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第43話 旧友の来訪②
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「あの遺跡での出来事を……」
「秘匿……ですか?」
エトはユーリの言葉を聞いて、どう反応すればいいのか、すぐにはわからなかった。
リーシャも隣で、複雑な表情をしている。
「それって……例の、エトが怪我した奴なのだ?」
スゥが少し不安げな顔で、こちらを覗き込んでくる。
あの遺跡について知っているのは、実際に向こうへ行った自分とリーシャ、それを見ていたロルフ、そして事情を話したスゥだけだ。
そもそも普通の人に言っても信じてもらえないだろうし、秘密にするのはそんなに難しくないと思う。
けど、どうしてわざわざ、隠すようなことをするのだろう。
「当然、理由も説明させてもらう。理由は二つある。」
ユーリは、指を二本立てて差し出し、そのうちの一本をもう片手で指した。
「まず一つ目、この事実を周知することで、冒険者たちが危険に陥る可能性があるからだ。」
その答えに、三人は首を傾げた。
「えっ……、知らないほうが危険じゃないのだ……?」
「そうよ、知ってれば避けられるかもしれないけど、知らなきゃ戻ってこれるかもわからないじゃない。」
そのスゥとリーシャの反論に対して、ユーリは首を横に振った。
「大抵のことはそうなんだが、こと未探索の遺跡というのは、冒険者にとって垂涎の的だ。もし、『探索済みの遺跡の中に、未探索遺跡への入口があるかもしれない』なんて公表したら、冒険者が殺到してしまうこともありうる。」
「……!」
確かに、自分たちは恐ろしい目にあったので避ける方法ばかりを考えていたが、多くの冒険者とっては、むしろ『望むところ』なのだ。
三人の反応を確認してから、ユーリは続けた。
「さらに言うと、探索済みの遺跡への侵入を禁止するルールは無い。こうなると、一つの遺跡でギルド同士のいざこざが発生する可能性もある。ようは未探索遺跡に行けようが行けまいが、リスクになってしまうんだ。」
確かに、ギルド同士というのは、あまり仲が良いイメージはない。
狭い遺跡で、高ランクのパーティー同士が喧嘩……なんてことになったら、目も当てられない。
「……とまあ、ここまでは、ロルフも想定してた内容だな。」
一拍置いて、ユーリはテーブルに置いたロルフの手紙を、とんとんと指で叩いた。
なるほど、あの時書いていた手紙は、そういう内容だったんだ。
一人で納得していると、ロルフが口を開いた。
「それは分かっているが、なら、わざわざお前が来る必要は無いはずだ。その二つ目が重要なんだろ。」
ユーリは、無言で頷いて、二本の指を下ろした。
「その通り。二つ目は、厄介な宗教組織についてだ。」
ロルフの手紙の隣に、別の一枚の紙が置かれる。
そこには、眠る竜を彷彿とさせる、紋章のようなものが描かれていた。
「これは、『聖竜教会』という組織のマークだ。その名の通り、『聖竜』という竜が、世界を造ったとして崇められているんだが……。その竜は、雲の上じゃなく、地面の下で眠りについているんだそうだ。」
リーシャやスゥと、顔を見合わせる。
正直、何を説明されているのか、よくわからない。
ユーリにも、その自覚はあるのだろう。一度咳払いして、少し端折る形で説明を進めた。
「まあ、とにかく神様がずっと地下深くにいて、地下から出てきた遺跡っていうのは、その住処であり聖域である、というのがその宗教の主張なんだ。」
なるほど、と、今度は三人で頷く。
「へえー、神様が地面の下にいるなんて、なんだか面白いのだ。」
「遺跡の正体はまだ不明だから……ま、そういう可能性も否定は出来ないわね。」
「でも、それがどうして『厄介』なんですか?」
そのエトの問いに、ユーリはうんざりしたような表情で、肩を落とした。
「それが少し前から、ギルド協会に対して、『全ての遺跡の所有権は聖竜教会にある、一切の手を出すな』と、脅迫めいた要請をしてきてるんだ。」
「……!」
