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第3話、もっと俺を求めてよ、レオン
しおりを挟むそれからは一か月は避けまくって口も聞かずに徹底的に無視したのに、ランベルトは変わらないどころか、めげもしなかった。
初めに提案されてから半年経った頃、とうとう根負けしたのはレオンの方で……、ランベルトの提示した契約を呑んで今の関係に至っている。
契約を呑んだというよりも、契約に等しい接し方に無理やり慣れさせられていったというのが正しい。
これでは契約していても、していなくても変わらないと思わせられたからだ。
部屋で寝ていた筈なのに、いつ侵入したのか、起きたら抱えられて一緒に寝ている。ランベルトの部屋に拉致られている時すらあった。
何度言っても侵入する事をやめないので、ランベルトが部屋に来るのを諦めた。
『レオン、やたら大きい犬に懐かれたな』
同室者のケミル・リーガルトは爆笑していた。
合同選択選択授業も常に一緒。
合同実技でも教師の一言で何故か一緒に組ませられ、付き合ってるのと大差ない生活を送れば折れざるを得なくなった。
『ミリアーツと組ませておけば、イルサルが大人しい』
レオンからすればとても迷惑な名言が出来ていた。
ただ、想定外だったのは〝ごっこ彼氏〟になった途端にランベルトがめちゃくちゃ紳士で優しくなったくらいだろう。
その三ヶ月後に手を出されはしたものの、一週間かけて丁寧に体を開かれて、体の負担にならないように配慮までされた。
必ず治癒魔法までかけてくれるので、授業に響く事もない。
付き合い出してからは嫌がる事はしないし、意見も聞いてくれるようになった。
助けて欲しいとも言っていない筈なのに、何故か察したランベルトが率先して手を回した。
ランベルトは思っていたより優しかったし、初対面で感じたような軽薄な男ではなかった。
ドロドロに甘やかされて、ランベルト無しでは生きていけなくなるように、手取り足取り世話を焼かれている。
今となっては、ランベルトという存在に依存していると思う。
ランベルトに連絡しようとしていたmgフォンが着信のバイブで震えて、意識が浮上してくる。
——あ、しまった……連絡する前に寝てた。
mgフォンは、通話やメッセージ、ネットワークは魔力を流す事で回線に繋がるので検索も出来る。
体調や魔法量を自動的に測定し、管理までしてくれる優れものだ。一人一台持つ事を許されている、魔法使い専用の携帯電話だった。
「もしもし」
『やっと出た! どうしたの? またなんかあったの? レオン今どこ? 研究所真っ暗だよ?』
拉致られて以来過保護過ぎるくらいに過保護になった〝ごっこ彼氏〟は口早に質問してきた。
「違うよ。研修室の奥の部屋にいる。レポートを書いてたらそのまま寝ちゃって、これから帰るとこだった。連絡出来なくてごめんな」
『何もなかったんならいいよ。安心した』
通話しながら支度を終わらせて、荷物を持ってドアノブに手を掛ける。
「あ、あれ?」
『どうしたの?』
「やらかした……寝てた間に戸締りもされてしまったみたいだ。ランベルト、悪いけど先生から鍵を貰ってきて開けてくれないか?」
奥の部屋は外鍵しかついていない。我ながらアホな事をしてしまったと凹んだ。
『はははっ、何してるのレオン。いいよ、待ってて。俺が行ってあげる』
「行くって……」
「はい到着」
転移魔法で現れたランベルトに突然後ろから抱きしめられて目を見開く。
「おい、お前まで来たら閉じ込められたままになるだろ」
「大丈夫だよ。俺がレオン抱えたまま転移すれば良いだけだから。ちゃんと掴まっててね」
「同時に転移って……」
言った直後、ランベルトの部屋にいて大きく瞬きした。
誰かを抱えながらの転移は加減が難しく、教師くらいしか出来ない。それをいとも簡単にやってのけられるとため息しか出て来なかった。
ランベルトは王族で成績優秀者なのもあり、一人部屋を提供されている。
過去に同室者に薬を盛られて襲われたり、刺客を差し向けられたり、買収された同室者に誘拐された事があった為に身の安全を考慮してそうなったらしい。全ては卒業生の話で、真偽は分からないが聞かされた時に納得は出来た。
