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 頭上にあるクッションを引き寄せて顔を埋める。
「う……」
 恥ずかし過ぎて顔どころか全身が熱くて堪らなかった。
「言っておくが、俺とお前が寝ていたのは日本に居た時から筒抜けだったぞ」
「テメエが……っ、見えるとこも……噛むからだろが。カイルに聞いた……、あ、ああ!」
 喋ってる途中で再度動かれ、語尾が嬌声に変わる。
「セックス中に他の男の名前を呼ぶな」
 ——そういえばコイツ……妬きもちやきだった。
「もうアイツにはリュクスが居るから……良いだろが」
「リュクスも羽琉に違いないんだろ? 寧ろお前が魂の半分をカイルにやったってのも俺は気に食わん」
 ずっと直腸の奥ばかりを刺激されているので、啓介のやりたい事が分かってしまい息を呑む。
 幾度となくその奥を犯されてきた記憶が鮮明に蘇る。
 またグッと奥に陰茎を潜り込まされそうになって悲鳴めいた声が出た。
「やっと開いてきたな」
 低音で掠れた啓介の声が吐息と共に耳朶を擽った。
「ん、んあ、けい、すけ」
「もう一回イっとくか?」
 ゆるゆると左右に首を振る。この流れでイってしまうと一気に結腸を開かれる。頭の中が飛んで、快感を享受するしか出来なくなるのは個人的に好かない。
 それを分かりながら、啓介が更に腰を打ちつけてきた。
 その瞬間だった。
 ゾワリと全身の神経が研ぎ澄まされたような感覚に陥る。
 ——何だ……、これ?
「フェロモンが凄いな。やっと本格的に発情期に入ったか」
「何、言って……?」
「久しぶりにお前を堪能したいからトぶなよ、ハル」
 皮膚が粟立つ。啓介が動く度に内部の陰茎の動きを追うように、勝手に蠢いている気がした。
「啓介……ッ、あ、ァ、啓介! ひっ、あっ、ァア!」
 両腕を立てて前方に移動しようとしたが、腰を持たれて引き戻される。
 腹の中からグプッと音がしたかと思えば、快感が強過ぎて頭の中が真っ白になった。それだけならまだ良かった。
「ハル……、ハル……ッ」
 荒い息遣いと共に、啓介からもフェロモンが放出される。
 ——これ……ラット、か?
 それを浴びていると訳が分からなくなってきて、啓介が触れる所全てが性感帯になった。
「ひっ、ん、ぁっああ、ああ!」
 肌を打つ音が激しくなってまた中に吐き出される。勢いよく引き抜かれて、対面座位に変えられた。
「んん……ぁ」
 口内を貪られた後でまた挿入されると、それだけで達してしまった。
 腹の中が引き攣っている。
「ハル、愛している」
 啓介の言葉に身を震わせ、小さく「俺も……」と答えた。
 睦言を交わしながらの行為は初めてだったのもあり、気恥ずかしくて目を細める。
 正常位に戻されてからは息を吐く間もないくらいに揺さぶられ、吐き出しても吐き出しても満たされない欲求に戸惑いながらも肌を重ねた。
「ふ……っ、あ、ああ、ア゛ーーっ!」
 どれくらい交わっていたのか分からない。
 気がついたらお互い精液だらけで寝ていた。せめて何か拭くものでも取って来ようかと上半身を起こしたけれど、啓介に腕をとられてそのまま横抱きにされた。
「そのまま風呂に行った方が早い」
「へ? ああ、うん……」
 相変わらずの察しの良さだ。
 だが、面倒見の良い啓介にはまだ慣れずに戸惑いを隠せなかった。
 プラス、この抱き方には慣れない。せめて俵担ぎにして欲しい。
「なあ……何でこの格好? 抱き心地悪くないか?」
 レヴイの中に入ったままだったら、これでも軽々いけただろうが、今は本体だ。
 百八十センチの身長に標準体重だとキツくないのか? 疑問でしかない。
「人間とは腕力が異なるからな。苦でもない。逆にレヴイの体は俺には軽すぎた。潰しそうで、どうしようかと思っていたぞ」
 シャワールームに篭り、順番に洗って貰う。啓介の指が肌を滑る度にピクリと反応を返すと、微かに笑う声が背後から聞こえてきた。
 また体の熱がぶり返してきている。執拗に内部に出されたままの精液をかき出されては、反応を楽しむように前立腺も刺激された。
「また出したいんだろ? ここで何度かイっとけ」
「は、ぁ、あっ」
 ——クッソ、頭……バカになる。
 何度出しても交わっても冷めない熱は厄介でしかない。
「ハル、薬置いとくぞ」
 扉をノックする音の後で、リュクスの声がした。
 カイルでもキアムでもなく、リュクスが来たという事は、やはり声がダダ漏れだったのだろう。遣る瀬無い。啓介が一度魔法を解いて「助かる」と声掛けしていた。
 また部屋の中が防音魔法に包まれる。
「は……っ、しつこい……、ん、ぁ、もう、いいだろ?」
 一度イかされて腰を上げようとすると背後に引かれた。上半身を支えられたまま座らされそうになり「まさか」と思った時には遅かった。
「ぅ、ア、あああ!!」
 背面座位で一気に結腸まで貫かれてしまい、喘ぎ叫んだ。
「ああ、あ、やめ……っ、啓介……ッ啓介」
 発情期でなくてもこの抱き方は頭がトびそうなのに、今は興奮剤を飲んでいるかのようだった。
「止めろと言う割には善がり方が凄いが?」
「あ、んあ、あああっ、うるせー……ッ、アア゛ア゛」
「嫌なら抜こうか?」
 ズルリと抜けていく陰茎の感触に、合わせて思いっきり腰に力を入れた。
「イクなら……イケ。お前もシャワー……浴びるんだろ?」
「そうだな。俺はシャワーを浴びるから、ハル、お前が動け」
「は?」
 どうせ洗うのも全て魔法任せだろうに、そんな事を言ってのけた啓介に若干殺意が芽生えて振り返った。
「ほら、早くしろ」
 啓介の視線からは本気だとしか伝わってこない。こうなったこの男は、何を言っても聞かない。
「ちっ……」
 舌打ちの後で軽く腰を上げて下に落としてと怠慢な動作で繰り返す。
「んんん、ん゛……」
 思っていた以上に力が入らなくて、小さな抽挿にしかならない。
「ハル、その動きだといつまで経ってもイけないぞ。ずっとここに籠るか?」
 腹が立ったので浮遊魔法で啓介の体を倒して上に跨ってやった。


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