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嫉妬
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お城に帰った後も、城内を案内しろと言うアンソニーをなんとかかわして夕食まで部屋に閉じ籠ることにした。
「お姉様、入るよ。」
ノックと共にルーカスの声がして部屋に入って来る。
さっきまで部屋の前ではアンソニーがウロウロしていたけど、もう諦めてくれたのかな?良かった。
「もう、急な攻略対象の登場でビックリしたよ~!しかもアイツ、お姉様に馴れ馴れしくて感じ悪いし!!」
ルーカスがベッドの上にドサッと座って胡座を描く。
ルーカスは怒っているんだけど、頬をプックリと膨らませている姿はいつも本当に可愛くて癒される。
プリプリと怒りつつも前世のゲームで得ているアンソニーの情報を一生懸命思い出しながら私に教えてくれるルーカスはやっぱり可愛い。
「お姉様聞いてるの!?何でニヘニヘ笑ってるのさ!僕は怒ってるんですけど!?」
「ごめんごめんっ。ルーカスがあまりに可愛いから和んじゃって~。」
ルーカスの膨らんだ頬をツンツンと突きながら謝ると、ルーカスは更にプクッと頬を膨らませて私の手をペシッと叩いた。
「もう、もうっ!!お姉様には危機感が足りないよ!お姉様はアンソニーに狙われてるんだからね!?もっとしっかりしてもらわないと!!」
「えー?しっかりしてるじゃない!もう既にお母様にだって狙われているんだから、それなりに注意して生活しているし。オーウェン様も付いてくれてるから今更私の命を狙う者が一人や二人増えたからってどうって事ないもの。もうこうなったらどんな奴でも来るなら来いって感じよ!!」
他の人が狙われるよりも、自分が標的でいる方がまだ心安らかでいられる。
大切な誰かを失うことの方が、きっと私には耐えられないから。
開き直りドヤ顔で胸を張る私に、ルーカスが冷ややかな目を向けて盛大に溜息を吐いた。
「お姉様はちっとも分かってない。アンソニーには違う意味でも狙われているのに…………これはもう、僕やオーウェンがしっかり見張っていないといけないな…………いっそのこと僕がお姉様と一緒の部屋で生活すれば…………いやいや、それだと僕の理性がいつまで保つか分からないし…………でもでも、推しを全力で守る事こそが僕がこの世界へ転生した理由であり使命であって…………」
なんだか難しい顔をしながらブツブツと呟いているルーカスは一人の世界に入ってしまったようで、私がルーカスの目の前で手をヒラヒラとさせてもそれに全く気付く気配が無かった。
このチャンスを逃すまいと、私は最近避けられるようになってしまったハグを堪能する為にルーカスに抱きついた。
はぁ~、癒される。
「なっ!?ちょ、ちょっとお姉様!!離れてよ!!!」
ギュウギュウと抱き締める私を、我に返ったルーカスが凄い勢いで体から剥がした。
「えー!もうちょっといいでしょ?久しぶりのハグだったのに~。」
「駄目です!!!」
真っ赤な顔をしたルーカスが、再び抱きつこうと手を伸ばした私を全力で拒否する。
いいじゃん、ケチ!!
