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箱入り娘
〈箱入り娘〉其の壱
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表通りを裏手に行くと裏長屋がある。
その裏長屋の一角に看板も何も無い、唯やたらと表の障子だけが色鮮やかな部屋があった。
ここの住人は二人。
一人は少しばかり歳を食った男で、室内に在るありとあらゆる物を一頻りひっくり返しては、時折頭を無造作に掻いている。
この男は名を"乙桐"と言って、一年の大半をそれはもう機嫌が悪そうに、眉間に皺を寄せながら過ごす大層取っ付き難い性格をしていた。
乙桐の生業は絵師ではあったが、長屋の住人は彼が絵を描いている姿をあまり見掛けた事が無い。
それ故に同じ長屋に住む人々は、何かの"訳有りさん"として、挨拶程度にしか乙桐に話し掛ける者は居なかった。
更に拍車をかける様に、彼が"訳有りさん"と思われている理由があって、それはこの部屋で暮らしているもう一人のせいでもあった。
裏長屋に住む者達は、年がら年中金に困っている。金に困っているからこそ安く住めて且つ、大半が雇われではあるが、商いも近場で出来る裏長屋に住んでいるのだ。
更には幕府から奢侈禁止令が頻繁に出されてしまうので、当然衣服なんかは贅沢の最もたる対象。着飾る事は基本的に、お国から良しとされやしない。
故に皆、お偉いさん方に下手に睨まれぬ様に表向きは質素な物を着るのが常な中、けれども乙桐の同居人は、少しばかり変わった装いを堂々としていたのだった。
見た目だけで言うのならば、年端もいかない童女。しかし格好は、まるでお武家様の姫君が着ている様な真っ赤な着物。
乙桐はその姿の童女を平気で外に連れ歩いていたし、童女は童女で特に気にする素振りも見せずに出歩いていた。
仏頂面の男と赤い着物の童女が隣立って歩いていれば、どうもこうも目立って仕様が無いのだが、何故だかただの一度足りとも役人が彼等を咎めに来た事は無い。
だからこそ余計に、何か見逃されるだけの後ろ暗い訳が透けて見えていて、関わり合いにはなるまいと思われていたのだ。
童女には赤い着物の他にもう一つ、気味の悪い特徴がある。それは、切り揃えられた前髪の下から覗く両の眼の事だった。
いつだったか、「あの餓鬼の目に見られるとまるで、己の何もかもを見透かされている様な気になって気味が悪い」と言った者が居て、その言葉を密かに聞いていた長屋の住人が全員、心の奥でこっそり同意をしていた程度には、童女の目の色は少々妙な色をしていた。
「"赤眼"」
「なした?せんせ」
乙桐は童女の事を、その最もたる特徴の儘に呼んでいる。
そして童女ーー赤眼もまた、その音が唯の外見的特徴等では無く、さも己を表す言葉で在るかのようにいつも振り向くのだ。
「お前さんは自分を難儀だと思うかい?」
「さーあ?わしさにはわがんね」
「嗚呼そうかい。ところで、」
「あい」
「お前さん俺の絵筆をどこにやっちまいやがってんで?」
「わ~がんねぇ。失せ物さ探しは、巫女さの役目だ。わしさには見付けらんねぇよ」
「ちっ、面倒な奴だよお前さんは本当に」
「あい」
再び頭を掻き毟った乙桐は、盛大に溜め息を吐いて赤目を睨む。
絵師の商売道具である絵筆をよりにもよって失くしたらしく、それを隠したであろう主は視線の先の童女であると確信している様だった。
物事には何事も手順が必要だ。例えそれが、一言二言会話を挟むだけの簡単なやり取りだとしても。