目の端で、ロルフが顔をしかめるのが見えた。
「そ、それは困るわね……。大体、クエストは近隣住民とかの要望なわけだし……」
「いやいや、なんで遺跡が教会のものになるのだ。無茶苦茶なのだ……」
リーシャもスゥも、げんなりした顔をしている。
続けるぞ、と前置きして、ユーリは更に話し始めた。
「さて、ある意味ここからが本題になるんだが……遺跡を聖域とする聖竜教会は、『遺跡には神秘の力がある』とか、『今は眠っているだけだ』とか、そういった主張もしている。そんなところに『実は遺跡の魔導回路が生きていた』なんて発表したら、一気に活動が激化するだろう。俺たちの考えは間違ってなかった、ってな。」
「……なるほど。確かに、思ったより厄介そうだ。」
ロルフは眉間を抑え、大きなため息をついた。
ギルド間の発掘競争と、反ギルド勢力の活発化。この二つことが同時に起こったとしたら、それは遺跡は大混乱だろう。
遺跡を重要視する人間たちのせいで、逆に遺跡の事実を伝えられなくなるというのは、なんともやるせない気持ちになる。
「わかった。当分の間は、この内容は秘匿しよう。エトとリーシャも、いいか?」
「あ、はい。事情もよくわかりましたし、賛成です。」
「私も、異論はないわ。もともと公表したかったって訳でもないしね。」
それを聞いて、ユーリは表情を緩めた。
「協力、感謝する。すまないな、本来なら評価されるべき発見なのに。」
「あはは……気にしないでください。ギルド協会あってのものですし。」
それにしても、ギルド協会側も、色々と大変なんだな。
あんまり考えたことなかったけど、感謝しなくちゃ。
それにしても、このユーリさん、どういう立場の人なんだろう。
エリカさんとも知り合いだったりするのかな……?
そんな折、玄関をノックする音が部屋に響いた。
思わず、全員の視線が外に向く。
「お。来たな。ちょうどいいタイミングだ。」
ユーリがそう言うと、ロルフも「ああ」と頷いた。
誰かほかにも来る予定だったのだろうか。
出迎えようと席を立とうとしたが、ロルフは手でそれを止めた。
「ああ、俺が出るよ。こっちも、知り合いだ。」
ロルフはそれだけ言うと、玄関へと歩いて行った。
「秘匿……ですか?」
エトはユーリの言葉を聞いて、どう反応すればいいのか、すぐにはわからなかった。
リーシャも隣で、複雑な表情をしている。
「それって……例の、エトが怪我した奴なのだ?」
スゥが少し不安げな顔で、こちらを覗き込んでくる。
あの遺跡について知っているのは、実際に向こうへ行った自分とリーシャ、それを見ていたロルフ、そして事情を話したスゥだけだ。
そもそも普通の人に言っても信じてもらえないだろうし、秘密にするのはそんなに難しくないと思う。
けど、どうしてわざわざ、隠すようなことをするのだろう。
「当然、理由も説明させてもらう。理由は二つある。」
ユーリは、指を二本立てて差し出し、そのうちの一本をもう片手で指した。
「まず一つ目、この事実を周知することで、冒険者たちが危険に陥る可能性があるからだ。」
その答えに、三人は首を傾げた。
「えっ……、知らないほうが危険じゃないのだ……?」
「そうよ、知ってれば避けられるかもしれないけど、知らなきゃ戻ってこれるかもわからないじゃない。」
そのスゥとリーシャの反論に対して、ユーリは首を横に振った。
「大抵のことはそうなんだが、こと未探索の遺跡というのは、冒険者にとって垂涎の的だ。もし、『探索済みの遺跡の中に、未探索遺跡への入口があるかもしれない』なんて公表したら、冒険者が殺到してしまうこともありうる。」
「……!」
確かに、自分たちは恐ろしい目にあったので避ける方法ばかりを考えていたが、多くの冒険者とっては、むしろ『望むところ』なのだ。
三人の反応を確認してから、ユーリは続けた。
「さらに言うと、探索済みの遺跡への侵入を禁止するルールは無い。こうなると、一つの遺跡でギルド同士のいざこざが発生する可能性もある。ようは未探索遺跡に行けようが行けまいが、リスクになってしまうんだ。」
確かに、ギルド同士というのは、あまり仲が良いイメージはない。
狭い遺跡で、高ランクのパーティー同士が喧嘩……なんてことになったら、目も当てられない。
「……とまあ、ここまでは、ロルフも想定してた内容だな。」
一拍置いて、ユーリはテーブルに置いたロルフの手紙を、とんとんと指で叩いた。
なるほど、あの時書いていた手紙は、そういう内容だったんだ。
一人で納得していると、ロルフが口を開いた。
「それは分かっているが、なら、わざわざお前が来る必要は無いはずだ。その二つ目が重要なんだろ。」
ユーリは、無言で頷いて、二本の指を下ろした。
「その通り。二つ目は、厄介な宗教組織についてだ。」
ロルフの手紙の隣に、別の一枚の紙が置かれる。
そこには、眠る竜を彷彿とさせる、紋章のようなものが描かれていた。
「これは、『聖竜教会』という組織のマークだ。その名の通り、『聖竜』という竜が、世界を造ったとして崇められているんだが……。その竜は、雲の上じゃなく、地面の下で眠りについているんだそうだ。」
リーシャやスゥと、顔を見合わせる。
正直、何を説明されているのか、よくわからない。
ユーリにも、その自覚はあるのだろう。一度咳払いして、少し端折る形で説明を進めた。
「まあ、とにかく神様がずっと地下深くにいて、地下から出てきた遺跡っていうのは、その住処であり聖域である、というのがその宗教の主張なんだ。」
なるほど、と、今度は三人で頷く。
「へえー、神様が地面の下にいるなんて、なんだか面白いのだ。」
「遺跡の正体はまだ不明だから……ま、そういう可能性も否定は出来ないわね。」
「でも、それがどうして『厄介』なんですか?」
そのエトの問いに、ユーリはうんざりしたような表情で、肩を落とした。
「それが少し前から、ギルド協会に対して、『全ての遺跡の所有権は聖竜教会にある、一切の手を出すな』と、脅迫めいた要請をしてきてるんだ。」
「……!」
目の端で、ロルフが顔をしかめるのが見えた。
「そ、それは困るわね……。大体、クエストは近隣住民とかの要望なわけだし……」
「いやいや、なんで遺跡が教会のものになるのだ。無茶苦茶なのだ……」
リーシャもスゥも、げんなりした顔をしている。
続けるぞ、と前置きして、ユーリは更に話し始めた。
「さて、ある意味ここからが本題になるんだが……遺跡を聖域とする聖竜教会は、『遺跡には神秘の力がある』とか、『今は眠っているだけだ』とか、そういった主張もしている。そんなところに『実は遺跡の魔導回路が生きていた』なんて発表したら、一気に活動が激化するだろう。俺たちの考えは間違ってなかった、ってな。」
「……なるほど。確かに、思ったより厄介そうだ。」
ロルフは眉間を抑え、大きなため息をついた。
ギルド間の発掘競争と、反ギルド勢力の活発化。この二つことが同時に起こったとしたら、それは遺跡は大混乱だろう。
遺跡を重要視する人間たちのせいで、逆に遺跡の事実を伝えられなくなるというのは、なんともやるせない気持ちになる。
「わかった。当分の間は、この内容は秘匿しよう。エトとリーシャも、いいか?」
「あ、はい。事情もよくわかりましたし、賛成です。」
「私も、異論はないわ。もともと公表したかったって訳でもないしね。」
それを聞いて、ユーリは表情を緩めた。
「協力、感謝する。すまないな、本来なら評価されるべき発見なのに。」
「あはは……気にしないでください。ギルド協会あってのものですし。」
それにしても、ギルド協会側も、色々と大変なんだな。
あんまり考えたことなかったけど、感謝しなくちゃ。
それにしても、このユーリさん、どういう立場の人なんだろう。
エリカさんとも知り合いだったりするのかな……?
そんな折、玄関をノックする音が部屋に響いた。
思わず、全員の視線が外に向く。
「お。来たな。ちょうどいいタイミングだ。」
ユーリがそう言うと、ロルフも「ああ」と頷いた。
誰かほかにも来る予定だったのだろうか。
出迎えようと席を立とうとしたが、ロルフは手でそれを止めた。
「ああ、俺が出るよ。こっちも、知り合いだ。」
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