ルーカスとギャイギャイ騒いでいるところへ、侍女が夕食の準備が整ったと知らせに来た。
部屋を出ると、扉の前で待機していたオーウェン様と睨み合うアンソニーの姿を発見する。…………いつから居たんだ。
さっき教えてもらったルーカスからの情報によると、アンソニーはちょっと……かなり性格が捻れているらしい。
隣国では母である側妃の身分が低かった為、他の王子よりも冷遇され母子共に城内では肩身の狭い思いをしていたらしい。
病気で母が死んでからは、恨みを募らせボヴェルデンの敵国に情報を流し売国活動をしている。
お母様に加担しているのはボヴェルデンの為ではなく、ボヴェルデンの国王や兄弟達に協力しているように見せかけて油断させる為だとか。
ルーカスによると、そんな心の闇を抱えるアンソニーをヒロインが救うというのだけれど、救うも何もまだヒロインが私達の前に登場すらしていない。
ゲーム内ではアンソニーは中盤から現れる攻略対象者らしいのに…………やはりゲームとはかなりズレが生じているみたいだ。
アンソニーがボヴェルデン国を恨む気持ちも分かる。…………私とルーカスもあの母ゆえに、少なからず疎まれている存在なのだ。
けれど、私とルーカスには愛してくれる王妃様やお兄様、オリビア様がいる。……あ、お父様もいる。
アンソニーにも、そんな存在が自分の母以外にいれば良かったのに。
そういう存在にヒロインがなるのかな。
ゲームのストーリーを変えちゃって申し訳なかったけれど、私だって大切な人を守る為に必死なのだ。
どうせなら私達と全く関係ない所でヒロインに出会って心の闇を癒してもらいたい。
私がジッと見ているのに気付いたアンソニーがパチッとウィンクして微笑む。
…………ここで、世の女性達ならば大興奮するだろうけれど、いかんせん私はアンソニーの裏事情を把握しているから大興奮どころかドン引きだ。
「シャーロットは最初から僕につれない態度ばかりだね。食堂が分からなかったから案内してもらおうと思って待っていたんだ。一緒に行ってもいいかい?」
「案内なら侍女がするから一人で行けば良かったのに。学園でもずっと一緒にいて案内させてたんだろ!お姉様はアンソニーの案内係じゃないんだからな!!」
「ハハ。出会って間もないのに、僕はすっかりルーカスに嫌われてしまったなぁ。」
私の腕にしがみ付いて威嚇するルーカスにアンソニーが苦笑する。
ーールーカスだけじゃなくて私も貴方を嫌ってますけどね。
私は感情を一切出さず、顔にニッコリと笑みを貼り付ける。
「いいわよ。一緒に行きましょう。」
笑みを貼り付けた私の顔をマジマジと見つめ、アンソニーはニヤッと嫌な笑みを浮かべた。
「やっぱり、シャーロットは僕と同類の匂いがするんだよね……。」
「さ、さあ、早く行きましょうか。」
ーーやめてよ。勝手に同類扱いしないでください!!私に心の闇なんて…………あぁ、あるか。
血の繋がったお母様とバチバチに対立しちゃってますもんね…………。
アンソニーと同類って言われるのは全くもって不本意だけど、愛する人達を守る為だったら私はお母様にも負けない悪女になるんだから!!
ルーカスがなるべく私とアンソニーを近づけない様に歩いている最中、後ろを歩くオーウェン様にそっと声を掛けられる。
「学園ではずっとアンソニー様とご一緒におられたのですか?」
「え?そうですね。何かとアンソニーが付き纏ってきましたので。」
「そうですか…………。」
オーウェン様が眉間に皺を寄せて渋い顔をしている。
学園では護衛出来ないから心配してくれているのかな。
まだまだ私の頑張りが足りないからオーウェン様に余計な心配をさせてしまうのね。頑張らないと!!
「大丈夫です!アンソニーだってまさか学園で命までは狙わないでしょうし。それにアンソニーも顔だけは整っていて美男子だから、あっという間に女子生徒の人気者でどこに行っても注目の的なんです。そんな中で狙われるなんてまず無いでしょうし…………オーウェン様?」
「…………」
私が話している途中でオーウェン様の眉間の皺がどんどんと深くなり、明らかに不機嫌そうに黙り込んでしまった。
どうしよう……何か怒らせてしまったのかしら?
