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第19話 ギャルゲーの主人公は大体やればできる子
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ギャルゲーの主人公というものは、夏休みの宿題をギリギリまでやらない。
俺本人はこう見えて、根が小心者でせっかちでクソ真面目なので、宿題は始めの一週間くらいで終わらせちゃうタイプだ。
だが、主人公という生き物にそれは許されない。なぜかっていうと、早めに宿題を終わらせちゃうと、「一緒に勉強しようぜ」系のイベントが潰れちゃうから。
だから、主人公という生き物はギリギリまで宿題をやってはいけない。
(そういう訳で、今日、俺氏は、ぷひ子とみかちゃんを連れて図書館へとやってきたのだ)
「みか姉。これでいい?」
図書館のテーブルの一角を占領した俺たちは、夏休みの宿題に勤しむ。
みかちゃんは当然、優等生タイプなので宿題は大抵終わらせている。
ぷひ子は、もちろんやってない。
俺氏は、設定上はぷひ子よりは若干マシだが、あんまりやってない――という設定になってるが、密かにやってる。つまり、作中で一緒にやったことが描写されてない宿題は事前に済ませてあり、行動時間を確保済みだ。
言うまでもないが、小学校低学年の宿題など、大人の俺が苦労するようなものではない。
「うんうん。正解! ゆうくんは、やればできる子なんだから、もっと真面目にやればいいのに」
みかちゃんが俺の頭を撫でてくる。
やめてー! ぷひ子の嫉妬ゲージが溜まるから!
「そう言われても、俺は超速戦士フリッドマンみたいに、追い込まれてから力を発揮するタイプなんだ」
「またそんな調子いいこと言っちゃってー」
「ねー、みかちゃん、この問題わかんないから、教えて?」
ほらー、案の定、ぷひ子が会話に割り込んできた。
「ぷひちゃん、それ、まだ始めの方の問題だよ? もう九九は習ったでしょ?」
「ぷひひ、忘れちゃった」
「じゃあ、俺は算数が終わったから、読書感想文に使う本を探してくるよ」
「「行ってらっしゃーい」」
俺は二人に見送られ、とある目的のために席を立った。
(さて。理屈の上では、ここにあの眼鏡っ娘がいるはずだが)
今日の目的は、作中では青春編から登場するサブヒロインのフラグを折ることだ。
そいつは、いわゆる眼鏡っ娘系だ。
ストーリーとしては、大まかに言うと、『小説家志望で、いつも子どもの頃から俺と幼馴染たちがワチャワチャするのを遠くから羨ましく見てたけど、輪に入れなくて、常に傍観者の自分が嫌いで鬱』なヒロインを助ける感じである。
まあ、非常に思春期っぽい話だ。本編では、幼馴染と俺たちの間に割って入れない絆があることに眼鏡っ娘が傷ついて、童話由来の色んなナイトメアが発生してアバババババババ、となる。童話と残酷要素は実は相性がよく、眼鏡っ娘ルートも他のヒロインに負けず劣らずエグい。
著作権にうるさいネズミのような美化された童話ではなく、原典に近いリアル志向の童話がモチーフだからね。もうそりゃアレよ。
本編では、主人公は少年編ではこの眼鏡っ娘の存在に全く気が付かない。眼鏡っ子が図書館の本棚の陰からひそかに主人公たちを見つめていたと青春編の告白で知る訳である。
そこで、俺氏はとっても優しいので、この眼鏡っ娘を今の段階で早々に見つけ出し、幼馴染パート3に加えてやろうという算段である。
この作戦には、幼馴染が増えれば増えるほど、相対的に一人当たりの比重が薄まり、特定のルートに入ることを防止できるというメリットもあるのだ。その分、ウハウハハーレム野郎にならないように、フラグ管理の心労も増えるけどね!
(童話とかファンタジー系の本が好きっていう設定があるから、多分この辺に――おっ、いたいた)
しばらく図書館を歩き回った俺は、やがて、野暮ったいお下げ髪の少女を見つける。本を選ぶふりをしながらも、隙を見てこちらへチラチラと視線を送ってくる眼鏡。こいつだ!
