
 ランベルトの腰の高さまで腰を持ち上げられているので、足は空に浮いたままだった。
「レオン、可愛い……ッ」
 ランベルトの吐息がやたら艶かしくて、腰に力を入れてしまう。
「好き。俺のレオン」
 その言葉が本当だったら、きっと幸せだった。よく二年半も持ったものだと我ながら思う。
 何度も繰り返される抽挿に散々鳴かされた。
「ランベル……ット、もっと」
「もっと?」
「奥っ、あ、アッアア、奥欲しい!」
「良いよ。一度息整えて?」
 嬉しそうに囁いたランベルトの声かけに頷いて応える。
 息を吸って吐き出すと、それに合わせて腰を深く打ち付けられた。
「んぁ、あっあ、アア!」
 内部でイかされて腰がそりかえる。
 思考回路も体もランベルトで満たされて、与えられる快楽を享受するしか出来なくなった。

 まだ夜も明けきらない薄暗い時間帯だった。
「ねえ、起きてレオン。良いの見せてあげる」
 掛けられた声に目を擦る。まだまだ寝ていたいのにどうしたというのだろう。
 ランベルトに起こされて、立ち上がると魔法で着替えさせられた。その上にブランケットを掛けられる。
「寒いと思うから包まってて」
「ん……分かった。何処か行くのか?」
「うん。良いの見せてあげる」
 横抱きにされたまま、転移魔法で一瞬の内に外に移動されていた。そこから上へは、飛んで移動する。
 人一人抱えているというのに、箒無しで安定して飛べる熟練された飛行技術に関心していると、三角になった校舎の屋根の上に降り立った。
 ちょうど朝日が登り始める。
「レオン、見て。夜が明ける」
 高い場所から見ると景色が森で遮られる事がない。
 遠くに見える海と空の合間にある鈍い藍色が、徐々にオレンジ色を帯び始めて、黄色へと色合いが変化していくのを食い入るように見つめる。
「綺麗……」
 人族の国に住んでいた時も、周りは家やその他の建物で遮られた場所に住んでいた。
 登りきった太陽を当たり前の光景として見ていなかったので心が躍る。
「こんなに綺麗な物だったんだな!」
「でしょ? 早起きした時はたまにこうして此処に来るんだよね」
 額に落とされた口付けも嬉しくて目を細めた。
「こんなの知らなかった。ありがとう、ランベルト。なんか得した気分だ!」
 言いながら微笑みかけると、ランベルトが照れたように笑った。
 何を思ったのか、ランベルトが空高く音のない青い花火を打ち上げる。
 朝日の光に溶け込んで、今度は透明な光の粒になって消えた。
「ランベルトって本当に青が好きだよな。もしかして、俺に絡み始めたのは青い色繋がりか?」
「あはは。確かにそうだったのかも。レオンの青が一番好き。こんなに心を惹きつけられたのは初めてだったから」
「お前な……」
 少し呆れた口調で言うとランベルトが口を開いた。
「俺たち王族が生まれるずっと前に、レオンと同じ色のドラゴンが居たんだって。絶滅しちゃったらしいんだけど、一目本物を見たかったな。レオンの色なら俺絶対好きになる自信ある」
「青だしな」
 嫌味っぽく言うと、ランベルトが今度は無邪気に笑った。



 朝日を見終わってランベルトの部屋に戻ったものの、そこからが長かった。
 朝から盛り始めたランベルトに付き合って、自室へと戻ろうとする度に引き止められていた。
「レオン、もう帰っちゃうの? ここから教室行けば良いじゃん」
「いや、そんな訳にはいかないから」
 ずっとこんな調子だ。
 帰って欲しくないと駄々を捏ねるランベルトに引き止められていて、それを頑なに拒否出来ずにいる自分にも非があるのだが。
「じゃあ治癒使わない」
「勘弁してくれ。これじゃ歩けない」
 こんな時に限って治癒魔法は使わないとこがズルい。言わずもがなベッドの上の住民だった。
「帰る時に使うね」
「だから帰るって言ってるだろ?」
「まだダメ」
 埒が開かない。
 またブランケットの中に引き込まれて、腕の中に閉じ込められる。
 二人してベッドの上で戯れて、飽きずに喋る……この繰り返しだ。
 連休が明けて帰して貰った時には、治癒魔法を使われたというのにドッと疲れが押し寄せていた。
 ——はあ、散々な目にあった。
 帰る直前にやっと離してもらえたので、安堵の吐息を溢す。
 ——腹の中にまだランベルトが居る気がする。
 下っ腹の奥が疼いていて、情事の熱が抜けない。このままセックス依存症にでもなるんじゃないかと真剣に考えてしまう。
「ただいま、ケミル。おはよう」
「おー、おはよ。相変わらず爛れてんな、レオン」
「そんなんじゃないよ」
 部屋に帰るなり、同室者のケミルに散々揶揄われた。
「またランベルトのとこに居たのか?」
「そう。連休中ずっと離してくれなくてさ。さすがに疲れた」
 ケミルには違うとは言いつつも、こんなに爛れた学生生活で良いのか? と自分でも疑問に思うくらいに最近はセックスしかしていない。
 性欲お化けのランベルトにはついていけなくて、毎回腰砕けにされている。
 でも連休初日に見た朝日は本当に綺麗だった。今でも網膜に焼き付いている。
「ちょ! レオン! そのセリフは際どいからオレ以外には言わない方がいいよ⁉︎」
 焦った様子で慌てているケミルが面白くて表情を崩して笑いかける。
「そうなのか? 分かった。黙っておく」
 ケミルが理解のある男で良かったとつくづく思う。
「教えてくれてありがとな、ケミル」
「ふはっ、気にすんなって!」
 ケミルはランベルトの事で言及するどころか、他人に嫌味を言われた時はさりげなく庇ってくれる唯一の親しい味方だった。
「レオン一限から受ける? 受けるんなら一緒に行こうぜ」
「うん。一緒に行く」
 ケミルともクラスは違うけど、授業開始時刻は同じだ。
 二人揃って寮を出て、各々の教室に入った。
 魔法学の授業を受けている最中に、やたら外が騒がしいのが分かり、レオンは視線を窓の外へ向けた。
 外では箒を使った飛行練習をしている。その中にランベルトの姿も確認出来た。
 ——あいつちゃんと飛行練習も受けてるんだな……。
 ランベルトは技術力が高すぎるのもあって、よくサボっているから意外だった。


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