訳が分からずオロオロとしている私の横で、私と腕を組んで歩いているルーカスが思い切り大きな溜息を吐いた。
「お姉様は本当に鈍いよね。まあ、そこも可愛いんだけどさ。……頑張ってね、オーウェン。」
「…………はい。」
ーー何を頑張るのよ。男同士だけで分かり合っていて何かズルい。
「君達はとても仲良しだね。羨ましいよ。」
背筋がゾクリとして声のした方へ目を向けると、アンソニーが微笑みながら…………けれど、凍りそうなほど冷たく感じられる目で、ジッとこちらを見ていた。
「お姉様、入るよ。」
ノックと共にルーカスの声がして部屋に入って来る。
さっきまで部屋の前ではアンソニーがウロウロしていたけど、もう諦めてくれたのかな?良かった。
「もう、急な攻略対象の登場でビックリしたよ~!しかもアイツ、お姉様に馴れ馴れしくて感じ悪いし!!」
ルーカスがベッドの上にドサッと座って胡座を描く。
ルーカスは怒っているんだけど、頬をプックリと膨らませている姿はいつも本当に可愛くて癒される。
プリプリと怒りつつも前世のゲームで得ているアンソニーの情報を一生懸命思い出しながら私に教えてくれるルーカスはやっぱり可愛い。
「お姉様聞いてるの!?何でニヘニヘ笑ってるのさ!僕は怒ってるんですけど!?」
「ごめんごめんっ。ルーカスがあまりに可愛いから和んじゃって~。」
ルーカスの膨らんだ頬をツンツンと突きながら謝ると、ルーカスは更にプクッと頬を膨らませて私の手をペシッと叩いた。
「もう、もうっ!!お姉様には危機感が足りないよ!お姉様はアンソニーに狙われてるんだからね!?もっとしっかりしてもらわないと!!」
「えー?しっかりしてるじゃない!もう既にお母様にだって狙われているんだから、それなりに注意して生活しているし。オーウェン様も付いてくれてるから今更私の命を狙う者が一人や二人増えたからってどうって事ないもの。もうこうなったらどんな奴でも来るなら来いって感じよ!!」
他の人が狙われるよりも、自分が標的でいる方がまだ心安らかでいられる。
大切な誰かを失うことの方が、きっと私には耐えられないから。
開き直りドヤ顔で胸を張る私に、ルーカスが冷ややかな目を向けて盛大に溜息を吐いた。
「お姉様はちっとも分かってない。アンソニーには違う意味でも狙われているのに…………これはもう、僕やオーウェンがしっかり見張っていないといけないな…………いっそのこと僕がお姉様と一緒の部屋で生活すれば…………いやいや、それだと僕の理性がいつまで保つか分からないし…………でもでも、推しを全力で守る事こそが僕がこの世界へ転生した理由であり使命であって…………」
なんだか難しい顔をしながらブツブツと呟いているルーカスは一人の世界に入ってしまったようで、私がルーカスの目の前で手をヒラヒラとさせてもそれに全く気付く気配が無かった。
このチャンスを逃すまいと、私は最近避けられるようになってしまったハグを堪能する為にルーカスに抱きついた。
はぁ~、癒される。
「なっ!?ちょ、ちょっとお姉様!!離れてよ!!!」
ギュウギュウと抱き締める私を、我に返ったルーカスが凄い勢いで体から剥がした。
「えー!もうちょっといいでしょ?久しぶりのハグだったのに~。」
「駄目です!!!」
真っ赤な顔をしたルーカスが、再び抱きつこうと手を伸ばした私を全力で拒否する。
いいじゃん、ケチ!!