何か疑問に思う事があって、それの答えを求める場合、この田舎訛りの童女に聞いてしまうのが一番の近道で有り、同時にとてつもなく遠回りになってしまう事を乙桐はよく知っていた。
故に、"面倒"なのである。
「はぁ·····おい、赤眼」
「なした?せんせ」
「俺の絵筆はどこに在る?」
「せんせさ絵筆は、奥にあんべ」
「寝間か?」
「あい」
先程と同じ様に絵筆の所在を聞かれた赤眼は、今度は何故か奥の空間を指差してきちんと答えた。
通常裏長屋は表長屋と違い店が必要無い為、土間と四畳半の空間しか無いのだが、この住処はやはり住んでいる本人達同様に少しばかり変わっている。
と言うのも作りがほぼほぼ表長屋と変わりがなく、流石に表に比べれば手狭ではあるのだが、四畳の居間の後ろに四畳半の寝間があったのだ。
つまりは裏長屋にしては珍しく、部屋が二つある間取りをしていると言う事になる。
こんな作りは、この裏長屋の中でも此処しかないのだろう。
「それならば、赤眼」
「今度はなした?せんせ」
「お前さんは如何して俺の絵筆を隠したんで?」
「隠してねぇよ、せんせ。わしさは触れでもねぇ」
「ほぉう、触ってねぇだと?」
「あい」
「ほんのちぃっとばかしもか?」
「あい、そうだぁ」
顎に手をやり何かを考え込んだ乙桐は、ややあって赤眼に視線を戻す。
「最後だ、赤眼」
「あい」
「誰が俺の絵筆を隠したんで?」
「それはねぇ、せんせ。そん紙さ中に居た奴だで」
「··········はあぁあっっ?!」
乙桐は、まるで言われた事が理解出来ないかの様に一瞬黙り、それからすぐに赤眼が人差し指を向けた紙の束を慌てて拾いあげる。
粗い質感のそれには、中途半端な位置に「踁擦り」と書いてあり、真ん中は他に何かーーそれこそ猫やら犬やら何かしらが描けそうな程度の空間が空いていた。
それを目にした乙桐は、口を数回開いては閉じる。要は、絶句したのだ。
「おま·····お前·····ちょ、お前さん。··········おい赤眼っっ!」
「あい?」
「逃がしたのかっっ?!」
「なんを?」
「何って踁擦りだ!踁擦り!」
「逃がしてねぇよぉ!ちり紙さ使っただけだぁ。勝手に出て来たんべ踁擦りさの方だで。わしさなんもしてねぇよ」
「絵をちり紙として使うなって、何遍言やぁ分かるんでいお前さんは!」
「だーで、そこさ在んのは無駄紙だで?版元さもいちいち欲しがらねぇ小者だと、せんせさが言ったんだぁ」
「だとしてもだろうが馬鹿!」
半年だか前に「俺ぁ萬屋じゃあねぇんだ」とぶつくさ文句を垂れながら、渋々向かった鼠退治の依頼。
いざ蓋を開けてみれば、ところがどっこいきちんと彼向けの訳であったものだから、流石に任されるしかないといつも通りに取り掛かった。
その結果、彼は半日以上走り回る羽目になったのだ。
「踁擦り」と言う名の妖は、夜道を歩く人の足を擦って歩き難くさせるだけの小妖怪。
普段相手にしている奴等に比べれば、取るに足らない程度だったのだが·····。
「あいつは大それた事なんぞは出来やしねぇが、無駄にすばしっこかったんだぞ」
「そうなんか?」
「お前さんもその場に居て、その目で見やがっただろうが·····」
所謂、雑魚と言う意味での小者でもあったし、文字通り「小さい」から小者でもある訳で。
小回りが利く上に、動きもやたらと俊敏だった。
弱者故の本能なのか察しも良く、とにかく一にも二にも立ち向かわずに、退路をこれでもかと探す。
チョロチョロと逃げに逃げ回り、追い付いては引き離され、捕まえたと思ったらするんと抜けられて。
そんな気は無いのだろうが、当然の様におちょくられている気分になったし、これはもしやもしかしたら本来の鼠捕りの方がずぅっと楽であるのかもしれないぞ?と、遂、らしくも無く思ってしまったぐらいなのだ。
