ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

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初めての旅行はドキドキがいっぱい!?

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別荘がある離島までは船で約一時間。


それまで海を眺めていたい私と、私に海を眺めさせたくないサイラス。

サイラス曰く、私が海を覗いているのは危なっかしくて、ハラハラするから嫌なんだって。


「見て見てサイラス!海に陽の光がキラキラ反射して、とっても綺麗だよ!!」

「うん、そうだね。でも、ユーカの目の方がもっとキラキラしてる。」



結局、お互いに妥協して、私はサイラスにしっかりと抱き締められた状態で甲板から海を見ている。

まあ、海風がちょっと冷たくて寒かったし、丁度良かったかも。



「こんな所でイチャイチャしておったのか。」


海を見ていたら後ろから声をかけられ、振り向く。

そこには、腕を組んで呆れ顔をした金髪イケメンの姿が。


「フータ!」

「お前達は、いつでも何処でもベッタリしておるのう。」


サラサラの腰くらいまである長い金髪を後ろで一つに束ね、白いシャツを着て黒い細身のズボンを履いているだけなんだけど、なんか眩しい。

なんかもう、存在自体が神々しくて(まあ不死鳥なんだから元々そうなんだろうけど)、その姿を見ているだけで眩しくて、目がチカチカする程の超絶イケメンが、こっちに向かって歩いてくる。


フータが人間の姿になれるのは、なんとなく分かってた。

だって、大昔に皆にフータの血をあげたら獣人になっちゃったワケでしょ?

血の主であるフータが人間になれなかったら、そもそも獣人は誕生していなかったんじゃない?って思ってたから。

それがはっきりと分かって、ちょっとスッキリ。


…………でも……それにしても、眩しすぎる。


「……あれだよね。イケメンすぎるのもさ、考えモノだよね。眩しくて目がチカチカするもん……。」

「あっ、駄目だよユーカ、目を擦っちゃ!」


目をゴシゴシと擦る私の手をサイラスが慌てて止める。

そしてフータをキッと睨むと、サイラスはフータに背を向けて私をフータから隠したのだった。


「フータ、近づくなよ!ユーカの可愛い目が擦り過ぎて腫れちゃうだろ!」

「なんと理不尽な!!」

「……ハァ~……。人間のフータはイケメンすぎてドキドキする~。ヤバ~イ!」

「っ!?フータ!それ以上、絶対近づくな!……クソッ!ユーカをドキドキさせるなんて……許さないからな!!」

「理不尽!!」


サイラスと言い合っているフータは、半ば強引にこの旅行へついて来た。

旅行へ行くから3日ほど会いに来れないと宿り木へ報告に行ったら、「我も連れて行け」と散々ごねられ、根負けした国王様が承諾したのだ。


そんなギャイギャイと騒いでいる私達のそばへ、いつもよりラフな格好をした国王様が笑いながら歩いて来た。

普段のビシッとした格好じゃないから、今日はなんだかとっても若く見える。

国王様とサイラスはすごく似ているから、国王様を見ていると大人になったサイラスが容易に想像出来て、ドキドキするんだよね。


…………私の周りはイケメンばっかりだな。


…………最高かよ。


毎日ドキドキし過ぎて、私、早死にするんじゃない?



「ハハ。楽しそうで何より。ほら、あそこに見えてきたのが別荘のある離島だ。もう少しで着くぞ。」


サイラスに抱かれている私の頭をポンポンと撫で、国王様が船の進行方向に見える島を指差した。


「サイラス!島!島だよ!!」

「フフッ、可愛い。うん、島だね。楽しみだな。」


島を見つけてテンションの上がった私は、興奮のあまりサイラスの首にギュッとしがみ付き、足をバタバタとさせた。

サイラスは、そんな私を落とすまいと力強く抱き締め直してくれて、更に海風のせいで冷たくなった私の頬に自分の頬をスリスリと擦り寄せて温めてくれる。


「あったか~い!サイラス、ありがとう。大好き!」

「うん。俺も大好き。」


サイラスにギュウギュウ抱きつきながら、私はどんどん近くなる島に胸を躍らせていた。






「…………のう、王よ。あれは、どこからどう見てもバカップルのイチャつき方だと思うのだが……。」

「ハハ、そうですね。本人達はお互いに"好き"という気持ちを素直に伝え合っているだけで、それがまだどういう種類の"好き"かを理解していないのでしょう。……そういう気持ちを理解する前に、二人は出会ってすぐにお互いかけがえのない大切な"家族"になってしまったようなので。」

「ふむ……それはまた難儀だのう。あの二人は,まだ幼い。其方が上手く導いてやらねばならぬぞ。我は二人を好ましく思っておるゆえ、是非とも幸せになってもらいたいからな。」


フータが目を細め、はしゃぐユーカとサイラスを見つめている。

国王も、そんな我が子達の姿を愛しそうに目で追い、しっかりと頷いた。


「勿論です。あの子達は、私がどんな事をしてでも、必ず守ります。……必ず、幸せにしてみせますので。」



海風の音に阻まれ、フータと国王の会話は他の誰にも聞こえてはいなかった。

けれど、後ろに控えているエマや他の従者達は、国の守り神である不死鳥のフータが満足そうに微笑むのを見て、一様に安堵の息を吐いたのだった。
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