陽の光の下を、貴方と二人で

珂里

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社会人編

ヤキモチ?

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……門から中へ車で入るとか。入ってからも家が見えないとか。……ここは日本だよな?

車をゆっくり走らせて暫くすると漸く建物が見えてきてホッとしたのも束の間、見えた建物に更に驚愕する。

目の前にあるのは老舗の豪華旅館か?それとも何処ぞの公家屋敷か?

そんな厳かな雰囲気を醸し出す建物を前にして俺はゴクリと息を呑んだ。


「さあ隼人、降りて」

「あ、は、はい。っ!!痛っ!!」


いつの間にか降りてドアを開けてくれている岡田に促されて急いで降りたら、頭を思い切りぶつけてしまい疼くまる。


「あ~、大丈夫!?凄く鈍い音がしたけど」

「……うぅ~、はい。大丈夫です」


メチャクチャ痛いし恥ずかしい……。

俺の頭をヨシヨシと撫でる岡田を涙目になりながら見上げると運転席から出てきて心配そうに覗き込む平林さんとも目が合ってしまった。

……あぁ、恥ずか死ぬ。

恥ずかしさを誤魔化すようにヘラッと笑って見せたけど、痛みを堪えて目にいっぱい涙を溜めた俺が憐れだったのか、目が合った瞬間また顔を赤くした平林さんにバッと目を逸らされてしまった。

……こんなドジな俺が岡田の恋人でごめんなさい。そりゃ平林さんも呆れるよな。


「隼人」


スッと俺と平林さんの間に割って入り俺の視界を遮った岡田は少しムッとして、俺の手を取るとそのムッとした表情のままズンズンと歩き出した。


「真巳さん、怒ってる?」

「怒ってるよ。僕以外にあんな可愛い顔を見せるなんて」


……あんな顔ってどんな顔だ?泣きべそをかいたブサイクな顔しかしてないけど。

首を傾げる俺を見た岡田にハァ、と深い溜息を吐かれてしまった。なんでだ。


「隼人は自分が魅力的だってこと、もっと自覚してほしいよ。僕はいつも可愛いって言ってるでしょ」

「あはは。そんなバカな。俺が可愛いなんて思うのは真巳さんくらいですよ」


俺が笑ってそう言えば岡田にギロリと睨まれる。……ヤバイ。更に機嫌が悪くなってしまった。


「だって、俺を可愛いなんて言うの真巳さんだけですもん。真巳さんが可愛いって思ってくれてるなら、それはきっと……俺が真巳さんの側に居ると好きって気持ちが溢れ出ちゃってるからかもしれないですね」


気を付けないと、と岡田を見上げて苦笑すると立ち止まった岡田にガバッと抱き竦められ激しくキスをされた。

舌を絡めクチュクチュと音を立ててするキスに腹の中が疼く。
足に力が入らなくなって岡田にしがみ付くと腰をしっかりと抱いて立たせてくれるのだが、密着し過ぎて体が段々と熱を帯びるのを感じた。


「ん……はっ、ぁ……真巳さ……」


これ以上したら色々と収まらなくなってしまって、本当にヤバイ。
岡田の胸を押して離れようとするが、岡田はキスを止めるどころか更に激しくされてしまう。


「あぁ……ん、も……ヤバ……イ、から」

「……ハァ、今のは隼人が悪いんだからね。あ~もう、可愛すぎる隼人が悪い!早く帰って抱きたいよ~!!」


ペロリと俺の唇を舐めてからやっと顔を離してくれたけど、俺よりヤバかったらしい岡田は俺をギュッと抱き締めながら大きな声で喚き出した。

ーーヤメロ。頼むから実家の敷地内で抱きたいとか叫ばないでくれ。
 

遠目にも、車の横に立って俺達を見送ってくれていた平林さんがまた顔を赤くしているのが分かって恥ずかしい。


「もうっ!平林さんかいるのに!!」

「だって見せつけてるんだもーん」


恥ずかしくて赤面しながら岡田の胸をポカポカと叩いて抗議するけど、クスクスと楽しそうに笑う岡田には全く効いていないようだった。……うぅ、悔しい。


そんな俺と岡田が騒いでいる声を聞きつけたのか、大きな玄関の扉がガラッと勢いよく開かれ、中から岡田によく似たイケメンが飛び出してきた。
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