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あのエロい人が悪いんすよ!
しおりを挟む「あー、もうっ! 言う気無かったっすけど、この際言わせて貰いますわ! そうですよ。純粋にあんたに憧れてました。あんたの一番近くにいて、側に居たかった!!」
「それなら恋愛じゃなくて憧れだろ」
真っ直ぐに視線が絡んだものの、気まずそうに直ぐに逸らされた。
「おれも初めはそう思ってましたよ。そもそも気が付くきっかけになったのは兄貴っすよ。しこたま酒飲んで酔っ払って、おれを須藤さんと間違えてキスしてきたかと思えば、抱かれたいとかって言い出してベッドに引き込むし。あんたマジでエロいんすよ。何すかあのバキュームフェラからのイラマ。初めて口でイかされましたわ。その間に自分で穴解してるし、また人のモノ完勃ちさせたと思えば、今度は上に乗って勝手に挿れて腰振りだすし。自分から結腸挿れて潮噴きにトコロテンからのメスイキ連発てどこのAV男優っすかっ!? 思い出すだけで未だに三回は抜けるんすけど!? あんたら普段どんなプレイしてるんすか。仕込まれ方がエグいんすよ。あれ以来、女じゃ勃たなくなりました。おれにとっては、自分が死ぬ程尊敬してる人をそういう対象で見てたって気が付いた衝撃的な一夜っした。それなのに彼女作れとか言うし、この世界来てからは運命の番? 何それ。酷くないっすか!? 須藤さんに言われるのならまだしも、あんたの口からだけは聞きたくなかったっす。おれが好きなのはあんたなんだっての!!」
早口で言ったかと思えば、カイルが肩でゼーハーと荒い呼吸を繰り返す。
「は? 待てカイル。俺、お前と寝た記憶ないんだが?」
前世の記憶を何度辿っても、全くもって記憶になければ皆の視線も痛い。
「そりゃそうっすよ。あんたおれの事をずっと啓介って呼んでましたし。須藤さんに抱かれてた記憶しかないっすよね?」
「……」
「……」
「……」
——死ぬほど最低だな、俺。
我が事ながら笑えないどころか口も開けなくて、地面に額をつけて蹲る。
「それ好きな人にはやられたくない&言われたくない一番最悪なパターン第一位です! アニキが悪いです。酷いです。一号に同情しました。一号が可哀想です」
泣き真似を始めたカイルの肩をキアムがポンポンと叩いて慰めている。
「キアムくん、良い子っすね! おれのせいじゃないっすよね? ここに居るエロい人が悪いっすよね?」
「はい! ここに居るエロい人が悪いです!」
カイルに求婚された時「後ろだけでイケるでしょ」と言われたのを思い出す。
啓介に抱かれるのが当たり前になっていたから、あのセリフの不自然さを聞き逃していた。
どうしてカイルが知っていたのかを、あの時点で気が付いていなければいけなかった。
「羽琉お前は酒を飲むな。飲んだら監禁だ」
「はい……」
啓介の地を這うような声がした。もう二度と地上には出てこれないかも知れない。
「あーー……。啓介……カイル。悪い。全然記憶にない。俺マジでクソビッチだったみたいだわ。前田の件も含めて股緩くてごめん。あの…………本当にすみませんでした!!」
前世の事とは言え、言い訳すらする気も起きなくて、土下座して謝った。
——俺、カイルと寝たか? いつ? いくら酔ってたにしても普通気が付くだろ? 何で気が付かなかったんだ……。
疑問符しか浮かばない。
そこを突然上機嫌になったわんこに引き起こされて、正面から抱きしめられる。
「なーんてね。おれは役得だったんで怒ってないすよ? 例えおれは須藤さんの代わりでしかなくて、兄貴の中でおれの事は一番じゃなかったとしてもおれはいいっす。今までだってそうでしたし。まあ、あの時は死ぬ程悩みましたけど……だからおれの気持ちの整理がつくまで振らないっすよね?」
——言葉の選び方が心に刺さる。
チクチクと……いやザクザクと突き刺されて仕返しをされている。
カイルの道を踏み外させてしまった罪悪感と、知らない間に啓介を裏切っていた事に対しての罪悪感に打ちのめされていた。
もう啓介の気持ちに応えると決めて本人にも告げているだけに、カイルにどうやって伝えて良いのか悩む。
「カイル、俺は……」
「ねえ、まさかそんな事言わないっすよね兄貴?」
「う……」
さっきから毒しか含んでいないカイルの声音がまたワントーン下がる。それでももう有耶無耶にするつもりもなくて意を決して口を開いた。
「悪い、カイル。俺はもう啓……「兄貴がおれの道を踏み外させたんすよね?」……お前の気持ちを踏み躙って啓介の代わりにしたビッチで悪かった!」
ゾワリと怖気が走り、条件反射的に叫ぶように言った。
駄犬がヤンデレわんこに進化した瞬間を垣間見る。
また内部にあるレヴイの意識が反応を示して、心臓を押さえた。
「いってえ! うう……これももうマジで心臓痛いんだが……」
「それくらい甘んじて受け入れて下さいっす」
カイルにニッコリと微笑まれた。
「ああ…………そうだな」
棒読みで返事する。
——引く事をかなぐり捨てたカイルって怖い。
拒否も反論も出来ない程に過去の過ちを暴露されていて、どこにも行き場がない。
抱きしめてくるカイルを振り解けもせずにいると、啓介に抱え上げられた。
「お前は昔っから本当に小賢しい真似ばかり使ってくるよな、カイル。あざといんだよ。その話もこうなるのを予測していて、いざという時の為に取っておいたんだろ」
「何の事っすか?」
一度言葉を切ったカイルがしたり顔で笑って腰を上げる。
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