神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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「…………え?」

外套のフードがハラリと落ちる。

キラキラと輝く金色の髪、吸い込まれそうな程綺麗な青色の瞳。

私が毎日のように夢に見ていた人物が、すぐそこに……私の目の前にいた。


「…………リスター?」

「アヤナ!!」

掴まれていた腕をグイッと引き寄せられ、力強く抱き締められた。


「アヤナ!アヤナ!やっと見つけた!!会いたかった……会いたかった!!」

ギュウギュウと強く抱き締められる間も、私はまだこの状況が信じられなくて唖然としていると、リスターが抱き締める力を緩めて私の顔を覗く込む。


「アヤナ?」

久しぶりにリスターに名前を呼ばれて、私の体がブルブルと震え出す。

震える両手をなんとかリスターの頬まで伸ばし、そっと触れてみた。


ーー温かい。


「ほ……本当に、本物のリスター?」

リスターは、震える私の両手に自分の手をそっと重ねると、愛しそうに頬をスリスリと擦り付ける。

「うん。本物の僕だよ。」

私の目から涙が一気に溢れ出した。

「リスター!!!」

リスターの首に両腕を回し、私は勢いよく抱きついた。

「リスター!!リスター!!リスター!!」

抱き付いて泣きじゃくる私を、リスターも強く抱き締め返してくれる。

私の頭にキスを何度も何度も落としながら、耳元で「愛してる」と囁く。

最後に会った時より、随分背が高くなったリスター。
声も低くなり、もう少年ではなく立派な青年へと成長していた。

一段とカッコ良くなっていて、リスターに見つめられる度に……リスターに名前を呼ばれる度に、私の背中がゾクゾクする。

私とリスターがギュウギュウと抱き合っていると、後ろから龍斗さんの話し声が聞こえてきた。

「リュート、久しぶりだな!髪の色が違うから危うく見逃すところだったぜ!」

「無事だと分かっていたけれど、本当に元気そうで良かったよ……。」

「ダナンとカールも来てたんだな。突然アヤナが腕を掴まれた時はビックリしたぜ……。まさかリスターがいるなんて思ってもいなかったからなぁ。」


なに!?ダナンさんとカールさんだって!?

リスターが抱き締める力を弱めてくれないから、私は首だけをなんとか動かして2人の方を見る。

「ダナンさん!!カールさん!!」

久しぶりの2人の姿に、嬉しくなって思わず叫んでしまった。

私の叫び声に、2人が顔を綻ばせる。

「アヤナ、元気だったか?見事に男の子に化けたな。全然分からなかったぜ。」

「本当だよ。よくリスターが気付いたもんだね。流石というか、何というか……。」

2人と話していると、リスターが私の顔を両手で挟み、リスターの方へ向き直された。

「僕は、アヤナがどんな姿をしていても分かると言ったでしょう。アヤナは、可愛さが内側から滲み出ているんですよ。」

うっとりしながら、リスターが私の頬を優しく撫でる。

昔より更にイケメンに成長したリスターに、私は胸のドキドキと涙が止まらない。

「ねえ、アヤナ。久しぶりに会えたんだから、もっとよく顔を見せて?余所見なんかしないで、僕だけを見て……。」

リスターは両手で私の顔を挟んだまま、涙で濡れた頬にチュッチュッとキスをする。

「リスター……。お前も相変わらず彩菜バカだなぁ。」

龍斗さんが呆れ顔で苦笑した。


その声に気付いたリスターは、龍斗さんを上から下まで見ると、ジッと龍斗さんの顔を見つめて眉を顰める。

「……誰ですか?」

「龍斗だよ!お前なぁ、彩菜が分かるんだったら、俺なんてすぐに分かるだろうが。」

「ああ、リュートさん。お久しぶりです。髪の色が違うから、全く誰だか分かりませんでした。」

「……なぁ、コイツ一発殴っていい?」

龍斗さんが額に青筋を立てながらダナンさんとカールさんに聞いていた。

2人が龍斗さんを宥めているのを横目に、リスターは私を再びギュッと力強く抱き締める。

「アヤナ……もう二度と離さないからね。」


そう言ったリスターの声がとっても切なくて……私は必死にリスターに抱きつきながら、何度も何度も頷いた。



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