ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

文字の大きさ
46 / 96

獣人国の始まり

しおりを挟む
「それで、ユーカから不死……フータ様より貴重なお話を伺えると聞いたのですが……」


国王様が、ゴホンと咳払いをしてからフータに言った。


『おお、そうであった。貴重な話というか、この国の始まり…………いや……要するに、我の懺悔話だ。』


フータは皆の顔を見た後、悲しそうに目を伏せる。


『中に入るがよい。』


フータがそう言うと、裏庭の青白い光が一瞬にして消えて宿り木だけが淡く光っている状態になった。

私がサイラスの手を引いて中に入ると、サイラスもすんなり裏庭へ足を踏み入れる事が出来た。

皆も後に続いて入って来る。


「あれが宿り木……」

「…………凄い。フータ様と同様に神々しいですね。」

「宿り木に近づくにつれて、体にパワーがどんどん漲ってくるぞ。」


皆、裏庭へ入ってから何かを感じているようで、一様に体をブルリと震わせた。


私は全然何ともないんだけどな。


私が不思議そうに皆を見つめていたのに気付いたフータが、力なく笑う。


『皆がそう感じるのも、すべて我が原因なのだ。』

「フータの?なんで?」


フータは私の問いかけに答えず、宿り木の根元まで歩み寄り宿り木を見上げた。


『…………この辺りは遥か昔、見渡す限り草原でな。その中に、ポツンとこの宿り木が生えていたのだ。我はいつからか…………もう覚えておらぬがこの宿り木に生を受け、ずっと宿り木と共にここで生きてきた。そんな我等の側には、我等のパワーに引き寄せられるように、徐々に生き物たちが集まってな。我も独り身が長かったゆえ、沢山の生き物達が慕ってくれるのは純粋に嬉しかったのだ。』


フータは目を細め、懐かしむように話し始める。


『時が流れ、慕ってくれていた者達が次々と死にゆく時になって、我は初めて気付いたのだ。この者達には"死"というモノがあるのだと……。どんなに慕われ、愛されようと……皆、我を残して死んでしまう。…………我がどんなに愛しても、皆、我を置いて行ってしまうのだと。』


フータは自分が不死の身だから、"死"というものが理解出来なくて。

いつも、自分だけ取り残されるのが悲しくて、寂しくて。

そしてある日、思い付いちゃったんだって。


ーー不死である、自分の血を分け与えたら、皆も死ななくなるんじゃないかって。


それで、皆に聞いてみた。


「我とずっと一緒にいたくはないか?」


すると、皆は揃って首を縦に振ったという。


「私達を、ずっとお側において欲しい。」


と。


フータは歓喜し、すぐに皆へ自分の血を分け与えた。

皆も涙を流して喜び、それを有り難く受け取ったという。


これで、誰もがずっと一緒に、幸せになれると信じていた。


『けれど時が経ち、一匹、また一匹と血を分け与えた者達が死んでいくのを目の当たりにして、我のその行為が間違いだったのだと思い知らされた。そして、それに更に追い打ちをかけるように、血を分け与えた者の子孫達が変異し、人間に姿を変えられるようになってしまったのだ。…………これはもう、我の与えた血のせいとしか言いようがなかった。』


俯き、宿り木に頭をゴツンと打ちつけるフータの表情は、苦悩に満ちていた。


『それからの我は他の国を渡り飛んで、様々な人間の知識、文化を学び、変異した者達にそれを伝授した。それが、血を与えた我の責任だと思ったからだ。人間となり、沢山の情報と知識を得た者達はみるみる進化し、家を作り、店を作り、町を作った。…………そして、沢山の町ができ、大勢の人が集まれば、至る所で争いが頻繁に起こるようになってしまったのだ。』


宿り木に頭をくっつけたまま、フータはハァと、深くて重い溜息を吐く。

閉じていた目を開けて宿り木から頭を離すと、フータが国王様とサイラスを見つめた。


『だから我は、初めの頃より我に代々付き従えていた狼の…………お前達の先祖に特別な力を与え、皆を統べる王としたのだ。…………これが、この国の……獣人国の始まりだ。』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

必要ないと言われたので、私は旅にでます。

黒蜜きな粉
ファンタジー
「必要ない」 墓守のリリアはある日突然その職を失う。 そう命令を下したのはかつての友で初恋相手。 社会的な立場、淡い恋心、たった一言ですべてが崩れ去ってしまった。 自分の存在意義を見失ったリリアに声をかけてきたのは旅芸人のカイだった。 「来る?」 そうカイに声をかけられたリリアは、旅の一座と共に世界を巡る選択をする。 ──────────────── 2025/10/31 第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞をいただきました お話に目を通していただき、投票をしてくださった皆さま 本当に本当にありがとうございました

婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。 「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」 周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。 アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。 ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。 その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。 そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...