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出会いは突然に
しおりを挟むまだまだお兄様の成人披露パーティーが行われている大広間から少し離れた部屋のソファで、私は横たわっていた。
あれから意気込んでパーティーに出席したものの、あまりの人の多さに早々にダウンしてしまったのだ。
家族で挨拶をしている時から体調が徐々に悪くなっていくのを自覚しつつも必死に耐え、なんとか招待客全員に挨拶し終わることができた。それもこれも途中で私の異変に気付きずっと手を繋いでいてくれたお兄様のおかげで。挨拶が一区切りしたらすぐにお父様に報告してくれて、お父様に抱えられた状態でこの部屋まで連れてこられたのだ。正直、立っているのがやっとだったから助かった。
「ここなら私たちもパーティーの合間にイレーネの様子を見に来れるから、暫くここで休んでいなさい」
ソファにそっと私を下ろしてそう言うと、お父様は近くに控えていた使用人に何か指示して慌ただしく大広間へと戻っていった。
お父様に指示されていた使用人がすぐに毛布と枕を持ってきてくれたから素直にソファにゴロンと寝そべると、ドッと疲れと睡魔が襲ってきた。
黒いモヤモヤももう少し加減をして精気を食べてくれればいいのに……元の姿には後どれくらい精気を食べれば戻れるのかな……こんなのがずっと続いたら体がもたないよ……え……もしかして私、成人する前に死んじゃうんじゃない?
なんて事を悶々と考えながら目を閉じていたら、いつの間にか寝てしまったみたいで……。
フッと意識が浮上して、ゆっくり目を開ける。
寝起きでボヤけていた視界がクリアになると至近距離で私の顔を覗き込んでいる綺麗な青色の瞳と目が合って思わず息を呑んだ。
「あ、生きてる」
目を開けた私に驚いた様子で目を丸くしているのはとっても綺麗な顔の女……いや、男の子?で、腰を屈めて私をジッと見つめている。
ーーえ?何?誰?
見知らぬ男の子に凝視されたままの私は絶賛パニック中の頭をなんとか稼働させて声を絞り出した。
「……生きてます……けど?」
「えっ……声まで可愛い……」
目をぱちくりさせて美少年が何やら呟いている。ちょっと顔が近い気がするんだけど……。
「君はアレクシス殿の妹かな?」
「は、はい……」
「フフッ、やっぱり。アレクシス殿がいつも自慢しているだけあって本当に可愛いね」
「まあっ!お兄様のお友達でしたか!寝たままでお話しなんて失礼なことをしてしまって申し訳ありません!」
私ったらお兄様のお友達になんていう失態を!!
慌てて体を起こすもバランスを崩しソファから落ちそうになってしまった私を、男の子はサッと手を伸ばし抱きとめてくれた。
う、うわあぁぁ!!メッチャいい匂いがする!!男の子なのに、この子メッチャいい匂いがするんですけどー!!!
お父様とお兄様以外の男の人とこんなに密着したことが無かった私は益々パニックに陥ってしまい、抱きとめられた状態のまま動けずに固まってしまった。
「フフッ、お顔が真っ赤だね。可愛い」
クスクスと笑う男の子はフリーズしたままの私をゆっくりとソファに座らせると、真っ赤に染まった私の頬をスリスリと優しく掌で撫でてきて…………これまたそんな事をされるのは家族以外に初めての私がソファに座った状態で再び固まってしまったのは、言うまでもないだろう。
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