ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

文字の大きさ
上 下
55 / 96

サイラスとは"可愛い"が共有できません!?

しおりを挟む
「バイバーイ!また遊ぼうねー!」


ブンブンと大きく手を振り、クレイブさん親子を見送る。

ジョシュア君も後ろを振り返り、私に満面の笑みで手を振ってくれた。

ジョシュア君の妹のミアちゃんは、クレイブさんに抱っこされてスヤスヤと気持ち良さそうに寝ている。


今日は、ジョシュア君とミアちゃんが遊びに来てくれて、私の部屋で遊んだのだ。

ミアちゃんは、最初人見知りをしてジョシュア君の背中にピタッとくっ付いていたんだけど、徐々に慣れてくれたみたいで、途中からは私にとっても懐いてくれた。メチャクチャ可愛い。

こっちに来てからお友達と遊ぶなんてことが全然無かったから、久しぶりに思い切り遊べて楽しかった。


ミアちゃんが遊び疲れて、途中で寝ちゃったから予定していた時間より、ちょっと早めにお開きになったんだけど。


ミアちゃんが眠くなり始めた時に、モゾモゾと私の膝の上に乗っかるとウトウトしだして……ミアちゃんのその可愛さに、悶え死ぬかと思うくらいキュンキュンしてしまいましたよ。

眠気と戦っているのか,ミアちゃんが私のお腹に頭をグリグリと擦り付けてきた。
その可愛さにニヤけながらミアちゃんの頭をヨシヨシと撫でていると、何やら視線を感じて顔を上げる。

視線の主はジョシュア君で、頬を赤く染めながら私とミアちゃんをジッと見つめていた。


「……羨ましいなぁ」

「え~?ジョシュア君はいつもミアちゃんと一緒なんだから、今くらい私がミアちゃんを愛でてもいいじゃん。まあ、これだけ可愛かったら独占したくなっちゃう気持ちも分かるけどさ。」

「…………そっちじゃないよ。」


抗議の声を上げる私にジョシュア君は苦笑しながら、私の手を取り甲にチュッとキスをした。

突然のことに目を丸くしていたら、ジョシュア君は男の子とは思えないくらい、とびきり可愛い笑顔で私を見つめてくるではないか。


「今度は僕にも膝枕でヨシヨシしてね?」

「えっ!?は、はいっ!!」


こんな可愛い子に、コテンと首を傾げてお願いされてしまえば、頷くしかないでしょ!


……なにこの兄妹……私をキュン死にさせるつもりですか?


その様子を見守っていたエマさんが、ジョシュア君付きの侍女に指示を出していたみたいで、ミアちゃんがスゥスゥと寝息を立て始めた頃に丁度タイミングよくクレイブさんがお迎えに来てくれた。


本当にエマさんは仕事の出来るカッコイイ女性だ。



「約束だよー!」と、何度もそう言って帰って行くジョシュア君達を見送ってから、私はサイラスの部屋へと足を進める。


「サイラス様の所へ行かれるのですか?」

「うん。さっきはちょっと言い過ぎちゃったから、謝ろうと思って。」


何回も部屋を覗きに来るサイラスに、ミアちゃんが人見知りを発動して凄く怖がってたから、ついキツく言って追い出しちゃったんだよね。

ちゃんと謝らないと。


手を繋いで一緒に歩いているエマさんを見上げると、エマさんはなんとも複雑そうな表情をしていた。


「先程の……ジョシュア様とのやり取りは,サイラス様にご報告なさらない方がいいと思います。」

「え?なんで?兄弟揃って私に甘えてくれちゃうとか、メチャクチャ可愛くない?私ってば,2人が可愛過ぎてキュン死にするかと思ったもん!この"可愛い"を誰かと共有したいんだよね!」


私が興奮しながら言っているのを、エマさんは残念な子を見るような目で見てきた。


「…………残念ながら、サイラス様とは共有出来ないと思います。」

「え~、なんで?あんなに可愛いんだよ?」


私が必死にアピールするも、エマさんは苦笑しつつ首を横に振るだけだった。


「サイラス様がこれ以上拗ねてしまわれると、後々ユーカ様が大変に……」

「はい!サイラスには言いません!」


私はビシッ!と手を挙げ、食い気味に答えた。


拗ねているサイラスは、正直言って面倒くさいんだよね。

ただでさえ、さっきサイラスが覗きに来たのを追い出しちゃったんだから……もう、これ以上サイラスの機嫌を損ねるワケにはいかない。


エマさんに言われた通り、下手に喋らず、黙っていよう。




サイラスの部屋の前に着いたら、丁度メイソンさんが部屋から出てくるところだった。


「おや、ユーカ。もうクレイブの子供達は帰ったのですか?思っていたよりも早いですね?」

「うん、ミアちゃんが寝ちゃったから。サイラスは部屋にいますか?」


メイソンさんに答えながら部屋の様子を窺おうとすると、中からバタバタバタと走る音が聞こえて、メイソンさんの脇から、ガバッとサイラスが顔を出した。 


「やっぱりユーカの声だった!なになに?俺に会いに来てくれたの?」

「うん。」


メチャクチャ嬉しそうなサイラスに、私まで嬉しくなって、謝るより先に思わず抱きついてしまった。

サイラスも、そんな私を軽々と抱き上げてギューッとしてくれる。


「楽しかった?」

「うん!とっても楽しかったよ!それでね、あのね、さっきはせっかく心配して来てくれたのに、追い出すみたいなこと言って本当にごめんなさい。」


サイラスに抱き上げられたまま、ペコリと頭を下げて謝ると、サイラスは眉尻を下げてニッコリ微笑んだ。


「ううん。俺の方こそ、何回も覗いて邪魔しちゃったよね。ゴメン。」


お互いに謝って、「これで仲直りだね」と、クスクスと笑い合う。


「今日は何をして遊んだの?」

「えーっとねぇ、お絵描きしたり、ミアちゃんに絵本を読んであげたり、色々したの!ミアちゃん、とっても可愛かったんだよ!」

「そう。良かったね。ーーところで、クレイブの息子には何もされてないよね?」


私の話しをニコニコと微笑んで聞いてくれていたサイラスが、ふいにジョシュア君のことを聞いてきたので、一瞬ギクリとしてしまった。


「いやだなぁ、何もされてないよー。」


えへへ、と笑う私を見つめながら、サイラスの目がスッと細くなる。

ほんの一瞬、ギクリとしただけなのに、サイラスにはバレてしまったようだ。


「…………本当に?」

「ほ、本当だよ!」


内心ドキドキしつつニッコリ笑う私を、ふ~ん、と言って見つめるサイラスの目が、段々と怖くなっている気がする。


「エマ。本当に何もなかった?」

「はい。何もございませんでした。」


私を見据えたまま、サイラスがエマさんに確認する。

サイラスの低い声に動じることなく、エマさんはサラリと答えた。

そんなエマさんを一瞥すると、サイラスは目を細め、再び私をジッと見つめた。


「……まあ、いいや。これからユーカがクレイブの息子と会う時は、俺も一緒に会うから。……いいよね?ユーカ。」

「も、もちろんだよ~……」



ーー圧が……圧がスゴイですよ、サイラスさんや。

それって、もう、決定事項ですよね?


「よかった」


そう言って笑うサイラスは、とっても嬉しそうで。

サイラスが嬉しいんなら、まぁいっかーって思っちゃった私も、サイラスにつられてニコニコしてしまう。




ーーそんな私を、エマさんが再び残念な子を見るような目で見つめていたことを、私は知らない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

処理中です...