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第3章

好きでこうなったのではありません。

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「お前等……ほんとに何をやってるんだ……」

 縄抜けの途中、あまりの騒がしさにソファーで寝ていた筈のオズワルド皇子が、目を覚ましてしまいましたわ。

 赤い目を見開き、口元はひくひくと戦慄いている。

「ええっと、これはですね……グレイ様に縛られてもがいてるうちにこうなってしまいまして」

 なんとか、レオニダスは解放されたものの、私に絡まる縄はまだ外れていませんわ。駄犬が暴れたのもあって、ちょっと言葉にできないような状態に……。何をどうしたらこうなりますの!? いつも思いますけど、私、何故毎度毎度こんな目に!?

 淑女にあるまじきみっともない格好。このような姿をオズワルド皇子に晒すとは……屈辱の極みですわ! 私のあられもない姿を目にして、オズワルド皇子ったらプルプルと震えていますわね……。

 可笑しくて仕方ないのね! くっ!笑うなら笑いなさいよぉお! 我慢する事ないでしょおお!? 盛大に笑うがいいじゃない! 例え嘲笑われようと、私の高貴な心までは貴方に屈したりしないんだからぁ!!

「オズワルド皇子、言いたい事があるなら、はっきり仰って! 」

 キッと睨みつけると、目を更に大きく見開き鬼のような形相に……


「あぁ!! くそっ!! 目の毒だ! 早くなんとかしろ! 阿呆ども!! 」

 真っ赤になって怒鳴るオズワルド皇子。目の毒ぅ? 何もそこまで言わなくても! 貴方、本当に私に対して辛辣ですわ! 被害者は、私ですのよ! 

「まぁまぁ。オズ。悪いのは僕とレオニダスだから……」

 すかさず、グレイ様がオズワルド皇子をなだめますわ。さり気なく罪をレオニダスにも押し付けてますわー。真性の性悪めっ!

「えっ!? 俺も!? 俺はお嬢を助けようとしたんだぜ? 」

「それで一緒に絡まって、悪化させたのは君だろ? ヴィクトリアのこの状況は、僕の有能過ぎる手腕と、君の考え無しの行動によって引き起こされた悲劇なんだ。だから悪いのは君と僕。わかる? 」

 レオニダスが素直で純粋おばかなのをいい事に、ちゃっかり共犯に仕立てあげてますわ。だめよ。レオニダス。騙されては、元凶はその悪魔よ。

「うっ……確かに、俺が一緒になって縄に絡まったから、お嬢はこんな事になったんだよな。ごめん。お嬢。悪かった」

 しゅんと項垂れるレオニダス。あー。仔犬じゃ悪魔に勝てませんわよねー。

「なっ!? 一緒に絡まるだと!? なんだそれはっ! うらやまけしか……ゲフンゲフン」

「なら、オズも縛ってあげようか? 僕、色々練習したいし喜んで付き合うよ? 」

 ゲホゲホと噎せるオズワルド皇子に、そう提案するグレイ様。……貴方、まったく懲りてませんわね。

「縄で縛られるような趣味はない。それに、そんな物では、俺様を拘束できない」

 グレイ様の手元にある、縄をオズワルド皇子は一瞬で灰にしてしまいましたわ。魔法? 早すぎて、見えませんでしたわ。

「ハンス、いつまでそんな事やってるんだ。退け。俺がやる」

「いや、下手に魔法を使うとお嬢様が……」

「いいから退け」

 私を傷付けないように、慎重に刃をあてていたハンス。オズワルド皇子は、ズカズカと私の傍に寄るとハンスを下がらせましたわ。

「何をなさるの? まさか燃やすつもりじゃ……」

 いくら、私の事が憎いからって……白昼堂々と人体放火などなさりませんわよね? 【 消し炭にしてやる!】って仰るのも、あれですわよね? ロイヤルジョークとかいう奴で、本気ではありませんわよね?

「そのつもりだが? 」

「なぁあああぁー!! 鬼畜皇子ぃい!! 貴方、私の髪の毛を焦がすだけじゃ飽き足らず、本体まで焼くつもりですのぉお!? それってもう、嫌がらせの域を超えてましてよ!? 殺人よ! 立派な殺人ですわ!! この人殺しで人で無しぃい!!!」



 なんという事でしょう。私、断罪イベント前に、またもや焼死の危機!!


 運営は、いつになったら私に優しくしてくれるのかしら?  私、悪役顔なだけの普通の令嬢ですのにぃ! 非道で外道で非情過ぎですわー!!


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