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【3話】住む場所を探そう!
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「ん~⋯⋯あぁ~」
日の出と共に目覚めた私は大きく伸びをする。
普通に伸びだけで済ませれば、なんかちょっと優雅な朝になるのに、生前の時の仕草が抜けなさすぎて、一言余分な奇声が入っちゃう。おばさんっぽいよね?⋯⋯辛いわ、おい待て誰がおばさんだ。
家族が居るかどうかも分からないベストオブモブに生まれ変わった私は、パン屋に就職してからもしばらく寝る場所を探してさ迷っていた。
初日は、恥ずかしい話だけれどほぼ野宿。
その辺の小屋の中に身を潜めたり、或いは建物の影に隠れたりして、そうして夜を明かしていた。
宿屋があったのだけれども、残念ながら泊まれる程のお金を持っていなかったから致し方なく。
女が夜中に1人で野宿って危ないって思うでしょう?これが大丈夫なんだ。
だって周りは、みんな私と同じモブだから。
どうも動きに決まった法則があるようで、基本的に街の人達って同じ事しかしなかった。
自由に動けるのなんて、それこそ固定名持ってるレベルじゃないと無理なんじゃないかな?って予測しているくらいに。
だから何も問題なく過ごす事が出来た。
でもこのままじゃ流石にまずいのは分かっていたから、どうしようかなぁって悩んでいたら、幸運な事にうちのパン屋は日払い制だったのだ。
1日働いたら、1日分のお給金まるっと貰える。
それで2日目からは、安宿に泊まる事に成功した。
けれど、これで困る事がなくなった訳ではなかった。
日払い制は、正直1文無し同然のモブな私にとって非常に助かる事だったけれど、お給金はお世辞にも高くは無い。
その日稼いだお金はその日の宿代に全て消えてしまうから、貯まるものも一向に貯まらないのだ。
正直、出来るだけの貯蓄はしたかった。
ファンタジーなのに現実的過ぎるって?
こちとら全てがあやふやなモブなんだ。
なるべく自分の足元は固めておきたいのだ。
モブだからね、いつ何が起きるか分からないじゃない。
突然魔力が暴走して尊い犠牲の1人になるとかさ。
モブってだけで立場危ういから、なるべく何かあった時に何とか出来るようにしたいのだ。
なんて意気込んでもやれる事なんて少ないし、特別な力とかもない。
だから悩むだけで終わりそうになっていた時に、私は手に入れたばかりの"自動お着替え機能"の存在を思い出した。
あれってパン屋で働いてる内は、ずっとパン屋のスタイルなのかな?
それとも別の物に着替えられるの?
と思って、ものすごぉーーーーーーく目を凝らす=ステータスを開いてみれば、
ーーーー
【職業】パン屋の店員▼
ーーーー
「なんかあるじゃん」
この間見逃したけれど、パン屋の店員の横に不思議な▼居るじゃん。
▼ってあれでしょ?詳細ウィンドウみたいな、説明文とか書いてあるやつ。
問題はどう開くかだ、どうしよう。
ってところで目が疲れたのかボヤけてきたから、1度ステータスを閉じた。これ持続性ほんと無いなぁ⋯⋯。
仕切り直してもう一度、目を凝らしてステータスを出してみて、▼の所を更にじぃーっと見つめてみると、
ーーーー
【職業】パン屋の店員▲
【所持職業】
・国民
∟この職業に変更可能です。
[変更する/変更しない]
・パン屋の店員
∟現在この職業に設定中です。
ーーーー
「やった!いけた!詳細ウィンドウ開けた」
てっきり新しい職業を手に入れたら、前の職業は無くなっちゃうのだと思っていたけれど、ちゃんと残っていたようで一安心。
それから試しに、国民の[変更する/変更しない]の"変更する"の方をじっと見てみれば、パン屋スタイルに変わった時と同様に突然光り出す周り。
そして光が収まると、
「よし、成功した!」
私はパン屋の店員っぽい格好から、前の女Aの姿に変わっていたのだ。
ちなみにステータス画面は、
ーーーー
【名前】女A
【年齢】12
【職業】国民▼
【■■■】
■■■■■■
■■■■■■
【■■■】
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■■■/■■■
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【■■】
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■■■■■■
ーーーー
に、なっていた。
これで得た職業は変えられるって言うのと、職業変更すると自動お着替え機能が発動するって事が分かった。
女Aの姿に自由に着替えられるのならば、やろうと思っていた事が比較的やり易くなる。大収穫だ。
私が何をしたかったのかと言えば、大分せこいやり方なんだけれども、街中に私と同じ見た目のモブが沢山居た時からちょっとした事を企んでて、それを実行に移したかったのだ。
「同じ見た目ってことは、成り代わってもいけんじゃない?」
と言う事で言っちゃえばすごく卑怯な手段ではあるけれど、女Aの姿に戻った私は同じ姿で同じ大きさをしたモブの後を付いて行って、ちゃっかりその家に滞在してみたのだ。
結果は、もう大成功!
