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羽琉に似た男
しおりを挟む「うおお、シルバーのアニキまじで凄いっすね!! カッコいいです! 尊敬します!」
キアムが瞳を輝かせて一人大はしゃぎしている。
「そうだ! 見てもらいたいものがあるんです!」
猛ダッシュで部屋の二階に上がったと思えば、今度は降りてきて家族写真を手渡された。
「これ! 八年か九年くらい前の写真です。これがじーちゃんとばーちゃん。んで、問題はこのオレの隣にいる人っすよ。ガキの頃この家に一週間くらい住んでいた兄ちゃんなんです! このド貧乏なウチとどんな繋がりがあったのかは全く分かりませんが、何処かの国の王子様みたいですよね。でも他の偉そうな王族や貴族と違って、庶民のオレ達にも凄く優しくしてくれました」
その写真を見て、目を見開いた。
「マジか……」
近くの椅子に腰掛けて顎に手を当てる。写真に写っていた男は日本にいた頃の羽琉そっくりだった。
写真の男は銀糸の髪の毛にアメジスト色の瞳をしている。髪型と毛色を変えて、黒髪の黒目にすると、二十歳前後の羽琉そのものだ。
「毛色は違うけどアニキと似てませんか? だから初めて見た時アニキが気になったというか。運命ですね、オレたち……、いだ!」
——だからコイツ俺を見てボーっとしていたのか。
直後、キアムは啓介に頭を叩かれていた。
「何で叩くんですか! ブラックさん!」
「ふざけるな。こいつの運命は俺だ」
——その件はもうどうでも良いわ。
二人がいがみ合っている中、レヴイは遠い目をしながらまた写真を見つめる。
——何処からどう見ても若い頃の俺だよな、これ。
八年~九年前という事は年齢的にも同じだ。
「キアム、この男はいま何処にいるか分かるか?」
「それがさっぱり。いつの間にか居なくなってそれきりなんですよ。じーちゃんとばーちゃんも、市場に行くと言ってたのにね、と首を傾げてましたし」
それならそのまま旅立ったのかも知れない。本人に聞いてみなければ分からない話だが。
「そうか……」
押し黙って逡巡する。
一国の王子だとしても従者も連れずに出歩いて、それも見ず知らずの他人の家に泊まるものなのか? 命を狙われるかも知れないのに?
例外もいるにはいる。それも今此処に。顔は魔法で変えているが、龍人族の王でありながらプラプラと出歩いている前世から繋がりのある男が。
——もしかして啓介みたいに顔を変えていた?
無きにしも非ずだが、王子という設定が嘘だった可能性もあった。
世の中には自分と同じ顔の人間が三人はいるという話を聞いた事がある。
そういった類のそっくりさんというオチもあるが、もしかしたら己の本当の転生体かもしれないだけに男の事が気になって仕方ない。
「アニキたち、オレちょっと買い物してきます。この家食べる物何もないんで」
「俺らも行くぞ。お前だけだと万引きや泥棒と間違えられそうだからな」
半目で言う。
「う……否定はしません」
「しろよ。その前に、おいブ……ブラック。俺を元の姿に戻せ。昼間助けた人がこの顔を見て妙な表情を浮かべたんだ。もし知っているんなら厄介だ。取り越し苦労ならいいんだけどな」
——ブラックって言い慣れない。
コードネームというより、やはり厨を患ってる気になるから気恥ずかしい。
「お前の直感は当たるからな。分かった」
啓介が口付けで人差し指を左から右に動かした瞬間、レヴイの素顔が露わになった。
「ええええっ!? アニキめっちゃ可愛いっ、色気すご……っ! あああprpr好みっす! 結婚してく……「だから俺のだと言っているだろうが! 駄犬は触るな!」……ブラックさん痛いですー!!」
キアムは啓介に思いっきり足蹴にされている。
「お前らマジでキメェからやめろ……」
やはり駄犬になってしまった。何故だ。この顔には駄犬製造機能が搭載されているとしか思えない。心の底からウンザリしながらため息をついた。
三人で商店街を歩いて二週間は生活していけそうな量の食材を買い漁った。購入した肉と野菜、パンなどは啓介が空に浮かせて歩く。結構な量になっているので、人目を引いていた。
「ブラックさんて便利ですね」
「お前も物体を浮かすくらい出来るだろ? 風魔法の応用だぞ」
面倒くさそうに答えた啓介を見て、キアムが肩をすくめてみせる。
「オレ、魔法はてんでダメなんですよね。じーちゃんとばーちゃんにはいつも使うなって怒られてましたもん。多分使い方が下手なんだと思います。うっかりとうちの窓全部割ったのもオレですし」
——どんな使い方をしたらそうなった?
逆に不思議になる。魔法に今まで触れてこなかった己ですら扱えたというのに……。
「使えねえな」
「ちょっと酷くないですか!? でも料理は出来ますよ。あれは魔法なしでもいけますからね!」
やはり明るい。キアムは凹む事があるのかどうか怪しいくらいに明るくて素直だ。そんなとこもカイルに似ているとか、駄犬は皆んな似た属性なんだろうか?
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