その苦労して捕まえた踁擦りを、逃がされたとあってはもう溜め息すら出てきやしない。
「まぁ大した悪さはやりたくともやれねぇだろうし、こちらもこちらで二度目は流石に手馴れるだろうから、わざわざ追い掛ける程でもねぇんだが……はぁ」
「せんせさ、なしてくたびれてんだ?」
「お前さんが一番よくよぉく分かってんだろうがい」
「わがんねぇよ、なぁなして?」
「はぁ··········おい待て赤眼」
「あい?」
ふと、乙桐が赤眼へ向けて訝しげな視線を送った。
相も変わらず素知らぬ顔の童女は、明らかにこのちょっとした失せ物探しの元凶で在り、本人もその通りに白状した筈なのに。
どうして又、ここ迄他人事で居られるのか。
割と長い付き合いである筈の乙桐にすら、その心根は全く持って理解が出来ないのだから仕様が無い。
「まさかまさか俺の絵筆は、踁擦りなんぞに持っていかれてねぇだろうなぁ?」
「だーでわしさ言ったべ、絵筆さはあっこだぁって」
「何だって又、踁擦り程度が俺の絵筆を隠しやがんだ。まさかまさか、訳無しとは言いやがるなよ?」
「んなもん描がれたぐさねぇからさに決まっどるだ。なして分がらんの?」
「嗚呼、確かに」
「せんせさは物知りじゃけれども、知ってっからこそ阿呆さなんべ」
「言ってくれるじゃねぇか。まぁ良い。絵筆は確かに寝間に在るんだな?」
「あい」
「ちっ、ちょっくら探して来るかねぇ。表は任せた」
「分~がった」
「今日はこれ以外何も無ければ万々歳だ」と内心思ってしまえば、それは何て途方も無い旗になるものなのか。
嗚呼此方においでなさいな厄介事さんと、自ら招いてしまっている事に、気付く日すら来ないのだろう。
現にこれから半刻もしない内に、腐った縁が大層な野暮を持ち込んで、意気揚々と乗り込んで来たのだから。
その裏長屋の一角に看板も何も無い、唯やたらと表の障子だけが色鮮やかな部屋があった。
ここの住人は二人。
一人は少しばかり歳を食った男で、室内に在るありとあらゆる物を一頻りひっくり返しては、時折頭を無造作に掻いている。
この男は名を"乙桐"と言って、一年の大半をそれはもう機嫌が悪そうに、眉間に皺を寄せながら過ごす大層取っ付き難い性格をしていた。
乙桐の生業は絵師ではあったが、長屋の住人は彼が絵を描いている姿をあまり見掛けた事が無い。
それ故に同じ長屋に住む人々は、何かの"訳有りさん"として、挨拶程度にしか乙桐に話し掛ける者は居なかった。
更に拍車をかける様に、彼が"訳有りさん"と思われている理由があって、それはこの部屋で暮らしているもう一人のせいでもあった。
裏長屋に住む者達は、年がら年中金に困っている。金に困っているからこそ安く住めて且つ、大半が雇われではあるが、商いも近場で出来る裏長屋に住んでいるのだ。
更には幕府から奢侈禁止令が頻繁に出されてしまうので、当然衣服なんかは贅沢の最もたる対象。着飾る事は基本的に、お国から良しとされやしない。
故に皆、お偉いさん方に下手に睨まれぬ様に表向きは質素な物を着るのが常な中、けれども乙桐の同居人は、少しばかり変わった装いを堂々としていたのだった。
見た目だけで言うのならば、年端もいかない童女。しかし格好は、まるでお武家様の姫君が着ている様な真っ赤な着物。
乙桐はその姿の童女を平気で外に連れ歩いていたし、童女は童女で特に気にする素振りも見せずに出歩いていた。
仏頂面の男と赤い着物の童女が隣立って歩いていれば、どうもこうも目立って仕様が無いのだが、何故だかただの一度足りとも役人が彼等を咎めに来た事は無い。
