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第2章

片手にチュロス

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 片手にドーナツ。片手にチュロス。レオニダスの手には、私の買ったマカロンやブラウニー、飴の小瓶やクッキーの入った紙袋が。ウフフ。至福ですわー。

「なんだよ。お嬢の用事ってコレかよ?」

呆れたようにレオニダスが言いますわ。

「そうですわよ。何か問題があって?」

 ハンスがいると、「お嬢様・・・・お菓子は一日おひとつです。こんなに買い溜めされてどうするおつもりですか?これ全部食べたら・・・・どうなるかくらいわかりますよね?」っとかなんとか言って、買わせて貰えないもの。こんなチャンス活かさないわけがない!

「まさか、コレ全部一人で食べる気なのか?」

 荷物持ちが何か喋ってますわね。

「いつもこんなに食べてるのかよ。俺も甘い物好きだけど・・・・こんなには食べれないな。運動してんのか?よく太らないな。あっ、全て胸にいってんのか。なるほどなー。」

「お黙り!!余計な事を口走るその口を、この扇子で閉じて差し上げましょうか?」

 ピシャリと扇子を閉じると、途端にレオニダスが背筋をピシッと伸ばしましたわ。あら?顔面蒼白よ?レクリエーション以降、私の扇子捌きに、レオニダスは何故か反応しますわ。私、貴方を調教した覚えないのですけれど。あっ、オルラカさんとルナキッススさんは私の事を「ヴィクトリア様!」とか「女王様!」っとか言ってきますわ。「ヴィーちゃんの下僕、一号二号だねー。」なんてフィロスが言いますの。


 要りませんわー。下僕とか・・・・。それ、悪役令嬢どころか悪の女幹部じゃありませんのー。使えない下僕二人と金髪ドリルの女幹部。やだ、なんか嫌な予感しかしませんわ。あの二人の尻拭いで悲惨な目に遭いそうで怖い。

 ぶるっと震えを感じ、思わず身をすぼめますわ。
 

「ん?お嬢。どうかしたか?」
「いえ。別に・・・・。」

「そっか。俺はさっきから、視線が気になってんだけど・・・・。殺気というか・・・・なんというか・・・・後頭部が熱いし痛い・・・・。」

「熱い?」

「あっ、嫌。俺の気のせい・・・・って事で。他に買い物は?」

 荷物を抱えたレオニダスは、キョロっと辺りを見回しましたわ。連られて私も見回した時・・・・視界にいつも探してしまう後ろ姿が・・・・・・。


「・・・・ハンス。」
「え?お嬢?ハンスって?」

 あの後ろ姿、ハンスよね?あの茶色のくせっ毛にスっと背筋の通った綺麗な立ち姿。

「んー?アレか?確かに似てる気もするけれど。女連れだぜ?」

 目を凝らし、同じ方向を見るレオニダス。

「アレがハンスなら、横に居るのはルビアナか?何処となく似てる気もするけど・・・・あーでも違うか。二人っきりで街に行くような間柄じゃないだろし・・・・。」

「って、行っちまったな。お嬢の見間違いじゃねーの?それに今日街に来るなら、一緒にきてるだろ。俺、誘ったわけだしな。」

 レオニダスの声が、遠くの方で聞こえる。見間違い?ー見間違い・・・・そんなわけない。私がハンスを見間違える筈がない。どれだけあの後ろ姿を見つめてきたと思っているの?着ていた服にだって、覚えがあるのよ?横にいた髪の長い子は、ルビアナ?手を握っていたように見えたわ。


「ハンスとルビアナ・・・・。」




『ため息、食欲不振、心ここに在らず』
『レクリエーションで、恋に落ちる人が多かったんだよネ。』

ーため息ばかりつくハンス。
ー食欲のないルビアナ。

レクリエーション後、様子のおかしい二人・・・・・・。


まさか。そうなの?
まったく気付かなかった。
どうして?
なんで?




「二人が、付き合ってたなんて・・・・・・。」



どうしよう。私、頭が真っ白で、何も考えられないわ。



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