10 / 20
第二章、家の中に部下が閉じ込められていた件
どうしてここにコイツらがいる?
しおりを挟む「おい!」
背面座位を崩したような体勢で、結腸まで一気に貫かれると口からは乾いた悲鳴が溢れていく。
「ひ、ん゛~~っ!!」
——コイツ本当に人族かよ。
どう考えても異常過ぎる。色魔の類ならまだ話は分かるが、人間でこのポテンシャルの高さは冗談抜きでおかしい。
「お前……っ、本当は……人族じゃ、ねえだろ」
嫌味を込めた単なる質問だったのに、カプリスが「え?」と言葉を発したまま律動も止めて数秒の間があいた。
「は?」
「え?」
「……」
「…………。じゃあ動きますね~」
「待て、今のその間は何だ!? お前本当に人族じゃないのか?」
「ほらアフェクシオン。口開けてると舌噛みますよ」
あからさまに話題を逸らしたカプリスに手加減なしで腰を打ちつけられてしまい、それっきり嬌声以外の言葉を発せなくなってしまった。
「あ、あ……ッ、んぁ、……っ!」
結局そこから抜かずの三連チャンが始まり、気がつけばベッドの上で横になっていた。
「カプリス?」
返事がない。
——近くに居ないのか?
うつ伏せのままボンヤリと窓の外を見ていたが、夜という割には明るい気がして窓に近付こうと身を起こす。
「っ!!」
体が思ったように動いてくれず、ベッドから落ちた。
腰と股関節があり得ない程に機能しておらず、立ち上がろうとすると膝がカクカク震えて再度床に転がる羽目となる。カプリスに殺意が湧いた。
——あんなの咥え込んでたらこうなるよな、普通。
屈辱だ。いつもは治癒魔法がかけられているので知らなかった。
今日はかけ忘れた……というのは無さそうだ。感じ取れる圏内にカプリスの気配が無い。
——予定があるから、俺が動けないように態と治癒魔法をかけなかったのか?
そう捉えていいだろう。
這って寝室から出て、調理場を覗いてみてもカプリスの姿はなかった。
これはまた逃げ出すチャンスかも知れない。とは言え、体がこんな状態では行ける範囲が限られてくる。
とりあえず魔力制御装置のブレスレットだけ引きちぎった。
残念ながら己には治癒能力は備わっていない。
体の回復は諦め、浮遊魔法で家の中を行き来して本当にカプリスが居ないかどうかを調べる。
最後にまた調理場を覗いて、奥の食糧庫も覗いてみた。
——よし、居ない!
逃げ出そうと食糧庫を出ようとした時だった。
『ーーさま!?』
『アフェ……シオ……ま!』
——声?
何処からか己の名前を呼ぶ声がして周りを見渡す。
が、誰の姿も見当たらない。
気のせいかと食糧庫を後にしようとすると、また『ア……ェク……オンさま! こ……です!』と声が聞こえてきた。
棚に隙間なく並べられている調味料の瓶の中から聞こえてきた気がして、一つずつ瓶を退かして確認していく。
「お前らこんなところで何をしている?」
透明な瓶に『時が来るまでキープ』と書かれたラベルが貼られている。その瓶の中には、かつて小間使いだった魔族が縮小化された状態で二人揃って入れられていた。
瓶の蓋を開けて外に出すと見る間に体が元の大きさに戻っていく。瓶の中だけで効果を発する魔法だったようだ。
「「うわーん! ありがとうございます、アフェクシオン様ーーー!!」」
「暑苦しいわ!」
身長は百五十センチしかないが、ドワーフと単眼族のハーフなのもあり、筋肉質で圧が強い。しかも双子とくる。暑苦しくてむさ苦しい以外の何者でもなかった。
突進して来た二人からの抱擁を避けると、二人は見事なまでに床に転がっていた。
「急に忽然と居なくなったとは思っていたが、まさかずっと捕らえられていたのか?」
この二人は側近の中でも主におやつ担当だった。これがまた美味い。
いつの日か姿を見かけなくなり、人族に捕らえられたか討伐されたのだろうと噂され、その内小間使い自体がすげ替わっていた。
二人が持ってくるおやつは中々美味だったのもあり、かなり残念に思っていたというのに、まさかこんなところに居たとは……。
「悪魔にこの家を奪われて瓶に閉じ込められてしまったんですーー!」
滝のように涙を流して訴えかけてきた二人の話を、やや引き気味に聞く。
——ん? 家?
『昔奪った甲斐がありました』
星屑の丘でカプリスが言っていたのを思い出し、顔が引き攣った。
「ここ、お前らの家だったのか……」
違う意味でショックだ。
「そうですー! あの悪魔がっ、悪魔野郎が! あれは人族のフリをした悪魔です!! やっつけて下さい!!」
「やっつけてください! て、アレ? アフェクシオン様、どうしてダンジョンから出ていらっしゃるんですか? お出かけですか?」
今更な質問を投げかけられた。
どっちがどっちか全く見分けがつかない。その前に名を聞いた事もないが。
「あー……、討伐されたからな。俺はもう魔王じゃない」
「えええええっ!??」
「アフェクシオン様が討伐されるなんて!?」
その討伐した勇者と、人族のフリをしてこの家を奪った悪魔は同一人物だというべきか悩む。
「元々魔王なんて柄じゃなかったからな。それは別にどうでもいい」
魔王をしていた父の影響と生まれ持った魔力の高さを買われて、ダンジョンに連れてこられただけだ。
それよりも……かつての部下の家であんな事やこんな事まで散々していたのかと思うとやり切れない。
この二人が己の部下だとあのカプリスが知らない筈がない。
闇の森の時といいあの男には人の心というものはないのか。うん、無かったわ。一人で答えを導き出す。
あの人格が破綻したサイコパスの変態ドS鬼畜男にある訳がない。
愚問だ。考えた時間の方が勿体なかった。
というよりも、二人に申し訳ない気持ちにさえなってきて「とりあえずお前ら、今の内に逃げろ」と扉の外へと放り出そうとした。
12
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。
中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています
橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが……
想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。
※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる