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189話
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「殿がそこまで言われるなら。拙者はもう何も申しませんが」
勘助はそこで言葉を切った。
「殿、一大事でございまする!」
家臣の一人が廊下を駆けてくる。晴信は露骨に舌打ちして
「っんだよ。騒々しいな。今、めちゃんこラブリーな気分に浸っていたところなのにぃ」
「一大事にございます」
息を上げて、家臣が膝まずく。
一大事の一言で、晴信が表情を一変させて神妙な顔になる。
「何だ」
「今川義元様。尾張の織田信長によって桶狭間にて討ち死に!」
「何!真か!」
「真に御座います」
小大名の一つである、織田が大大名である今川を討ち果たしたというのだ。
「ははははは。時は来た。東海一の大大名である今川が死ねば、心置きなく京まで一気に登れると言うものよ!ご苦労。下がれ」
「はっ!」
「殿!駿河、三河に攻めるとなれば、上杉に後方から突かれれば我軍は」
勘助が難しい顔をして苦言を呈した。
「心配するな勘助!謙信殿は攻めてこぬ。いくさの用意じゃ!今川を攻め滅ぼしてくれるわ!!先陣は勘助に任せる!」
「は!」
勘助はごそごそと立ち上がり、晴信の前から姿を消した。
屋根裏がゴトリと鳴り、黒装束に身を包んだ彦太郎が晴信に低い声をかけた。
「晴信様。越後の虎、親方様の術中に見ことにはまっておりまする」
「ご苦労。引き続き、謙信の動き逐一報告致せ」
「は!」
彦太郎は音も無く消えて行った。
勘助はそこで言葉を切った。
「殿、一大事でございまする!」
家臣の一人が廊下を駆けてくる。晴信は露骨に舌打ちして
「っんだよ。騒々しいな。今、めちゃんこラブリーな気分に浸っていたところなのにぃ」
「一大事にございます」
息を上げて、家臣が膝まずく。
一大事の一言で、晴信が表情を一変させて神妙な顔になる。
「何だ」
「今川義元様。尾張の織田信長によって桶狭間にて討ち死に!」
「何!真か!」
「真に御座います」
小大名の一つである、織田が大大名である今川を討ち果たしたというのだ。
「ははははは。時は来た。東海一の大大名である今川が死ねば、心置きなく京まで一気に登れると言うものよ!ご苦労。下がれ」
「はっ!」
「殿!駿河、三河に攻めるとなれば、上杉に後方から突かれれば我軍は」
勘助が難しい顔をして苦言を呈した。
「心配するな勘助!謙信殿は攻めてこぬ。いくさの用意じゃ!今川を攻め滅ぼしてくれるわ!!先陣は勘助に任せる!」
「は!」
勘助はごそごそと立ち上がり、晴信の前から姿を消した。
屋根裏がゴトリと鳴り、黒装束に身を包んだ彦太郎が晴信に低い声をかけた。
「晴信様。越後の虎、親方様の術中に見ことにはまっておりまする」
「ご苦労。引き続き、謙信の動き逐一報告致せ」
「は!」
彦太郎は音も無く消えて行った。
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