上 下
14 / 65

第14話 天国の沙汰も金次第

しおりを挟む
 本当に日をまたぐ前に、某探偵マンガの黒タイツさんみたいな人がやってきて、必要な書類やら口座やらを置いていった。通帳に書かれていた額にはさすがにビビったね。



 俺が前世で、証券会社の仕事で動かしていたくらいの金額だ。ポケットマネー感覚でこれを出せるって、ママンは相当あくどいことして儲けてますね、これ。知ってたけど。



 早速、ママンのオプションサービスを使って、いくつかの証券口座を開く。普通は口座開設までいくらか日にちがかかるものだが、ママンパワーによって速攻だ。



 取引環境さえ整備してしまえば、後はこっちのもの。いうなればあらかじめ答えがわかってるテストだ。



 知ってますか、奥さん? この時代はレバレッジの規制もゆるゆるでしてよ。



 もちろん、悪徳業者も横行していたのでアレだが、まあ、そこらへんの知識はありますんで、余裕っす。



 つーことで、俺は夏休み中、幼馴染たちのフラグを適当に捌きながら、暇を見てはお金をころころ転がして、夏休みが終わる前に、あっという間に元本返済、手元資金を確保しました。うほほいほい!



「……まさか、本当に返済するとは。しかもこの短期間で。一体どんな魔法を使ったんですか」



「魔法も奇跡もないって、母さんが一番よく知ってるだろ? でも、そうだな。もしかしたら、母さんが仕込んでくれた『ギフト』のおかげかもね」



 俺は意味深で思わせぶりな口調で呟いた。



 とりあえず困ったら呪いのせいにしておけばいいという風潮。



「……まあ、いいでしょう。仕事は結果です。過程は問いません」



「うん。あと、俺に関する情報の秘匿もよろしくね」



「受取った報酬分の仕事はします。それがエージェントというものです」



 さすがはママン、話が分っかるゥー。



 この金稼ぎ能力に目をつけられて、拉致られる可能性は怖いが、俺はママンが全力で俺を守ってくれると信じてるぜ! 血は水よりも濃いぜ!



 ありがとうママン。利用してごめん、ママン。ちゃんと利益は還元するから! あと、母の日にカーネーションも送るから!



「よろしく。あと、例の融資の方もお願いします」



「……構いませんが、あのようなくだらない中小企業を支援して、あなたに何の得があるんですか。何の将来性もなく、投資する価値を見出せませんが」



「だから言ったでしょ。助けたい女の子がいるって。それだけさ。あ、くれぐれも、みかちゃんには支援者が俺だってことをバレないようにね」



 今、ママンにボロクソ言われてる中小企業とは、ずばり、みかちゃんのご両親が経営する企業のことである。



 みかちゃんは放っておくと、青春編で、親の事業失敗の結果、地元の裏稼業で稼いでる権力者のおっさんと政略結婚させられそうになります。



 このルートで、俺はみかちゃんの政略結婚をぶち壊すため、そのおっさんの対抗勢力である反社会的勢力の一員となって任侠の道を極めて、ドラゴンタイプにクラスチェンジしなくちゃいけなくなります。チクチクイキり刺青標準装備なんて絶対に嫌です。身体髪膚(しんたいはっぷ)傷つけぬは五孝の始めなりって偉い人もゆってるしー。



 そもそも、暴対法ができてからのヤクザの構成員なんてやってもいいことないよ。あ、でも、誰が何と言おうとファン〇ムシリーズは名作。異論は認めない。



 ともかく、みかちゃんがおっさんにちょっかいかけられて変なストレスを負って呪いが発動しないように、あらかじめご両親の経営する企業を救い、トラブルを未然に防がなければならないという訳だ。



 俺が彼女を助けたことを隠すのは、もちろん、余計なフラグが立つことを避けるためである。俺の目標を達成するには、みかちゃんの好感度は上げすぎてもいけない。



「そうですか。まあ、あなたの金です。好きにしなさい」



「うん。だから、あっちの用地買収もよろしくね?」



「そちらは簡単です。あのような田舎の神社と山を買って、こちらもあなたに何の得があるかはわかりませんが、まあ、運がよければダム用地として値上がりするかもしれませんね」



 うん。ちなみにそういうルートもあるからね。ダム建設を巡って、仲の良かった田舎町が、ダム建設賛成派と反対派でギスギスになってく描写、結構おもしろかった。



っていうか、ママン。実は、あなたが探して止まないスーパーパワーの源、そこにあるんですよ?



 でも、Myママンは完全に科学サイドの人間なので、呪いとかいう非科学的な現象は認めないのだ。呪いに付随する現象は、『とある田舎町の女子にだけ発現する遺伝的特性』として捉えているんです。



 なお、その本来女子にしか発現しない特殊な遺伝的なアレを注入された唯一の男、それがこの俺こと、主人公です。



 無論、くもソラは伝奇ホラーメインなので、このSFチックな設定は、何人かのサブヒロインのルートで仄めかされる程度に留まっている。続編への仄めかしってやつだね。



 そう。この事実からも分かる通り、くもソラの続編の『ヨドうみ』はSFテイストなんですね。そして、シリーズ完結の三作目は――、いまは関係ないか。



 ともかく、これでみかちゃんがキモ親父にセクハラされることはなくなったよ。家族は守るよ、やったね、みかちゃん! 



 かくいう俺も、彼女の正規ルートみたいに自分を命の危機に追い込んでチート遺伝子を覚醒させるために、指スッパンしたり、切腹しなくてもよくなった! イぇい!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

処理中です...