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第二章、家の中に部下が閉じ込められていた件

どうしてここにコイツらがいる?

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「おい!」
 背面座位を崩したような体勢で、結腸まで一気に貫かれると口からは乾いた悲鳴が溢れていく。
「ひ、ん゛~~っ!!」
 ——コイツ本当に人族かよ。
 どう考えても異常過ぎる。色魔の類ならまだ話は分かるが、人間でこのポテンシャルの高さは冗談抜きでおかしい。
「お前……っ、本当は……人族じゃ、ねえだろ」
 嫌味を込めた単なる質問だったのに、カプリスが「え?」と言葉を発したまま律動も止めて数秒の間があいた。
「は?」
「え?」
「……」
「…………。じゃあ動きますね~」
「待て、今のその間は何だ!? お前本当に人族じゃないのか?」
「ほらアフェクシオン。口開けてると舌噛みますよ」
 あからさまに話題を逸らしたカプリスに手加減なしで腰を打ちつけられてしまい、それっきり嬌声以外の言葉を発せなくなってしまった。
「あ、あ……ッ、んぁ、……っ!」
 結局そこから抜かずの三連チャンが始まり、気がつけばベッドの上で横になっていた。
「カプリス?」
 返事がない。
 ——近くに居ないのか?
 うつ伏せのままボンヤリと窓の外を見ていたが、夜という割には明るい気がして窓に近付こうと身を起こす。
「っ!!」
 体が思ったように動いてくれず、ベッドから落ちた。
 腰と股関節があり得ない程に機能しておらず、立ち上がろうとすると膝がカクカク震えて再度床に転がる羽目となる。カプリスに殺意が湧いた。
 ——あんなの咥え込んでたらこうなるよな、普通。
 屈辱だ。いつもは治癒魔法がかけられているので知らなかった。
 今日はかけ忘れた……というのは無さそうだ。感じ取れる圏内にカプリスの気配が無い。
 ——予定があるから、俺が動けないように態と治癒魔法をかけなかったのか?
 そう捉えていいだろう。
 這って寝室から出て、調理場を覗いてみてもカプリスの姿はなかった。
 これはまた逃げ出すチャンスかも知れない。とは言え、体がこんな状態では行ける範囲が限られてくる。
 とりあえず魔力制御装置のブレスレットだけ引きちぎった。
 残念ながら己には治癒能力は備わっていない。
 体の回復は諦め、浮遊魔法で家の中を行き来して本当にカプリスが居ないかどうかを調べる。
 最後にまた調理場を覗いて、奥の食糧庫も覗いてみた。
 ——よし、居ない!
 逃げ出そうと食糧庫を出ようとした時だった。
『ーーさま!?』
『アフェ……シオ……ま!』
 ——声?
 何処からか己の名前を呼ぶ声がして周りを見渡す。
 が、誰の姿も見当たらない。
 気のせいかと食糧庫を後にしようとすると、また『ア……ェク……オンさま! こ……です!』と声が聞こえてきた。
 棚に隙間なく並べられている調味料の瓶の中から聞こえてきた気がして、一つずつ瓶を退かして確認していく。
「お前らこんなところで何をしている?」
 透明な瓶に『時が来るまでキープ』と書かれたラベルが貼られている。その瓶の中には、かつて小間使いだった魔族が縮小化された状態で二人揃って入れられていた。
 瓶の蓋を開けて外に出すと見る間に体が元の大きさに戻っていく。瓶の中だけで効果を発する魔法だったようだ。
「「うわーん! ありがとうございます、アフェクシオン様ーーー!!」」
「暑苦しいわ!」
 身長は百五十センチしかないが、ドワーフと単眼族のハーフなのもあり、筋肉質で圧が強い。しかも双子とくる。暑苦しくてむさ苦しい以外の何者でもなかった。
 突進して来た二人からの抱擁を避けると、二人は見事なまでに床に転がっていた。
「急に忽然と居なくなったとは思っていたが、まさかずっと捕らえられていたのか?」
 この二人は側近の中でも主におやつ担当だった。これがまた美味い。
 いつの日か姿を見かけなくなり、人族に捕らえられたか討伐されたのだろうと噂され、その内小間使い自体がすげ替わっていた。
 二人が持ってくるおやつは中々美味だったのもあり、かなり残念に思っていたというのに、まさかこんなところに居たとは……。
「悪魔にこの家を奪われて瓶に閉じ込められてしまったんですーー!」
 滝のように涙を流して訴えかけてきた二人の話を、やや引き気味に聞く。
 ——ん? 家?
『昔奪った甲斐がありました』
 星屑の丘でカプリスが言っていたのを思い出し、顔が引き攣った。
「ここ、お前らの家だったのか……」
 違う意味でショックだ。
「そうですー! あの悪魔がっ、悪魔野郎が! あれは人族のフリをした悪魔です!! やっつけて下さい!!」
「やっつけてください! て、アレ? アフェクシオン様、どうしてダンジョンから出ていらっしゃるんですか? お出かけですか?」
 今更な質問を投げかけられた。
 どっちがどっちか全く見分けがつかない。その前に名を聞いた事もないが。
「あー……、討伐されたからな。俺はもう魔王じゃない」
「えええええっ!??」
「アフェクシオン様が討伐されるなんて!?」
 その討伐した勇者と、人族のフリをしてこの家を奪った悪魔は同一人物だというべきか悩む。
「元々魔王なんて柄じゃなかったからな。それは別にどうでもいい」
 魔王をしていた父の影響と生まれ持った魔力の高さを買われて、ダンジョンに連れてこられただけだ。
 それよりも……かつての部下の家であんな事やこんな事まで散々していたのかと思うとやり切れない。
 この二人が己の部下だとあのカプリスが知らない筈がない。
 闇の森の時といいあの男には人の心というものはないのか。うん、無かったわ。一人で答えを導き出す。
 あの人格が破綻したサイコパスの変態ドS鬼畜男にある訳がない。
 愚問だ。考えた時間の方が勿体なかった。
 というよりも、二人に申し訳ない気持ちにさえなってきて「とりあえずお前ら、今の内に逃げろ」と扉の外へと放り出そうとした。

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