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抜かせろ
しおりを挟む家に到着次第、保管庫を直してそこに啓介が冷凍機能と冷蔵機能をつけて食材を全て詰め込んでいく。
「オレちゃっちゃと作るんで座ってて下さい」
「任せた」
啓介同様己も料理はてんでダメなので、リビングで寛ぎながら明日からどうするかを話し合っていた。
隣に腰掛けた啓介の太ももに頭を乗せて枕にする。側頭部に手を乗せられて髪の毛を緩くかき混ぜられた。
「で、どうやって入り込む? あと、バレた時用のことも考えなきゃだよな。無線とかスマホあったら便利なんだけど、この世界ってどうやって連絡してんだ?」
今更ながら連絡手段がない不便さを痛感する。
「俺ら龍人族だったら、頭の中で直接会話が出来るけどな。他は今言った通り、郵便、鳥や動物を使って手紙のやり取りだ」
唖然とした。
「そうなのか? 龍人族て便利だな。俺にも出来たらいいのに」
龍人族しか使えないのであれば意味がない。また振り出しに戻って、頭を悩ませる。
「鳥……いや、オークション会場だとバレて即行殺されそうだな。電波飛ばすとか。ふはっ、無理……っ」
自分で言っておきながら笑った。そんな事が出来たら苦労はしない。
「いや。案外使えるかもしれん。クジラが出してる音に倣って簡単なメッセージを作る。例えば短い音は〝撤退〟、少し長めの音は〝続行〟とかな。海は一番危険な場所だ。この世界の奴らは普通サイズの海の生物の生態は知らない。まあバレやすいだろう」
確かに、あんな巨大な生物たちがいたら近付かないし捕らえられもしない。生態を調べるなど不可能に近い。
それでも見破られた時が悲惨だな、と話をしてまた振り出しに戻った。
色々案を出し合っては首を捻る。
「お待たせしました!」
キアムが料理を運んできてテーブルに並べ始めた。
「あのー、つかぬ事をお伺いしますがアニキ達って本当に付き合ってないんですか?」
「あ? ないけど。何でだ?」
どうしてそんな質問をされたのか疑問に思い尋ねると、キアムの視線が泳いだ。
「いや、もうね、雰囲気がカップルと言いますか……それ以上と言いますか……」
「ああ。運命の番だからな」
「成程。まあ、だからって諦める理由にはなりませんけどね!!」
「諦めろっ」
中々良い性格をしているキアムに、啓介が牙を剥いていた。
目の前に全ての料理が並べられる。
ルドの所で食べた料理とも啓介のとこで食べた料理とも違っていて、体を起こしてエスニック風の料理たちを見つめた。
どれも美味しそうだ。
「器用だなキアム。本当に料理上手なんだな」
「ありがとうございます。一生オレがご飯作っても良いですよ!?」
——なんか今サラリと求婚された気がするからスルーしよう。
「いただきます」
手を合わせてから、スプーンを手にした。
「これは俺のだって何回言えば覚えるんだこの駄犬は……あ゛あ゛!?」
スープを飲んでいるとまだ歪みあってて、ウンザリしてきた。
せっかくの料理が冷めるし、不味くなる。許し難い。
隣にいる啓介の胸元を引き寄せて口付ける。
「黙れ」
啓介が同じように飯を食べ始めたのを確認してまた食に戻る。「いいなー」というキアムの声はさっき同様無視した。
——美味い。キアムの料理も最高だ。
そう思うのと同時に、カイルの作るラーメンが恋しくなった。
二階の客間を利用させて貰って風呂に入ってからは、啓介とベッドの上に転がっていた。
作戦を立て中なのだが、話が上手く纏まらない。
体を引き寄せられて背後から抱き込まれる。うなじに口付けられたのが分かって、思わず手で隠した。
「噛むなよ?」