「んー、走れメロスとかどうかなー」
俺は本を選ぶフリをしながら、少女に近づいて行った。
俺本人はこう見えて、根が小心者でせっかちでクソ真面目なので、宿題は始めの一週間くらいで終わらせちゃうタイプだ。
だが、主人公という生き物にそれは許されない。なぜかっていうと、早めに宿題を終わらせちゃうと、「一緒に勉強しようぜ」系のイベントが潰れちゃうから。
だから、主人公という生き物はギリギリまで宿題をやってはいけない。
(そういう訳で、今日、俺氏は、ぷひ子とみかちゃんを連れて図書館へとやってきたのだ)
「みか姉。これでいい?」
図書館のテーブルの一角を占領した俺たちは、夏休みの宿題に勤しむ。
みかちゃんは当然、優等生タイプなので宿題は大抵終わらせている。
ぷひ子は、もちろんやってない。
俺氏は、設定上はぷひ子よりは若干マシだが、あんまりやってない――という設定になってるが、密かにやってる。つまり、作中で一緒にやったことが描写されてない宿題は事前に済ませてあり、行動時間を確保済みだ。
言うまでもないが、小学校低学年の宿題など、大人の俺が苦労するようなものではない。
「うんうん。正解! ゆうくんは、やればできる子なんだから、もっと真面目にやればいいのに」
みかちゃんが俺の頭を撫でてくる。
やめてー! ぷひ子の嫉妬ゲージが溜まるから!
「そう言われても、俺は超速戦士フリッドマンみたいに、追い込まれてから力を発揮するタイプなんだ」
「またそんな調子いいこと言っちゃってー」
「ねー、みかちゃん、この問題わかんないから、教えて?」
ほらー、案の定、ぷひ子が会話に割り込んできた。
「ぷひちゃん、それ、まだ始めの方の問題だよ? もう九九は習ったでしょ?」
「ぷひひ、忘れちゃった」
「じゃあ、俺は算数が終わったから、読書感想文に使う本を探してくるよ」
「「行ってらっしゃーい」」
俺は二人に見送られ、とある目的のために席を立った。
(さて。理屈の上では、ここにあの眼鏡っ娘がいるはずだが)
今日の目的は、作中では青春編から登場するサブヒロインのフラグを折ることだ。
そいつは、いわゆる眼鏡っ娘系だ。
ストーリーとしては、大まかに言うと、『小説家志望で、いつも子どもの頃から俺と幼馴染たちがワチャワチャするのを遠くから羨ましく見てたけど、輪に入れなくて、常に傍観者の自分が嫌いで鬱』なヒロインを助ける感じである。
まあ、非常に思春期っぽい話だ。本編では、幼馴染と俺たちの間に割って入れない絆があることに眼鏡っ娘が傷ついて、童話由来の色んなナイトメアが発生してアバババババババ、となる。童話と残酷要素は実は相性がよく、眼鏡っ娘ルートも他のヒロインに負けず劣らずエグい。
著作権にうるさいネズミのような美化された童話ではなく、原典に近いリアル志向の童話がモチーフだからね。もうそりゃアレよ。
本編では、主人公は少年編ではこの眼鏡っ娘の存在に全く気が付かない。眼鏡っ子が図書館の本棚の陰からひそかに主人公たちを見つめていたと青春編の告白で知る訳である。
そこで、俺氏はとっても優しいので、この眼鏡っ娘を今の段階で早々に見つけ出し、幼馴染パート3に加えてやろうという算段である。
この作戦には、幼馴染が増えれば増えるほど、相対的に一人当たりの比重が薄まり、特定のルートに入ることを防止できるというメリットもあるのだ。その分、ウハウハハーレム野郎にならないように、フラグ管理の心労も増えるけどね!
(童話とかファンタジー系の本が好きっていう設定があるから、多分この辺に――おっ、いたいた)
しばらく図書館を歩き回った俺は、やがて、野暮ったいお下げ髪の少女を見つける。本を選ぶふりをしながらも、隙を見てこちらへチラチラと視線を送ってくる眼鏡。こいつだ!
「んー、走れメロスとかどうかなー」
俺は本を選ぶフリをしながら、少女に近づいて行った。
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