パン屋の店員のモブだと探しても数人程度しかいないから、手頃なモブを見付けるのがちょっと難しかったんだけれど、その点ただの量産型モブの最下層、女Aは違う。
もうあっさり簡単に見付かったから、格好元に戻せて本当に良かった。
ぱぱっと見付けたその家の女Aに私が成り代わると、元の女A(AかBかCかは分かんないんだけれど)は、しばらく玄関前を無言でフラフラした後に、別の家に入って行った。
恐らく、こんな感じでモブ同士入れ替わり立ち替わり成り代わりし合っているんじゃないかと思う。
モブ達の世界は、そうやって立ち回っているんじゃないかなぁって。
それなら同じ姿の人間が複数居るのに、混乱しない理由も分かるし。
こうして私は汚い手で、見事住処たるお家を手に入れたのだった。
ちょっと良心痛むけれど、モブ達の法則真似しただけだから許してほしい。
日の出と共に目覚めた私は大きく伸びをする。
普通に伸びだけで済ませれば、なんかちょっと優雅な朝になるのに、生前の時の仕草が抜けなさすぎて、一言余分な奇声が入っちゃう。おばさんっぽいよね?⋯⋯辛いわ、おい待て誰がおばさんだ。
家族が居るかどうかも分からないベストオブモブに生まれ変わった私は、パン屋に就職してからもしばらく寝る場所を探してさ迷っていた。
初日は、恥ずかしい話だけれどほぼ野宿。
その辺の小屋の中に身を潜めたり、或いは建物の影に隠れたりして、そうして夜を明かしていた。
宿屋があったのだけれども、残念ながら泊まれる程のお金を持っていなかったから致し方なく。
女が夜中に1人で野宿って危ないって思うでしょう?これが大丈夫なんだ。
だって周りは、みんな私と同じモブだから。
どうも動きに決まった法則があるようで、基本的に街の人達って同じ事しかしなかった。
自由に動けるのなんて、それこそ固定名持ってるレベルじゃないと無理なんじゃないかな?って予測しているくらいに。
だから何も問題なく過ごす事が出来た。
でもこのままじゃ流石にまずいのは分かっていたから、どうしようかなぁって悩んでいたら、幸運な事にうちのパン屋は日払い制だったのだ。
1日働いたら、1日分のお給金まるっと貰える。
それで2日目からは、安宿に泊まる事に成功した。
けれど、これで困る事がなくなった訳ではなかった。
日払い制は、正直1文無し同然のモブな私にとって非常に助かる事だったけれど、お給金はお世辞にも高くは無い。
その日稼いだお金はその日の宿代に全て消えてしまうから、貯まるものも一向に貯まらないのだ。
正直、出来るだけの貯蓄はしたかった。
ファンタジーなのに現実的過ぎるって?
こちとら全てがあやふやなモブなんだ。
なるべく自分の足元は固めておきたいのだ。
モブだからね、いつ何が起きるか分からないじゃない。
突然魔力が暴走して尊い犠牲の1人になるとかさ。
モブってだけで立場危ういから、なるべく何かあった時に何とか出来るようにしたいのだ。
なんて意気込んでもやれる事なんて少ないし、特別な力とかもない。
だから悩むだけで終わりそうになっていた時に、私は手に入れたばかりの"自動お着替え機能"の存在を思い出した。
あれってパン屋で働いてる内は、ずっとパン屋のスタイルなのかな?
それとも別の物に着替えられるの?
と思って、ものすごぉーーーーーーく目を凝らす=ステータスを開いてみれば、
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【職業】パン屋の店員▼
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「なんかあるじゃん」
この間見逃したけれど、パン屋の店員の横に不思議な▼居るじゃん。
▼ってあれでしょ?詳細ウィンドウみたいな、説明文とか書いてあるやつ。
問題はどう開くかだ、どうしよう。
ってところで目が疲れたのかボヤけてきたから、1度ステータスを閉じた。これ持続性ほんと無いなぁ⋯⋯。
仕切り直してもう一度、目を凝らしてステータスを出してみて、▼の所を更にじぃーっと見つめてみると、
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【職業】パン屋の店員▲
【所持職業】
・国民
∟この職業に変更可能です。
[変更する/変更しない]
・パン屋の店員
∟現在この職業に設定中です。
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「やった!いけた!詳細ウィンドウ開けた」
てっきり新しい職業を手に入れたら、前の職業は無くなっちゃうのだと思っていたけれど、ちゃんと残っていたようで一安心。
それから試しに、国民の[変更する/変更しない]の"変更する"の方をじっと見てみれば、パン屋スタイルに変わった時と同様に突然光り出す周り。
そして光が収まると、
「よし、成功した!」
私はパン屋の店員っぽい格好から、前の女Aの姿に変わっていたのだ。
ちなみにステータス画面は、
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【名前】女A
【年齢】12
【職業】国民▼
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これで得た職業は変えられるって言うのと、職業変更すると自動お着替え機能が発動するって事が分かった。
女Aの姿に自由に着替えられるのならば、やろうと思っていた事が比較的やり易くなる。大収穫だ。
私が何をしたかったのかと言えば、大分せこいやり方なんだけれども、街中に私と同じ見た目のモブが沢山居た時からちょっとした事を企んでて、それを実行に移したかったのだ。
「同じ見た目ってことは、成り代わってもいけんじゃない?」
と言う事で言っちゃえばすごく卑怯な手段ではあるけれど、女Aの姿に戻った私は同じ姿で同じ大きさをしたモブの後を付いて行って、ちゃっかりその家に滞在してみたのだ。
結果は、もう大成功!
パン屋の店員のモブだと探しても数人程度しかいないから、手頃なモブを見付けるのがちょっと難しかったんだけれど、その点ただの量産型モブの最下層、女Aは違う。
もうあっさり簡単に見付かったから、格好元に戻せて本当に良かった。
ぱぱっと見付けたその家の女Aに私が成り代わると、元の女A(AかBかCかは分かんないんだけれど)は、しばらく玄関前を無言でフラフラした後に、別の家に入って行った。
恐らく、こんな感じでモブ同士入れ替わり立ち替わり成り代わりし合っているんじゃないかと思う。
モブ達の世界は、そうやって立ち回っているんじゃないかなぁって。
それなら同じ姿の人間が複数居るのに、混乱しない理由も分かるし。
こうして私は汚い手で、見事住処たるお家を手に入れたのだった。
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