ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

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生きるって、シビアだよね。

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この世界に迷い込んでからかなりの月日が経ち、サイラスとの生活にもすっかり馴染んできた。

サイラスは時々、犬……じゃなかった、狼の姿で森へと入って行く。

家で大人しく待っていると、ウサギや猪によく似た小動物を仕留めて帰って来る。

小動物を狩るには、狼の姿の方がいいらしい。


「ユーカはまだ小さいから、お肉を沢山食べて、大きくならないとね。」


そう言って、最近では食卓によくお肉料理が並ぶ。そして、私のお皿に大量にお肉をのせてくれるけど……そんなに食べられないよ。

サイラスだって、まだ育ち盛りの筈なのに、サイラスは私のことをまず第一に優先して、行動してくれる。


「サイラス、はい、あーん。」

「……あーん。」


何回言っても、私のお皿をお肉で山盛りにしちゃうから、ここ最近は無駄な抵抗をやめて、山盛りにされたお皿から私がお肉をフォークで刺して直接サイラスに食べさせている。


サイラスも恥ずかしそうにしながらも、フォークを顔の前に差し出すと、大人しく食べてくれるんだよね。

サイラスの照れている顔が可愛くて、何回でもその表情が見たい私は、つい沢山サイラスに食べさせたくなっちゃって、いつもサイラスに「ユーカも食べないと駄目でしょ。」と、注意されるまであげ続けてしまう。




前に一度、サイラスが森に入って行くのについて行こうとしたら、全力で止められ、拒否された。

どんなにぐずっても駄目で渋々留守番していたんだけど、その日、サイラスは口と手足を血で真っ赤に染めて帰って来た。

私はその姿にショックを受けて泣いてしまった。

体についた血を綺麗に洗い流し人の姿に戻ったサイラスに、私は抱きついたまま離れられなかった。

夜、狩って来たお肉で作ってくれた料理を食べられない私に、サイラスが背中を撫でてくれながら優しく話す。


「ユーカ、食べないと、今日俺が奪ってきた命を無駄にすることになるんだよ。俺達は、色々な生命から生きる力を与えられているんだ。ユーカはまだ小さいけれど、ユーカにはちゃんと知っておいて欲しいと思ったから。……俺の言ってること、分かる?」

「…………うん。ごめんなさ~い。」


そう言って大泣きする私の背中を、サイラスは泣き止むまでずっと撫でてくれていた。



いつもはあんなに血だらけになって帰って来ないのに、この日に限っては、いつも以上に汚れていた…………それはきっと、このことを私に教えたかったから。

遊びじゃない。

命を奪うというのが、どれほどの事なのか。どれほど、大変な事なのか。



ーーこの日、私はどれだけ沢山の命によって生かされているのかを、サイラスに教えてもらった。





夜ご飯は、泣き止んでから、サイラスと一緒に残さず食べた。

時間経ってしまった料理は冷たくて、お肉も固かったけれど、この日の夜ご飯は私が大人になっても記憶に残る、特別なモノになったのだった。
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