内部は二人部屋と同じ十二畳くらいの広さがあって、簡易的なキッチンや食料品入れまで付いている。
此処へ来る頻度が高いので知っているが、数日間ならここだけで暮らしていけるくらいだ。
「け……っ、チートとか居なくなればいいのに」
「ええっ、助けたのに何で俺蔑まれてんの⁉︎」
ふいっと顔を背ける。こういう魔法力や技術力を鼻にかけないとこがランベルトらしいではある。
自慢したり威張り散らす事がない。今でも何でも出来るくらいなのに、とんでもない量の魔法本を読んで知識を詰め込んでいる事も知っている。
「嘘だよ……ありがとう…………。俺もランベルトみたいな魔法力量が欲しかったな」
拗ねたような口調で言うと、ランベルトに持ち上げられて抱きすくめられた。
「レオン可愛い!」
「絶対馬鹿にしてるだろ……お前」
「してないよ。たまにデレる時のレオンて可愛過ぎて食べたくなる」
反論しようとした口はランベルトの口で覆われる。すぐに口内を貪られて、舌を絡ませられた。
「ん、……ラン……ッベルト」
歩き出した振動を感じて、しまったと思った時にはもうベッドの上に転がされていた。
「ランベルトっ、待て、シャワー……、ひぅ!」
「待てない」
——この駄犬がっ。
耳を口に含まれて舌で嬲られる。首筋に降りてきて、何度も吸いつかれた。
「痕、つけんな……っ、ランベルト」
「見えないとこなら良い~?」
手と魔法と両方で脱がされていて、外されたローブが一人でにハンガーにかかり、続いて服も同様に折りたたまれていく。
一糸纏わぬ姿になった時には、微かに体に与えられていた刺激と口付けだけで、期待感からかほんのりと色付いていた。
胸の飾りを弄られて、ビクリと体が震える。
「エロい体になったよねレオン。俺が育てたこの体を、卒業して他の誰かが触るかもしれないって思うと、ソイツを八つ裂きにしてやりたくなるよね。レオンは俺のなのに……何で手離す契約にしたんだろう。誰かにあげるのやだなあ。ねえ、契約やり直さない?」
ランベルトの執着は度を過ぎるくらいで、ため息がでる。
——俺も、お前のものだけで良かったよ。
内心呟く。不毛な願いだ。
言い返す気力さえ奪われていて、両腕を持ち上げてランベルトへと手を差し伸べる。
——でも、契約はもうやり直すつもりはない。
何とか適当に話題をすり替えたかった。
首元に抱きついて、されたのと同じように耳と頬と鎖骨に口付けていく。
「ランベルト、ちゃんと触れ……よ」
囁くように声にした。
「嫌というほど触ってあげる」
両頬に何度も口付けが降ってきて、唇も啄まれる。
「レオン好き。大好きだよ」
ランベルトの〝好き〟が恋愛対象としての好きなら良かったのに、と考えてしまい苦笑した。
ランベルトと知り合う前に、大学院内でランベルトが他の生徒にそう囁いているのを何度も見かけた事がある。
——勘違いするな。俺にだけ与えている言葉じゃない。
構内にあるショップでランベルトがオモチャにもそう言ってるのも何度も見てきた。
ランベルトの言葉は、あれらと同じだ。
甘い言葉を囁きこうして続ける行為はもう契約の範疇を超えていて、己だけがランベルトの虜になっている。
——俺にだけ、囁いていて欲しかった。
考えることすら空しい。
お互い執着からくる無い物強請りをするようになったら終わりだと感じて、心の中で自身を嘲り笑う。
「ランベルト……、中……っ、もう欲しい」
「まだダメだよ」
ジェルを塗り込まれた窄まりはもう柔らかく蕩けている。それなのにランベルトは焦らすように指しかくれない。
「お願い、ランベルトが欲しい……」
「じゃあ、レオン。俺が欲しいってもっと言って?」
心も欲しいと言ってしまいそうになって、誤魔化すように目を細める。
「ランベルトが……っ欲しい」
「ダメ。もっと」
「欲しい、から……ランベルト……お願い、ちょうだい」
後孔に先端を押し付けて軽く挿入されたりすぐに抜かれたりと繰り返されると、期待感が膨れ上がり、早く体の奥底まで突いて欲しくて堪らなくなった。
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