ルーカスとギャイギャイ騒いでいるところへ、侍女が夕食の準備が整ったと知らせに来た。
部屋を出ると、扉の前で待機していたオーウェン様と睨み合うアンソニーの姿を発見する。…………いつから居たんだ。
さっき教えてもらったルーカスからの情報によると、アンソニーはちょっと……かなり性格が捻れているらしい。
隣国では母である側妃の身分が低かった為、他の王子よりも冷遇され母子共に城内では肩身の狭い思いをしていたらしい。
病気で母が死んでからは、恨みを募らせボヴェルデンの敵国に情報を流し売国活動をしている。
お母様に加担しているのはボヴェルデンの為ではなく、ボヴェルデンの国王や兄弟達に協力しているように見せかけて油断させる為だとか。
ルーカスによると、そんな心の闇を抱えるアンソニーをヒロインが救うというのだけれど、救うも何もまだヒロインが私達の前に登場すらしていない。
ゲーム内ではアンソニーは中盤から現れる攻略対象者らしいのに…………やはりゲームとはかなりズレが生じているみたいだ。
アンソニーがボヴェルデン国を恨む気持ちも分かる。…………私とルーカスもあの母ゆえに、少なからず疎まれている存在なのだ。
けれど、私とルーカスには愛してくれる王妃様やお兄様、オリビア様がいる。……あ、お父様もいる。
アンソニーにも、そんな存在が自分の母以外にいれば良かったのに。
そういう存在にヒロインがなるのかな。
ゲームのストーリーを変えちゃって申し訳なかったけれど、私だって大切な人を守る為に必死なのだ。
どうせなら私達と全く関係ない所でヒロインに出会って心の闇を癒してもらいたい。
私がジッと見ているのに気付いたアンソニーがパチッとウィンクして微笑む。
…………ここで、世の女性達ならば大興奮するだろうけれど、いかんせん私はアンソニーの裏事情を把握しているから大興奮どころかドン引きだ。
「シャーロットは最初から僕につれない態度ばかりだね。食堂が分からなかったから案内してもらおうと思って待っていたんだ。一緒に行ってもいいかい?」
「案内なら侍女がするから一人で行けば良かったのに。学園でもずっと一緒にいて案内させてたんだろ!お姉様はアンソニーの案内係じゃないんだからな!!」
「ハハ。出会って間もないのに、僕はすっかりルーカスに嫌われてしまったなぁ。」
私の腕にしがみ付いて威嚇するルーカスにアンソニーが苦笑する。
ーールーカスだけじゃなくて私も貴方を嫌ってますけどね。
私は感情を一切出さず、顔にニッコリと笑みを貼り付ける。
「いいわよ。一緒に行きましょう。」
笑みを貼り付けた私の顔をマジマジと見つめ、アンソニーはニヤッと嫌な笑みを浮かべた。
「やっぱり、シャーロットは僕と同類の匂いがするんだよね……。」
「さ、さあ、早く行きましょうか。」
ーーやめてよ。勝手に同類扱いしないでください!!私に心の闇なんて…………あぁ、あるか。
血の繋がったお母様とバチバチに対立しちゃってますもんね…………。
アンソニーと同類って言われるのは全くもって不本意だけど、愛する人達を守る為だったら私はお母様にも負けない悪女になるんだから!!
ルーカスがなるべく私とアンソニーを近づけない様に歩いている最中、後ろを歩くオーウェン様にそっと声を掛けられる。
「学園ではずっとアンソニー様とご一緒におられたのですか?」
「え?そうですね。何かとアンソニーが付き纏ってきましたので。」
「そうですか…………。」
オーウェン様が眉間に皺を寄せて渋い顔をしている。
学園では護衛出来ないから心配してくれているのかな。
まだまだ私の頑張りが足りないからオーウェン様に余計な心配をさせてしまうのね。頑張らないと!!
「大丈夫です!アンソニーだってまさか学園で命までは狙わないでしょうし。それにアンソニーも顔だけは整っていて美男子だから、あっという間に女子生徒の人気者でどこに行っても注目の的なんです。そんな中で狙われるなんてまず無いでしょうし…………オーウェン様?」
「…………」
私が話している途中でオーウェン様の眉間の皺がどんどんと深くなり、明らかに不機嫌そうに黙り込んでしまった。
どうしよう……何か怒らせてしまったのかしら?
訳が分からずオロオロとしている私の横で、私と腕を組んで歩いているルーカスが思い切り大きな溜息を吐いた。
「お姉様は本当に鈍いよね。まあ、そこも可愛いんだけどさ。……頑張ってね、オーウェン。」
「…………はい。」
ーー何を頑張るのよ。男同士だけで分かり合っていて何かズルい。
「君達はとても仲良しだね。羨ましいよ。」
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