だからこそ余計に、何か見逃されるだけの後ろ暗い訳が透けて見えていて、関わり合いにはなるまいと思われていたのだ。
童女には赤い着物の他にもう一つ、気味の悪い特徴がある。それは、切り揃えられた前髪の下から覗く両の眼の事だった。
いつだったか、「あの餓鬼の目に見られるとまるで、己の何もかもを見透かされている様な気になって気味が悪い」と言った者が居て、その言葉を密かに聞いていた長屋の住人が全員、心の奥でこっそり同意をしていた程度には、童女の目の色は少々妙な色をしていた。
「"赤眼"」
「なした?せんせ」
乙桐は童女の事を、その最もたる特徴の儘に呼んでいる。
そして童女ーー赤眼もまた、その音が唯の外見的特徴等では無く、さも己を表す言葉で在るかのようにいつも振り向くのだ。
「お前さんは自分を難儀だと思うかい?」
「さーあ?わしさにはわがんね」
「嗚呼そうかい。ところで、」
「あい」
「お前さん俺の絵筆をどこにやっちまいやがってんで?」
「わ~がんねぇ。失せ物さ探しは、巫女さの役目だ。わしさには見付けらんねぇよ」
「ちっ、面倒な奴だよお前さんは本当に」
「あい」
再び頭を掻き毟った乙桐は、盛大に溜め息を吐いて赤目を睨む。
絵師の商売道具である絵筆をよりにもよって失くしたらしく、それを隠したであろう主は視線の先の童女であると確信している様だった。
物事には何事も手順が必要だ。例えそれが、一言二言会話を挟むだけの簡単なやり取りだとしても。
何か疑問に思う事があって、それの答えを求める場合、この田舎訛りの童女に聞いてしまうのが一番の近道で有り、同時にとてつもなく遠回りになってしまう事を乙桐はよく知っていた。
故に、"面倒"なのである。
「はぁ·····おい、赤眼」
「なした?せんせ」
「俺の絵筆はどこに在る?」
「せんせさ絵筆は、奥にあんべ」
「寝間か?」
「あい」
先程と同じ様に絵筆の所在を聞かれた赤眼は、今度は何故か奥の空間を指差してきちんと答えた。
通常裏長屋は表長屋と違い店が必要無い為、土間と四畳半の空間しか無いのだが、この住処はやはり住んでいる本人達同様に少しばかり変わっている。
と言うのも作りがほぼほぼ表長屋と変わりがなく、流石に表に比べれば手狭ではあるのだが、四畳の居間の後ろに四畳半の寝間があったのだ。
つまりは裏長屋にしては珍しく、部屋が二つある間取りをしていると言う事になる。
こんな作りは、この裏長屋の中でも此処しかないのだろう。
「それならば、赤眼」
「今度はなした?せんせ」
「お前さんは如何して俺の絵筆を隠したんで?」
「隠してねぇよ、せんせ。わしさは触れでもねぇ」
「ほぉう、触ってねぇだと?」
「あい」
「ほんのちぃっとばかしもか?」
「あい、そうだぁ」
顎に手をやり何かを考え込んだ乙桐は、ややあって赤眼に視線を戻す。
「最後だ、赤眼」
「あい」
「誰が俺の絵筆を隠したんで?」
「それはねぇ、せんせ。そん紙さ中に居た奴だで」
「··········はあぁあっっ?!」
乙桐は、まるで言われた事が理解出来ないかの様に一瞬黙り、それからすぐに赤眼が人差し指を向けた紙の束を慌てて拾いあげる。
粗い質感のそれには、中途半端な位置に「踁擦り」と書いてあり、真ん中は他に何かーーそれこそ猫やら犬やら何かしらが描けそうな程度の空間が空いていた。
それを目にした乙桐は、口を数回開いては閉じる。要は、絶句したのだ。
「おま·····お前·····ちょ、お前さん。··········おい赤眼っっ!」
「あい?」
「逃がしたのかっっ?!」
「なんを?」
「何って踁擦りだ!踁擦り!」
