ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

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町には危険がいっぱい!?

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お会計を済ませて店を出た。

複雑そうな表情をしたサイラスと一緒に。


「そんなかおしないでよ。ほめられたんだからいいじゃん。」

「ん~」


店を出る少し前。

会計を終えて、買った服が入った紙袋を受け取る時に、店員さんが私にニッコリと微笑んで、こう言った。


「優しいお父様ですね。」

「ありがとーございます。」


否定するのも変だと思い、私もニッコリ笑って返事をしてから紙袋を受け取る。

その横で、複雑そうな顔をしているサイラスの手を引っ張って外に出た。


「…………俺、そんなに老けて見えるかな……。」

「おとなっぽく、みえてるんだよ。いいじゃん。」

「…………だったら、兄とかでもよくない?」

「あ、ねえねえ、さっきいってたおかしやさん、いこうよ。」


返答に困って話しを無理矢理逸らした私に、サイラスがジト目を向けてくる。


お父さんでも、お兄ちゃんでもどっちでもよくない?

だって、どっちも家族でしょ。

私的には、どっちでも嬉しいんだもん。




納得いかないといった顔のサイラスと手を繋いで、大通りを歩く。

確か、もう少し歩いて行った先に、甘い匂いを漂わせていたお菓子屋さんがあったはず。

大通りというのもあってか、人がけっこう歩いていて、気をつけて歩かないとぶつかってしまう。

ちびっこい私はサイラスとはぐれないように、手を離さないように、必死に歩いた。


「ユーカ大丈夫?抱っこしようか?」

「ううん、だいじょーぶ。」


心配そうに見つめるサイラスに、見上げてニコッと笑顔を返す。


あとちょっとでお菓子屋さんだ。

また、さっきも嗅いだ甘い匂いが漂ってきて、ホッと息を吐いた。


と、そこへ後ろからドンッと人がぶつかってきて、少しよろめく。


そして、よろめい時、今まで被っていたフードがボスンと、頭からズレて落ちてしまった。


フードがとれちゃった!!


慌ててズリ落ちたフードを被ろうとしたら、後ろからフードを力強く引っ張られ、そのまま上に持ち上げられた。


「なんだ!?この髪の色は!?」

「ユーカ!!」


厳つい顔と体のオジサンが、物凄い形相で私を睨んで高く持ち上げる。

「う…………」


フードを掴んで持ち上げられているから、首が絞まって息が出来ない。


く、苦しい……!!


ジタバタともがいていると、サイラスがフードを掴んでいるオジサンに飛び掛かり、胸ぐらを掴んで締め上げた。


「ユーカを離せ!!!」

「なんだぁ、お前は?この気持ち悪い奴の仲間か?」


オジサンが、嫌なモノを見るような、蔑むような目を私に向ける。



ーー気持ち悪い?…………私って、気持ち悪いの?


「やめろ!!ふざけるなっ!!」


サイラスが叫んで、グッと更にオジサンを締め上げようとした瞬間、私はオジサンに地面へ放り投げられた。


「きゃっ!!」

「ユーカ!!」


地面に倒れ込む私の元へ、サイラスが駆け寄り、抱き起こしてくれた。


「何をするんだっ!!」

「おい、そいつのその色はなんなんだ?黒髪に黒い目なんて不気味な色、見たことないぞ!」

「黙れっ!!」

嫌悪感をむき出しにして私を見るオジサンに、サイラスが大声で怒鳴った。

ザワザワと騒めきも大きくなり、それと同時に周囲の人達からの嫌悪感もひしひしと伝わってくる。

ガタガタと震え出した私の体を、サイラスが強く抱き締め、私を落ち着かせようとしてくれる。

それでも、周りからの憎悪はドンドン増すばかりで、私の心をずっと攻撃してくるから、震えが全然止まらない。


「わ、わたし…………ぶきみなの?」

「違う!!」


ガタガタと震える私の体を抱え込んで、サイラスは必死に首を横に振った。


「わたし…………きもちわるいの?」

「違う違うっ!!」

「違うもんかっ!見ろよ、コイツのこの黒い髪と目の色を!こんな不気味な色の奴なんて、気持ち悪いに決まってるだろ!!」


私の存在を全部拒否する言葉を吐いて、オジサンは私を見下ろし、睨んでいる。

オジサンの発言を引き鉄に、周りからも口々に罵声を浴びせられ、私は堪えきれずに泣いてしまった。


ーー怖い……怖い!!


ポロポロと涙を流す私の耳を、サイラスは両手でギュッと押さえて塞いでくれた。

涙でぼやけて見えるサイラスの顔は、怒りで赤く染まり、口をワナワナと震わせている。

ハァハァと荒かった息づかいがピタリと止まり、次の瞬間、サイラスの口の端から、グワッと狼の鋭い牙が生えた。


「その口、二度と喋れないようにしてやる……!」


サイラスからドス黒いオーラが溢れ出ていて、周りの空気を凍りつかせる。

グルルルル、と、威嚇する声が漏れ、サイラスの姿が人から狼の姿へと、徐々に変わっていく。


「ヒィッ!ば、化け物!!」


オジサンや周りの人達が叫び声を上げながら後退りをする。

着ていた服がビリビリに破れ、狼へと変身を遂げたサイラスは、牙をむき出しにして周りをグルリと見回した。

一人、また一人と、恐怖で青褪めた人達が逃げ出し、辺りはパニックに陥り、収拾がつかなくなっている。

怒りで我を忘れて周りを威嚇しまくっているサイラスの首に、私は手を伸ばしギュッとしがみ付いた。


「サイラス、サイラス…………」


グルルルルと、怒っているサイラスの声も徐々に聞こえなくなり、少し落ち着きを取り戻したサイラスは、泣きながらしがみ付いている私の頬を心配そうにペロッと舐める。

私は涙が止まらなくて…………更にギューッとサイラスにしがみ付いた。


「…………サイラス、おウチにかえりたい。」


もう、早くここからいなくなりたい。
サイラスと、二人だけになりたい。


サイラスのモフモフの毛に顔を埋めてそうお願いすると、サイラスは私の頬に顔をスリスリと寄せ、そして頷いた。


「帰ろう。俺達の家に。」


サイラスは私を背中に乗せ、騒ぎ立てる人達の間を駆け抜けて行く。




私は、走るスピードを速めたサイラスの背中に、必死に抱きついた。



ザワザワとした騒音はすぐに聞こえなくなり…………苦い経験をした町は、瞬く間に見えなくなったのだった。



















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