上半身を捻り、右腕で啓介を押して隙間を開けさせる。
「お前の本体じゃないかもしれないのに噛まねえよ。戯れてるだけだ」
それならば問題ない。
体の力を抜いて好きに戯れさせていると思いっきり下半身を密着させられた。
「おい……、ケツになんか当たってんだけど?」
「単なる生理現象だ」
思わず「ああ、そうか」と言いそうになったが、腹に回されている手が服の中に忍び込んできたので、無理やり体勢を変えて正面から向き合う。
「ふざけんなっ。ここ来る前に抜いてやっただろが」
「足りると思うか?」
「知るかよ……、おまっ……ま……、は、ぁ」
言葉を紡ごうとして開いた口は待ってましたと言わんばかりに塞がれた。響く水音が艶かしくて、耳を塞ぎたいくらいだ。
「ん、……ん、ぅ」
歯列をなぞられて上顎を舐め上げられると、腰の奥に甘い疼きが走り、誤魔化すように啓介の両肩をそれぞれの手で押し返す。
そんな抵抗もあってないようなもので、逆に手首を取られてベッドの上に押しつけられる。
——くっそ、コイツ……腹立つ。
金蹴りしてやろうと足を振り上げようとすると、それもあえなく阻止された。
しかも太ももの上に乗られて、二撃目に移れずにまた苛々とさせられる。
「姿を変えさせろ」
恐らく羽琉だった頃の容姿にさせられている。
「やはりその顔だと最高に唆られるな。ブチ犯してぇ気分だ」
「俺はてめえのそのツラに一発いれてやりてえ気分だ」
喉で笑いながらズボンと下履きをずらされた。
「抜かせろ」
「俺からは何もしないぞ」
「構わん」
手を解放され、水魔法で生成したローションのようなものを陰茎に垂らされて握り込まれる。
反応していなかったモノでも刺激を与えられれば、段々と頭を擡げてきた。
一緒に握り込まれて上下に扱かれる。直接的な刺激とクチュクチュと立つ音に、妙な気分にさせられた。
「ん……っ、……ッ」
上擦った声が出て、隠す為に口元を手で覆った。
「羽琉……っ」
やたら艶っぽい啓介の声にドキリとする。上に伸びてきた手に乳首を弄られ、思わず腰を浮かせてしまった。
「ぁ、あ……上……ッ、やめ、ろって」
「ここを弄ると下も硬くなるのに?」
「勘違……っだろ」
言った瞬間、指先で緩く引っ掻くように何度も擦られる。芯を持って立ち上がってきた頃には、体中を甘い疼きに支配されていた。
「んあ、あ……っ、啓介……ッやめ、ろってぇえ!」
自由に動かせない足をもたつかせて、つま先がピンっと伸びた。容赦なく扱き上げられていると、あっという間に絶頂へと追いやられる。
「は、ぁ、あ、出……る! ん、んん、ん~~!」
精液を吐き出している時にも容赦なく扱かれ、胸元まで飛んできた。
「ああっ、あっあーー! 手ぇ、ゆる……めろ!」
「無理。あー、くそ。出る」
移動してきた啓介に思いっきり顔に精液をかけられる。左頬から口元にかけて生温い液体が伝っていった。
——あり得ねえ、こいつ。顔射しやがった。
射殺さんばかりに見つめると、精液を指で掬われ、口内に押し込まれる。
「この顔最高。めちゃくちゃ汚したくなる。は~る。美味いか?」
肩口に額を押し当て、笑っているのは揺れている肩を見れば明白だった。
「美味いわけねえだろ。ち◯こ捥げろ」
「俺のが捥げたら困るのはお前だぞ?」
「別に俺は困らねえよ」
「発情期が来たら分かる」
意味深に笑んだ啓介がタオルを取ってきて、全ての後始末をしているのをぼんやりと眺める。
日本に居た時は全てにおいて後処理とかしなかった癖に、面倒見の良い男へと変わってしまった悪友を複雑な思いで目で追っていた。
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