「逃がしてねぇよぉ!ちり紙さ使っただけだぁ。勝手に出て来たんべ踁擦りさの方だで。わしさなんもしてねぇよ」
「絵をちり紙として使うなって、何遍言やぁ分かるんでいお前さんは!」
「だーで、そこさ在んのは無駄紙だで?版元さもいちいち欲しがらねぇ小者だと、せんせさが言ったんだぁ」
「だとしてもだろうが馬鹿!」
半年だか前に「俺ぁ萬屋じゃあねぇんだ」とぶつくさ文句を垂れながら、渋々向かった鼠退治の依頼。
いざ蓋を開けてみれば、ところがどっこいきちんと彼向けの訳であったものだから、流石に任されるしかないといつも通りに取り掛かった。
その結果、彼は半日以上走り回る羽目になったのだ。
「踁擦り」と言う名の妖は、夜道を歩く人の足を擦って歩き難くさせるだけの小妖怪。
普段相手にしている奴等に比べれば、取るに足らない程度だったのだが·····。
「あいつは大それた事なんぞは出来やしねぇが、無駄にすばしっこかったんだぞ」
「そうなんか?」
「お前さんもその場に居て、その目で見やがっただろうが·····」
所謂、雑魚と言う意味での小者でもあったし、文字通り「小さい」から小者でもある訳で。
小回りが利く上に、動きもやたらと俊敏だった。
弱者故の本能なのか察しも良く、とにかく一にも二にも立ち向かわずに、退路をこれでもかと探す。
チョロチョロと逃げに逃げ回り、追い付いては引き離され、捕まえたと思ったらするんと抜けられて。
そんな気は無いのだろうが、当然の様におちょくられている気分になったし、これはもしやもしかしたら本来の鼠捕りの方がずぅっと楽であるのかもしれないぞ?と、遂、らしくも無く思ってしまったぐらいなのだ。
その苦労して捕まえた踁擦りを、逃がされたとあってはもう溜め息すら出てきやしない。
「まぁ大した悪さはやりたくともやれねぇだろうし、こちらもこちらで二度目は流石に手馴れるだろうから、わざわざ追い掛ける程でもねぇんだが……はぁ」
「せんせさ、なしてくたびれてんだ?」
「お前さんが一番よくよぉく分かってんだろうがい」
「わがんねぇよ、なぁなして?」
「はぁ··········おい待て赤眼」
「あい?」
ふと、乙桐が赤眼へ向けて訝しげな視線を送った。
相も変わらず素知らぬ顔の童女は、明らかにこのちょっとした失せ物探しの元凶で在り、本人もその通りに白状した筈なのに。
どうして又、ここ迄他人事で居られるのか。
割と長い付き合いである筈の乙桐にすら、その心根は全く持って理解が出来ないのだから仕様が無い。
「まさかまさか俺の絵筆は、踁擦りなんぞに持っていかれてねぇだろうなぁ?」
「だーでわしさ言ったべ、絵筆さはあっこだぁって」
「何だって又、踁擦り程度が俺の絵筆を隠しやがんだ。まさかまさか、訳無しとは言いやがるなよ?」
「んなもん描がれたぐさねぇからさに決まっどるだ。なして分がらんの?」
「嗚呼、確かに」
「せんせさは物知りじゃけれども、知ってっからこそ阿呆さなんべ」
「言ってくれるじゃねぇか。まぁ良い。絵筆は確かに寝間に在るんだな?」
「あい」
「ちっ、ちょっくら探して来るかねぇ。表は任せた」
「分~がった」
「今日はこれ以外何も無ければ万々歳だ」と内心思ってしまえば、それは何て途方も無い旗になるものなのか。
嗚呼此方においでなさいな厄介事さんと、自ら招いてしまっている事に、気付く日すら来ないのだろう。
現にこれから半刻もしない内に、腐った縁が大層な野暮を持ち込んで、意気揚々と乗り込んで来たのだから。
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